by Osamu Seki
フランス料理などワインを飲みながら食する料理において、アペリティフ即ち食前酒を嗜む習慣は日本でも定着してきたように思われます。しかも、昨今それらはシャンパーニュを理想とするスパークリングワインというのが定番です。筆者がフランス料理を始めた半世紀近く前はアペリティフと言えば、マティーニなどのショートカクテルの強いお酒、あるいはスペインの酒精強化ワインのシェリー、クレーム・ド・カシスを白ワインで割ったキールなどでした。シャンパーニュをグラスで供することは稀で、ドゥミなりボトルで頼むのがマナーでした。おそらく、グラスでのサーヴィスは炭酸が抜けてしまうのが嫌だったのでしょう。しかし、ペアリングのように皆が一時にブテイユを空けてくれるなら、シャンパーニュを供するのも悪くありません。また、シャンパーニュ愛好家が増えたこともあるかと思います。さらにソムリエは元来お酒のサーヴィスの一環でしたので、バーテンダーが取る資格という意味合いもあります。ソムリエという地位が一般に認知される過程で、バーテンダーの果たした役割は大きい。アペリティフにおけるカクテルからシャンパーニュへの移行はその歴史的過程を表わしているとも言えましょう。
しかし、フランス料理におけるお酒の飲み方にはさらにディジェスティフ即ち食後酒があります。食前酒があるのですから食後酒があって当たり前といえば当たり前。食中酒がワインということになります。しかし、どうもこちらの方はあまり嗜まれる方がいらっしゃらないのが現状です。まあ、日本人は西洋人に比べアルコールに弱い方が多いので、ワインまでで精一杯というのもあるかと思います。しかし最近、筆者はディジェスティフが普及しないのは飲む場所の問題ではないかと思うようになってきました。そう、食事が終わったテーブルで食後酒を飲むのはあまり好ましいことではないのではないか、と。シャンパーニュから始まり、ワインを飲みながら何皿もの料理を平らげ、デセールを食し、エスプレッソを飲んで一息ついている席でさらに何かお酒を飲みたくなるでしょうか。
実際、本当のグランメゾンにはまずウエイティングバーがあり、そこでアペリティフを飲んだ後、食事のテーブルへと移動します。さらに食事が済んだあと、さらに場所を変えてデセールやシガーのサーヴィスがあったのです。部屋が三つあった訳です。筆者がパリで訪れたグランメゾンでもそこまでやっていた店はありませんでした。むしろ、神戸にあった「アラン・シャペル」はまさに三か所移動したのを覚えています。顧客の末席に入れていただいていた「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トキオ」は「バー・マエストロ」を併設し、バーとレストランを往復する形でした。
今やそのようなレストランは皆無に近いでしょうから、どうすれば良いのか。そう、日本人得意の「河岸を変える」、まさにレストランからバーへと移動すれば良いのではないでしょうか。そうすれば、色々なお酒を食後酒として楽しめる。というのも、筆者はディジェスティフにブランデー(コニャックとアルマニャック)やマールと言ったフランスの蒸留酒よりイタリアのグラッパが飲みたくなるからです。もちろん、フレンチの店でもグラッパを置いている所もありますが、やはりカテゴリーミステイクな感じです。バーに行けば、コニャックであれ、グラッパであれ、好きなものを堂々と頼んで楽しむことができます。
筆者にそれを気づかせてくれたのは、渋谷の東急文化村の「カフェ・ドゥマゴ」で日参するかのごとくディナーで持ち込みのワインを開けていた時のことでした。顧客は持ち込み料無料でしたので、筆者もその一人に認めていただき、人と会うのをドゥマゴにしていたのです。その頃、大変お世話になった渋谷の画廊のマダムがいらして、マダムとご一緒するときはまず、マダム行きつけの駅のすぐ近くのショットバーで待ち合わせをし、ドゥマゴで食事した後、再びそのバーに戻って、また一杯といったのが常でした。バーの店主はフレンチ出身でワインにも詳しく、筆者はそこでグラッパ・サッシカイアに出会いました。コニャックも何種類も置いていて、それらもいただいたのですが、サッシカイアのグラッパの方が気に入りました。グラッパはワインの搾りかすを発酵・蒸留したもので、「粕取りブランデー」と言われるものに当たります。フランスではマール、イタリアがグラッパです。サッシカイアはトスカーナ地方、ボルゲリ地区で造られるボルドースタイルの「スーパートスカン」と呼ばれるワインの元祖として高名な銘柄でそのワインの搾りかすから造られたグラッパなのです。
グラッパには樽をかけた茶色のものと無色透明なものがあります。マールも同様です。筆者はやはり樽がけしたものの方が好みです。しかも、マールよりグラッパの揮発性の高い香り高さ、ちょっと捻った感じの香りが好きです。味わいにもサッシカイアのグラッパなどには甘やかさがあり、マールにはそれがありません。まさに好みの問題かと思いますが、それを選べるのがバーの良いところです。
先日、久しぶりに渋谷に出かけ、ちょくちょく伺うビストロで食事しました。時間が早かったので、食後に駅前から文化村近くに移転した件のショットバーに出かけました。店主も健在でグラッパをいただきました。来年三十周年とのことです。筆者が最初マダムに連れられて伺ったのが一九九六年だったと思いますので開店二年目だったのか、と。文化村も再開発で休館。ドゥマゴも閉店してしまいました。時の流れを感じます。サッシカイアのグラッパも高価になってしまったので銘柄を変えたそうですが、やはり茶色の美味しいグラッパでした。
また、この原稿を書いている少し前、静岡でも「カワサキ」で食事した後、近くの「バー・コード」でグラッパをいただきました。こちらは元々梯子酒で、ルイ・ラトゥールのヴォーヌ=ロマネをボトルでお安く飲ませていただいたので、折角バーに来たこともあり、もう少しお金を使わせていただかないと申し訳ないと思い、グラッパをお願いしたら、二種類珍しいものを出して下さいました。ご一緒したNシェフはマールを頼まれましたが、やはりグラッパの方が自分は好みで、二種類のうち造り手が亡くなり今は造られていないというグラッパの方が俄然自分好みでした。したたか酔ってしまっていて、銘柄をメモするか写メを撮ってくるのを忘れてしまったのを後悔しています。
食事のあと、バーに河岸を変えて、好みのディジェスティフをいただく。これまた、贅沢なひと時ではありませんか。その際、グラッパを選択肢の一つに加えていただければ幸いです。
今月のお薦めワイン 「ボルドーの双璧・リブールヌのワイン―メルロが主役――」
「シャトー・フォンプレガード 2017年 AC サンテミリオン グランクリュクラッセ」 7200円(税別)
ブルゴーニュにニュイとボーヌがあるように、ボルドーにも代表的な二つのタイプのワインが存在します。それらはカベルネ・ソーヴィニヨンを主たる葡萄とするメドックやグラーヴのいわゆる「左岸」のワインとメルロを主とする「右岸」のリブールヌのワインです。
