土曜日の夜、日付が変わる頃、フジテレビ系列で東海テレビが制作する『土ドラ』と呼ばれるドラマ枠があり、筆者はこのドラマ枠の作品にお気に入りのものが多数あります。どこか人間臭い作品ばかりで、ほのぼのとした雰囲気が昨今のテレビドラマには稀有になってしまったように思われ、筆者にとってドラマを楽しめる貴重な時間帯と言えましょう。
太地真央さん演ずる名古屋年弁丸出しの整形外科医が主役の『最高のオバハン中島ハルコ』シリーズ然り、Hey! Say! JUMPの伊野尾慧君主演の『准教授・高槻彰良の推察』はミステリー物ですが、准教授の伊野尾君と学生役の神宮寺勇太君(元King & Prince、現Number_i)の怪しい関係にワクワクしたりと目が離せない作品ばかり。
そんな中、この原稿を書いている現在放映されている『ミッドナイト屋台2~ル・モンドゥ~』はグルメ物ながら、主演二人が共にSTARTO所属のアイドルで、イケメンと美食を一度に楽しめるという何とも贅沢な作品。昨年(二〇二五年)放映された『ミッドナイト屋台〜ラ・ボンノォ〜』が好評だったのでしょう。早くも一年後、第二弾が放映されることに。
前作では味覚障害に陥り料理の世界から離れてしまった若き天才的シェフがひょんなことから実家の寺の副住職を務める若者と出会う。この若者、実は辛口グルメレヴュー投稿者で味覚がめっぽう鋭い。二人は寺の境内で夜な夜な屋台「ル・ボンノゥ」を始めることに。
寡黙で料理のことばかり考えているシェフ遠海翔太にはWESTの神山智洋が。金髪で何処かミステリアスな雰囲気が才気あふれるフレンチシェフという役にピッタリ。寺を継ぐことにためらいがあり、自身の舌で翔太を助け、屋台のサーヴィスに今までの修行の成果を自分なりに生かせることに気付く方丈輝元にはTravis Japanの中村海人が。翔太とは対照的に外向的な性格でまさに二人で一つという「相棒」ものを見事に演じています。
第二作の「ル・モンドゥ」では味覚を取り戻した翔太と寺の後継を弟に譲った輝元は屋台のさらなる飛躍を求めて、横浜で店を開くことに。屋台村に出店出来ると思いきや、地下駐車場に連れて行かれ、そこで出店することに。宣伝も兼ね、輝元は地元FMのパーソナリティーを務めることになるが局のDJ藤間渉にジュニア内のグループB&ZAIの矢花黎が加わり、同じ事務所のほぼ三歳ずつ歳の違う三人がそれぞれの個性を発揮しています。
翔太はフレンチのシェフなのですが、「どんなオーダーでも引き受けます」という輝元の考えた屋台のモットーに応えることで実際毎回登場する料理は最後の数回こそ、「コンソメ・ドゥーブル」、「真鯛のポワレ」、「牛ほほ肉の赤ワイン煮」とフレンチの定番でしたが、それまでは「焼き飯」、「味噌ラーメン」、「お好み焼き」などとまさにデパートの「お好み食堂」的なものばかり。
このオーダースタイルは横浜でも変わらず、結果、今回は逆に店の「スペシャリテ」を考案しようと二人は試行錯誤するのですが……という流れ。縁故のない土地で「屋台」を知ってもらうには店の看板料理が必要だ、と。しかし、客にとってどうしても食べたい一品と言われるとその人の人となり、それまでの人生にとって一番記憶に残っている料理であり、実際この第二弾も今のところ、「豚の生姜焼き」や「肉まん」、フレンチ風と付くものの「牛丼」、「ちゃんこ鍋」と真っ当なフランス料理は「ウフマヨネーズ トリュフ風味」だけです。
しかし、この番組、本当の「美食」とは何かを考えさせてくれる貴重な機会であると筆者は評価しています。例えば、余命いくばくもないビルのオーナーに対し人生最後に何を食べていただきたいかと考えた二人が出した結論が、オーナー夫妻が若き日苦労していた時代、二人で毎日分け合って食べていた「肉まん」ではないか、と。二人が供したそれは普通ながら飛び切り美味しい肉まんだったのですが、夫妻が食べていたのは当時一番安かったからで、実際は何も美味しいものではなかったのでした。それでも二人で半分ずつ分け合って食した肉まんはオーナー夫妻に当時のことを思い出させ、かけがえのないひと時を屋台で過ごすことを可能にしたのです。
実際、筆者も人生最後に何が食べたいかと聞かれれば、亡き母が子供の頃作ってくれた「自家製レバーのサンドウィッチ」と答えるでしょう。サンドウィッチは別に何の変哲もないお弁当のレパートリーなのですが、どういう訳か、遠足などに持参するサンドウィッチが決まって母が自分で煮たレバーを薄く切ったものをたっぷりマーガリンを塗ったパンで挟んだものだったのです。サンドウィッチの具はそれだけで、あとは普通に卵焼きやらウインナーやら普通のおかずが別の入れ物に。
