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第四十四回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ

第四十四回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ

 4月の『銀座の仕立屋落語会』には、林家たま平さんが登場します。  林家正蔵さんの息子であり弟子として、古典落語に真正面から向き合いながら、持ち前の明るさと軽やかなテンポで客席をぐっと引き寄せるたま平さん。生き生きとした人物描写と、物語の情景がふわっと立ち上がる語り口は、春の空気によく似合います。  新年度のはじまりに、少し肩の力を抜いて笑えるひととき。 春の銀座で、たま平さんの朗らかな高座を、ぜひお楽しみください。 第四十四回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ 日時:4月5日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:林家たま平 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで チケットぴあはこちら:http://ticket.pia.jp/pia/event.ds?eventCd=2606204   略歴: 林家たま平 1994年5月29日生まれ2013年4月、実の父でもある九代目林家正蔵に入門。2017年11月より二ツ目昇進。2019年放送のドラマ「ノーサイドゲーム」などドラマや映画などの出演多数。

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『美食通信』 第六十二回 「Vive le amateur!(愛好家、万歳!)』――平野レミ讃――」

『美食通信』 第六十二回 「Vive le amateur!(愛好家、万歳!)』――平野レミ讃――」

 松の内が開けてすぐの連休、NHKで筆者の大好きな平野レミ氏の特番が同日に二つも放送されました。朝に『平野レミの早わざレシピ!10周年感謝祭SP!』が、夜には『ファミリーヒストリー』での特集がありました。  録画しないと、と思いながらすっかり忘れてしまい、料理番組の方は見損ないましたが、『ファミリーヒストリー』の方はなんとかリアルタイムで観ることが出来ました。  平野レミ氏と言えば、「料理愛好家」と名乗っておられることは周知のことと思われます。例えば、栗原はるみ氏であれば「料理研究家」や「料理家」と言われており、その違いは何だろうと考えると案外難しい。というのも、なんだかんだと言いながらも上記のように平野氏はNHKで十年も料理番組を続けておられるのですから。  しかし、そんな平野氏が一九八五年NHKの『きょうの料理』に初めて出演された際、湯むきしたトマトを手でぐちゃぐちゃに握りつぶして料理し、驚くアナウンサーに「それでいいのよ、その方が美味しいんだから」とあの天真爛漫というか、すっとんきょうな声で応対したため、苦情が殺到したのは有名な話。今でこそ、それが平野氏のキャラクターとして定着し、「料理研究家」では思いつかない手法や形態の料理を次々とお茶の間に届けているというわけで、世相が変わったというか、まさに多様性の時代に相応しい「料理する人」なのかもしれません。  一方、平野レミという人を筆者が「料理愛好家」として認識するのは当たり前のことのように思われます。というのも、筆者は彼女の本職が「シャンソニエール(女性シャンソン歌手)」であることを知っているからです。というよりも、最初の認識は「平野威馬雄(いまお)氏の娘」というものでした。  筆者は子供の頃から本が好きで図書館の本を片っ端から読んでみたいと思ったくらいですが、今思えば小説や文学はあまり好きではなく、伝記やノンフィクションの本ばかり読んでいました。それでも本が好きといえば「文学少年」などと誤認し、中学生の頃には堀辰雄、立原道造などの『四季』派の人たちの作品を読み、そこから折口信夫の国文学研究に興味を抱き、国文学者になろうと思ったこともありました。  そんな中、『四季』派にはフランス文学の影響を受けている作家も多数いて、フランス文学者として平野威馬雄氏の名を知ったのです。当時はまだ存命で、何故か松戸に住んでおられた。筆者は中学二年生の時、船橋の社宅に引っ越してきて以来、結局千葉県民になってしまいましたから何だか親近感もあったのでしょう。また、「妖怪博士」でもあり、どうも外国人の血が流れていることも筆者の関心を引きました。  今回「ファミリーヒストリー」を観て、筆者は自身の無知を悔い改めることになりました。フランス文学者で娘はシャンソン歌手とくれば、威馬雄氏はフランス人の血が流れているのだろうと思っていたのです。ところがそうではなく、威馬雄氏の父はスコットランドの貴族の家系のアメリカ人というではありませんか。  NHKではそれは「ブイ」家であると言っていましたが、その訳語はちょっとどうかと思いました。というのも、その表記は「Bowie」で、日本ではすでに同じ綴りのイギリスの有名なロックシンガーを「デヴィッド・ボウイ」と呼んでおり、NHKもデヴィッド・ブイなどとは呼んでいないでしょう。ダブルスタンダードはいけません。