メドックは格付けされ、五大シャトーで有名です。他方、リブールヌはボルドーで最も高価なワインと目されるシャトー・ペトリュスがポムロールにあります。
リブールヌのワインで押さえておくべきアペラシオンはまず、サン=テミリオン。1955年に開始され、度々改定を行なっています。メドックの格付けが1855年のままであるのとは対照的。改定の度、論争を巻き起こし、2022年には初回以来ツートップだったシャトー・オーゾンヌとシャトー・シュヴァル=ブランが脱退し、代わりにシャトー・パヴィとシャトー・フィジャックがツートップになりました。ちなみに、ACサン=テミリオンを名乗れるワインはサン=テミリオン市の他に古層(ジュラード)と呼ばれる八つの村が含まれます。
続いて、ペトリュスを産むポムロール。こちらは意識的に格付けを行なわないようにしています。ペトリュスを最上にラ・コンセイヤント、レヴァンジル、ラフルール、トロタノワ、ヴュー=シャトー・セルタンを含む十ほどのシャトーがトップ・シャトーと言われています。
両アペラシオンには共に衛星地区(サテライト)と呼ばれるそれに準じるワインを生み出すアペラシオンがあります。サン=テミリオンにはサン=ジョルジュ、モンターニュ、リュサック、ピュイスガンの四つの衛星地区があり、ポムロールにはラランド=ド=ポムロールがあります。
あと、フロンサックとカノン=フロンサック。一時期、ペトリュスを所有するJ.P.ムエックス社が多くのシャトーを所有し、その可能性に挑戦していました。
上記三大地区のワインを探されると良いでしょう。また、近年注目されているのはサン=テミリオンに接するカスティヨンです。ワイン高騰の折、手頃な価格で上質のワインが楽しめるアペラシオンです。
今回はサン=テミリオンのグランクリュクラッセに格付けされているシャトー・フォンプレガードを紹介させていただきます。プルミエBのラ・ガフリエールの西隣りと恵まれた立地。2004年以来アメリカの実業家夫妻が所有し、2017年はメルロ95%、カベルネ・フラン5%とメルロの醍醐味を楽しめるワインです。2013年にはエコセールの認証を受けています。また、ミシェル・ロランがコンサルタントと今風のサン=テミリオンをこの機会に是非お試しあれ。
ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで
略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Masashi Shimada
ストリートファッションやブランドのロゴを前面に打ち出したいわゆる派手目なトレンドも落ち着いてきたようです。その揺り戻しでシンプルで上質なものやシルエットや生地のドレープで魅せる品の良いファッションがじわじわと広がっているのだとか。
私たちのようなオーダーのお店だと「元からそういうもんでしょ」と思わないでも無いですが嬉しい流れです。
今シーズンは久しぶりに新しいデザインのコートを作りました。ショールカラーでラグランショルダー、ベルテッドのロングコート。ゆったりとしたシルエットで贅沢に生地を使って綺麗なドレープが出るように心がけました。たっぷりとしたガウンのような雰囲気でかる〜く着れます。チェスターコート系だとかっちりしすぎるかな、というときに柔らかい雰囲気だけどしっかり品があるので重宝すると思います。
タイドアップしたスーツに着るというよりはニットの上に羽織ったり、ノータイのジャケットスタイルに合わせて着るのがいいですね。生地はいわゆる厚地のコート生地よりはフランネルやカバートクロスなどの軽めの素材の方が綺麗なドレープが出るので相性が良さそうです。正にシンプルで上質、素材の良さやドレープで勝負する今お勧めしたいコートになりました。是非一度お試しください。
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by Masashi Shimada
10月の『銀座の仕立屋落語会』は飛ぶ鳥を落とす勢いが全く収まらない「三遊亭わん丈」さんの登場です。わん丈さんにこの落語会に出演いただけるのも残すところあと2回。この貴重な機会を是非お見逃しの無いようにお願いいたします。
前回ご好評いただいた秘密の大喜利も第二回、今回は「仮縫い」です、お楽しみに。
日時:10月15日、日曜日 12時45分開場 13時開演 終演15時ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:三遊亭わん丈
開口一番 世話人:山本益博
会費:2,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Yoichi Shumputei
私は赤ちゃんが大好きだ。何よりも好きだ。この世のあらゆるジャンル(食・ファッション・娯楽など)全てを総合しても1番好きだ。決して危ない意味ではなく。あの丸いフォルム。すべすべのお肌。屈託のない表情。全てが愛おしい。食べたい。もちろん危ない意味ではなく。本当に赤ちゃんが好き過ぎて、YouTubeでチャンネル登録しているのは赤ちゃんユーチューバーばかり。閲覧履歴がほぼ肌色だ。春風亭一之輔チャンネルか、赤ちゃん系しかフォローしていないので、たまにオススメで流れてくる師匠と赤ちゃんを見間違える時がある。順番に流れて来ると分かるが、フォルムが似ている。決して悪い意味ではなく。そんな赤ちゃん大好きな私に先日、姪っ子が誕生した。これは一大事件だ。今まで街中で見かけても、遠くから眺めることしかできなかった赤ちゃん。私は、自分が汚い人間だという認識があるので、決して赤様には近寄らず、親御さんに席を譲るなどして、その場を離れていた。しかし、その赤ちゃんがかなりの身近に誕生したのだ。それも三親等しか離れていないとなると、こちらから望まざるとも触れ合うことができる。「みてね」という身内だけの写真共有アプリで毎日の様子が確認できる。可愛いが押し寄せてくる。QOLが。クオリティ オブ ライフが爆上がりです。落語の出来が良くなかったり、「あれは失敗だったな〜。」なんて日も、姪っ子の事を考えると全てチャラになります。私の、やってしまった時の合言葉は「姪っ子」です。そんな毎日ですから、何事にも腹が立たなくなりましたし、ふわっふわでハートフルな事しか考えられなくなりました。福島第一原子力発電所の処理水問題ついてどう思いますか?「福島県産の農水産物を食べるな」などの声には、福島出身の母を持つ私はひどく腹を立てております。安全基準を十分に満たしているものを、イメージだけで"汚染水"などと。風評被害も甚だしい行為に、怒りのあまり夜も眠れません。この間食べた、福島県産の桃もウニもめちゃくちゃ美味かった。間違いなく、騒いでいる連中が作った物より遥かに美味しいです。そこで、私が思いついた処理水の正しい放出先は、尖閣諸島周辺です。分かりやすく、バケツに「しょ り す い」と書いて、大人数で手分けして方々に撒きましょう。そうすれば連中は近寄らなくなるでしょう。はい、「姪っ子」!!!
