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『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』開催のお知らせ

『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』開催のお知らせ

 早くも2度目の登場、前回もウケにウケ、大きな笑いを巻き起こした三遊亭わん丈さんの登場です。  さてわん丈さん、男前で芸も達者、物販も好調と言うことなし。「落語家の着物たたみ方講座」も大好評だった前回、披露いただいたお噺は「ガマの油」「さじ加減」の二席。今回はどんなお噺をご披露いただけるのでしょうか。  進化を続ける『銀座の仕立屋落語会』、当会のプロデューサー山本益博さんの前座噺もパワーアップ。名人芸を長年目撃し続けてきた益博さんにしかできないとっておきのエピソードを聞かせてくれます。前回は「志ん朝の宿屋の富」という秘密のお噺。落語好きには堪りません。  さて、最近もやっぱり色々ありますが、大人はやっぱりお洒落して、シャレの一つも効かせてくってことで。 第六回 『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』 日時:10月2日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:三遊亭わん丈 司会 プロデュース:山本益博 会費:3,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)

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『美食通信』 第二十一回 「エスプレッソ・トニックよ、いずこに」

『美食通信』 第二十一回 「エスプレッソ・トニックよ、いずこに」

 筆者の珈琲好きにつきましてはすでに「フレンチスタイルの珈琲店」のお話で披露させていただきました。しかし、筆者には他にも好きな珈琲があります。それは「エスプレッソ」です。大学に入学してフランス料理を食べ歩き始めた際、食後に出されるエスプレッソに一口で魅了されました。  その語源は外に(ex)押し出す(press)こと。蒸気の力で一気にその成分を凝縮して抽出した濃厚なる液体。自らの心の内なるものを外に押し出すエクスプレッションは「表現」となり、その抽出の素早さはエクスプレス、列車の「特急」の意となる、想像力に富む名前の珈琲。  フランスやイタリアで「カフェ」と言えば、「エスプレッソ」のことを指します。私たちが日常飲んでいるような珈琲は「アメリカーノ」となります。そう、エスプレッソより薄い珈琲はすべてアメリカーノ。  パリを歩いていると喉が渇く。日本のように湿度が高くないからです。フランスで飲んだ同じワインを日本で飲んでもあまりおいしく感じないと多くの方がおっしゃります。リーファーで輸送されてきてもです。それはおそらく湿度の関係だと筆者は考えます。ヴァン・ド・ソワフ、渇きを癒すワインという言葉があるくらい。湿度の低い環境で飲むワインは喉をスムースに通っていくのではないでしょうか。  自動販売機のないパリで喉が渇いたら、街のあちこちにあるカフェに入ります。時間がなければカウンターでエスプレッソをクイッとひっかけ、時間に余裕があればテーブル席に座ってのんびり通りを行く人々を眺めるもよし。「ドゥミ」と呼ばれるグラスのビールを飲んでいる人も結構います。「オランジーナ」や「ジョケル」といったジュースの類はやはり子供っぽいので頼むのを躊躇います。やはり、エスプレッソを頼んでチビチビやるもよし、一気に飲み干し、あとはのんびりするもよし。この際、カウンターとテーブルでは同じ一杯のエスプレッソの料金は相当異なります。テーブルで過ごす時間の代金がかかるからです。