年末年始休業のお知らせ
by Masashi Shimada
平素より The Cloakroom Tokyo をご利用いただき、誠にありがとうございます。 誠に勝手ながら、下記期間を年末年始休業とさせていただきます。 休業期間12月31日(水)〜 新年1月6日(火) 期間中にいただいたお問い合わせにつきましては、1月7日(水)以降、順次ご対応いたします。 本年も多くの皆さまに支えられ、心より感謝申し上げます。どうぞ良い年末年始をお過ごしください。 The Cloakroom Tokyo
平素より The Cloakroom Tokyo をご利用いただき、誠にありがとうございます。 誠に勝手ながら、下記期間を年末年始休業とさせていただきます。 休業期間12月31日(水)〜 新年1月6日(火) 期間中にいただいたお問い合わせにつきましては、1月7日(水)以降、順次ご対応いたします。 本年も多くの皆さまに支えられ、心より感謝申し上げます。どうぞ良い年末年始をお過ごしください。 The Cloakroom Tokyo
2月の『銀座の仕立屋落語会』には、桃月庵黒酒さんをお迎えします。 元漫才師という異色の経歴を持ち、桃月庵白酒師匠のもとで研鑽を積んできた黒酒さん。落語のみならず、演劇や音楽の舞台経験を活かした高座は、言葉の奥行きと独特の「間」が印象的で、静かに、しかし確かに心へと届きます。 外はまだ冷え込みの残る2月。仕立て屋ならではの落ち着いた空間で、じんわりと沁みる一席を、どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。 第四十二回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ 日時:2月8日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:桃月庵黒酒 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込) 申し込み、お問い合わせはinfo@thecloakroom.jp まで ぴあでチケットをご購入の方はこちらから。 略歴桃月庵 黒酒 1987年年4月13日生まれ2017(平成29)年8月桃月庵白酒に入門。2019(平成31)年1月21日前座となる 前座名「あられ」。2022(令和4)年11月1日二ツ目昇進 「黒酒」と改名。
先日、明治大学の上司の教授と共通の昔の教え子五名で恵比寿のグランメゾン「ル・コック」で会食がありました。教授が顧客のフレンチレストラン。二〇〇八年、『ミシュラン』が東京に上陸した際に一つ星を獲得。その後も長らく一つ星を維持していました。教え子は教授のゼミのOBで会計士、富士フイルム、そして講談社と皆、エリートたちでした。 会計士と講談社勤務のOBは関西出身で、ゴルフの話に。筆者も実は小学校五年生の時、銀行員だった父が神戸に転勤になりゴルフを始めたのでした。当時のサラリーマンは接待ゴルフに接待麻雀など何かとお付き合いが忙しく、父も週末の一日はゴルフの練習場に出かけていました。筆者はそれに付いていき、面白くなってゴルフに熱中します。一年もしないでコースに出られるようになり、夏休みや冬休みには必ずコースに連れて行ってもらうように。 で、講談社君はゴルフがお好きなようで関西の名門コースをまわってみたいという。どの辺りと聞くと、広野、芦屋、茨木などの名が挙がりました。実は筆者、小学校六年生の時、芦屋カンツリークラブでプレーしたことがあったのです。父の勤める銀行が会員権を所有しており、それを借りて行員はプレーできたのです。一九五二年開場という老舗で距離は短いもののアップダウンが激しく、関西のゴルフ場らしい。筆者がまわった時、前の組に日本の女子プロゴルファー一期生の佐々木マサ子プロがラウンドされており、感激したのをよく覚えています。 ゴルフ場の楽しみの一つはクラブハウスで食する昼食。芦屋カンツリーに入っていたのは一九二八年、大阪の北浜で創業した西洋料理店「アラスカ」でした。「アラスカ」と言えば、のちに大学生になってフランス料理に目覚めた筆者にとって憧れの名店の一つとして記憶に残るのですが、小学生の自分には名前だけは聞いたことのあるくらいの店でした。 普通ゴルフ場でのランチと言えば、すぐ食べられて価格も安いカレーライスが定番なのですが、半世紀以上前のおぼろげな記憶ではカレーを食べたのではなく、ハヤシライスを食したのではないか、と。この度、HPを検索してみると今もクラブハウスのレストランは「アラスカ」で、メニュにはカレーもありましたが、ハヤシライスも載っていました。その時食べたハヤシライスと思われるものの記憶は美味しいというよりえも言われぬ不思議な食べ物といったもので今も鮮明に覚えています。 さて、大学に入りフランス料理を食べ歩き始めた一九八〇年代初め、東京の「アラスカ」と言えば、有楽町駅前の朝日新聞社ビルの最上階にあるレストランでした。今は築地の朝日新聞社の二階に移転して営業しています。現在、本店は中之島フェスティバルタワーにあり、東京では築地の他に内幸町の日本プレスセンタービルに一九七六年開業の支店があります。ゴルフ場での営業も関西、関東で十店舗ほど。 当時のフランス料理と言えば、まずはホテル、それから會舘系、さらに何々軒といった老舗の洋食店が中心で、「アラスカ」も老舗の高級洋食店の代表格といった位置づけでした。 本格的なフレンチレストランは銀座の「マキシム」と「レカン」、さらに「ロオジェ」くらいだったのではないでしょうか。その「ロオジェ」でさえ、どちらかというと同じビルの階下の「資生堂パーラー」の高級版といった趣でした。 ですので、「アラスカ」は筆者の憧れのレストランの一つでした。小学生の時、芦屋カンツリーで食したことのあるレストランでしたし。そして、何といっても「アラスカ」と言えば、その店名がついた「デザート」、「べイクド・アラスカ」で有名だったのです。筆者の記憶では枕詞が「燃える氷山」と記憶しているのですが、現在のHPでは「炎のデザート」となっています。