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『美食通信』第1回 オールマイティーだが奥深いシャンパーニュ

『美食通信』第1回 オールマイティーだが奥深いシャンパーニュ

『美食通信』第1回「オールマイティーだが奥深いシャンパーニュ」あけましておめでとうございます。そしていよいよ、この『美食通信』も本格的にスタートです。どうか、よろしくお願いします。さて、おめでたい席でのお酒といったら、やっぱりシャンパーニュですよね。フルートグラスの底からツゥーっと一直線に立ち昇る泡、口の中で弾ける炭酸の爽快さ。どれも心華やぐものです。宴席の乾杯だけでなく、フレンチを食べに出かけた際もアペリティフ、つまり、駆け付け一杯、いや、スターターのようなポジションに思われがちなシャンパーニュですが、マナー的には、オードブルからデセールまですべての料理にマリアージュ出来る万能のワインなのです。そう、食前酒から食後酒までそれ一つで通すことが可能ですので、お酒があまり得意でない方は二人でシャンパーニュ一本オーダーすれば、最初から最後まで何も憂うことなく食事を楽しむことが出来ます。デートの際など、やはり二人だけのブテイユ(ボトル)のワインを分かち合うのがお洒落ではないでしょうか。また、通常のワイン(スティルワイン)の場合も抜栓から刻一刻と味が変化して行くのを楽しむのが通ですので、本来ワインはブテイユで注文されるのがスマートです。通常のワインと言ってしまいました。そう、シャンパーニュはスティルワインとは異なります。何処がと尋ねられ、発泡性と答えるのは正解ですがナイーヴな感じ、白・ロゼはあるが赤シャンパーニュは無いと答えるのはまずまず。期待される答えはノン・ヴィンテージが基本ということです。NVと書き、通は「ノンヴィン」と言います。スティルワインでヴィンテージが無いのは通常、最も安価なテーブルワインくらいで、千円以下で買えるチリワインにもヴィンテージは入っています。とりわけ銘酒にとってヴィンテージは重要で、年ごとにワインの出来不出来があり、価格も大きく変わってくるのです。それに対し、シャンパーニュはいつ飲んでも同じ味であることが基本になります。そこで、違った年のワインをブレンドして味を調整してから、瓶の中で二次発酵させ、発泡酒に仕上げるのです。どの作り手の味が好きかという選択を楽しむのです。例えば、「(ヴーヴ)クリコはちょっと酸が強いので、自分はボランジェが好き」とか。この作り手、ボルドーでは「シャトー」、ブルゴーニュでは「ドメーヌ」、シャンパーニュでは「メゾン」と呼ばれるのが通例です。そして、贔屓のメゾンを見つけ、特別な日にはワンランク上のヴィンテージの入ったシャンパーニュを開けるのが通。ボランジェであれば、「グランダネ(偉大なる年の意)」以上の銘酒になります。では、何故シャンパーニュ地方は発泡酒を造ることになったのでしょう。それは使われている葡萄を見ればわかります。シャンパーニュは、シャルドネ、ピノ・ムニエ、ピノ・ノワールの三種の葡萄をブレンドして造るのが基本です。そう、シャルドネ、ピノ・ノワールがブルゴーニュと被ってしまっているのです。スティルワインではブルゴーニュに敵わないので、発泡酒に活路を見出した。その元祖がドン・ペリニヨン師(伝説)という訳です。そして、三種のブレンドを軸として、シャルドネだけで作られた酸の効いた爽やかな「ブラン・ド・ブラン(白の白)」、ピノ・ムニエと(あるいは)ピノ・ノワールの赤葡萄だけで造られたコクのある「ブラン・ド・ノワール(黒の白)」というヴァリエーションがあります。果皮を取ってしまうので赤葡萄(黒)で造っても透明なシャンパーニュ(白)が出来るという訳です。また、実は本来、シャンパーニュでは八種類の葡萄を使うことが許可されていて、この八種類全部を用いて伝統的なシャンパーニュを造る「L・オブリ・フィス」が人気を博し、上記三種以外の葡萄を用いる造り手も増えてきていることを記しておきましょう。では、最後にシャンパーニュの奥深い世界を垣間見させてくれる尺度をお教えしましょう。それは「糖度」です。瓶の中で発泡酒となったシャンパーニュは最後に「デゴルジュマン」と呼ばれるオリ抜きをし、目減りした分に「ドザージュ」と呼ばれる糖分添加をして最終的な味の調整を行います。通常、供される「ブリュット」は辛口という意味ですが、それでも一リットル当たり15g以下の補糖が為されています。昨今は辛口が流行のようで、まったく補糖していない「ブリュット・ナチュール(自然のままの辛口、ノンドゼ、ブリュット・ゼロなどとも呼ばれます)」は3g以下。そこから、50g以上という一番甘い「ドゥー」まで七段階の規定があります。シャンパーニュ愛好家ともなるとメゾンの違いはもとより、この「甘さ」の違いがわかることが必須のようです。とりわけ、珍しくなってしまった「甘口」のシャンパーニュに魅了されるようで。筆者の如き、赤ワイン党には近づきがたい境地に達していらっしゃる。かくも深淵なるシャンパーニュ。ワインの世界は底知れない魅力にあふれています。今月のお薦めワイン  新年を祝うシャンパーニュ「プルミエクリュ キュヴェ ブラン・ド・ノワール NV ドメーヌ・ゴネ・メドヴィル」 6900円(税抜)ブルゴーニュの赤好きの筆者はやはり、シャンパーニュもピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールを選んでしまいます。通常の三種混合のもの(このメゾンでは「トラディション」と命名)より色は黄色がかり、味もシャルドネの酸がない分、コクを感じることでしょう。飲みごたえのある仕上がりです。今回選んだのは、メニル・シュール・オジェの有名メゾン、フィリップ・ゴネ家の御子息とボルドーはソーテルヌのこちらも有名シャトー、シャトー・ジレットのメドヴィル家の御令嬢が結婚され、2000年にヴァレ・ド・ラ・マルヌのビスイユ村に設立したメゾンのもの。もちろん、レコルタン・マニピュラン(RM、自分の畑で栽培した葡萄のみでシャンパンを造るメゾン)。実家のフィリップ・ゴネはブラン・ド・ブランで有名ですが、こちらはどちらかと言うとピノ・ノワールに力を入れている様子。ブラン・ド・ブランはグランクリュのみ。ブラン・ド・ノワールはプルミエクリュ、グランクリュ両方で造っています。最先端の醸造施設で造られるモダンなシャンパーニュを手頃な価格で楽しめる逸品。購入先はこちらのAVICOオンラインストアまで略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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『美食通信』第0回 初めてのボジョレ・ヌーヴォー