視聴者の誰もが「Bowie」という綴りまで知っているわけではありませんから。  しかしながら、父ブイ氏にはフランス人の血も流れていたようで、ヴァイオリンを習いにパリ音楽院に留学したとテレビでは報じていました。ですので、フランス語も達者で他にも何か国語かを話されたようです。威馬雄氏にも子供の頃から数か国語を教えていたようです。  威馬雄氏はフランス語が必修のカトリック系の暁星中学に進み、そのフランス語の才能を早くから発揮したようですが、その容貌から差別を受け、いくつもの学校を渡り歩くことに。文学の仲間だけがそんな威馬雄氏と分け隔てなく付き合ってくれたようです。  戦後、占領時代に多数生まれ差別されていた混血児たちを救済支援する「レミの会」を立ち上げるなど、その器の大きさはレミ嬢にも受け継がれているのでしょう。  「レミ」とは父ブイ氏が威馬雄氏につけたあだ名で、フランスの作家マロの『家なき子』の主人公から取られたもの。威馬雄氏は自身のあだ名を娘の名前に選んだのでした。  その平野家の家庭料理として定番だったのが、件のトマトをグチャグチャにつぶしたものをオリーブオイルで炒め、しゃぶしゃぶ状の牛肉を加えて塩コショウで味付けし、バジルをちぎって散らした「肉トマ」です。  この料理はフランス料理ではないのは明白で、威馬雄氏の日本人の母親が父ブイ氏のために考案されたものかと思いきやそうではなく、スコットランドのブイ家に伝わる料理らしく、番組ではスコットランド在住のブイ家の子孫の方が同じ料理を作っておられるのが紹介されました。  ですので、筆者はレミ氏を威馬雄氏の娘としてシャンソニエールだったころから知っているのです。レミ氏は『週刊文春』の表紙絵で有名な和田誠氏と結婚し家庭に入りましたが、再び「料理愛好家」として登場したのです。また、威馬雄氏の希望でシャンソニエールとしての活動を続けることを和田氏も快諾されていたと番組では伝えていました。  レミ氏が初めての『きょうの料理』で紹介したのが「肉トマ」だったように、あくまで「愛好家」として初心を貫徹されているのは感服するばかりです。黒柳徹子氏は芸能関係者で最も裏表ない人物は平野レミ氏であると喝破されています。それは「愛好家」というその名に表われているのではないでしょうか。  例えば、ワインに関してもワインの点数化で有名になったロバート・パーカー・Jrもまた弁護士で愛好家が昂じてワイン評論家に。日本でのワインの啓蒙に貢献した山本博氏もまた弁護士でした。  業界などへの忖度なしに正しく「評価」出来るのは「愛好家」という立場なのではないかと思われます。従って、「美食」にとって「愛好家」であることは常に心に刻むべきことではないでしょうか。その原点であるグリモ・ド・ラ・レニエールやブリヤ・サヴァランのことを思い起こせば、それは火を見るよりも明らかと言えるでしょう。   今月のお薦めワイン 「マルサネ――コート・ド・ニュイ最北の可能性の地――」 「マルサネ キュヴェ・マリー・ラゴノー 2023年」 シャルル・オードワン 9900円(税込)  このクールのフランスワインはブルゴーニュの赤ワイン、中でもコート・ド・ニュイの主要な村名(アペラシオン)を北から順に紹介させていただこうと思います。  ご存じのように、ブルゴーニュは広域で北はシャブリのある飛び地のヨンヌ県、南はリヨンのあるボジョレまで。その中でも偉大なワインを産するのがコート・ドール(黄金の丘)と呼ばれる地区で、それがさらに北側の赤ワインが主流の「コート・ド・ニュイ」と白ワインに見事なものがある南側の「コート・ド・ボーヌ」に分かれます。  コート・ド・ニュイにあるヴォーヌ=ロマネ村には、世界中のワインの頂点と呼ばれる「ロマネ・コンティ」の畑があることからも分かりますように、この地区の村(アペラシオン)のワインにはどれも飲むに値する個性が備わっています。それはボルドーワインにおけるメドックの格付けにおけるそれぞれの村(アペラシオン)に相当します。  今回紹介させていただく「マルサネ」はコート・ド・ニュイ最北の村。ブルゴーニュでは珍しいロゼワインの産地でもあり、1987年に認定された比較的新しいアペラシオン。そのせいか、ニュイで新たにワイン造りしようとの志を持つ若手の造り手が畑を手に入れ、ドメーヌを創設する例が多い。 例えば、現在ジュヴレ=シャンベルタンの名手として有名なフィリップ・シャルロパンも最初、マルサネからスタートしました。また、パタイユ兄弟はマルサネの名声の向上に寄与する優れた造り手として有名です。 今回選んだ造り手、シャルル・オードワンもその一つ。シャルル氏の子息、シリル氏が2000年ドメーヌに参画して以来、見違えるような進化を遂げたと言われています。2017年からは100%ビオディナミを実践。2021年にはエコセール認証取得。 この「キュヴェ・マリー・ラゴノー」は所有する五つの区画からのアッサンブラージュ。どの区画も70年以上の古樹の葡萄を使用しています。シリル氏が曾祖母の名を冠したこのドメーヌを象徴するキュヴェ。ピュアできめの細かいタンニンが心地よいと評されています。 パタイユの人気以来、ブルゴーニュワイン全体の高騰もあり、マルサネのワインも優れた造り手は一万円超えになってしまいました。オードワンの「マルサネ」もこのキュヴェが最も手頃な価格になります。過去のヴィンテージはすでに入手困難になっているようですので、この機会に是非。...