「炎のデザート」は何だか凡庸で、正確さに欠ける。例えば、「クレープシュゼット」だって「炎のデザート」ですので。やはり、「アラスカ」なのだから「氷山」がいい。しかもそれが「燃えてしまう」のだから魔訶不思議ではありませんか。 しかし、実はこの「デザート」。「アラスカ」のオリジナルではありません。れっきとしたフランス料理の「デセール」で、その名を「オムレット・ノルヴェジエンヌ」、「ノルウェー風オムレツ」というのです。シロップとリキュールを染み込ませたビスキュイやジェノワーズと言ったスポンジ系の土台に「プラリネ」のアイスクリームをこんもりと乗せ、それをメレンゲで覆って冷やし固めます。サーヴィスする直前にまずバーナーでメレンゲに焼き色をつける。そして、ゲリドンサーヴィスで客の前でフランベをして、切り分け供するといった手の込んだもの。ですので、近年はめっきり見かけなくなってしまいました。 筆者は実に見事な「オムレット・ノルヴェジエンヌ」を食したことがあります。それはやはり一九八〇年代の初め、帝国ホテルのメインダイニング「フォンテンブロー」でのことでした。当時のフランス料理と言えば、村上信夫シェフ率いる帝国ホテルの「フォンテンブロー」と小野正吉シェフ率いるホテル・オークラの「ベル・エポック」がツートップ。 両シェフともNHKの『きょうの料理』に出演され、日本のフランス料理の普及に貢献されました。家庭で作れるフランス料理というか洋食を紹介されたいつも笑顔のふくよかな村上シェフと細身で厳格な面持ちの小野シェフは対照的。小野シェフは若きロビュション、パコーなどを日本に招き、『きょうの料理』で紹介。ロビュションとは番組で対談されています。両者それぞれ自身のキャラクターに相応しいやり方でフランス料理を紹介されたのでした。 まだひよっこだった筆者には親しみやすい村上シェフがお気に入りで、村上シェフじきじきにお出ましになられる「村上信夫ガストロノミック・ディナーの夕べ」なるフェアにこともあろうか一人で乗り込んだのでした。今では珍しい本当のフルコースで肉料理の後に「焼き物」としてさらにもう一皿供されるもの。 これは本来主人が客のために振舞う料理で、肉の塊などを焼いて、主人自らが切り分けて供することで「ホスト」としての役を象徴的に示すものでした。ちなみにこのディナーの「焼き物」は「子羊のマリアカラス」でパイ包み焼きの子羊を村上シェフ自らがテーブルを回って切り分け、サーヴィスして下さるという趣向。一人若造が座るテーブルにも村上シェフは来られ、皿をサーヴィスされながら「今日の料理はいかがでしたか?」と声をかけて下さり、筆者は感激したのを昨日のことのように覚えております。 その興奮を静めてくれたのが、いや、ますますフランス料理への関心をめらめらと燃え上がらせることになったのが、まさに暖かくて冷たい炎のデセール「オムレット・ノルヴェジエンヌ」だったのです。そのプラリネアイスクリームの美味だったこと。このデセールのグラスはやはりプラリネに限ると確信した次第。 時は流れたものの、「アラスカ」の「べイクド・アラスカ」は今も健在のよう。久しぶりに「燃える氷山」を食しに出かけてみたくなったのでした。 今月のお薦めワイン 「コート・ド・ボーヌの中庸の美―ACボーヌの赤を堪能する――」 「ボーヌ・プルミエクリュ 『ブレッサンド』 2020年 ACボーヌ・プルミエクリュ」アルベール・モロ 10340円(税込) このクール最後はブルゴーニュ。コート・ドールの南半分、コート・ド・ボーヌの赤を紹介させていただきます。ニュイが赤中心なのに対し、ボーヌは赤と白が半々といったところで、しかも白に「モンラッシェ」や「ムルソー」といった銘酒が多いのが特徴。 赤はグランクリュが「コルトン」だけで、赤ワインだけを産出するアペラシオンは「ヴォルネ」と「ポマール」の二つといった具合。「ヴォルネ」がエレガントで芳しいしなやか系なのに対し、「ポマール」は野趣味にあふれ、タンニックと対照的。ただし、価格的にはニュイの有名どころのアペラシオンと変わりませんので、リストから選ぶとき、筆者などどうしてもニュイの方を選んでしまいがちです。 ボーヌでお財布に優しいのはなんといっても以前最南端だった「サントネ」。さらに最近注目されているのが、1988年に新たにアペラシオンに認定され最南端となった「マランジュ」。ニュイにおける最北端の「マルサネ」が1987年に認定され、若手の造り手がその才能を発揮する格好の場所となっているのとパラレルに、「マランジュ」も例えば、バシュレ=モノ兄弟が「マルサネ」におけるパタイユ兄弟のような活躍を見せています。 しかし、筆者が皆様にお勧めしたいのはAC「ボーヌ」のワインです。「ヴォルネ」と「ポマール」のまさに中庸を行くバランスの良い品格のあるワインが特徴。さすが、ブルゴーニュのネゴシアンの中心地を有するアペラシオンだけあります。 今回はその中でも42もあるプルミエクリュの畑の中で「グレーヴ」、「マルコネ」と並ぶ最上位の畑と言われる「ブレッサンド」を紹介させていただきます。「上質で繊細、複雑でエレガント、気品があって長熟タイプのワインが産み出される」と評されている畑です。 造り手はアルベール・モロ。1820年、ネゴシアンとして創設。1890年にドメーヌ部門も併設。プルミエクリュに七つの畑を所有。1980年代からはドメーヌに特化していた老舗の造り手。2023年に所有者が変わり、新たなスタッフはこれまでの伝統を引き継ぎつつ、さらなる進化へとチャレンジして行くとのこと。 この2020年ヴィンテージはモロ一族の集大成のようなワインで、今後は造りが変わるのでこの機会に購入されることをお薦めします。今飲んでも美味しいでしょうし、もっと寝かせることも可能なのが「ブレッサンド」の魅力です。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで 略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP...