略歴春風亭与いち1998年4月5日生まれ2017年3月、春風亭一之輔に入門。翌年1月21日より前座となる。前座名『与いち』。2021年3月1日より二ツ目昇進。
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9月の落語会は「春風亭与いちの二ツ目日記」の連載でお馴染み「春風亭与いち」さんの登場です。今回は初の試みとなる金曜日の夜開催。日曜日は来場しにくかった皆様もこの機会にぜひご来場ください。お待ちしております。
第十七回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』
日時:9月22日、金曜日 18時45分開場 19時開演 終演20時30分ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:春風亭与いち
開口一番 世話人:山本益博
会費:2,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Osamu Seki
いつの頃からか日本人も常にミネラルウォーターを飲むようになりました。特に夏は冷たいものが飲みたくなりますので、筆者などはサンペレグリノを必ず購入します。ただし、水をそのまま飲むのが苦手な筆者は液体の濃縮珈琲をサンペレグリノで割って飲んでいるのですが。
筆者が子供の頃はミネラルウォーターなど誰も飲んでいませんでした。ミネラルウォーターと言えば、見かけるのは瓶に入った「富士ミネラルウォーター」くらいで何故水を売っているのだろうと不思議に思ったくらいです。そのうち、浄水器なるものをどの家庭でも設置するようになりました。蛇口に取り付けるタイプとシンクの脇に置かれた装置に水を通してその装置から出てくる水を飲むタイプがあったと記憶しています。水道水が美味しくなくなったのとアパートなど集合住宅は屋上にあるタンクから水が供給されますので錆などが混じって濾過する必要が生じるようになったからでしょう。それでもまだ基本水道水を用いていた訳であって、ミネラルウォーターは普及していませんでした。駅や学校など公共施設には冷たい水が飲める機械が設置されていましたし、新幹線にも設置されていました。
筆者がミネラルウォーターを常飲するのを意識するようになったのは、やはりパリに海外研究に出かけることになったからでしょう。フランスの水道水は飲んでも大丈夫なのですが石灰分が多いと言われ、ミネラルウォーターを飲むようにしていました。ただ、気軽なビストロなどでは「キャラフ・ド・ロ」といって水道水を瓶などに入れて無料で出してくれますし、カフェのエスプレッソにはチェイサーの水が付いてきます。「ガズーズ(炭酸)、ノンガズーズ(無炭酸)」と聞かれるのは高級店でこれはもちろん有料です。
昨今、日本のグランメゾンもミネラルウォーターオンリーの店が増えているようです。いつぞやメディア露出で有名だったシェフが水を有料にしていて、それを批判した客に暴言めいた反論をし、失脚したこともありました。彼の店が粉うことなきグランメゾンだったら何の問題もなかったのでしょうが。
パリで驚いたのはスーパーなどでミネラルウォーターを買うと、冷やしているものと冷やされていないものでは値段が違っていたことです。フランスでは珍しい軟水のヴォルヴィックを飲んでいたのですが冷えていると5フラン(約100円)、冷えていないのは1フラン(約20円)だったと記憶しています。
この時、筆者の恩師の故シェレール教授が一緒に食事すると必ずサンペレグリノを所望されるのに遭遇します。フランスの炭酸系ではペリエが有名ですが確かにちょっと埃臭いというか独特の風味があり、それに比べるとイタリア製ながらサンペレグリノは本当に美味しい。筆者もファンになりました。フランス人の炭酸系の定番はバドワで値段も安かったように思います。今では日本のグランメゾンでガズーズは何があるのですかと尋ねるとバドワが選択肢に入っている場合があり、筆者などは驚いてしまいます。というのは、少なくともパリではバドワは庶民の水であって、グランメゾンで出しているところなど皆無だったからです。
それから日本に戻ってからもサンペレグリノを好んで飲むようになりました。最初は瓶で買っていたのですがかさばるのと値段も高いのでペットボトルに切り替えました。ただ、ペットボトルはやはり輸送の過程で炭酸が抜けてしまうのか、圧が弱いように思われます。先日テレビで某タレントさんが同様の発言をされていて、やっぱりと思った次第です。そこで現在はコスト的にはやや高くつくのですが缶のサンペレグリノを購入しています。こちらは密閉されていますので、開けたての爽やかな炭酸の刺激にはたまらないものがあります。また、硬度が700以上あり、ペリエの倍くらいあります。ちなみに、無炭酸ですがフランスを代表するヴィッテル、エヴィアンも硬度はペリエと同じ300前後です。痩せる水として有名なコントレックスになると硬度は1500を超えて、飲むと確かに鈍く重い感じがします。炭酸系のミネラルウォーターの爽やかさは炭酸が弾ける感覚だけでなく、鉱物の金属的なテイストにあると言えましょう。
ちなみに缶のサンペレグリノは330mlです。缶の問題は飲み切れない場合。そこで筆者は330mlのペットボトルのエヴィアンを買って飲んでしまい、空のペットボトルにサンペレグリノの残りを入れておくようにしています。
またその後、ソウルや台北にも何度か出かけることがありましたが、どちらもミネラルウォーターを飲むことが推奨されています。これらはパリとは異なり衛生的な問題らしいのですが、コンビニでご当地ミネラルウォーターを飲もうか、エヴィアンなど外国製にしようか迷ってしまったりします。ただ、炭酸系はないようで、空港やホテルのラウンジでも無炭酸はご当地ものでも炭酸はほぼペリエでした。
思えば今、日本のホテルではビジネスホテルクラスでもミネラルウォーターが部屋に置いてあるのではないでしょうか。パリに最初出かけた際、ホテルに着いてすぐまずは水を買いに出かけたのをよく覚えています。スーパーもコンビニもなく、最寄りのメトロの駅近くのキオスクで買うことが出来てホッとしたものです。キオスクはソウルでもよく見かけました。もちろん、ソウルや台北のホテルの部屋にもミネラルウォーターは必ずおいてありますので探す心配はありません。というか、両都市ともコンビニが日本以上に点在していますので何の不便もないのです。ただ、レストランではミネラルウォーターを註文する必要が生じます。また、庶民的な飲食店では湯冷ましのお水を出してくれるかと思います。
