Tailors note

手縫いの考え方

手縫いの考え方

THE CLOAKROOM TOKYO
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Tailors note
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Lui Mieda
皆様、こんにちは。
前回のブログから1年半ほど経ってしまいました。
2019年の終わり頃ブログを書いていた時は、世界中がこんな事になっているとは全く想像しておりませんでした。新型コロナウィルスの世界的な流行…明るい気持ちで新しい洋服を!という気分にはなれないと思います。

そんな中ですが、私の仕事は洋服を仕立てる事です。
コロナ禍で私に何が出来るかと考えます。
答えは一つ。
皆様が新しい洋服を着たい!と思った時に、今まで以上のスーツをご提供出来るよう、技術を向上させる事です。
今は以前に比べてさらに手縫いの箇所を増やし、着やすく疲れない洋服を仕立てられるよう勉強しております。


タイトルにも据えましたが、ブログ再開一回目は
手縫いの考え方
です。



写真は脇入れをしているところです。(前身頃と背中を縫い合わせる)
見えているのは背中の裏です。背中の裁ち端を切り躾に合わせて0.7cmのところを絹地縫糸で縫っていきます。

見ていただくとわかりますが、針目はかなりの荒さです。これはハンドルステッチをもう一本入れる為です。脇の縫い目に対して二回糸が入りますから一本目の地縫いが荒くとも全く問題ありません。(縫割りの時はもっと細かく縫います!)

そして手縫いによって "糸にゆとりを持たせる" 事ができます。これはミシンには不可能で手縫いでしか成せない事です。
このゆとりが大切で腕を動かした時に生地が伸びるのと同時に縫い目も伸びてくれます。



この糸のゆとりですが、シルエットを出す部には不必要だと私は考えます。ですからアームホールからウエストに向かって10cm〜12cmまではゆとりを入れながら縫い、そこから下は縫い目が吊れない程度に締めて縫い進めます。
こうする事でシルエットの保持と腕の動かしやすさの両方が表現出来ます。

今まで何故脇入れに手縫いをしなかったかと申しますと、私には手縫いで縫ったものがどうしても綺麗に見えなかったからです。
それも反復して縫う事、針目をきれいに入れることで克服できたのでは無いかと思っています。今後も続けてさらにきれいにできる様努力して参ります。

ミシンにはミシンの良さがあり、手縫いには手縫いの良さがあります。それを適材適所で選択していく事が大切です。手縫いを増やす事により糸のゆとりを様々な所に入れる事ができました。

柔らかく美しいシルエットの中に動かしやすさを兼ね備えた洋服が私の理想です。そこにお客様のご希望を反映させて洋服は出来上がります。こんなに楽しい仕事は他にはありません。日々洋服を縫える喜びを噛み締めながら、これからも精進していこうと思います。

それでは失礼します。


The Cloakroom
三枝塁