役者に「大部屋俳優」という名称があります。脇役、しかもその他大勢の役しか回ってこない売れない俳優のことを意味します。元々は歌舞伎において、こうした役者には個別の楽屋が与えられず、一つの大きな部屋を共用していたことからこの名前がついたと言われています。 現在俳優さんたちがどのような待遇なのか筆者は知る由もありませんが、大学の非常勤講師はまさに現代の「大部屋俳優」と言えます。専任教員は各自研究室を持っていますが、非常勤講師はまさに一つの大部屋に押し込まれています。 筆者は助手時代こそ一応研究室をあてがわれていましたが、その後は非常勤生活でこのまま定年になってしまいそうですので、まさしく一生涯「大部屋役者」で終わりそうです。 現在数校の大学・専門学校で教えていますが、「講師控室」と呼ばれるこの「大部屋」たるもの、なかなか悲惨です。ある学校はなんと地下一階にあります。専任教員の研究室は最上階に。世界的に評価された韓国映画に『パラサイト 半地下の家族』(ボン・ジュノ監督)があり、半地下物件に住む低所得者が描かれていますがそれ以下です。また、ある学校は改装中だったとはいえ、物置の一角だったことがあります。リニューアル後の現在も会議室の一部。「講師控室」さえない有様。 六大学たる明治大学はさすがマンモス校だけあって、教養課程のある和泉校舎にはメインの文字通りの「大部屋」の他に少なくとも三つの「講師控室」があります。筆者は週三日出校していますが、二日は出校簿にサインするのにメインの「大部屋」に寄るものの、校内の辺鄙な場所にある「講師控室」にいるようにしています。運が良ければ一人きりになれますので。 ただ、毎週水曜日はメインの「講師控室」に参ります。百名以上はゆうに入るかと思われる文字通りの「大部屋」。その一角で英語の女性の先生方を中心とした十名弱のちょっとした「ティーパーティー」があるからです。男性は筆者と中国語の先生の二人。筆者は元々社会心理学を教えていたのですが講座がなくなり、急に英語を担当することに。その際、非常勤の先生方が色々教えて下さり、参加することに。 コロナの前はまさに「ティーパーティー」で、インスタントコーヒーや紅茶などのお茶道具を小さなピクニックバスケットに入れて、大きなメールボックスを使われている先生に預かっていただき、誰か最初に来た人がそれを開けて準備をする。そして、各自持ち寄ったお菓子を交換して、茶飲み話を。他にもそうした菓子交換はちらほら行われていました。しかし、コロナを境にあまり見かけなくなってしまいました。 我が「ティーパーティー」もお茶道具はやめてしまいましたが、同じ一角に集まりお菓子の交換は毎週続けています。このお菓子の交換会にはいくつかの暗黙のルールが存在します。 まず、一番大事なのは個別包装になっていることです。一つずつパッケージされているものを互いに交換します。その場で食べる先生もいらっしゃいますが、筆者は食べずに持ち帰って家でいただきます。また、十個近いお菓子が手元に残りますので、全部食べることはまずなくて、家に持って帰らなくてはならなくなるため、包装されていることは大切です。 ただし、時折学会などで外国行かれ、お土産でクッキーやチョコレートなどを買ってきて下さる先生がいらっしゃいますが、外国製は個別包装していないものが多く、この場合は例外でその場で一つ取っていただくことになります。 また、物々交換ですので原則、毎週誰もが何がしかお菓子を人数分、持参しなくてはなりません。うっかり忘れることがあるかと思いますが、その場合は申告するのが一応の礼儀となっています。皆さん、顔を合わせればお菓子を下さいますので。また、すれ違いになってしまうとテーブルに自分宛てのお菓子が置いてあることがありますので、お返し出来る先生にはお返しするようにしています。面と向かって合わないと交換されない先生もいらっしゃいますので、その辺りは臨機応変に対応する必要があります。 一番、悩むのが人数です。現在は最大九名になりますので、九個入り以上のお菓子を探さねばなりません。これがなかなか難しい。筆者は別の大学で一コマ授業をした後、時間ギリギリでタクシー移動してきますのですれ違いになってお目にかかれない先生もいらっしゃいます。だからと言って、八個入りを買っていって、もし全員揃っていたらどうしようと思ってしまいます。まあ、自分の分をなくせばいいのでそれでもいいかと思うのですが、自分が食べたいお菓子を買ってしまった場合、なんだか悔しい気持ちになりそうで。 とにかく、毎週近くのスーパーの菓子売り場であれこれ迷いながら、お菓子を選んでいます。八個入りまでだと結構あるのですが、それより多いとだいたい十二個とかになってしまい多すぎる。九個入り、十個入りというのは意外になかなかないことに気付きました。 筆者が旅の土産に何回か買ってきたお気に入りのお菓子も八個入りでした。それは栃木県の大田原市に住む筆者の大学院時代の先輩に毎年、一、二回会いに行く際のもの。 お土産にと、帰り際に那須の「ペニーレイン」に有名なブルーベリーのパンを良く買いに出かけます。筆者はパンを食べませんので、何か「ティーパーティー」用のお土産はないかと探したところ見つけました。 その名も「love & peaceクッキー」。ハート形をしたコーヒー味の「ラヴクッキー」が四枚、ピース型にくり抜かれたミルク味の「ピースクッキー」が四枚、個別装で計八枚が紙の筒に納められています。持参してお目にかかった先生から、「ラヴがいいですか、ピースがいいですか」と早い者勝ちで選んでいただきます。 十個近く入った袋のお菓子を毎週持参するのはちょっとかさばって、筆者は少しでもコンパクトな包装のものをと選んでしまいがちです。それでも、帰りにビニール袋に色々なお菓子を持ち帰るのは何となく得をした気分になるのは不思議です。 物々交換ですので、個数的には増減はありませんから。ただただ、お菓子のヴァリエーションが増えただけなのにこの「わらしべ長者」感といったら。 「大部屋」の人ごみの中でポツンと一人いる孤独感は意外に耐えがたいものです。「ティーパーティー」はそんな孤独からの救いの場であり、貴重な情報交換の場でもあります。 「お菓子」が手土産として用いられるのも、そんなコミュニケーションのツールとして「美味なる」菓子に「大いなる意味」があるからではないでしょうか。 今月のお薦めワイン 「イタリア最北部の赤ワイン――スキオッペッテーノを楽しむ――」 「スキオッペッテーノ 2023年 IGPヴェネツィア・ジュリア」 ヴェンキアレッツァ 4378円(税込) 今年最後のイタリアワインは最北部のフリウーリ・ヴェネツィア・ジュリア州の赤ワインを紹介させていただこうと思います。 フランスの旧ヴァン・ド・ペイにあたるIGPのヴェネツィア・ジュリアは州の名前の一部。この地域は現在、イタリア、スロヴェニア、クロアチアに分割されています。 この州は「フリウーリスタイル」と呼ばれる「イタリア現代の白ワインの聖地」として成功を収めます。アルプスからの冷気とアドリア海からの暖かい空気が混じり合うこの地は白ワインに適しているのです。 しかし、一方で赤ワインにも見るべきものが多々あるのも確かです。しかも、カベルネ・ソーヴィニヨン、とりわけメルロが有名で、イタリアワインでボルドースタイルの赤ワインを飲みたいとき、まずはトスカーナのサッシカイアに代表される「ボルゲリ」のワインを探すのが良いかと思いますが、「フリウーリのメルロ」も覚えておかれるとワインリストを読むのが楽しくなることでしょう。 また、この地方ではいくつかの地品種から赤ワインが造られています。それらはどれも「重く、しっかりした構成があり、また優れた果実味と個性的な性格」を有すると言われています。その一つが今回紹介させていただく「スキオッペッテーノ」種です。 「リポッラ・ネーラともいう。東フリウーリで局地的に栽培されており、偉大な個性を持つ。鋭く、濃く、力強い赤ワインとなる」とアンダースン『イタリアワイン』(早川書房)にあります。...