スーパーで冷えたミネラルウォーターと常温のミネラルウォーターの価格が違うように。  日本にそんな店は滅多にありません。いや、ありました。とても素敵な店が。表参道、青山通り沿いの紀伊國屋スーパーの裏に「ソル・レヴァンテ」という本格派のイタリアンカフェがあったのです。滋賀の老舗和菓子店「たねや」がオーナーでメインはイタリア菓子の店でした。入り口を入って左側にカウンター、右側がお菓子のショーケース。その奥にカフェスペースがありました。料理も出していて、アンティパストにパスタ、ドルチェが複数出てメインとさえ言えるランチは予約できないのでいつも女性たちの行列が出来る人気店でした。ワインも揃えていたのにディナーはなし。さすが「たねや」の殿様商売と感心しきり。  特に見事だったのはカウンターでした。特大のエスプレッソマシーン。優秀なバリスタ。  近くのイタリアンで働く方々の憩いの場でした。筆者はそのエスプレッソの美味しさはもとより、バリスタとの会話、さらに彼らがイタリアから買ってくるグラッパがとにかく美味しくて、食事の前にグラッパをひっかけ、エスプレッソで〆てレストランに向かうようにしていました。何せ早く店じまいしてしまいますので。そして、エスプレッソの値段はカウンターで飲むと160円。奥のカフェで飲むと480円。三倍だったと記憶しています。これぞ、ヨーロッパ!ところがある日、あっさり閉店してしまいました。  閉店と聞き及び、バリスタ氏に何処に行けばこれからも美味しいエスプレッソが飲めるの、と尋ねると広尾の「イル・バール・ピエトレ・プレツィオーゼ」を薦められました。残念ながら広尾に行く機会があまりなく、女性シェフの大塚さんの「レギューム」に伺う時くらいなのですがある夏、その「レギューム」に出かける前、プレツィオーゼに寄ったのです。  すると入り口の看板に「エスプレッソ・トニック」がお薦めと。エスプレッソ歴四十年になろうという筆者、初めて聞く名前で早速頼んでみることに。その名の通り、エスプレッソをトニックウォーターで割ったもので、これが飲んでみると美味。エスプレッソの苦みにトニックウォーターの酸味と甘みが相まって複雑な味わいに。炭酸なので爽快感もあり、夏にはピッタリ。バリスタ氏に聞くと、自分は生のライムを絞って加えて出しているとのこと。だからかフレッシュな爽やさが心地よく、夏はエスプレッソ・トニックにしようと思った次第。  市販はされていないか調べたところ、二〇一〇年頃北欧のカフェに登場した新しい飲み物のようで、アサヒ飲料の「ワンダ」から「コニック」という商品名で売られていましたので早速購入してみました。市販品にしてはまずまずの出来でしたがやはり甘過ぎる。しかし、翌年にはもうなくなっていました。スタバでも限定で出したが人気がなかったようでリピートされなかったようです。それ以降、専門店でもなかなか見かけることがありませんでした。  ところが、旅先でエスプレッソ・トニックに遭遇することに。珈琲中毒の筆者は旅先でもまず珈琲専門店を探します。このご時世、何処でも美味しい珈琲店の一軒や二軒は必ず存在する。昨年九月、小学校四年生までの七年間を過ごした長野県上諏訪市に出かけた時のこと。「アンバード」というお洒落なコーヒーショップに立ち寄りました。小さな店ですが自家焙煎で若いご夫妻?が切り盛りされていました。メニュを見てビックリ。エスプレッソ・トニックがあるではありませんか。カウンターに様々な豆が並んでいるので失礼とは思いながら、エスプレッソ・トニックを注文。またこれが本格的でエスプレッソとトニックウォーターが別々に出てきて、自分で混ぜるというシステム。泡が結構出ますのでお気をつけてと言われたのにもかかわらず、大丈夫だろうと一気に注いだら案の定、昔懐かしい「もこもこアイス」のように急に泡が立ってグラスから溢れてしまいました。大失態。しかし、実に美味しいエスプレッソ・トニックでした。