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第四十三回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』開催のお知らせ

第四十三回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』開催のお知らせ

 3月の『銀座の仕立屋落語会』には、春風亭一之輔師匠のお弟子さんとしても知られる春風亭与いちさんが登場します。  端正な語り口とあたたかな人柄で、じっくりと物語を紡ぐ与いちさん。古典落語に真摯に向き合いながらも、ふとしたひと言に現代の感覚がにじむ高座は、聴き終えたあとに静かな余韻を残します。  寒さの合間に、少しずつ春の気配を感じ始める3月。仕立て屋の空間で、心を整えるようなひとときを、ぜひご一緒に。 第四十三回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』開催のお知らせ 日時:3月15日(日曜日)  12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:春風亭与いち 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ ぴあでチケットをご購入の方はこちらから。 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)

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『美食通信』 第六十一回 「郊外の廃校跡のお洒落なカフェ――大田原市『ヒカリノカフェ 蜂巣小珈琲店』――」

『美食通信』 第六十一回 「郊外の廃校跡のお洒落なカフェ――大田原市『ヒカリノカフェ 蜂巣小珈琲店』――」

 筆者の旅先での楽しみの一つにカフェ巡りがあります。地方のフレンチでの食後の飲み物にはエスプレッソがない場合が多く、濃い珈琲が好きな筆者には畢竟、エスプレッソが飲める店を探すことになります。  この『美食通信』でも夏の飲み物「エスプレッソ・トニック」を取り上げた際、上諏訪や前橋のカフェで飲む機会を得たと報告したことがありました。これらは地方都市の街中に点在するエスプレッソの飲める店でした。その最たるものとして、筆者の亡き両親の故郷静岡市にある不思議なエスプレッソ専門店「タンデム・ジャイブ」も紹介させていただきました。  しかし、カフェは街中だけにある訳ではありません。ここ数年、毎年出かけている栃木県大田原市では市内から車で片道一時間以内で出かけられる郊外のカフェに行くのを楽しみにしております。大田原から一時間というとちょうど那須高原にまでは行くことが出来ます。ですので、「ペニーレイン」本店で「ブルーベリーブレッド」などお土産を買うことが出来るのですがその場合、お茶を飲む時間がありません。しかも、那須高原は出かける週末は何処も混んでいてカフェを探しているうちに時間が経ってしまいます。有名な黒磯の「SHOZO」は出かけるにはちょうど良いのですがやはり混んでいて、待つのを覚悟しなくてはなりません。  那須の場合、大田原から鉄道を超えていくことになる那須高原側ではなく、同じ那須町でも大田原側ですと林の中にお洒落なカフェを見つけることが出来ます。例えば、「フランクリンズカフェ」などはくねくねとした細い農道を通り、鬱蒼とした森の中に入るとそこは道路が舗装されておらず、砂利道でガタガタと揺られてしばらく行くとエスプレッソも美味しい小洒落た建物が現われるといった趣向です。  さて、昨年に続き今回も大田原の旧繁華街にあるフレンチ「長谷部料理店」で素晴らしいランチを食した後、カフェを探すことに。というのも、「長谷部料理店」の料理は東京の一流店と遜色のない出来で感心するのですが、食後にエスプレッソがない。筆者としては納得の行かない数少ない欠点の一つです。まあ、昨年に続き土曜日のランチで客が筆者たち一組だけという様子を見れば、エスプレッソマシンを置くだけの余裕がないのも致し方ないのかもしれません。こう言っては失礼ですが、いつまで店が続けられるかちょっと心配です。さすがに来年は近くに宿をとって、ディナーを食してみようという話になりました。  さて、今年は何処にエスプレッソを飲みに行こうかということになり、故郷の大田原市在住の筆者の先輩から、合併した隣町に何軒かカフェがあるから行ってみたらどうかと提案がありました。調べるとそれは二○○五年に編入された黒羽町のことでした。実は彼女もその町には出かけたことがないというのです。車では二十分ほどの場所なのに意外でした。車がないと生活の出来ない大田原で、もちろん彼女も運転しますし。 しかし、出かけてみると納得しました。元々のどかな雰囲気の街なのですが、車で少し移動すると完全な田園風景に。そう言えば、前述の那須町の「フランクリンズカフェ」までも車で三十分くらいですので。ともかくも古民家カフェがあるというのでナビを頼りに行くと看板が道に出ていたのですが、肝心の古民家が見当たらず。普通の家と家の間に舗装されていないその家の裏へ行くスペースがあり、まさかと思いながらも行ってみると道に面した家の真裏に古民家が。営業日のはずなのに臨時休業の張り紙が。母屋から店主とおぼしき老人が出てきて、申し訳なさそうに怪我をしてしまい急遽休むことにした、と。 仕方ないので、どうしようかというと、先輩が廃校になった小学校跡のカフェがこの近くにあるはずだと。これまたナビで調べると確かにほんの数分のところではありませんか。彼女が言うには、「ヒカリノカフェ」という店で市内に本店があり、市庁舎にも支店があるという。ともかくも出かけてみると筆者の予想した雰囲気とはまったく異なった趣の素敵な光景が。 つい最近、テレビの何かの旅番組で地方の小学校跡をアトリエとカフェに改装したものを紹介するのを見ました。田舎にしては結構大きな三階建ての円形の鉄筋の建物で、見るからに箱ものの公共建築というそれはそれでユニークなものでした。 ところがこの「蜂巣小学校」は校門を入ってすぐの校庭こそ小学校に相応しい広さを誇っていますが、その奥にある校舎は木造の平屋で規模的には幼稚園くらいのこじんまりしたもの。調べると昭和七年に建てられ、平成二十四年に閉校したという。校庭に面した部分がガラス張りに改装され、真ん中にカフェの入り口が。この日は天気が良く、なんとものどかで他に客は見当たらない。しかし、校庭では高校生か大学生たちが掃除をしたり、懐かしいラインマーカーで校庭に石灰の白い線を引いていたりする。校庭の奥にバスが一台停まっていて、先輩が言うにはボランティアの学生たちではないか、と。確かに、向かって左側のカフェでなさそうなスペースでは学生たちがクリスマスの飾りつけをしていました。 このご時世、何処へ行っても人人人。ガラス越しに広々とした校庭で若者たちが戯れているのを眺めていると、何か別世界にいるようで筆者は大変気に入りました。もちろん、カフェも。焙煎機、エスプレッソマシンなど珈琲店として本格的なだけでなく、ジェラートなどスイーツも充実していて、軽食も取れる。註文を取りに来た女性から障碍者の雇用を行なっているのが分かりました。先輩からもその説明が。母体がキリスト教系の福祉施設を展開している社会法人。運営者は先輩の知り合いとのこと。市内のカフェには行ったことがある、と。 エスプレッソも美味しく、ゆったりした時間を過ごすことが出来ました。広い店内はトイレなど学校の跡をほぼそのまま使っている部分もあり、それもまた一興。来年、大田原に出かける際もきっと立ち寄ることになるでしょう。 「フランクリンズカフェ」もそうでしたが、車での小旅行とでも申しますか、地方では市内をちょっと離れるだけで心癒される場所に出会えることに気付いた次第です。 今月のお薦めワイン 「ロンバルディアのピノ・ネロ――ブラン・ド・ノワールで楽しむ――」 「ブラン・ド・ノワール ピノ・ネロ ブリュット NV DOCG オルトレポー・パヴェーゼ・メトード・クラシコ」 イジンバルダ 8932円(税込)  『美食通信』も六年目。過去五年間でフランス、イタリアワインの基本はシステマティックに学べるようワイン選びしてきたと自負しております。  そこで六年目は逆にテーマを絞ってワインを選んでみたいと思います。そこでフランスはブルゴーニュ、それもコート・ド・ニュイの赤ワイン、イタリアはピエモンテ、それもネッビオーロ主体のワインを飲み比べてみようと思います。 しかし例年、初回はシャンパーニュで新年を祝ってまいりました。そこで今年はイタリアのスプマンテで祝うことに。すぐに思い浮かぶのはロンバルディア州でシャンパーニュと同じブドウ品種、方式で造られている「フランチャコルタ」ですが、ここはちょっと捻りをきかして、同じロンバルディア州でもDOCGオルトレポー・パヴェーゼで造られるブラン・ド・ノワール、ピノ・ネロ(ノワール)100%のブリュットを紹介させていただこうと思います。  オルトレポー・パヴェーゼのワインは基本DOCなのですが、2007年、メトード・クラシコだけDOCGに昇格しています。メトード・クラシコとはシャンパーニュ方式即ち瓶内二次発酵方式を指します。クラシコというだけに二十世紀初頭にはこの地でピノ・ネロを用いてシャンパーニュ方式でスプマンテが造られており、その歴史はフランチャコルタより古い。しかも、イタリアのピノ・ネロの75%はオルトレポー・パヴェーゼで造られているという発言があるほど、この地はピノ・ネロに向いているのです。  造り手のイジンバルダの名称は十七世紀終盤以降この地でのワイン造りのパイオニアとなったイジンバルディ侯爵家に由来します。その伝統を生かしつつ、最新の技術も積極的に取り入れ、すべての作業を人の手で行なうことで、葡萄の特質を引き出し、丁寧で繊細なワイン造りを実践していると言われています。  このブラン・ド・ノワールは瓶内熟成36か月とシャンパーニュと遜色ない造り。ピノ・ネロ100%だけに色は黄金色。味わいは力強さが感じられるものの、エレガントさにも欠けていません。  フランチャコルタよりさらにイタリアワイン上級者のチョイスと思われる、このブラン・ド・ノワールで新年を祝ってはいかがでしょう。この機会に是非お試しあれ。 略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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年末年始休業のお知らせ