『美食通信』第0回 初めてのボジョレ・ヌーヴォー

みなさまこんにちは、この度The Cloakroom Tokyoのメールマガジンをリニューアルいたします。これまでの新商品の入荷情報やイベントのお知らせに加えて、豪華な連載陣による食やお酒についてコラムなど、洋服やファッションをより一層楽しむための話題を盛り沢山でお届けいたします。今回はリニューアル準備号として関修先生による『美食通信』連載第0回をお届けしいたます。ビシッとお洒落して出かけたい場所と言えばやっぱり素敵なレストラン。素敵なロケーションで美味しいワインと料理の数々、ご一緒するのはご家族、ご友人、恋人などなど楽しい風景が思い浮かびます。エレガントなスーツでタイドアップして大人に楽しむ、The Cloakroomとしてはこんな時間の過ごし方をご提案したいと考えています。関先生の連載ではその豊富なご経験や鋭いご考察がとても為になるお話や、毎月のおすすめのワイン情報や美味しいレストランをご紹介いただきます。レストランごとの格式に合わせた服装の参考になるドレスアップ指数も楽しみにしてください。関先生との出会いはここでご紹介すると長くなってしまうので別の機会にしますが、私のような者にも色々と非常に良くしてくださり大変お世話になっております。「イケメン」「ホスト」「ジャニーズ」などその豊富な研究領域には圧倒されるばかりです。きっとその辺りもそのうち話題にしていただけるのではないでしょうか。2021年には皆様と一緒にワインやお食事を楽しむイベントを企画したいと考えています。今回はプレということで第0回、第1回は年末か年始ごろの予定です。是非お楽しみください。服屋のメルマガとしては異例の文字数かと思いますが内容の面白さには自信があります。お時間のある際にお付き合いくださいませ。The Cloakroom Tokyo島田雅史『美食通信』第0回「初めてのボジョレ・ヌーヴォー」十一月のワインと言えば、ボジョレ・ヌーヴォー。毎年、第三木曜日の午前零時に解禁となります。今年は十九日。今や、スーパーやドンキで売られるプラスチックボトルの廉価なものから自然派の巨匠が創り出すプレミアワインまで種類も価格も様々でどれを選んで良いか困ってしまわれる方も多いかと思います。 筆者は初めてボジョレ・ヌーヴォーを飲んだ時のことを鮮明に覚えています。それは、一九八〇年、大学に入学と同時にフランス料理を食べ歩き始めてから数年のこと。行きつけの店を見つけ、その店でのことでした。時差の関係でフランス本国はもとより先進国でどこよりも早く解禁になるということで、八〇年代後半のバブル期に成田空港までヌーヴォー列車が出て、空港でまさに狂宴が催される前。解禁日が現在のルールになったのが八四年とのことですので、その頃だと思われます。日本に初めて空輸されたのが一九七六年と言われていますのでそれでも十年近く経っていたもののそれまで一度もお目にかかったことはなかったのです。つまり、その当時、ヌーヴォーはまだレストランでしかお目にかかれない貴重なワインだったのです。 フレンチと言えば、ホテルや会館系が主流、街場でもマキシム、レカンなどグランメゾンが中心の時代でした。そんな中、代官山の外れにフレンチなのに何故か「ヴィスコンティ」という名のこじゃれたレストランがありました。平幹二朗氏や小川眞由美氏といった名優が常連で、当時のグルメ番組の代表『料理天国』(TBS)でも紹介されました。父の援助もあって顧客となり、若き廣田亮シェフにも可愛がっていただきました。そして、秋も深まったある日、父と銀行の部下の女性たちとヴィスコンティを訪れたときのこと。シェフがとっておきのワインが手に入ったといって恭しく持ってきたのがボジョレ・ヌーヴォーだったのです。エールフランスのシールの貼られたそのブテイユ(ボトル)はもちろん、ジョルジュ・デュブッフのものでした。ヌーヴォーを世界に広めたのはひとえにデュブッフの功績と言えましょう。そして、それは彼の盟友である「ヌーベルキュイジーヌの皇帝」ポール・ボキューズ氏の協力あってのことでした。