小学校は給食でしたので、学校行事の時くらいしか弁当がなかったのですがその度にレバーのサンドウィッチという訳で。確かにおにぎりが苦手でパンが良かったのですが、最初は戸惑いました。小学校低学年の子供の口に合う料理とは思えません。それでも年を経るといつの間にか、レバーのサンドウィッチを楽しみにするようになったのです。パサつくレバーがたっぷりのマーガリンのオイリーさで豊かな味のハーモニーを奏でることに気付いたのです。
母が亡くなった後、叔母が何かの折に、母が筆者の食事のことに神経質で身体によいとレバーをよく食べさせていたと聞かされたことがありました。そう言えば、晩年亡くなるまでさすがにもう自分で料理することはありませんでしたが、市販のレバーの煮たものを買ってきて、スライスしてサラダに添えて出してくれました。母のそんな思いを知り、母が煮たレバーのサンドウィッチがどうしてもまた食べてみたいと思うのです。
さて、話は再びかの屋台に戻り、筆者だったらまったく別の活用法をするかと思われます。イケメンのシェフとサーヴィスがすぐ目の前にいるわけでそれだけでワクワクするではありませんか。天才シェフにはフレンチの古典の定番料理を片っ端から作ってもらいます。ワインは店に通うので持ち込み料を払って持参ということで。マイグラスも預けておこうか、と。もちろん、ワインはお二人にも飲んでいただけるよう配慮して。
ドラマではそれぞれの客のかけがえのない一皿を作ることで若い二人が成長していく様を描き出しているのですが、本来「お任せ」とは、顧客の好みを熟知した料理人がこの料理ならその顧客は満足してくれるだろうというメニュにない料理をお出しするので「任せて」いただけないかという意味であることを再確認するべきかと思われます。
これではないかと投げかけれた料理に対し、的確に応えることの繰り返し。その批評精神こそ、若い二人を成長させるのであり、これこそがまさに「モンドゥ(問答)」ではないか、と。
そんな屋台があれば、ぜひ顧客になりたいものです。もちろん、スタッフ全員がイケメンであることは必須条件ですが。

今月のお薦めワイン 「バルバレスコ――イタリアワインの女王様――」
「バルバレスコ 2020年」 ガルブレット 6900円(税抜)
今回はイタリアワインの回。ピエモンテ州のネッビオーロ種から造られる銘酒を北から紹介するシリーズです。。
いよいよ、南部のバルバレスコ、バローロに到達。「ワインの王、王のワイン」と呼ばれる「バローロ」は最後に残して、まずは「バルバレスコ」から。「バローロ」が「(イタリア)ワインの王」の称号を得ていることから、「バルバレスコ」は「イタリアワインの女王」と呼ばれることがあります。
バローロとバルバレスコの違いはまず、何といっても畑の場所が異なります。近くではあるのですが、「バルバレスコ」はバローロの北東、バルバレスコ、ネイヴェ、トレイゾの三村で栽培されたネッビオーロから造られています。
次に法定熟成期間の違いがあります。バルバレスコは樽熟成一年、瓶熟成一年の二年以上なのに対し、バローロは樽熟成二年、瓶熟成一年の三年以上でバローロの方が長い。それがバルバレスコの方が早飲みタイプと目され、また繊細さが持ち味なので王様に対して女王様と呼ばれる理由の一つであることに間違いありません。
バローロのような力強さと長命さはないもののその分、バローロ以上の繊細さと調和のとれた品質を備えています。また、モダニストのアンジェロ・ガイヤと伝統主義者のブルーノ・ジャコーザという名手の存在もあり、バローロとはまた別の魅力を備えたネッビオーロの可能性を探求する造り手を多く輩出しています。
今回紹介させていただく「ガルブレット」は1912年ソルド家によって創業の伝統製法を頑なに守る造り手。それはバルバレスコ村55%、ネイヴェ村35%、トレイゾ村10%とそれぞれの村の葡萄を用いていること、さらに大樽で一年熟成させることに表われています。その後、瓶熟一年を経て出荷されています。
透明感のある美しいルビー色、赤系ベリーにフローラルさも加わり、そこにスパイシーなネッビオーロならでは複雑さが加わった芳しい香り。大樽を用いることで過度な樽の影響がなく、果実味を生かしながら繊細で滑らかなタンニンが心地よい。スムースな飲み口で充実した味わいが楽しめます。
バルバレスコの典型ともいえる銘酒をこの機会に是非。
略歴
関 修(せき・おさむ)
一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。
著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。
関修FACE BOOOK
関修公式HP