振り返るといつの間にか、自宅でもミネラルウォーターを飲むようになっていました。冷蔵庫には2Lのペットボトルが常備され、母と一緒に近所のスーパーに水を買いに出かけたものです。筆者は日本の軟水のミネラルウォーターが余り好きではありません。両親も亡くなり、一人暮らしになり、2Lのペットボトルは不要になりました。さて、沸かして珈琲で飲むしか用途の無い無炭酸のミネラルウォーターをどうしたものか。水道水も試してみましたがやはり美味しくない。日本の軟水は無味乾燥な感じだし。そして行きついたのがパンナでした。パンナもまたイタリア、しかもサンペレグリノと同じトスカーナ地方のミネラルウォーター。しかも、現在はサンペレグリノ社の傘下にあります。飲んでみて柔らかく、しかも味わいがあります。珈琲を入れても美味しい。硬度は100を少し超えるくらい。日本では100以下を軟水と呼ぶそうですから、ぎりぎり硬水といったところでしょうか。これがいい塩梅で。
ワインはフランスですが、水はイタリア。それが筆者の好みです。
今月のお薦めワイン 「ピエモンテの伏兵――バルベーラとドルチェット――」
「バルベーラ・ダルバ スーペリオーレ 『ヴォルプタ』 2018年 DOC ボスコ・アゴスティーノ」 5100円(税別)
イタリアワインでブルゴーニュに相当するのがピエモンテ州のワインであることはすでに言及してあります。ブルゴーニュワイン、とりわけ素晴らしい赤ワインを産する「コート・ドール」には「ニュイ」と「ボーヌ」という二つのタイプのあることを前回書かせていただきました。そして、ピエモンテのワインにも二つあるいは三つのタイプのあることを今回知っていただきたく思います。
ブルゴーニュとの違いはブルゴーニュではあくまでピノ・ノワールという葡萄のみが用いられているのに対し、ピエモンテでは「バローロ」、「バルバレスコ」といったワインを造り出す「ネッビオーロ」種だけではなく、「バルベーラ」と「ドルチェット」という別の葡萄品種で素晴らしいワインが造られているということです。
また、ブルゴーニュに「コート・ドール」という優れた地区があるように、ピエモンテにも「バローロ」、「バルバレスコ」を生み出す「アルバ地区」が「コート・ドール」に該当すると言えましょう。従って、探すべきは「バルべーラ・ダルバ」、「ドルチェット・ダルバ」という名のワインとなります。
バルベーラとドルチェットの違いと言えば、バルベーラの方が長熟用のワインが造られ、ドルチェットは早飲みタイプのワインが造られます。というのも、「バルベーラ・ダルバ」の多くは小さいオーク樽で熟成させ、「いまなおバローロやバルバレスコの蔭に隠れているとはいえ、その格ではもはや後れを取るものではない」とアンダースンは『イタリアワイン』(早川書房)で評しています。他方、「ドルチェト・ダルバ」は「フルーティーで生き生きしている。その最良のものには打ち勝ち難い魅力がある」とアンダースン。
というわけで、今回は「バルベーラ・ダルバ」を紹介させていただきます。造り手はボスコ・アゴスティーノ。父ピエトロ・ボスコが設立した4haほどの小さなワイナリーを父亡き後継いだ子息のアゴスティーノ氏によるカンティーナ。自然農法での丁寧な葡萄栽培、徹底した醸造管理での高品質のワインは高く評価されています。バリックで14~15ヶ月熟成させたワインはしっかりしたボディで様々な味わいが時と共に次々と現われる実に魅力的な出来とのこと。この機会に是非お試しあれ。
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略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Yoichi Shumputei
お暑うございます。夏休み・お盆休み真っ只中ですね。街には子供たちとご先祖様たちで溢れかえっています。私は中学生の頃、生徒会長をやっておりました。全てはこの学校をより良くする為。自分たち生徒全員が明るく、前向きに、素晴らしい学校生活を送れるようにする為に。などという立派な考えはまるで無く。ただ、人前で喋りたいが為になってしまったので、話す以外の事はてんでダメ。宿題を1教科も終えられないまま夏休みを明けたことも。黒板に未提出者の名前が貼り出されるのですが、全課題に自分の名前が書いてある始末。もはや書かなくてもいいくらい。新学期の集会、生徒会長として全校生徒の前で、「えー、皆さん休み明けですが、気の緩みのない学校生活を送っていきましょう。」お前だろ。緩み切ってんじゃねぇか。偉そうなことばかり言って申し訳ありませんでした。仙台市立柳生中学校でお世話になった皆様。その頃から未だに進歩しておらず。この原稿を提出するのもギリギリなってしまっております。ザ・クロークルームさん、申し訳ありません。この夏、各地の花火大会は4年ぶりの開催でかなりの賑わいとのこと。良いことです。隅田川の花火大会に関しては過去最多の103万人が集まったそうで。調べたら山形県民とほぼ同じ人数。何もそこまでして行かなくても。花火は隅田川以外でもやってるし。こんなクソ暑い最中に人混みに飛び込むなんて信じられない。冷房の効いた部屋でテレ東の花火中継見てる方がよっぽど良い……行ってきました。隅田川。花火めちゃくちゃ綺麗でした。行って良かった。ただ、やはりとんでもない人の数。山形県民をギュッと集めたら確かにこのくらいになりそう。という感じでした。だから、口が裂けても「芋煮は味噌派です」とか絶対言えない。山形新幹線から見える、広ーい田んぼの真ん中にポツンと建っているタワーマンション。あれ誰が住んでるんだ?とかも絶対言えない。そんな緊張感のある花火大会でした。おそらく芋煮戦争を起こさせない為でしょう。警察もかなりの人数動員されてました。電車に乗るのも、道路を渡るのにも一苦労で。二週間ほど経った今も尚、帰れていない人がいるとか。いないとか。しかし職業柄か、周りの浴衣の着こなしに目がいってしまいます。まず、男性。帯が自分で結ぶ普通のじゃなくて、後ろがマジックテープになってるやつ。それは良いのですが、止める位置が腰じゃなくてヘソの上ぐらい。それで歩き回るからどんどん上がっていって乳の下まできている。左手には、一体どこで売ってるんだと言いたくなるくらい巨大なレインボー綿あめ。足元はナイキのエアマックス。令和のバカボンです。女性はおそらくどこかの貸衣装屋で着付けてもらったりする人が多いのか、男よりはマシです。ただやはり、暑いんでしょう。襟がガバガバに開き、裾が紅白の小林幸子くらい広がり。その格好で駆け出してズッコケて。場所は浅草。吉原から逃げ出して来た花魁のようです。もう少しなんとかならないものか。そう言えばこの間、落語会のアンケートで、「与いちの着崩れが酷い。」と書かれていたのを思い出しました。私は昔から自分のことを棚に上げるのです。