また、諏訪に行く機会があれば子供の頃のご馳走だった「うなぎの寝床 おび川」と「アンバード」だけはリピートして出かけたいと思っています。  そして、今年の五月、群馬県前橋市の「白井屋ホテル」に出かけた際にもエスプレッソ・トニックに出会ったのです。ホテルの敷地内にブルーボトルコーヒーがあったのですが別に前橋に来てまで飲むこともないと思い、近くを探すと「アーツ前橋」という美術館に併設された「ロブソンコーヒー」なる店を発見。美術館の一角ですのでこれまたなかなかお洒落なお店でした。調べると地元前橋の珈琲専門店で二〇一〇年創業とのこと。現在、前橋市内に三店舗を展開し、その中の一店でした。エスプレッソのヴァリエーションが充実していて、その中にエスプレッソ・トニックも。前橋でもお目にかかれるとは。ここはやはり、エスプレッソ・トニックを注文させていただきました。  なんだか旅先でしかお目にかかれない飲み物になってしまっていますが筆者はエスプレッソ・トニックのファンです。今年の九月は亡き両親の実家のある静岡市に出かけますのでまた何処かでエスプレッソ・トニックにお目にかかれることを願っております。     今月のお薦めワイン  「南イタリアを代表する葡萄品種  アリアニコ」 「アリアニコ・ムニフィコ 2018年 DOC サンニオ・アリアニコ ヴィニコラ・デル・サンニオ」 2800円(税別)  前回、南フランスの赤ワインをご紹介させていただきました。ですので、今回はそのイタリア版、南イタリアの赤ワインを紹介させていただきます。すでに、ピッツェリアやトラットリアなどでよく見かける気軽でポピュラーなモンテプルチアーノ・ダブルッツォが登場していますがアブルッツォ州はイタリア半島の長靴の真ん中辺りにあります。ですので、モンテプルチアーノ種の葡萄以外でさらに南、長靴の底の方で造られている赤ワインの中から代表的なものを選ぶことになります。  この際、イタリアワインは州ごとにワインを分類し、しかも複数の州で同じ葡萄品種のワインを造っていますのでどうしても葡萄品種で選ぶことになります。念頭に浮かぶのは、プーリア州のプリミティーヴォ、ネグロアマーロ、そして今回紹介させていただくカンパーニャ州、バジリカータ州で造られているアリアニコです。プリミティーヴォはアメリカを代表するジンファンデルの祖先でその起源はクロアチアと言われています。さらにネグロアマーロはモンテプルチアーノにどちらかというと近いので、ここではギリシアに起源を有し、ジャンシス・ロビンソンが「イタリアで最も優れたワインの一つになる可能性を秘めている」と評するアリアニコ種から造られるワインを紹介させていただこうと思います。  その特徴をバートン・アンダースンは「ネッビオーロと同様に力と洗練さをあわせ持つ堅固でタンニンに富む長命のワインを造る」と端的に解説しています。いわゆるフルボディで深みがあり、はっきりした酸と渋み、寝かせて飲むタイプのワインが出来ます。中でもナポリを州都とするカンパーニャ州の「タウラージ」はこのアリアニコの赤に特化し、DOCGを獲得するに至っています。  タウラージは5000円前後のものが主流ですので、今回は同じカンパーニャ州で比較的最近DOCを獲得した「サンニオ」で造られているアリアニコを紹介させていただきます。サンニオはタウラージよりは内陸に位置し、その地で五十年以上にわたりワイン造りを続けるヴィニコラ・デル・サンニオ社の製品です。「ムニフィコ」とは「豊かな、フルボディ」を意味するとのこと。その名の通り、タウラージほどの濃密さはないものの、深い赤、品格のある香り、しっかりしたタンニンと酸のバランスの良い味わいとアリアニコ種の魅力を楽しめること間違いなし。是非、一度お試しあれ。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで 略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』開催のお知らせ