12月の『銀座の仕立屋落語会』には、林家たま平さんが登場します。 林家正蔵さんの息子であり弟子として、古典落語に真正面から向き合いながら、持ち前の明るさとテンポの良い語り口で観客を魅了するたま平さん。熱のこもった高座と、人物の心情を丁寧に描く語りには定評があります。 今年を締めくくる冬の高座。たま平さんの笑いと温かさに包まれるひとときを、どうぞお楽しみに。 第四十一回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ 日時:12月14日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:林家たま平 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで チケットぴあはこちら:http://ticket.pia.jp/pia/event.ds?eventCd=2538523 略歴: 林家たま平 1994年5月29日生まれ2013年4月、実の父でもある九代目林家正蔵に入門。2017年11月より二ツ目昇進。2019年放送のドラマ「ノーサイドゲーム」などドラマや映画などの出演多数。
栃木県の大田原から大学院時代の女性の先輩が日帰りで東京に出てこられる。三月に大学を定年退職された共通のやはり先輩を囲む会に病気で欠席されたので、その先輩と自分と彼女がお世話になったもう一人の先輩(助手を務めた筆者の前任者)の四名で会うことに。もちろん、一番若輩の筆者がお膳立てすることに。 さて、何処で会うか、がまず問題。最年長の僧侶でもあられる先輩が浅草にお住まいなので、ともかく浅草で集合ということに決めました。さらに彼女に聞くと、まずランチをして、そのあと、街をブラブラしたいとのこと。 それでもインバウンドのせいで、外国人観光客で溢れかえっている浅草で落ち着いてランチできる店などあるのだろうか。ともかく予約できる店にしないと。和食は混んでいそうだから避けてなどなど。考えていると頭が痛くなることばかり。でも、大学院時代、地元が浅草の先輩に夜な夜なご馳走になった懐かしい場所だけに、彼女も是非久しぶりに訪れてみたい、とおっしゃるので。 もう、三十年以上前になるかと思いますが、昨今『ミシュラン』で話題のおにぎり屋「宿六」をはじめ、お好み焼きの「染太郎」、バー「フラミンゴ」といった名店。酒のつまみに雲丹が一人一箱ずつ出てくる寿司屋、あと裏路地の焼き肉店街の骨付きカルビが絶品の店。キリンビールの瓶に入った自家製?マッコリに驚いたのを今でもよく覚えています。 そんな当時出かけた懐かしい店の中から、浅草と言えばロシア料理なので「ストロバヤ」にしようかと思いました。筆者は「ストロバヤ」の「ピロシキ」がとても美味しかったと記憶しているからです。 しかし、あえて出かけたことのない店にしてみようかと思い直しました。ランチの後、散策してまた何か食べることになるかと思ったからです。軽くにせよ夕食を食べて帰られるとすれば、「ストロバヤ」のランチはコースでそれなりにしっかりしていましたので、もう少し軽めのものにした方がよろしかろう、と。 そこで探してみると興味深い店が。ガレットとシードルの専門店とのこと。浅草の先輩も病気をされてからお酒をほとんど飲まれなくなりましたし、筆者を除く三名はほとんどお酒を飲まれないので、シードルくらいがちょうど良いか、と。日本語に訳すと「蕎麦の花」という意味の「フルール・ド・サラザン」という名のその店は、ネットで見ると入口から内装もお洒落で、落ち着いた雰囲気。ガレット担当のご主人とシードル担当の奥様のご夫婦が営まれている十数席のこじんまりした店。 蕎麦と言えば、先輩に連れられ、上野の老舗「蓮玉庵」で蕎麦屋での粋な酒の飲み方を教わったのを思い出しました。浅草の蕎麦屋は先輩のテリトリーでしょうから、ここはフランス風の蕎麦料理店ならよろしいか、と。 ガレットはクレープの原型というか、小麦粉で作られているクレープと異なり、蕎麦粉から作られています。元々はフランス北部ブルターニュ地方の料理。ドーバー海峡を挟んでイギリスと向かい合っているこの地方は、ブルトン語を話すブルトン人と呼ばれるブリテン島に住んでいたケルト系の民族がアングロ=サクソンの侵攻から逃れてこの地にやってきた経緯があり、イギリス流の文化が。そこでお酒も葡萄から造られるワインやブランデーではなく、リンゴから造られるシードルやカルヴァドスを飲む習慣が。 そのブルトン人がパリに出稼ぎに来て始めたのが、軽食のガレットを売る店。丸く焼いたガレットの真ん中に調理した食材を乗せ、四角くなるよう、端を少し畳む。それをナイフとフォークで食する。食材によって軽食ともなれば、デザートにもなる。 パリでこのような店を「クレプスリー」と呼びます。ちなみに巻いた形の食べ歩きできるスタイルの「クレープ」を始めたのは原宿の「マリオンクレープ」らしい。