略歴春風亭与いち1998年4月5日生まれ2017年3月、春風亭一之輔に入門。翌年1月21日より前座となる。前座名『与いち』。2021年3月1日より二ツ目昇進。
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by Masashi Shimada
8月20日の銀座の仕立て屋落語会はNHK BS時代劇の「大富豪同心」や人気ドラマの映画版「ゆとりですがなにか インターナショナル」への出演が発表され話題が尽きない「林家たま平」さんの出演です。人気も実力もぐいぐいと鰻登りのたま平さんのお噺、お聞き逃しなく。
第十六回『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』
日時:8月20日、日曜日 12時45分開場 13時開演 終演15時ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:林家たま平
開口一番 世話人:山本益博
会費:2,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Osamu Seki
この連載の主宰でもあるThe Cloakroom店主の島田さんが銀座のサロンで行なわれている「銀座の仕立て屋落語会」。七月は三遊亭わん丈さんが高座を務められました。わん丈さんはこの度、真打への昇進が決まり、この落語会は優秀な二ツ目さんを応援するという主旨があるそうで真打になられると卒業とのこと。この落語会での高座は今回を含め残すところ三回だそうで会場は満席でした。筆者はなかなか日程が合わず、他のお二人、林家たま平さん、春風亭与いちさんの高座は拝聴したことがあったのですが、わん丈さんの高座は初めてでその人気の髙さに驚いた次第です。
終演後、真打への昇進のお祝いとして島田さんからスーツのプレゼントがあるとのことでその採寸が公開形式で行われました。あと二回の高座の後もスーツ完成へのイヴェントがあるそうです。こうした噺以外の余興を「大喜利」というのだと世話役の山本益博氏から解説がありました。料理評論家として高名な山本氏ですがその出発点は落語評論であり、まさに「二刀流」のご活躍をなされておられます。
また、「大喜利」も終わったその後にお祝いの会食が山本氏お薦めの日本橋のイタリアン「ファルスィ・ラルゴ」で行われました。総勢十数名、貸し切りでのディナー。オーストラリア産の旬の黒トリュフを楽しむ趣向でした。ワインの選定を筆者はお手伝いさせていただくことになり、乾杯にはシャンパーニュと同じ葡萄品種、そして瓶内二次発酵というまったく同じ製法で造られているロンバルディア州の「フランチャコルタ」を用意していただきました。シャルドネ100%で造られたコンタディ・カスタルディのヴィンテージ物「サテン 2017年」が供されました。白は店が用意されたフリフリ=ヴェネツィア・ジューリア州の五種類の白葡萄をブレンドした「ザモ・ビアンコ 2021年」を。どちらも良い出来でした。
問題は赤ワイン。筆者は手土産に一本持参した方が良いかと島田さんに尋ねたところ、是非持参くださいとのことでしたのでブルゴーニュの「ニュイ=サン=ジョルジュ ラ・プティット・シャルモット 2020年」、造り手はピエール・ティベールを持参しました。開けるにはまだ早いのは分かっていましたが、自宅から持参して持ち歩くことを考えると澱の出ていない若いワインが適していると判断した次第です。ブルゴーニュの澱はボルドーと異なり細かいので一度舞ってしまうとなかなか沈殿せず、サーヴした際ざらつきとえぐみが出てしまい折角のワインが残念なことになりかねないからです。
また過日、宇都宮の「オトワレストラン」を訪れた際、リストにあった「ヴォーヌ=ロマネ オー・シャン・ペルドリ 2020年」、造り手はオーディフレッドを註文し飲みましたが実に良い出来でした。グランメゾンのワインリストにも2020年はリストアップされており、確かにまだ早いとは思われるもののこれはこれでそれなりに飲めると判断したこともあり、2020年のニュイ=サン=ジョルジュを持参したのでした。
さて、会場に着いて赤ワインについて島田さんに尋ねると自分の持参したワインと島田さんが持参されたワインが供されるとのこと。で、島田さんは何を持参されたのかというと、やはりブルゴーニュで「ヴォルネ=サントノ プルミエクリュ 1992年」、造り手はロベール・アンポーでした。アンポー家は相続でムルソーにドメーヌを構えるロベール・アンポーとモンテリを拠点とするポティネ・アンポーに分割されました。が、どちらのドメーヌもカーヴに古いヴィンテージを多く貯蔵しています。また、島田さんが持参されたヴォルネ=サントノは名前こそヴォルネですが畑はムルソー村にあります。
それにしても偶然とはいえ、同じブルゴーニュでも対照的なワインが並んだものです。どちらも「コート・ドール」、ブルゴーニュで最高のワインを産する地区ですが、ニュイ=サン=ジョルジュはロマネ=コンティを筆頭に赤ワインが主の北側の「コート・ド・ニュイ」のワインであるの対し、ヴォルネはモンラッシェやムルソーといった最上の白ワインを産する南側の「コート・ド・ボーヌ」での代表的赤ワインの銘柄ということ。さらに、とりわけヴィンテージが若すぎると思われる2020年とすでに古酒の域に入っている1992年という対照的なものになってしまいました。
ここで問題になるのは飲み頃とはどのくらい経ったワインのことなのだろうか、ということです。もちろん、ボルドーとブルゴーニュでは異なるでしょうし、ヴィンテージの良し悪しにもよるでしょう。さらには個人の好みの問題もあります。