『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』開催のお知らせ

 さぁお待ちかね、2回目の出番、春風亭与いちさんによる「銀座の仕立屋落語会」五回目の開催です。  前回披露いただいたのは「片棒」と「佐々木政談」。今回はどんなお噺をしていただけるのか楽しみなところです。 そして三遊亭わん丈さんから始まった「落語家によるお着物たたみ方講座」、今回の与いちさんではどんな展開になるのでしょうかこれもまた腕の見せ所。  今回ももちろんプロデューサーの山本益博さんが司会進行、趣向を凝らしてお届けします。  なんだか色々ありますが、シャレの一つも言えなくなったらお仕舞いよと、お洒落していきましょうってぇ話でございます。 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。 第五回 『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』 日時:9月11日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:春風亭与いち 司会 プロデュース:山本益博 会費:3,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)

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『美食通信』第二十回「歌舞伎町の夜は更けて―ホストクラブそして韓国料理―」

『美食通信』第二十回「歌舞伎町の夜は更けて―ホストクラブそして韓国料理―」

 繁華街が苦手。銀座、六本木、とりわけ歌舞伎町などと言ったら、何か闇の世界に引き込まれてしまいそうでまず一人では立ち入りません。筆者の贔屓にしているレストランをお考え下さい。いにしえの代官山のはずれの「ヴィスコンティ」に始まり、元代々木町の「シャントレル」、神泉の「ビストロ・パルタジェ」、大阪は谷町四丁目の「コション・ローズ」に北浜の「マキュア(旧ユニック)」と皆、喧騒から離れた隠れ家的な立地にあります。  思えば、初めてパリに出かけた際、何の土地勘もなく便利だろうと思って借りたレジデンスがシャンゼリゼ通りを北に一本入ったポンチュー通りだったのです。そこはリドなどのある歓楽街で古い建物をリノベした部屋は夜中もその賑わいの音が聞こえ続け、カーテンの隙間からはネオンの色とりどりの光が差し込むというそれは苦痛の日々でした。夜中、頻繁に鳴り響く救急車の音。当時、パリは銃はないと言われていましたが不安でまともに眠れなかったのをよく覚えています。これに懲りて、翌年からは左岸のサン=ジェルマン=デ=プレ裏、ジャコブ通りの「ラ・ヴィラ」に泊まることにしたくらいです。  しかも、今回歌舞伎町に出かけたのはホストクラブに伺うというなかなかヘビーなミッション。本『美食通信』主宰の島田さんが是非ホストクラブのスーツ事情をリサーチされたいとのことで同行させていただいた次第です。筆者、2018年に編著『イケメンホストを読み解く6つのキーワード』(鹿砦社新書)を出版したのが縁で、歌舞伎町を中心にホストクラブをはじめ多くの事業を展開しておられるスマッパグループ会長の手塚マキ氏と懇意にさせていただいております。また、毎年六月恒例の伊香保のワイン会に昨年から手塚さん、島田さんにも参加していただいています。で、先日の伊香保で最後まで起きていたのが筆者も含む三名でホストにおけるスーツの話になった訳です。  今年九周年を迎えた現在唯一のホスト月刊誌『ワイプラス』は当初、私服のホストを「ネオホス」、スーツのホストを「バトラー」と命名して対照的なスタイルを軸に展開していました。