平素より The Cloakroom Tokyo をご利用いただき、誠にありがとうございます。 誠に勝手ながら、下記期間を年末年始休業とさせていただきます。 休業期間12月31日(水)〜 新年1月6日(火) 期間中にいただいたお問い合わせにつきましては、1月7日(水)以降、順次ご対応いたします。 本年も多くの皆さまに支えられ、心より感謝申し上げます。どうぞ良い年末年始をお過ごしください。 The Cloakroom Tokyo

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第四十二回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ

第四十二回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ

 2月の『銀座の仕立屋落語会』には、桃月庵黒酒さんをお迎えします。  元漫才師という異色の経歴を持ち、桃月庵白酒師匠のもとで研鑽を積んできた黒酒さん。落語のみならず、演劇や音楽の舞台経験を活かした高座は、言葉の奥行きと独特の「間」が印象的で、静かに、しかし確かに心へと届きます。  外はまだ冷え込みの残る2月。仕立て屋ならではの落ち着いた空間で、じんわりと沁みる一席を、どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。 第四十二回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ 日時:2月8日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:桃月庵黒酒 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込) 申し込み、お問い合わせはinfo@thecloakroom.jp まで  ぴあでチケットをご購入の方はこちらから。 略歴桃月庵 黒酒 1987年年4月13日生まれ2017(平成29)年8月桃月庵白酒に入門。2019(平成31)年1月21日前座となる 前座名「あられ」。2022(令和4)年11月1日二ツ目昇進 「黒酒」と改名。

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『美食通信』 第六十回 「燃える氷山〈べイクド・アラスカ〉――はたしてその正体は?――」