筆者がパリに赴いていた四半世紀前、ボルドーワインに関してある程度のレヴェルのワインは七~八年以降が飲み頃と言われていました。しかし、実際パリのランチでワインを頼もうとすると皆、五年未満の固いワインを好んで開けているのに驚きました。価格的なものあるかと思いますが明らかに好みの問題と分かりました。
ブルゴーニュに至っては、とりわけ二十一世紀に入ってから「早くから飲めて、寝かしても美味しい」というのが当たり前のようになっているようです。本当にそんなこと可能なのか、と正直半信半疑なのですが、早く開けた際の果実味の出し方に注意を払う造り手が多いことは事実です。筆者には上記のオーディフレッドのヴォーヌ=ロマネに代表される凝縮した果実味を追求するタイプと透明感のある軽やかなタイプのものに分かれるように思われます。ただし、どちらも以前流行った樽をかけた濃厚なアルコール度数の高いワインとは一線を画していることに留意する必要があるでしょう。今回持参したティベールはオーディフレッドに通ずる旨味がありました。ニュイ=サン=ジョルジュらしく酸味に特徴があるのも良かったです。
一方、島田さんの持参されたヴォルネは造り手が長熟用を意識して造っていますのでこれまた充分楽しめるものでした。ただ、1992年というヴィンテージがオフヴィンテージでしたのでピークは過ぎていたと言わざるを得ません。その分、古酒としての熟成感やミネラル分の味わいを楽しむことが出来ました。また、多人数での会食用でしたので、一本のワインを開けて飲み進めるスタイルではなく、メインの料理に合わせて抜栓し、グラスですぐ飲み干すことになります。従って、デリケートなワインでも酸化する前に美味しく飲み切れるという訳です。
ボルドーワインにぞっこんだった時代の筆者はとにかく飲み頃にこだわっていました。それでも七~八年から十数年というのが相場で二十年を超えれば古酒として嗜むべきだと認識していました。それがブルゴーニュを飲むようになって思ったのは、飲み頃は気にせず、自分が飲みたい村(アぺラシオン)や造り手を財布と相談しながら決めるのが最良ということです。
コントラストの効いたブルゴーニュの赤を楽しんでいただき、ドルチェにある種メインの黒トリュフのパンナコッタを皆さん堪能され、わん丈さんのお祝いの饗宴も大団円となったのでした。わん丈さんのますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
今月のお薦めワイン 「ブルゴーニュ赤のもう一つのスタイル、ボーヌのワイン」
「ボーヌ プルミエクリュ サン・ヴィーニュ 2017年 AC ボーヌ プルミエクリュ ジェーン・エア」 8800円(税別)
すでにブルゴーニュの赤に関しては「コート・ドール」の北側「コート・ド・ニュイ」を紹介させていただきました。今回は南側の「コート・ド・ボーヌ」の赤ワインをお薦めしたいと思います。ブルゴーニュの赤ワインはあと、ボーヌの南側即ち「コート・ドール」の南側に「コート・シャロネーズ」も優れたワインを産しますが、やはり「コート・ド・ボーヌ」のワインがニュイと双璧と考えられます。
「コート・ド・ボーヌ」はムルソー、モンラッシェといったブルゴーニュ最高峰の白ワインを産する地区ですが赤ワインにも魅力的なアペラシオンが複数存在します。グランクリュこそ「コルトン」しかありませんが、「ヴォルネ」と「ポマール」という赤ワインだけを産するボーヌの赤代表するアペラシオンのワインはニュイのグランヴァンに匹敵する逸品揃いです。タンニックで野趣を感じる「ポマール」、繊細でエレガントな格調高い「ヴォルネ」とその性格も対照的で興味深いものがあります(あと、ブラニィという小さなアペラシオンも赤ワインのみ)。
他の「コート・ド・ボーヌ」の村はすべて赤ワインと白ワインの両方を造っています。その数は多く、「ラドワ」、「アロース・コルトン」、「ペルナン=ヴェルジュレス」、「サヴィニ=レ=ボーヌ」、「ショレ=レ=ボーヌ」、「ボーヌ」、「モンテリ」、「オーセイ=デュレス」、「ムルソー」、「ピュリニィ=モンラッシェ」、「シャサーニュ=モンラッシェ」、「サン=トーバン」、「サントネ」、「マランジュ」となります。
その中でも筆者は中庸の美を感じる「ボーヌ」のワインをお薦めしたいと思います。ボーヌの街は「ブルゴーニュの車軸」と呼ばれ、多くのネゴシアンが拠点を置いています。また、「オスピス・ド・ボーヌ」という旧施療院後の博物館があり、寄進されたワインが毎年競売にかけられています。
今回紹介させていただくのは新進気鋭の女性醸造家、ジェーン・エア氏が造ったボーヌ・プルミエクリュのワイン。メルボルン近郊で生まれたジェーン氏は1998年よりブルゴーニュでキャリアをスタート。2011年にワイン造りを実現させます。近年注目を集めている農家から葡萄を買い付け、自ら醸造する「ミクロネゴス」の代表格の一人として高く評価されています。「サン・ヴィーニュ」の畑は石灰質を含んだ軽めの砂質で、しなやかで果実味を生かした繊細なワインを産します。
ミクロと呼ばれるだけにその生産量はごく少なく、ほどなく売り切れること間違いなし。この機会に是非一度お試しあれ。
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略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Yoichi Shumputei