それがいつしか、スーツ系は消え、私服のスタイルがBTS系の「新宿男子」と黒系でちょっとダークな雰囲気の「裏宿」スタイルの二極に至っています。それでもスーツ着用のホストクラブは少数派とはいえ健在で、スマッパグループ七店舗のホストクラブのうち、全員がスーツを着用しているのは一店舗。その「スマッパ!ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン」に伺うことになったのです。  スマッパグループではホスト文化に気軽に触れていただけるよういくつかの「ツアー」が用意されています。その一つに「ワインツアー」があり、それを利用させていただきました。定額で所要時間は二時間ほど。都合がつけば、二店舗回ることもできるようです。初めて出かけられた島田さん、伊香保のメンバーでフードコーディネーターのタカハシユキさん、東京ウォーカー編集長を務められた加藤玲奈さんは楽しんでおられたようですが、以前按田餃子の按田優子さんたちと同じツアーを利用したことのある筆者は何回出かけてもどうも馴染めません。手塚会長が島田さんのところで作られたスーツを着てわざわざ挨拶に来て下さったので、筆者は手塚さんと話してばかりでした。  というのも、男性が客としてホストクラブに出かけるのに筆者はためらいがあるのです。やはり、女性客のための社交の場ですのでホストも男性客は扱いづらいと思うからです。では、筆者はホストの何に魅かれるのか。それはまず、個人的にはそのイケメンぶりとファッションです。しかし、セクシュアリティ研究者として興味があるのはその「ホモソーシャル的集団」に他なりません。例えば、キャバクラや銀座の高級クラブでもいい、ホステスさんのいるお店。従業員全員が女性だけの店ってありますでしょうか。支配人、ボーイ、いわゆる「内勤」に男性が必ずいるはずです。華やかなホステスさんを支える寡黙で頼りになる男性陣の存在は必須です。ところがホストクラブの従業員は裏方も含め全員男性。こうした男性だけの集団を「ホモソーシャル」と申します。「ホモソーシャル」と「ホモセクシュアル」との微妙な関係性はジェンダー研究の重要なテーマの一つ。若くして亡くなった女性研究者セジウィックの『男同士の絆』はその代表的著作です。  女性相手の接客業ながら、男だらけの日常。駆け出しのホストはマンションの一室で集団生活をしているわけで、ジャニーズ事務所の「合宿所」のようなものです。もうこれはボーイズラブ的な雰囲気にあふれているわけで、このよく言えば捻りのある複雑な、悪く言えばある種歪んだ関係性こそ筆者がホストに魅かれる理由です。ですので、女性に接客しているホストさんたちを眺めていても心ここに在らずという訳で。  まあそれはさておき、全員がスーツを着用されたお店はやはりきちんとされている。手塚さんがおっしゃっていましたが、テーブルにお酒や水などを運んで置くとき、跪いて目線を座っているお客様と同じにしてから置くといった所作を守っているのはこの店くらいだろう、と。ただし、スーツの着方には色々問題があるようで手塚さんはもとより島田さんのファッションチェックも女性陣は楽しんでおられたようでした。  あっという間の二時間は過ぎ、再び歌舞伎町の雑踏の中に連れ戻された四人。食事がまだでしたので軽く何処かでしようということに。手塚さんからは美味しいピザ屋があると教えていただいていたのですが、「千円でベロベロ=千ベロ」の本も作られた加藤さんから四川料理か韓国料理はどうとの提案が。店にあてがあるようです。筆者はすかさず韓国料理が良いと。すぐ裏手が新大久保なのでそちらへ移動するかと思いきやホストクラブからすぐのちょっと路地を入ったところにビニールテント張りのどう見ても韓国料理店があるではありませんか。