『美食通信』 第六十回 「燃える氷山〈べイクド・アラスカ〉――はたしてその正体は?――」

 先日、明治大学の上司の教授と共通の昔の教え子五名で恵比寿のグランメゾン「ル・コック」で会食がありました。教授が顧客のフレンチレストラン。二〇〇八年、『ミシュラン』が東京に上陸した際に一つ星を獲得。その後も長らく一つ星を維持していました。教え子は教授のゼミのOBで会計士、富士フイルム、そして講談社と皆、エリートたちでした。  会計士と講談社勤務のOBは関西出身で、ゴルフの話に。筆者も実は小学校五年生の時、銀行員だった父が神戸に転勤になりゴルフを始めたのでした。当時のサラリーマンは接待ゴルフに接待麻雀など何かとお付き合いが忙しく、父も週末の一日はゴルフの練習場に出かけていました。筆者はそれに付いていき、面白くなってゴルフに熱中します。一年もしないでコースに出られるようになり、夏休みや冬休みには必ずコースに連れて行ってもらうように。  で、講談社君はゴルフがお好きなようで関西の名門コースをまわってみたいという。どの辺りと聞くと、広野、芦屋、茨木などの名が挙がりました。実は筆者、小学校六年生の時、芦屋カンツリークラブでプレーしたことがあったのです。父の勤める銀行が会員権を所有しており、それを借りて行員はプレーできたのです。一九五二年開場という老舗で距離は短いもののアップダウンが激しく、関西のゴルフ場らしい。筆者がまわった時、前の組に日本の女子プロゴルファー一期生の佐々木マサ子プロがラウンドされており、感激したのをよく覚えています。  ゴルフ場の楽しみの一つはクラブハウスで食する昼食。芦屋カンツリーに入っていたのは一九二八年、大阪の北浜で創業した西洋料理店「アラスカ」でした。「アラスカ」と言えば、のちに大学生になってフランス料理に目覚めた筆者にとって憧れの名店の一つとして記憶に残るのですが、小学生の自分には名前だけは聞いたことのあるくらいの店でした。 普通ゴルフ場でのランチと言えば、すぐ食べられて価格も安いカレーライスが定番なのですが、半世紀以上前のおぼろげな記憶ではカレーを食べたのではなく、ハヤシライスを食したのではないか、と。この度、HPを検索してみると今もクラブハウスのレストランは「アラスカ」で、メニュにはカレーもありましたが、ハヤシライスも載っていました。その時食べたハヤシライスと思われるものの記憶は美味しいというよりえも言われぬ不思議な食べ物といったもので今も鮮明に覚えています。 さて、大学に入りフランス料理を食べ歩き始めた一九八〇年代初め、東京の「アラスカ」と言えば、有楽町駅前の朝日新聞社ビルの最上階にあるレストランでした。今は築地の朝日新聞社の二階に移転して営業しています。現在、本店は中之島フェスティバルタワーにあり、東京では築地の他に内幸町の日本プレスセンタービルに一九七六年開業の支店があります。ゴルフ場での営業も関西、関東で十店舗ほど。  当時のフランス料理と言えば、まずはホテル、それから會舘系、さらに何々軒といった老舗の洋食店が中心で、「アラスカ」も老舗の高級洋食店の代表格といった位置づけでした。 本格的なフレンチレストランは銀座の「マキシム」と「レカン」、さらに「ロオジェ」くらいだったのではないでしょうか。その「ロオジェ」でさえ、どちらかというと同じビルの階下の「資生堂パーラー」の高級版といった趣でした。 ですので、「アラスカ」は筆者の憧れのレストランの一つでした。小学生の時、芦屋カンツリーで食したことのあるレストランでしたし。そして、何といっても「アラスカ」と言えば、その店名がついた「デザート」、「べイクド・アラスカ」で有名だったのです。筆者の記憶では枕詞が「燃える氷山」と記憶しているのですが、現在のHPでは「炎のデザート」となっています。「炎のデザート」は何だか凡庸で、正確さに欠ける。例えば、「クレープシュゼット」だって「炎のデザート」ですので。やはり、「アラスカ」なのだから「氷山」がいい。しかもそれが「燃えてしまう」のだから魔訶不思議ではありませんか。 しかし、実はこの「デザート」。「アラスカ」のオリジナルではありません。れっきとしたフランス料理の「デセール」で、その名を「オムレット・ノルヴェジエンヌ」、「ノルウェー風オムレツ」というのです。シロップとリキュールを染み込ませたビスキュイやジェノワーズと言ったスポンジ系の土台に「プラリネ」のアイスクリームをこんもりと乗せ、それをメレンゲで覆って冷やし固めます。サーヴィスする直前にまずバーナーでメレンゲに焼き色をつける。そして、ゲリドンサーヴィスで客の前でフランベをして、切り分け供するといった手の込んだもの。ですので、近年はめっきり見かけなくなってしまいました。 筆者は実に見事な「オムレット・ノルヴェジエンヌ」を食したことがあります。それはやはり一九八〇年代の初め、帝国ホテルのメインダイニング「フォンテンブロー」でのことでした。当時のフランス料理と言えば、村上信夫シェフ率いる帝国ホテルの「フォンテンブロー」と小野正吉シェフ率いるホテル・オークラの「ベル・エポック」がツートップ。  両シェフともNHKの『きょうの料理』に出演され、日本のフランス料理の普及に貢献されました。家庭で作れるフランス料理というか洋食を紹介されたいつも笑顔のふくよかな村上シェフと細身で厳格な面持ちの小野シェフは対照的。小野シェフは若きロビュション、パコーなどを日本に招き、『きょうの料理』で紹介。ロビュションとは番組で対談されています。両者それぞれ自身のキャラクターに相応しいやり方でフランス料理を紹介されたのでした。  まだひよっこだった筆者には親しみやすい村上シェフがお気に入りで、村上シェフじきじきにお出ましになられる「村上信夫ガストロノミック・ディナーの夕べ」なるフェアにこともあろうか一人で乗り込んだのでした。今では珍しい本当のフルコースで肉料理の後に「焼き物」としてさらにもう一皿供されるもの。 これは本来主人が客のために振舞う料理で、肉の塊などを焼いて、主人自らが切り分けて供することで「ホスト」としての役を象徴的に示すものでした。ちなみにこのディナーの「焼き物」は「子羊のマリアカラス」でパイ包み焼きの子羊を村上シェフ自らがテーブルを回って切り分け、サーヴィスして下さるという趣向。一人若造が座るテーブルにも村上シェフは来られ、皿をサーヴィスされながら「今日の料理はいかがでしたか?」と声をかけて下さり、筆者は感激したのを昨日のことのように覚えております。 その興奮を静めてくれたのが、いや、ますますフランス料理への関心をめらめらと燃え上がらせることになったのが、まさに暖かくて冷たい炎のデセール「オムレット・ノルヴェジエンヌ」だったのです。そのプラリネアイスクリームの美味だったこと。このデセールのグラスはやはりプラリネに限ると確信した次第。 時は流れたものの、「アラスカ」の「べイクド・アラスカ」は今も健在のよう。久しぶりに「燃える氷山」を食しに出かけてみたくなったのでした。 今月のお薦めワイン 「コート・ド・ボーヌの中庸の美―ACボーヌの赤を堪能する――」 「ボーヌ・プルミエクリュ 『ブレッサンド』 2020年 ACボーヌ・プルミエクリュ」アルベール・モロ 10340円(税込)    このクール最後はブルゴーニュ。コート・ドールの南半分、コート・ド・ボーヌの赤を紹介させていただきます。ニュイが赤中心なのに対し、ボーヌは赤と白が半々といったところで、しかも白に「モンラッシェ」や「ムルソー」といった銘酒が多いのが特徴。  赤はグランクリュが「コルトン」だけで、赤ワインだけを産出するアペラシオンは「ヴォルネ」と「ポマール」の二つといった具合。「ヴォルネ」がエレガントで芳しいしなやか系なのに対し、「ポマール」は野趣味にあふれ、タンニックと対照的。ただし、価格的にはニュイの有名どころのアペラシオンと変わりませんので、リストから選ぶとき、筆者などどうしてもニュイの方を選んでしまいがちです。  ボーヌでお財布に優しいのはなんといっても以前最南端だった「サントネ」。さらに最近注目されているのが、1988年に新たにアペラシオンに認定され最南端となった「マランジュ」。ニュイにおける最北端の「マルサネ」が1987年に認定され、若手の造り手がその才能を発揮する格好の場所となっているのとパラレルに、「マランジュ」も例えば、バシュレ=モノ兄弟が「マルサネ」におけるパタイユ兄弟のような活躍を見せています。  しかし、筆者が皆様にお勧めしたいのはAC「ボーヌ」のワインです。「ヴォルネ」と「ポマール」のまさに中庸を行くバランスの良い品格のあるワインが特徴。さすが、ブルゴーニュのネゴシアンの中心地を有するアペラシオンだけあります。  今回はその中でも42もあるプルミエクリュの畑の中で「グレーヴ」、「マルコネ」と並ぶ最上位の畑と言われる「ブレッサンド」を紹介させていただきます。「上質で繊細、複雑でエレガント、気品があって長熟タイプのワインが産み出される」と評されている畑です。  造り手はアルベール・モロ。1820年、ネゴシアンとして創設。1890年にドメーヌ部門も併設。プルミエクリュに七つの畑を所有。1980年代からはドメーヌに特化していた老舗の造り手。2023年に所有者が変わり、新たなスタッフはこれまでの伝統を引き継ぎつつ、さらなる進化へとチャレンジして行くとのこと。 この2020年ヴィンテージはモロ一族の集大成のようなワインで、今後は造りが変わるのでこの機会に購入されることをお薦めします。今飲んでも美味しいでしょうし、もっと寝かせることも可能なのが「ブレッサンド」の魅力です。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで 略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP...