今でも竹下通りのビルの二階にカフェスタイルの「マリオンクレープ」はあるとのこと。筆者は半世紀近く前、二階の「マリオン」のカウンターで、ラム酒でフランベされた皿で出される本格的なデセールのクレープをよく食べに出かけたものです。 あと、京都の北山にある「マールブランシュ」でゲリドンサーヴィスの「クレープ・シュゼット」を食するのが好きでした。もちろん、これらのクレープは小麦粉から作られていますが。 ブルターニュ風のガレットの名店は神楽坂の「ル・ブルターニュ」が有名です。この「フルール・ド・サラザン」が一捻りあるのは国産の蕎麦粉、国産のシードルにこだわりがあるという点。店主は毎日、蕎麦粉を自分で挽いて、生地を作るとのことで臼が店内にありました。日本蕎麦とあまり変わらないのですが、出てくるのがフランススタイルという訳で。 驚いたのは国産シードルの種類の多さでした。日本ワインにはじまり、クラフトビール、クラフトジンなどよく見かけるようになりましたが、シードルもこんなに造られているとは。何にしようか迷ったのですが、筆者は子供の頃、長野県上諏訪市に住んだことがあり、リンゴにも親近感がありましたので、長野の造り手にしようか、と。 マダム曰く、珍しい造りの「ハードサイダー」系がお薦めと。というわけで、「サノバスミス」の「クラシック」を選びました。330㎖で店の価格が2000円となかなかのお値段。これでも一番リーズナブルな方。フレンチでしたら、グラスワイン一杯分くらいか。 ホップが加えられているせいか、通常のシードルのような甘さはなく、筆者には飲みやすい。何よりビールのように濃い色で、リンゴのエキスが凝縮された感じが素晴らしい。 ガレットの方は具材が豊富で選ぶのに一苦労しましたが、全員別のものを選んで食べ比べを。デザートガレットも同様。どれも美味しいのですが、さすがに生地が一緒なので、若干食べ飽きてしまうのが残念か、と。 これらはピザ専門店やアルザスの「タルト・フランベ」などにも感じることです。代官山にタルト・フランベの名店「コテ・フー」があり、一時期良く出かけました。薄いピザ生地のようなものに具材を乗せ、窯で焼く。やはり、食事系からデザート系まであって、とても美味なのですが、やはり飽きが来る。 日本の食材にこだわる本格的ブルターニュ料理店。インバウンド客も皆無で落ち着いて食事が出来、店主夫妻も感じのいい方でした。一度、夜来てみようか、と。夜はアラカルトっぽく、ガレットのみならずよりツマミ系が増えるようで、ワインバーならぬシードルバー的使いのようで。しかし、やはり筆者はワインが恋しくなってしまいそう。そうなると一軒で終わらず、はしごになってしまうのは必須で……。 食事を終え、浅草散策かと思いきや、女性の先輩が本が買いたいというので、神保町へ移動することに。浅草の先輩は昔からタクシー移動が当たり前の方なので、タクシーで神保町へ。その後、実はさらに渋谷へタクシー移動したのですが。 そう言えば、その昔、筆者は青山、乃木坂などに始まり、浅草でおひらきになった後、タクシー代までいただいてタクシーで千葉の自宅まで帰っていたのでした。先輩曰く、「運転手さん、千葉の暗い所まで送ってやってください」、と。 今月のお薦めワイン 「カオールのマルベック――黒ワインを楽しむ――」 「カオール 『キュヴェ・ポエム』 2022年」 シャトー・ピネレ 3080円(税込) 今回はフランスワインの回。「シュド=ウエスト(南西部)」と呼ばれる地域のワインを紹介させていただきます。 なかなかの広域で、ボルドーの上流というのがイメージですがスペインの国境に近い地域のワインも含んでいます。文化圏的にはボルドーからスペイン国境まで大西洋沿いに広がる「アキテーヌ」と内陸部でトゥールーズを中心とする「ミディ・ピレネー」に分けることが出来ます。 美食の地として有名で、とりわけトリュフとフォアグラという世界三大珍味の二つの名産地でもあります。 赤ワインに関してはボルドーのすぐ上流の「ベルジュラック」などはほぼボルドーと同じセパージュで、十本か十二本で一万円するかしないかのボルドーワインセットになにげなく混ざったりしています。 しかし、赤ワインに関して「シュド=ウエスト」を代表するのはタナ種から造られる「マディラン」とマルベック種から造られる「カオール」の二つです。 「マディラン」はアラン・ブリュモンが造る「シャトー・モンテュス」で世界的に有名になりました。 それに対し、今回紹介させていただく「カオール」は古くから赤ワインの産地として有名。使われているマルベック種はボルドーで補助品種として用いられており、カオールでは「コー」あるいは「オーセロワ」と呼ばれています。その特徴は色の濃さで「黒ワイン」と呼ばれています。味わいもタンニックで濃厚ながら、くどさはなく、アフターの切れの良さが特徴です。...