歌舞伎町の闇に映える明るい店構え。ここは鍾路(チョンノ)かと錯覚したくらい。これだこれ、ホストクラブの後は韓国料理に限ると妙に納得した筆者。  「テンチョ」というその店は気のいい店長さんがこの日は一人で切り盛りされていて、客も韓国人ばかりで料理も本格的。セリのチヂミに感嘆し、「チュムルロク」という豚肉の甘辛ダレの鍋が最高。昔給食で脱脂粉乳を飲まされたアルマイトの器でマッコリを飲むのも何とも乙ではありませんか。  こちらもあっという間に帰る時間となり、筆者一人だけ別の駅に向かうので急に不安に。島田さんに道を調べてもらい、一刻も早くこの街を抜け出さないと、と一目散に歩く歩く。目印の公園が見えてきたときはちょっとホッとしましたがまだここは歌舞伎町。もう一息と歩みを早め、西武線の駅入り口が見えた時、ようやく安堵の気持ちが。  毎日が「祭」の歌舞伎町で働く人々のパワーに圧倒された夜でした。島田さん、ご招待いただきありがとうございました。   今月のお薦めワイン  「フランス最大のワイン産地 ラングドック=ルーション」 「フォジェール 2016年 AOP フォジェール カルメル・エ・ジョセフ」 2500円(税別)    ブルゴーニュ、ローヌとローヌ河を下って行くと地中海に出ます。南仏のワイン、とりわけローヌ河の西側に広がるラングドック地方は「オック語」という意味で隣接するルーション地方と共にラングドック・ルーションのワインとして知られています。 さて、「オック」という言葉に聞き覚えるのある方も多いかと思います。ラングドック・ルーションはフランスワイン全体の40%近くを生産するも、アペラシオンを名乗るワインは少なく、一ランク下の以前ヴァン・ド・ペイ(地酒)と呼ばれていたワインの生産量がフランス全体の80%を占めるという一大デイリーワインの産地なのです。そして、その代表格が「ヴァン・ド・ペイ・オック」でした。  オレンジ色のエチケットにフクロウのマークが印象的な「ミティーク」、ボルドーに匹敵する高品質のワインを生産するドマ・ガサックの造るデイリーワイン「テラス・ド・ギレム(現、ムーラン・ド・ガサック)」は日本でもお馴染みのカリテプリな日常使いのワインですが皆、ラングドック・ルーションのものです。  そのようなラングドック・ルーションはまた、フランスにおける葡萄品種別のワイン=ヴァラエタルワインの一大産地でもあり、あらゆる葡萄品種が栽培されています。しかし、本来はグルナッシュ、カリニャンと言った葡萄の産地であり、アペラシオンを名乗るワインはこれらの地品種を用いて造られています。  今回紹介させていただくフォジェールはラングドックを代表するアペラシオンの一つです。上記の地品種を50%以上使用すること。とりわけ、カリニャンの10~40%の使用が義務付けられています。造り手のカルメル・エ・ジョセフは1995年設立のメゾン。カルカッソンヌ近くのモンティユ村にあるラングドック・ルーションに特化したネゴシアンです。  このフォジェールのセパージュはシラー50%、グルナッシュ30%、カリニャン20%。以前紹介させていただいたコート・デュ・ローヌとはカリニャンの有無に違いがあります。両者を比較することで、果実味をより生かしつつ独特のスパイシーさが魅力で、ローヌとは異なった凝集性よりは広がりを持った南仏のワインのある種のおおらかさを堪能することが出来るかと思われます。これを機に地酒クラスばかりではなく、ラングドック・ルーションの様々なアペラシオンワインも是非お楽しみいただければ幸いです。  ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで 略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ