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『美食通信』 第五十九回   「講師控室でのティーパーティー――お菓子交換会の楽しみ――」

『美食通信』 第五十九回  「講師控室でのティーパーティー――お菓子交換会の楽しみ――」

 役者に「大部屋俳優」という名称があります。脇役、しかもその他大勢の役しか回ってこない売れない俳優のことを意味します。元々は歌舞伎において、こうした役者には個別の楽屋が与えられず、一つの大きな部屋を共用していたことからこの名前がついたと言われています。  現在俳優さんたちがどのような待遇なのか筆者は知る由もありませんが、大学の非常勤講師はまさに現代の「大部屋俳優」と言えます。専任教員は各自研究室を持っていますが、非常勤講師はまさに一つの大部屋に押し込まれています。  筆者は助手時代こそ一応研究室をあてがわれていましたが、その後は非常勤生活でこのまま定年になってしまいそうですので、まさしく一生涯「大部屋役者」で終わりそうです。 現在数校の大学・専門学校で教えていますが、「講師控室」と呼ばれるこの「大部屋」たるもの、なかなか悲惨です。ある学校はなんと地下一階にあります。専任教員の研究室は最上階に。世界的に評価された韓国映画に『パラサイト 半地下の家族』(ボン・ジュノ監督)があり、半地下物件に住む低所得者が描かれていますがそれ以下です。また、ある学校は改装中だったとはいえ、物置の一角だったことがあります。リニューアル後の現在も会議室の一部。「講師控室」さえない有様。 六大学たる明治大学はさすがマンモス校だけあって、教養課程のある和泉校舎にはメインの文字通りの「大部屋」の他に少なくとも三つの「講師控室」があります。筆者は週三日出校していますが、二日は出校簿にサインするのにメインの「大部屋」に寄るものの、校内の辺鄙な場所にある「講師控室」にいるようにしています。運が良ければ一人きりになれますので。 ただ、毎週水曜日はメインの「講師控室」に参ります。百名以上はゆうに入るかと思われる文字通りの「大部屋」。その一角で英語の女性の先生方を中心とした十名弱のちょっとした「ティーパーティー」があるからです。男性は筆者と中国語の先生の二人。筆者は元々社会心理学を教えていたのですが講座がなくなり、急に英語を担当することに。その際、非常勤の先生方が色々教えて下さり、参加することに。 コロナの前はまさに「ティーパーティー」で、インスタントコーヒーや紅茶などのお茶道具を小さなピクニックバスケットに入れて、大きなメールボックスを使われている先生に預かっていただき、誰か最初に来た人がそれを開けて準備をする。そして、各自持ち寄ったお菓子を交換して、茶飲み話を。他にもそうした菓子交換はちらほら行われていました。しかし、コロナを境にあまり見かけなくなってしまいました。 我が「ティーパーティー」もお茶道具はやめてしまいましたが、同じ一角に集まりお菓子の交換は毎週続けています。このお菓子の交換会にはいくつかの暗黙のルールが存在します。    まず、一番大事なのは個別包装になっていることです。一つずつパッケージされているものを互いに交換します。その場で食べる先生もいらっしゃいますが、筆者は食べずに持ち帰って家でいただきます。また、十個近いお菓子が手元に残りますので、全部食べることはまずなくて、家に持って帰らなくてはならなくなるため、包装されていることは大切です。 ただし、時折学会などで外国行かれ、お土産でクッキーやチョコレートなどを買ってきて下さる先生がいらっしゃいますが、外国製は個別包装していないものが多く、この場合は例外でその場で一つ取っていただくことになります。 また、物々交換ですので原則、毎週誰もが何がしかお菓子を人数分、持参しなくてはなりません。うっかり忘れることがあるかと思いますが、その場合は申告するのが一応の礼儀となっています。皆さん、顔を合わせればお菓子を下さいますので。また、すれ違いになってしまうとテーブルに自分宛てのお菓子が置いてあることがありますので、お返し出来る先生にはお返しするようにしています。面と向かって合わないと交換されない先生もいらっしゃいますので、その辺りは臨機応変に対応する必要があります。 一番、悩むのが人数です。現在は最大九名になりますので、九個入り以上のお菓子を探さねばなりません。これがなかなか難しい。筆者は別の大学で一コマ授業をした後、時間ギリギリでタクシー移動してきますのですれ違いになってお目にかかれない先生もいらっしゃいます。だからと言って、八個入りを買っていって、もし全員揃っていたらどうしようと思ってしまいます。まあ、自分の分をなくせばいいのでそれでもいいかと思うのですが、自分が食べたいお菓子を買ってしまった場合、なんだか悔しい気持ちになりそうで。 とにかく、毎週近くのスーパーの菓子売り場であれこれ迷いながら、お菓子を選んでいます。八個入りまでだと結構あるのですが、それより多いとだいたい十二個とかになってしまい多すぎる。九個入り、十個入りというのは意外になかなかないことに気付きました。 筆者が旅の土産に何回か買ってきたお気に入りのお菓子も八個入りでした。それは栃木県の大田原市に住む筆者の大学院時代の先輩に毎年、一、二回会いに行く際のもの。 お土産にと、帰り際に那須の「ペニーレイン」に有名なブルーベリーのパンを良く買いに出かけます。筆者はパンを食べませんので、何か「ティーパーティー」用のお土産はないかと探したところ見つけました。 その名も「love & peaceクッキー」。ハート形をしたコーヒー味の「ラヴクッキー」が四枚、ピース型にくり抜かれたミルク味の「ピースクッキー」が四枚、個別装で計八枚が紙の筒に納められています。持参してお目にかかった先生から、「ラヴがいいですか、ピースがいいですか」と早い者勝ちで選んでいただきます。 十個近く入った袋のお菓子を毎週持参するのはちょっとかさばって、筆者は少しでもコンパクトな包装のものをと選んでしまいがちです。それでも、帰りにビニール袋に色々なお菓子を持ち帰るのは何となく得をした気分になるのは不思議です。 物々交換ですので、個数的には増減はありませんから。ただただ、お菓子のヴァリエーションが増えただけなのにこの「わらしべ長者」感といったら。 「大部屋」の人ごみの中でポツンと一人いる孤独感は意外に耐えがたいものです。「ティーパーティー」はそんな孤独からの救いの場であり、貴重な情報交換の場でもあります。 「お菓子」が手土産として用いられるのも、そんなコミュニケーションのツールとして「美味なる」菓子に「大いなる意味」があるからではないでしょうか。 今月のお薦めワイン 「イタリア最北部の赤ワイン――スキオッペッテーノを楽しむ――」 「スキオッペッテーノ 2023年 IGPヴェネツィア・ジュリア」 ヴェンキアレッツァ 4378円(税込)   今年最後のイタリアワインは最北部のフリウーリ・ヴェネツィア・ジュリア州の赤ワインを紹介させていただこうと思います。  フランスの旧ヴァン・ド・ペイにあたるIGPのヴェネツィア・ジュリアは州の名前の一部。この地域は現在、イタリア、スロヴェニア、クロアチアに分割されています。  この州は「フリウーリスタイル」と呼ばれる「イタリア現代の白ワインの聖地」として成功を収めます。アルプスからの冷気とアドリア海からの暖かい空気が混じり合うこの地は白ワインに適しているのです。  しかし、一方で赤ワインにも見るべきものが多々あるのも確かです。しかも、カベルネ・ソーヴィニヨン、とりわけメルロが有名で、イタリアワインでボルドースタイルの赤ワインを飲みたいとき、まずはトスカーナのサッシカイアに代表される「ボルゲリ」のワインを探すのが良いかと思いますが、「フリウーリのメルロ」も覚えておかれるとワインリストを読むのが楽しくなることでしょう。  また、この地方ではいくつかの地品種から赤ワインが造られています。それらはどれも「重く、しっかりした構成があり、また優れた果実味と個性的な性格」を有すると言われています。その一つが今回紹介させていただく「スキオッペッテーノ」種です。 「リポッラ・ネーラともいう。東フリウーリで局地的に栽培されており、偉大な個性を持つ。鋭く、濃く、力強い赤ワインとなる」とアンダースン『イタリアワイン』(早川書房)にあります。...