11月の『銀座の仕立屋落語会』には、春風亭一之輔師匠のお弟子さんとしても知られる春風亭与いちさんが登場します。 端正な語り口とあたたかな人柄で、じっくりと物語を紡ぐ与いちさん。古典落語に真摯に向き合いながらも、ふとしたひと言に現代の感覚がにじむ高座は、静かな余韻を残します。 秋も深まる銀座の午後、心落ち着くひとときをぜひご一緒に。 第十四回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』 日時:11月16日、日曜日 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:春風亭与いち 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
10月の『銀座の仕立屋落語会』には、昨年から出演いただいている桃月庵黒酒さんが登場します。 元漫才師という異色の経歴を持ち、桃月庵白酒師匠のもとで研鑽を積む黒酒さん。落語のみならず、演劇や音楽の舞台経験も活かしたじっくりと語る高座には、言葉の奥行きと独特の間が宿ります。 暑さもやわらぎ、秋の気配が感じられる頃。仕立て屋の空間で、静かに沁み入る一席をお楽しみください。 第三十九回『銀座の仕立屋落語会・黒酒クロークルーム』開催のお知らせ 日時:10月12日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:桃月庵黒酒 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込) 申し込み、お問い合わせはinfo@thecloakroom.jp まで ぴあでチケットをご購入の方はこちらから。 略歴桃月庵 黒酒 1987年年4月13日生まれ2017(平成29)年8月桃月庵白酒に入門。2019(平成31)年1月21日前座となる 前座名「あられ」。2022(令和4)年11月1日二ツ目昇進 「黒酒」と改名。
カクテルバーなどに出かけるとチャージ(席料)が付くことがあります。レストランであればサーヴィス料が発生するのを一律定額にしているのです。まあ、それに問題はないと思うのですが、何か申し訳ないと思うのか、チャームとしてちょっとした食べ物が出されることがあります。カウンターでカクテルなりウイスキーなり一、二杯飲んで帰るのに別に必要はないと思うのですが。 居酒屋でお通しが出るのとはちょっと違います。こちらはこれから何時間も飲み食いするにもかかわらず、店の形態からサーヴィス料を取る訳にもいかないでしょうし、それこそ席料としてお通しを必須とするのは致し方ない、と。その分、お通しに力の入っている店は侮れないと、『孤独のグルメ』や『二軒目どうする?~ツマミのハナシ~』といったテレビ東京のグルメ番組を見ていると主張されているものです。 筆者は変にモノに置き換えず、サーヴィス料を取った方がすっきりすると思っています。例えば、ミネラルウォーターをチャーム代わりにして炎上した人気料理人がいました。実は筆者も良く知る人物なのですが。筆者の考えでは、水はフレンチのようにミネラルウォーターは有料、「キャラフ・ド・ロー」と呼ばれる(浄水された)水道水は無料にし、サーヴィス料を15%にするとかすれば良かったのです。サーヴィス料は10%が相場なのですが、別に決まっているわけでななく、料亭など20~30%取っているところはざらですので。 それより「チャーム」はサーヴィスで無料にしたらよろしかろう、と。そうすれば、出さなくても良いのですから。出されてもあくまでサーヴィスですので、出された方も手をつけなくとも構わない。お金が発生していると何となく食さないと損した気分になるのは、筆者が貧乏性だからでしょうか。 しかし、そんな無料の「チャーム」にもれっきとした存在理由(レゾン・デートル)があることに気づかされたのです(ちなみに、フランス語「レゾン・デートル」がカタカナ読みで日本語に定着したのは戦後しばらくの間流行した実存主義の代表者サルトルの影響です)。 筆者お気に入りのバーの一つにホテル「ハイアットリージェンシー横浜」一階の「ザ・ユニオンバー&ラウンジ」があります。ホテルそのものも気に入っていて、先日宿泊したのですが、元町でディナーした後、ディジェスティフ(食後酒)をホテルで飲もうと部屋に戻る前に「ザ・ユニオン」に立ち寄りました。 いつもは友人たちと「スカンディヤ」や中華街でランチした後、ティータイムにお酒が飲めるのでよく立ち寄るのですがさすがに混んでいて、入れないこともしばしば。 入れてもソファー席のラウンジは予約で一杯で、バーカウンター周辺の椅子が空いていればラッキーといった具合。若いバーテンダー諸氏は「こんな感じで何かお任せ」とオーダーしても見事に対応してくれ、友人たちにも好評です。 宿泊して気づいたのですが、閉店近くの「ザ・ユニオン」は宿泊者くらいしか使いませんので空いているのです。昨年宿泊した際は、アペリティフを「ザ・ユニオン」で、ディジェスティフは「ホテルニューグランド」一階の「シーガーディアンⅡ」に出かけてしまいましたので気づきませんでした。 すると、スタッフに「カウンターになさいますか、ラウンジになさいますか」と聞かれたのです。良い機会なので「ラウンジ」でとお願いするとソファー席に通されました。さて、何を飲もうかと。筆者は店の名前の付いたカクテル「ザ・ユニオン」を、連れはこのバー得意の「エスプレッソマティーニ」を註文しました。 カクテルが運ばれてくると「チャーム」ですと小さな升に入った柿の種風のおつまみが付いてきたのです。今まで酒はバーコーナーでしか飲んだことがなかったのですが、「チャーム」はついてきませんでした。チェックアウトの際、領収書を確認しましたが、「ザ・ユニオン」の使用にチャージはついておらず、いつもと同じ価格でした。つまり、「チャーム」はサーヴィスだったのです。 さて、この柿の種風のおつまみ。お洒落なカクテルとは何となくミスマッチのように思われました。おかきの色が明らかに濃く、市販の柿の種ではないのは明白。食してみると味は濃く、しかも辛い。この原稿を書くのに調べてみるとその正体が分かりました。「横濱ビア柿」というビール用に開発された辛口、濃口のオリジナル柿の種でした。さすが「横浜」繋がり。 で、「これっていらなくない」と思いつつ、カクテルを飲んでいると、このカクテルが甘いのです。最初は美味しいと思ったのですが、徐々に甘さが効いてきて、ちょっとくどいかなあ、と。そこで、もしかしてと思い、柿の種を食してその余韻を残しながら、カクテルを飲むと何とも新鮮というか、美味しい。辛さが甘さを中和して、カクテルの旨味を引き立ててくれているではありませんか。 