ボジョレーはブルゴーニュワインの一つに分類されます。ブルゴーニュワインは、シャブリを有する飛び地のヨンヌ県と北はディジョンから南はリヨンまでのソーヌ河沿いの地域で作られています。その南端、リヨンのすぐ北に位置するのがボジョレー。ボキューズ氏のレストランもリヨンの北10kmほどのコロンジュ=オ=モンドールにあります。この地域の赤ワインは他のピノ・ノワール種と違いガメイという葡萄から作られており、製法も異なっています。ヌーヴォーのみならず、通常のボジョレーも早飲みのワインなのです。これが噂に聞くボジョレ・ヌーヴォーか。フランス料理を学ぶのにまだ精一杯で、ワインに開眼するにはさらに十年ほど時間を要した自分にとって、エールフランスのシール、空輸という威厳は重々しく、六千円という価格も立派でただただ有難く頂戴した次第です。ただし、それ以降、飲んだ記憶もなく、その後ボルドーにはまってしまった筆者にとって、最も遠い存在の赤ワインとなりました。しかし、当時の輸入ワインのほとんどは熱劣化などで傷んでいたのを知る今となっては、あのボジョレ・ヌーヴォーは皮肉にも良好な状態で飲むことの出来た貴重な一品であったのも事実です。昨今のヌーヴォーの多くは早い時期にリーファーコンテナに積まれ船便で日本へと送られてきます。空輸はコストもかかりますし、これだけ多くの方が飲まれるようになれば、空輸だけでは運びきれません。しかし、これも皮肉なことに、このコロナ禍のせいで、今年は乗客の代わりにヌーヴォーを乗せた飛行機が多く来日しているそうです。今も航空会社のシールが恭しく貼られているかは知りませんが、皆さんのお飲みになられるヌーヴォーが何に乗ってこの遠い極東の地までやって来たのか、思いを馳せるのも一興かと思います。最後になりますが、私、関修と申します。大学教員で専門は現代フランス思想、文化論。フランス料理に魅せられて四十年、フランスワイン愛好家歴も四半世紀を超えました。(一社)リーファーワイン協会理事も務めさせていただいております。昨年、敬愛するフランスの美食批評家ジル・ピュドロフスキの『ピュドロさん、美食評論家はいったい何の役に立つんですか?』の翻訳を上梓しました。日本のピュドロになるべく、精進の日々。次回より、本格的に連載を始めさせていただく所存です。どうか、よろしくお付き合いください。今月のお薦めワイン  ボジョレ・ヌーヴォー 「ボジョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 2020年 ドメーヌ・メジア」 3980円(税抜)次回の本格的な開始と共に毎回、「今月のお薦めワイン」をご紹介し、購入していただけるよう調整中です。しかし、ここに来て、「明日、羽田にワインが着きます」と連絡をくれたインポーターが。実は高校の同級生で、某フランスの航空会社に勤務していました。その航空会社が顧客にプレゼントする非売品のヌーヴォーがこのメジアのもので、彼はカーゴの責任者としてドメーヌとの窓口になっていました。で、ドメーヌから日本でワインを売って欲しいと頼まれ、独占販売契約権を取得し、退社して販売を開始した次第です。メジアはクリュ・ボジョレという村名ワインを名乗れる村の一つ、シルーブルを代表する作り手。クリュに数えられる村から生まれるヌーヴォーは格上のヴィラージュを名乗れるのです。当然、某フランスの航空会社の飛行機でやって来た、これまで限られた方しか飲むことの出来なかったヌーヴォーをぜひこの機会にお試しあれ。購入先はメジアジャポン エルワインブティックまで。なお、写真ですがエチケットにヌーヴォーの記載はなく、裏のラベルにヌーヴォーとヴィンテージが書かれています。ご了承下さい。略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修公式HP

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