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第四十一回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ

第四十一回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ

 12月の『銀座の仕立屋落語会』には、林家たま平さんが登場します。  林家正蔵さんの息子であり弟子として、古典落語に真正面から向き合いながら、持ち前の明るさとテンポの良い語り口で観客を魅了するたま平さん。熱のこもった高座と、人物の心情を丁寧に描く語りには定評があります。  今年を締めくくる冬の高座。たま平さんの笑いと温かさに包まれるひとときを、どうぞお楽しみに。 第四十一回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ 日時:12月14日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:林家たま平 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで チケットぴあはこちら:http://ticket.pia.jp/pia/event.ds?eventCd=2538523   略歴: 林家たま平 1994年5月29日生まれ2013年4月、実の父でもある九代目林家正蔵に入門。2017年11月より二ツ目昇進。2019年放送のドラマ「ノーサイドゲーム」などドラマや映画などの出演多数。

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『美食通信』第五十八回「国産にこだわるガレットとシードルの店――浅草『フルール・ド・セラザン』――」

『美食通信』第五十八回「国産にこだわるガレットとシードルの店――浅草『フルール・ド・セラザン』――」

 栃木県の大田原から大学院時代の女性の先輩が日帰りで東京に出てこられる。三月に大学を定年退職された共通のやはり先輩を囲む会に病気で欠席されたので、その先輩と自分と彼女がお世話になったもう一人の先輩(助手を務めた筆者の前任者)の四名で会うことに。もちろん、一番若輩の筆者がお膳立てすることに。 さて、何処で会うか、がまず問題。最年長の僧侶でもあられる先輩が浅草にお住まいなので、ともかく浅草で集合ということに決めました。さらに彼女に聞くと、まずランチをして、そのあと、街をブラブラしたいとのこと。 それでもインバウンドのせいで、外国人観光客で溢れかえっている浅草で落ち着いてランチできる店などあるのだろうか。ともかく予約できる店にしないと。和食は混んでいそうだから避けてなどなど。考えていると頭が痛くなることばかり。でも、大学院時代、地元が浅草の先輩に夜な夜なご馳走になった懐かしい場所だけに、彼女も是非久しぶりに訪れてみたい、とおっしゃるので。 もう、三十年以上前になるかと思いますが、昨今『ミシュラン』で話題のおにぎり屋「宿六」をはじめ、お好み焼きの「染太郎」、バー「フラミンゴ」といった名店。酒のつまみに雲丹が一人一箱ずつ出てくる寿司屋、あと裏路地の焼き肉店街の骨付きカルビが絶品の店。キリンビールの瓶に入った自家製?マッコリに驚いたのを今でもよく覚えています。 そんな当時出かけた懐かしい店の中から、浅草と言えばロシア料理なので「ストロバヤ」にしようかと思いました。筆者は「ストロバヤ」の「ピロシキ」がとても美味しかったと記憶しているからです。 しかし、あえて出かけたことのない店にしてみようかと思い直しました。ランチの後、散策してまた何か食べることになるかと思ったからです。軽くにせよ夕食を食べて帰られるとすれば、「ストロバヤ」のランチはコースでそれなりにしっかりしていましたので、もう少し軽めのものにした方がよろしかろう、と。 そこで探してみると興味深い店が。ガレットとシードルの専門店とのこと。浅草の先輩も病気をされてからお酒をほとんど飲まれなくなりましたし、筆者を除く三名はほとんどお酒を飲まれないので、シードルくらいがちょうど良いか、と。日本語に訳すと「蕎麦の花」という意味の「フルール・ド・サラザン」という名のその店は、ネットで見ると入口から内装もお洒落で、落ち着いた雰囲気。ガレット担当のご主人とシードル担当の奥様のご夫婦が営まれている十数席のこじんまりした店。 蕎麦と言えば、先輩に連れられ、上野の老舗「蓮玉庵」で蕎麦屋での粋な酒の飲み方を教わったのを思い出しました。浅草の蕎麦屋は先輩のテリトリーでしょうから、ここはフランス風の蕎麦料理店ならよろしいか、と。 ガレットはクレープの原型というか、小麦粉で作られているクレープと異なり、蕎麦粉から作られています。元々はフランス北部ブルターニュ地方の料理。ドーバー海峡を挟んでイギリスと向かい合っているこの地方は、ブルトン語を話すブルトン人と呼ばれるブリテン島に住んでいたケルト系の民族がアングロ=サクソンの侵攻から逃れてこの地にやってきた経緯があり、イギリス流の文化が。そこでお酒も葡萄から造られるワインやブランデーではなく、リンゴから造られるシードルやカルヴァドスを飲む習慣が。 そのブルトン人がパリに出稼ぎに来て始めたのが、軽食のガレットを売る店。丸く焼いたガレットの真ん中に調理した食材を乗せ、四角くなるよう、端を少し畳む。それをナイフとフォークで食する。食材によって軽食ともなれば、デザートにもなる。 パリでこのような店を「クレプスリー」と呼びます。ちなみに巻いた形の食べ歩きできるスタイルの「クレープ」を始めたのは原宿の「マリオンクレープ」らしい。今でも竹下通りのビルの二階にカフェスタイルの「マリオンクレープ」はあるとのこと。筆者は半世紀近く前、二階の「マリオン」のカウンターで、ラム酒でフランベされた皿で出される本格的なデセールのクレープをよく食べに出かけたものです。 あと、京都の北山にある「マールブランシュ」でゲリドンサーヴィスの「クレープ・シュゼット」を食するのが好きでした。もちろん、これらのクレープは小麦粉から作られていますが。 ブルターニュ風のガレットの名店は神楽坂の「ル・ブルターニュ」が有名です。この「フルール・ド・サラザン」が一捻りあるのは国産の蕎麦粉、国産のシードルにこだわりがあるという点。店主は毎日、蕎麦粉を自分で挽いて、生地を作るとのことで臼が店内にありました。日本蕎麦とあまり変わらないのですが、出てくるのがフランススタイルという訳で。 驚いたのは国産シードルの種類の多さでした。日本ワインにはじまり、クラフトビール、クラフトジンなどよく見かけるようになりましたが、シードルもこんなに造られているとは。