落語家の春風亭与いち(しゅんぷうてい よいち)と申します。「与一」でも「よいち」でもありません。「与いち」です。ザ・クロークルームさんで毎月開催している「銀座の仕立て屋落語会」に出演させていただいておりまして、そのご縁でこの連載を始めることになりました。月に1回、1000文字程度の駄文ですので、1分半くらいで読み終わるかと思います。トイレで踏ん張っている最中に読むのがオススメです。便通が良くなります。そして、このページをSNS等で「この落語家さん面白いから是非読んで!」と拡散すると、その1ヶ月間はお通じに悩まされることが無くなります。更に、「銀座の仕立て屋落語会」に足を運ぶと、ご家族全員の腸内環境が改善されることでしょう。それでは改めまして自己紹介を致します。1998年4月5日生まれの25歳です。原田さんの「ふなきぃ…」から2ヶ月後の誕生です。出身は、その原田雅彦さんの出身地でもある北海道上川町。から、南に約640㎞の宮城県仙台市。宮城は通貨が牛タンで、家の表札が笹かまぼこ。主な移動手段がずんだ餅。そんな素敵な街です。美味しい食べ物が沢山ある宮城県ですが、私が1番オススメなのは県内にしかない洋食屋の「レストランHACHI」です。卵の含有量が多いふわっふわのハンバーグや、大会で日本一に選ばれたナポリタン。何を食べても美味しい。イチオシのお店です。別に、このお店からお金貰って宣伝している訳ではありません。私の父親がそこの社長というだけです。芸の上での親、師匠は春風亭一之輔。先日、日本テレビ「笑点」の新メンバーになりました。年間900席以上落語を口演している怪物です。よく、落語会のチラシのコピー等に「飛ぶ鳥を落とす勢い」と書いてありますが本当です。師匠が街を歩くだけで、飛んでいるスズメやカラスが気絶して落ちていきます。私は高校1年の時、師匠一之輔の元へ弟子入り志願に行きました。「せっかく高校入ったんだから卒業したら?」と言われ、2017年卒業と同時に入門が許されました。親の影響で小学生の頃から落語を聴いていたからこんな感じになってしまったのでしょう。親御さん達。お気をつけください。中学生の頃には前座さんの落語を腕組みしながら、審査員みたいな面で聴いていました。落語家になった今、1番嫌いなタイプのお客さんです。あの頃の前座の方々、大変申し訳ありませんでした。そんな私でもなんとか"二ツ目"に昇進でき、あちこちで落語を演らせていただいております。目標は、自分がそうだったように、若い世代の落語ファンも増やすこと。地元・宮城にお客さんを呼び込める噺家になること。そして夢は人間国宝!!どうぞ今後ともご贔屓のほど宜しくお願い致します。
略歴春風亭与いち1998年4月5日生まれ2017年3月、春風亭一之輔に入門。翌年1月21日より前座となる。前座名『与いち』。2021年3月1日より二ツ目昇進。
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by Osamu Seki
先日、宇都宮市にある「オトワレストラン」に出かける機会を得ました。同じ栃木県でも日光や那須のようなリゾート地ではなく、ルレ・エ・シャトーの会員でもある「オトワレストラン」ですがオーベルジュのような宿泊施設を有していませんので、駅前か繁華街のホテルに宿泊するしかありません。結局、ビジネスホテルは避け、シティーホテルの「宇都宮東武ホテルグランデ」のローズスイートに宿泊することにしました。このところ地方に出かける際は二食付きのオーベルジュ系か、静岡市の「ビル泊」など食事なしか、の宿泊施設に泊まっていますので珍しく朝食付きのホテル宿泊となりました。こうなるといつも気になるのが「ホテルの朝食」というやつです。
オーベルジュ系であれば、朝食もそれなりに凝ったものが出てきます。ただ、やはり過剰というか朝からそんなに食べれるのかといったゴージャスぶりで元々少食の筆者など残さざるを得なくなり、いつも申し訳なく思うことしきり。結局、あれこれ出過ぎで余り印象に残らないものになってしまうのです。例外だったのは、長野県松本市にある浅間温泉の「松本本箱」に泊まった際のメインダイニング「三六七」での朝食に出たクロワッサンくらいか、と。ここの朝食も地産地消でソーセージだの野菜だの発酵食品だの色々出たのですが、「松本十帖」として同じ敷地にあるもう一つのホテル「小柳」の一階にある「アルプスベーカリー」から焼き立てのパンが出されたのでした。その中にクロワッサンがあったのですが、これは近年稀にみる傑作で、触るだけで手がバターでテカテカになり、噛みしめればジワッとバターが滲み出してくる。その塩味がまた絶妙で、とかく甘くなりがちな生地を菓子でなく、パンとしての存在感を上手に表現している。今でも、あのクロワッサンだけは食べたいと切に思うのです。
ゴージャスな朝食と言えば、「世界一の朝食」を謳っている神戸市にある「北野ホテル」の朝食も宿泊した際、いただきました。これは非業の死を遂げたベルナール・ロワゾーに師事した料理長がその再現を許された「ラ・コート・ドール」の朝食だそうです。朝から生ハムだのとにかく品数が多すぎて、ブランチより量が多いのではと正直引いてしまいました。後述しますようにパリの朝はシンプルなコンチネンタル式で、およそ正反対。ディナーではないのですから、高級食材や豪勢さが「美味」という安直な発想は「場違い」としか思えませんでした。
今回の「宇都宮東武ホテルグランデ」の朝食の目玉は何といっても「餃子」でした。この手のホテルの朝食はバイキングが定番で、「ビュッフェウォーマー」と呼ばれる保温器に入れられた料理はどれも乾きがちで、最良の状態を期待することは出来ません。「餃子」は数種類あり、やはり皮が乾いて固くなってしまっていました。ただ、生まれて初めて宇都宮餃子なるものを食しました。味の方もなかなか個性的でそれなりに楽しむことが出来ました。ただ、驚いたことに卵料理がなかったのです。ご飯用の生卵はあったようですが、目玉焼きやスクランブルエッグの類が皆無。いくら卵不足で値段が高騰しているとは言え、役者不足過ぎます。それを補充するほど料理の品数がある訳でもなく、正直ガッカリでした。
やはり、バイキングでも卵料理に関してはオーダーで作ってくれるホテルの朝食が望ましいと思います。ただ、これも筆者はとんでもない目にあったことがあります。大阪の一流ホテルでのこと。卵料理は目玉焼き、スクランブルなどその火の入れ具合をオーダーして、調理場で作られたものがテーブルに出される方式でした。筆者はスクランブルエッグを注文。出てきた料理は火の通し方も良く、半熟で美味しそうでした。ところが一口食べた途端、塩辛い。明らかに塩加減を間違えたのです。すぐにサーヴィスを呼び、塩辛くて食べられたものではないと皿を突っ返しました。しばらくして、運ばれてきた皿を見て愕然としました。明らかに量が倍くらいになっていたのです。嫌な予感がしました。案の定、相変わらず塩辛いのです。おそらく返却されたスクランブルエッグをフライパンに戻し、さらに卵液を入れ再生しようとしたのでしょう。塩の入れ過ぎは再生不可能、作り直すしかないということをこの料理人は知らないのでしょうか。呆れ返り、ただちに「作り直し」をサーヴィスに命じました。名だたる一流ホテルでこの体です。個別にするとこうしたミスが生じます。その点、「ビュッフェウォーマー」であれば、あの容器全体が塩辛いなどという凡ミスはさすがにないかと思われます。ただし、スクランブルエッグなど炒り卵になってしまいますが。