エスプレッソマティーニもいつもより甘口だったようで、連れも同じ感想を述べていました。そこで、柿の種をつまみつつカクテルを飲むと、飲み切れないと思われた「ザ・ユニオン」を難なく美味しく飲み干してしまったのです。 このチャーム(横濱ビア柿)なくしては、せっかくのカクテルも手持ち無沙汰になってしまったことでしょう。 チャームって素晴らしい。その存在意義を実感した貴重な夜でした。 余談になりますが、翌日、静岡市に向かい、昼に駅南の「満嬉多(まきた)」で大学の同級生を交えて鰻を食しました。いつも出かける清水の「芳川」が夏休みだったので。初めて伺う店で、筆者の亡き母の実家の菩提寺、「鯖大師」として有名な臨済宗の「崇福寺」の近くにこんな素敵な老舗の鰻屋があるとは知りませんでした。 二階の個室を使わせていただきました。日本酒を頼むと適切なワイングラスに注がれて出てきてビックリ。さらにお酒を註文された方にはと、小さな鰻巻、シラスの大根おろし添え、枝豆が「先付」風に出てきたではありませんか。 昨晩の「ザ・ユニオン」でのチャームが思い浮かびました。ここでもまた素敵な「チャーム」に遭遇するとは。 そして、この日のディナーを予約してあった「カワサキ」のお任せコースのフレンチでも河崎シェフが自らしとめたジビエを使った「アミューズ」が最初に出てくるのが予想されます。 やはり、「神は細部に宿る」(ミース=ファン=デア=ローエ)のでしょう。 今月のお薦めワイン 「赤ワインを冷やして飲む――ボジョレの贅沢な楽しみ方――」 「ボジョレ・ヴィラージュ・ルージュ 『ワイルド・ソウル』 2023年」 ジュリアン・スニエ 4290円(税込) 今回はブルゴーニュの回。夏ですし白ワインかとも思いましたが、やはりここは赤ワインで。ブルゴーニュの赤ワインと言えばピノ・ノワールかと思いきや、それだけではありません。 アペラシオンとしてのブルゴーニュは南北に長く、北は飛び地のヨンヌ県では補助品種ながらセザール種が使用可能です。また、南端は「ボジョレ」でこちらはガメ種100%で造られています。一つ北に上がって、白ワインの産地として有名な「マコン」で造られる赤ワインもガメ種で造られています。 従って、ピノ・ノワールの主要な産地はコート・ドールとシャロネーズということになり、近年、ヨンヌ県で造られるピノ・ノワール(ACブルゴーニュとACイランシー)が一目置かれるようになっています。 また、ACブルゴーニュを名乗るにはピノ・ノワールが主である必要がありますが、2011年に導入されたACコトー・ブルギニョンはそれに該当しません。自由な割合の混醸が可能です。そこで、ボジョレで栽培されているピノ・ノワール100%で造られたワインがコトー・ブルギニョンで販売されていたりします。 日本人にとって、ボジョレは毎年ヌーヴォが話題になりますのでお馴染みです。 しかし、ワイン愛好家にとってボジョレが重要なのは自然派ワインの父と呼ばれるジュール・ショヴェがボジョレの造り手であり、マルセル・ラピエール、フィリップ・パカレなど自然派の巨匠の多くがボジョレ出身ということです。 今回ご紹介するジュリアン・スニエもビオワインの実践者ですが、師はシャンボール・ミュジニのクリストフ・ルーミエでした。世界中で醸造の仕事をしてきたスニエが自身のワイン造りに選んだのがボジョレで、2008年に初ヴィンテージを世に問うた新しいドメーヌです。...
9月の『銀座の仕立屋落語会』には、6月公演でも熱演を披露してくださった林家たま平さんがふたたび登場します。 林家正蔵さんの息子であり弟子として、古典落語に真正面から取り組みつつ、常に新たな挑戦を続けるたま平さん。6月の高座では、たま平さんならではの軽妙な語り口と丁寧な人物描写に、客席から大きな笑いと拍手が沸き起こりました。 この秋はどんな演目で魅せてくれるのか―どうぞご期待ください。 第三十八回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ 日時:9月21日(日曜日) 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:林家たま平 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで 略歴: 林家たま平 1994年5月29日生まれ2013年4月、実の父でもある九代目林家正蔵に入門。2017年11月より二ツ目昇進。2019年放送のドラマ「ノーサイドゲーム」などドラマや映画などの出演多数。
八月の「銀座の仕立て屋落語会」は、春風亭与いちさんがふたたび登場します。 品のある語り口と穏やかな人柄で、会場をあたたかな空気に包み込む与いちさん。今回はどんな演目が飛び出すのか、どうぞご期待ください。 プロデュースは引き続き、美食評論家・山本益博さん。落語と美意識が交差する、仕立て屋ならではのひとときをお楽しみいただけます。 夏の終わりの銀座で、涼やかな午後を。 第三十七回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』 日時:2025年8月17日、日曜日 12時45分開場 13時開演 終演14時30分ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:春風亭与いち 開口一番 世話人:山本益博 会費:2,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ) 略歴春風亭与いち1998年4月5日生まれ2017年3月、春風亭一之輔に入門。翌年1月21日より前座となる。前座名『与いち』。2021年3月1日より二ツ目昇進。