『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』開催のお知らせ

 さあみなさん、銀座の仕立て屋落語会も二周目に突入です。今回で2回目の登場、林家たま平さんによる、第四回『たま平クロークルーム』開催をお知らせします。 銀座の仕立屋落語会、林家たま平さん、春風亭与いちさん、三遊亭わん丈さんと襷を繋ぎ、早くも一周回ってまいりました。 2周目となる今回はどんなお噺が聞けるのでしょうか。前回以上の盛り上がりを期待しましょう。  今回ももちろんプロデューサーの山本益博さんの楽しい解説で、落語が初めての方でも楽しみやすい落語会になっています。安心してお越しください。  どうです、ダンナ、ちょいと銀座で落語でも洒落てみませんかって、何でもかんでもネタにしてシャレを効かすのが大人のお洒落ってぇもんですぜ、銀座でひとネタ、いかがです。   第四回 『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』 日時:8月7日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:林家たま平 司会 プロデュース:山本益博 会費:3,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)  

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『美食通信』  第十九回  「誕生年のワイン」

『美食通信』 第十九回 「誕生年のワイン」

 先日、人気お笑いコンビがMCのバラエティー番組で、2000年生まれの女性アイドルに送る誕生日プレゼントを出演者が競い合うという企画を放映していました。最下位の方が他の方全員の分も支払うという「ゴチになります」方式。Diorのコスメ、高級ハンドクリーム、マスクメロンと二万円から三万円のなかなか高額なプレゼントが並ぶ中、MCコンビのツッコミの方が誕生年のワインを購入されていました。ボルドーの第五級、ポイヤックのシャトー・クレール=ミロンの2000年を購入されていました。25000円。クレール=ミロンはボルドー五大シャトーの一角、シャトー・ムートン=ロートシルトのロートシルト(ロスチャイルド)家が同じポイヤックに所有するシャトーで、さらにもう一つ第五級のシャトー・ダルマヤックもポイヤックに所有しています。クレール=ミロンの方がダルマヤックより高く評価されていてお値段もお高い。2000年はミレニアムの上、良いヴィンテージでしたのでムートンは50万円ほどしてしまっています。そう思うと、同じ造り手で25000円はまずまずとも言えます。  実は昨年、毎年恒例の伊香保での泊りがけのワイン会で2000年のムートンを飲む機会を得ました。この通信を主宰下さっている島田さんも同席されていました。まだ早いくらいで見事な出来でしたがさすがに高価過ぎる。五大シャトーは尋常ではありませんが2000年はどのワインも高い値がついているのも事実です。  そして、かく言う筆者も先日、若い友人のバースデーを祝うのに誕生年の1995年のワインを開けました。ブルゴーニュのセラファン・ペール・エ・フィスのジュヴレ=シャンベルタン・ヴィエイユ・ヴィーニュにしました。というか、それが精一杯でした。レストランでの会食の折でしたので小売価格の二倍を覚悟しておく必要があります。ですので、レストランでバースデーワインを開けたいと思われたら、持ち込みが可能な店でご自身で準備したものにされることをお勧めします。  誕生年のワインは三十歳くらいまでなら比較的すぐ見つけられると思います。しかし、それ以上になると良いヴィンテージは見つかりますが高価であり、ヴィンテージが悪いと早飲みになってしまいますのでなかなか見つからず、どちらにせよそれぞれヘヴィーな状況に。  随分昔のことになりますが、1996年のこと。ちょうどパリに出かけることになりましたので知人の誕生日にと1965年のワインを探すことにしました。当時はまだインターネットが普及していませんでしたので、ワインはとにかく足で探す時代でした。現在は醸造技術が進歩して、以前ほどワインの出来不出来の差がなくなっています。ところが60年代になりますと不出来な年は散々で生産量は少なく長持ちしませんのでどこを探しても見つからないことに。1965年は60年代最悪の年と言われており、パリなら大丈夫だろうとたかをくくったのが裏目に。いつもヴィンテージワインを購入していたギャラリー・ヴィヴィエンヌのルグランならあるだろうと思ったのですが1965年はないとのこと。チェーン展開していたニコラの総本山、マドレーヌ広場の本店に出かけてみたのですが、ヴィンテージポルトならあるがボルドーはないと。他にいくつか店を回ったのですがどこにもありません。途方に暮れ、何とかワインショップの情報をとゴー=ミヨのワイン雑誌を購入しました。当時唯一の情報媒体でしたので雑誌にはワインショップの広告が載っていたのです。それらを探していると15区のあるワインショップがヴィンテージ物の立派なリストを載せていたのです。  ここならあるのではないか。早速翌日、その店を訪れました。すると五大シャトーの一つ、オー=ブリオンの1965年があるとのこと。蔵出しで1990年にリコルクされたもので、カーヴに寝かせていた際、エチケットがボロボロになってしまったらしく張り替えてあったのですが、元のエチケットを残したまま反対側に新しいエチケットを貼っていたので極めて珍しいブテイユ(ボトル)だったのです。