結論から申し上げれば、筆者にとって一番印象に残っている朝食はパリのホテルの部屋で食べたコンチネンタル式のものでした。いわゆる朝食室でのバイキング式はある程度大きなホテル。筆者の泊まった部屋数の少ないデザイナーズホテルなど、朝食はルームサーヴィスが当たり前。朝起きると専用の電話番号に電話をします。質問は二つ。ジュースは何にするか。そして、コーヒーかカフェオレか(紅茶はティーバッグと白湯が来ます)。この二問に答えるとしばらくして部屋のチャイムが鳴ることに。チップを渡して、朝食を中に。内容は筆者の場合、生搾りオレンジジュース、カフェオレ。そしてパンの盛り合わせ、以上。これがコンチネンタルの朝食です。もちろん、パンは数種類。バターやジャムも付いて来ます。
炭水化物嫌いの筆者としては異例の事態ですが、その後、昼も夜もフランス料理にワインでその際パンは食しませんから、朝はシンプルなパンだけがかえってサッパリしていて、これから続く怒涛の脂肪やたんぱく質への絶妙の助走になっていたように思われます。また、別に高級なパンではなさそうなのですが、これが実に美味しいのです。先ほどのクロワッサンではありませんが、東京の高級なブランジュリーのクロワッサンほど余分な味がする。バターと塩味だけであとは生地そのものの味だけで良いのに、だいたい妙な甘さがあるのです。バケット、クロワッサン、デニッシュなどついつい全部食べてしまいます。卵もなければ、ソーセージもない。それでも納得の満足感がありました。
おそらくそれはパリだったからでしょう。昼も夜もフランス料理とワインが最低一週間続くなんて、日本ではあり得ないでしょうから。そうなると、結局、少量のパンと卵料理、そしてソーセージくらいはいただきたいか、と。コーヒーも出来れば美味しいものが嬉しいのですが。しかし、これらをクリアするのはなかなか至難の業か、と。ホテルの朝食は筆者をいつも悩ませるのです。
今月のお薦めワイン 「ブルゴーニュの白の双璧の一つ『シャブリ』のニューモデル」
「シャブリ 2020年 AC シャブリ ドメーヌ・モロー・ノーデ」 5300円(税別)
このクールもハーフターンしたところ。そろそろ暑さも増してきましたし、スターターがシャンパーニュでしたので、ここで白ワインで一息つくのも乙か、と。
シャンパーニュときたらやはりシャルドネですのでブルゴーニュの白を。手頃ながら意外にヴァリエーション豊かな「マコン」や例外的にアリゴテでアペラシオンを有している「シャロネーズ」の「ブーズロン」といった変化球もあるのですが、ここはやはり双璧の「ボーヌ」のモンラッシェやムルソーか「シャブリ」のどちらかにしましょう。
ということで、コート・ドールに頼りがちなのも何なのでここでは「シャブリ」を選ばせていただきました。ブルゴーニュの北の飛び地、ヨンヌ県にある「シャブリ」はその「キンメリジャン」と呼ばれる牡蠣や貝類の化石などが混じった石灰質の特殊な土壌によってミネラル分を多く含んだワインを産しています。
ひと昔、「生牡蠣にはシャブリ」というのが定番で、「シャブリ」と言えば緯度が高いこともあり、酸味の強いキレの良さが売りで、モンラッシェやムルソーは酸よりコクのある味わいが魅力と対照的な比較がなされたものでした。
しかし、実際のところ、格付け畑で造られるシャブリは酸が穏やかでエレガントなスタイルなものが多く、また昨今のビオブームで造られる自然派のシャブリは果実味を生かしたもので酸を強調するスタイルではなく、シャブリもまた多彩な味わいのワインを楽しむことが出来ます。
今回紹介させていただく「モロー・ノーデ」のステファン・モロー・ノーデは、アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムール、パトリック・ピウズと並んでシャブリのニューゼネレーション御三家の一人として高く評価されています。2004年にドメーヌを継承したステファン氏の造るシャブリは一般的な硬い柑橘系の酸の強いものとは異なり、「ジューシーでセクシーな果実味が混じり合った非常に生き生きとしたミネラル感」が魅力と評されています。
また、ロワール地方は「プイィ・フュメ」の「シレックス(火打ち石)」というワインで一世を風靡した故ディディエ・ダグノーがエチケットのデサインに協力したというエピソードからもステファン氏のワインがフランスの白ワインを代表する資質を持つものであることが推測されます。
是非、この機会に新時代のシャブリをご堪能あれ。
ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで
略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Masashi Shimada
7月2日の銀座の仕立て屋落語会は今最も話題を集める落語家のおひとりと行って間違いない三遊亭わん丈さんの登場です。
今年4月に15人抜きの抜擢で真打ち昇進が発表されたわん丈さん、こちらも有難い事に沢山のお客様に申し込みをいただいています。
二つ目さん応援のための本落語会ではわん丈さんは残り少ない出番となります。来年の真打昇進までのこの貴重な期間にわん丈さんの落語を体験するのはとても価値のあること、まだ少しお席はございますのでこのもの凄く貴重な、噺家さんと距離がもの凄く近い落語会に是非ともご参加ください。
落語会終了後にわん丈さんがご祝儀のオーダースーツの生地を選んだり、採寸されたりといったところを見守るというお楽しみがございます。落語会のお客様はご自由にご参加ください。
第十五回『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』
日時:7月2日、日曜日 12時45分開場 13時開演 終演15時ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:三遊亭わん丈
開口一番 世話人:山本益博
会費:2,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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