筆者は毎週金曜日に両国にある専門学校に教えに出かけています。道を挟んで真向かいに「とし田」という大正十年というから一九二一年創業の老舗の和菓子屋があります。 筆者がリーファーワイン協会で一緒に理事を務めていたK氏の奥様の実家がこの「とし田」で、会合の時など茶菓子やお土産にとよく「とし田」の菓子を差し入れして下さっています。つい先日もエチケット剥しのリニューアルの打ち合わせでお目にかかった際に、梅味のどら焼きをいただきました。これがなかなか美味でどら焼きの餡に酸味が加わっても結構いけるということに気づいた次第です。 夕食の後に必ずデザートを食する習慣のある筆者は毎週の献立で菓子の選択をしなくてはなりません。以前は帰宅の途中でコンビニに寄って買っていたりしたのですが、最近は加齢のせいもあってか、講義が終わるとグッタリしてしまい、コンビニに寄る元気もなく拙宅に直帰するのが精一杯になってしまいました。 そこで週に一回、近くのスーパーに買い物に出かける際、一週間分のデザートを購入するようにしています。毎回の食事もそうですが、デザートも日持ちするものをいくつか買わねばならず、賞味期限を配慮しながら食べたいものを選んでいくのですが、これがなかなか大変です。 筆者の場合、どうしても洋菓子が中心になってしまいます。すると、週の後半は生クリームなどを使った菓子は日持ちがしませんので、どうしてもゼリーなどの賞味期限が長い菓子になりがちです。 連日ゼリーも飽きてしまいますので、このようなとき、和菓子に目が行きます。饅頭や団子は賞味期限が短いので駄目ですが、そんな中、真空パックになっているどら焼きは結構日持ちがするので候補に挙がることが多々あります。 筆者が買い物に出かけるスーパーは自社製品のどら焼きの他に新宿「中村屋」やあと一社くらい常時三社くらいのどら焼きを置いています。どの会社も二種類くらいはヴァリエーションがあり、餡の味の違いだけでなく、定番のどら焼きの他に「極」といった原材料にこだわった高級品が並んだりしています。 梅味のどら焼きをいただいてから間もなく、マーマレード味の餡のどら焼きが件のスーパーで売られていて、早速購入して食してみました。これがまた美味でした。筆者自身がマーマレード好きなのと、餡の中に刻まれたオレンジピールが練りこんであり、あの独特の苦みがなんとも乙なのです。 子供の頃苦手だった食べ物が大人になると好きになることがあります。その多くは「苦味」が原因だったのではないでしょうか。例えば、「セロリ」。 筆者は小学校四年生まで長野県の上諏訪で過ごしましたので、給食に出るサラダに必ずセロリが入っていたものです。入学当初、セロリの入ったサラダが苦手で気持ちが悪くなることがありました。そのうち、慣れたのですが好きというほどはありませんでした。それがいつの頃からか、セロリが好きになり、亡き母の作るセロリのマリネが好きでよく作ってもらったものです。隠し味に輪切りにスライスされたイカの燻製を一緒にマリネするのですが、安上がりの魚介のマリネ風味といったところが家庭料理っぽくて好きでした。 また、当時の給食はご飯など皆無で、せいぜい途中から「ソフトメン」なるビニール袋の匂いがプンプンする袋麵が時折出るくらいで、コッペパンが毎日出るのでした。神戸に転校してからの小学校二年間は食パン二枚が毎回で例外が一度もありませんでした。ですので、毎回、一回分のマーガリンやらいちごジャムやらが付いていました。その中にマーマレードもあったのですが、やはり子供にはちょっと苦手な味わいだったのを覚えています。 しかし、それもいつの間にか、「オランジェット」というオレンジピールをチョコレートでコーティングした菓子が大好物になるのですから、味覚の好みの変化というのは不思議なものです。 さて、筆者は年に二回、学期終わりに「とし田」の菓子を教職員に差し入れしています。半期ごとに学科が変わるので、それぞれ学科の部屋に持参し、あと、講師控室で一緒の非常勤の先生方に一個ずつ。 ちょうど差し入れする前の週、講師控室で女性のH先生と話をしていると、「とし田」のレモン味のどら焼きが好物であるとおっしゃるではありませんか。「え、レモン味もあるのか、知らなかった」と筆者の心の声。H先生はなかなかのグルメで、「今日は帰りに御徒町に寄って『うさぎや』のどら焼きを買うんだ」とか、お昼に毎回、違ったエスニック料理を持参されるなど、食の話に事欠きません。しかも、ご実家の三重県に茶畑をお持ちで、ご自身で育てられ、焙煎された日本茶をいただいたこともあります。 そんなH先生が美味しいとおっしゃるんだったらこれは間違いない、と講師控室の先生方にはレモン味のどら焼きを差し入れすることにしました。 「とし田」のどら焼きにはサイズの違うものが何種類かあり、レモン味は梅味と同じ小ぶりの「相撲猫」と呼ばれるちょっとコミカルなキャラクターの焼き印が押されたシリーズの一つ。 先生方に差し上げると、とりわけH先生は大変喜ばれて、その場でペロリと食べてしまわれました。そして、「なぜ、このどら焼きはこんな形なのか、ご存じ?」、と。確かに、「相撲猫」のどら焼きは丸い皮二枚で餡を挟んでいるのではなく、長細い楕円形の皮一枚を折りたたむ形で餡を包んでいます。 H先生曰く、「餡が普通のものより若干柔らかめなので、食べている反対側から餡がはみ出ないよう、試行錯誤があったようですわ」とさすが博識でいらっしゃる。これまた、初めて聞く話で感心してしまいました。さて、肝心の味の方はといえば、一口頬張ると、レモンの香りが微かに漂い、夏向きの爽やかな味わい。レモンピールがやはり刻んで餡に練り込まれていて、これまた苦みがなんともいえない風情を醸し出しています。 甘さは控えめ。どこか素朴な味わいなのに、「レモン」というのが妙に洋風でミスマッチな感じがして、「いと可笑し」。まるで、「相撲猫」のよう。 いや、それにとどまらず、そういえば、梶井基次郎に「檸檬」って短編があったなあ、と。 H先生、恐るべし。「レモン味」がこれほどまでに想像力の翼を広げさせるとは。 しなやかな思考の持ち主で、どこか不思議な雰囲気のH先生は、まさに美食家の一人と筆者は確信するのでした。 今月のお薦めワイン 「美しい桜色のスプマンテで夏を楽しむ――ピエモンテの稀少種ペラヴェルガ――」 「ペラヴェルガ スパークリング 『ヴィタエ』 ブリュット NV ヴィーノ・スプマンテ・ディ・カリタ」 エミディオ・マエロ 5082円(税込) 今年はとにかく暑い。梅雨が明ける前から真夏日が続き、季節感が感じられないのが残念です。こんな時はやっぱりスパークリングワインが飲みたくなるもの。今回はイタリアワインの回ですので、イタリアのスパークリングワイン「スプマンテ」をご紹介しましょう。 イタリアのスパークリングワインと言えば、何が思い浮かばれますか。 高級感からすれば、ロンバルディア州の「フランチャコルタ」が挙げられるでしょう。 何といっても、フランスのシャンパーニュと同じ葡萄品種を用い、しかも瓶内二次発酵のシャンパーニュ方式で造られているのですから、まさしくイタリアのシャンパーニュ。もちろん、お値段もシャンパーニュと同様にお高くなっております。 それに対し、世界で一番飲まれていると言われているのがヴェネト州の「プロセッコ」です。これはプロセッコ種から造られており、タンクの中で二次発酵される「シャルマ方式」で造られています。 さらに、昔日本で流行ったのがピエモンテ州の「アスティ」でした。モスカート・ビアンコ種から造られる甘口のアルコール度数低めのスプマンテです。やはり、「シャルマ方式」で造られています。白ワインもドイツの「マドンナ」など甘口ワインがテレビで宣伝されていた時代がありました。...