何にしようか迷ったのですが、筆者は子供の頃、長野県上諏訪市に住んだことがあり、リンゴにも親近感がありましたので、長野の造り手にしようか、と。 マダム曰く、珍しい造りの「ハードサイダー」系がお薦めと。というわけで、「サノバスミス」の「クラシック」を選びました。330㎖で店の価格が2000円となかなかのお値段。これでも一番リーズナブルな方。フレンチでしたら、グラスワイン一杯分くらいか。 ホップが加えられているせいか、通常のシードルのような甘さはなく、筆者には飲みやすい。何よりビールのように濃い色で、リンゴのエキスが凝縮された感じが素晴らしい。 ガレットの方は具材が豊富で選ぶのに一苦労しましたが、全員別のものを選んで食べ比べを。デザートガレットも同様。どれも美味しいのですが、さすがに生地が一緒なので、若干食べ飽きてしまうのが残念か、と。 これらはピザ専門店やアルザスの「タルト・フランベ」などにも感じることです。代官山にタルト・フランベの名店「コテ・フー」があり、一時期良く出かけました。薄いピザ生地のようなものに具材を乗せ、窯で焼く。やはり、食事系からデザート系まであって、とても美味なのですが、やはり飽きが来る。 日本の食材にこだわる本格的ブルターニュ料理店。インバウンド客も皆無で落ち着いて食事が出来、店主夫妻も感じのいい方でした。一度、夜来てみようか、と。夜はアラカルトっぽく、ガレットのみならずよりツマミ系が増えるようで、ワインバーならぬシードルバー的使いのようで。しかし、やはり筆者はワインが恋しくなってしまいそう。そうなると一軒で終わらず、はしごになってしまうのは必須で……。 食事を終え、浅草散策かと思いきや、女性の先輩が本が買いたいというので、神保町へ移動することに。浅草の先輩は昔からタクシー移動が当たり前の方なので、タクシーで神保町へ。その後、実はさらに渋谷へタクシー移動したのですが。 そう言えば、その昔、筆者は青山、乃木坂などに始まり、浅草でおひらきになった後、タクシー代までいただいてタクシーで千葉の自宅まで帰っていたのでした。先輩曰く、「運転手さん、千葉の暗い所まで送ってやってください」、と。 今月のお薦めワイン 「カオールのマルベック――黒ワインを楽しむ――」 「カオール 『キュヴェ・ポエム』 2022年」 シャトー・ピネレ 3080円(税込)  今回はフランスワインの回。「シュド=ウエスト(南西部)」と呼ばれる地域のワインを紹介させていただきます。  なかなかの広域で、ボルドーの上流というのがイメージですがスペインの国境に近い地域のワインも含んでいます。文化圏的にはボルドーからスペイン国境まで大西洋沿いに広がる「アキテーヌ」と内陸部でトゥールーズを中心とする「ミディ・ピレネー」に分けることが出来ます。  美食の地として有名で、とりわけトリュフとフォアグラという世界三大珍味の二つの名産地でもあります。  赤ワインに関してはボルドーのすぐ上流の「ベルジュラック」などはほぼボルドーと同じセパージュで、十本か十二本で一万円するかしないかのボルドーワインセットになにげなく混ざったりしています。  しかし、赤ワインに関して「シュド=ウエスト」を代表するのはタナ種から造られる「マディラン」とマルベック種から造られる「カオール」の二つです。  「マディラン」はアラン・ブリュモンが造る「シャトー・モンテュス」で世界的に有名になりました。  それに対し、今回紹介させていただく「カオール」は古くから赤ワインの産地として有名。使われているマルベック種はボルドーで補助品種として用いられており、カオールでは「コー」あるいは「オーセロワ」と呼ばれています。その特徴は色の濃さで「黒ワイン」と呼ばれています。味わいもタンニックで濃厚ながら、くどさはなく、アフターの切れの良さが特徴です。...

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第四十回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』開催のお知らせ

第四十回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』開催のお知らせ

 11月の『銀座の仕立屋落語会』には、春風亭一之輔師匠のお弟子さんとしても知られる春風亭与いちさんが登場します。  端正な語り口とあたたかな人柄で、じっくりと物語を紡ぐ与いちさん。古典落語に真摯に向き合いながらも、ふとしたひと言に現代の感覚がにじむ高座は、静かな余韻を残します。  秋も深まる銀座の午後、心落ち着くひとときをぜひご一緒に。 第十四回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』 日時:11月16日、日曜日 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:春風亭与いち 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)

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第三十九回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ

第三十九回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ

 10月の『銀座の仕立屋落語会』には、昨年から出演いただいている桃月庵黒酒さんが登場します。  元漫才師という異色の経歴を持ち、桃月庵白酒師匠のもとで研鑽を積む黒酒さん。落語のみならず、演劇や音楽の舞台経験も活かしたじっくりと語る高座には、言葉の奥行きと独特の間が宿ります。  暑さもやわらぎ、秋の気配が感じられる頃。仕立て屋の空間で、静かに沁み入る一席をお楽しみください。 第三十九回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ 日時:10月12日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:桃月庵黒酒 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込) 申し込み、お問い合わせはinfo@thecloakroom.jp まで  ぴあでチケットをご購入の方はこちらから。 略歴桃月庵 黒酒 1987年年4月13日生まれ2017(平成29)年8月桃月庵白酒に入門。2019(平成31)年1月21日前座となる 前座名「あられ」。2022(令和4)年11月1日二ツ目昇進 「黒酒」と改名。

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