もちろん、即刻購入しました。古いオー=ブリオンをたくさん所持していたようで他のオフヴィンテージもどうかと言われましたがそんな余裕はなく、ともかく入手することが出来ました。その知人とワインを一緒に開ける機会は逸してしまいましたが、後年某ワイン会で開けてみることにしました。リコルクした際、ワインを補填したのか予想以上に飲めたのです。その珍しいブテイユはそのまま保存することにしました。  古酒は通常飲むワインとは別の次元ですので枯れた感じを楽しむことが大事。もちろん傷んでしまっていてはいけませんが、果実の香り(アロマ)ではなく熟成香(ブケ)を嗅ぎ分け、ミネラルなど複雑な味わいを堪能することが肝要です。偉大なヴィンテージは抜栓後徐々にその眠りから覚め深い年輪を感じさせ、静かな感動を覚えることでしょう。残念な年のワインは開けたらすぐにピークが来ますのでそれを楽しみ、酸化を覚悟して後半に臨みましょう。  その点、三十年くらいまではどのワインもそれなりに楽しめます。2000年であれば、先述のようにムートン級のグランヴァンならまだ寝かせた方が良いくらいです。ですので、クレール=ミロンでしたら充分美味しくいただけると思われます。「新樽の魔術師」と言われたクリスチャン・セラファンが新樽率100%で造ったヴィエイユ・ヴィーニュも1995年が良作年だったこともあり、後半の方が美味しさが増してきて驚きました。  ただし、オールドヴィンテージはその状態が開けてみないとわからないというリスクが付きものであることをお忘れなく。高価な買い物になりますので、そのためにも信頼できるショップで買うこと。とりわけインポーターには配慮すべきでしょう。また、オフヴィンテージの場合はワインそのものを楽しむより一緒にお祝いすることが第一であることに意識的でありますように。  現在、筆者はFacebookに「エチケットは語る」というシリーズで過去に飲んだワインの記事を書いています。1997年篇を今執筆中ですが、当時筆者も若く、一緒にワインを囲む方々はさらに若い方ばかりでしたので、しょっちゅう誕生年のワインを開けていました。そのほとんどが1970年代で、おかげさまで1970年代のボルドーを良い年も残念な年もほとんど網羅的にテイスティングすることが出来ました。当時悪いヴィンテージは値段が安く、五大シャトーでも1984年、1987年といった80年代の残念な年はデパートで7000円くらいで売っていました。70年代のワインも同様で、一万円も出せばたいていのワインは充分購入することが出来たのです。  それを知っていましたので、25000円のクレール=ミロンを見たとき、「高い」と思わず呟いてしまいました。だって、これにディナーを加えたらレストランでいくら払うことになるのだろう。愛はお金に代えがたい。確かに。しかし、背に腹は代えられぬ。ワインとはかくも罪なものよ。そういつも思う筆者なのです。 今月のお薦めワイン  「イタリアスプマンテの期待のホープ プロセッコ」 「プロセッコ エクストラ・ドライ NV DOCプロセッコ・トレヴィーゾ レ・コンテッセ」 2160円(税別)  この回はイタリアのスプマンテ(スパークリングワイン)を紹介させていただくことになります。昨年は名実ともにシャンパーニュと肩を並べるロンバルディア州の「フランチャ・コルタ」でした。「フランチャ・コルタ」は地名で、使われる葡萄品種にもシャンパーニュと同じシャルドネ、ピノ・ネッロ(ノワール)が含まれ、製法も瓶内二次発酵を用いています。では、それに対し、イタリア独自のスプマンテは何かと問われれば、その筆頭に挙がるのがヴェネト州の「プロセッコ」ではないでしょうか。  プロセッコは葡萄品種の名前でしたが、ワイン固有の名前として採用しようと品種名を2010年から「グレラ」種に変更しました。最低でもグレラ種を85%使うことが義務付けられています。ちなみに今回ご紹介する「レ・コンテッセ」のプロセッコはグレラ100%で造られています。また、DOCから出発した格付けはDOCGを名乗れるものも出来、さらにスペリオーレの中の43村だけが名乗れる「リヴェ」、さらには最高の畑と言われる「カルティッツェ」に至っては単一畑名の表記が許されるなど階層化が進んでいます。  そして、2013年にはシャンパーニュを抜き、世界で一番売れているスパークリングワインとなり、スペインのカヴァを加えて、世界の三大スパークリングワインの一角をなすまでに至っています。  製法は他の二つとは異なり密閉タンク方式を用いています。そのため、シャンパーニュに感じられる酵母のトースト感(パンのような香り)はなく、葡萄本来の香りとフレッシュでフルーティーな味わいが特徴となります。葡萄の特性からやや甘みを感じるかと思いますが傾向としてはやはりシャンパーニュに合わせるべく辛口に仕上げるのが主流で、今回ご紹介するプロセッコも「エクストラ・ドライ」、爽快感のある辛口仕様となっています。アルコール度数はシャンパーニュよりやや低く10~11%。このプロセッコも10%です。そして、何より大量生産が可能ですので価格的にリーズナブルなことが多くの方に選ばれる理由の一つと言えましょう。  造り手の「レ・コンテッセ」はコネリアーノ地区にあるスプマンテを得意とするカンティーナ。最新の技術を用いて、プロセッコに関しては通常のガス圧より高い5.3気圧に上げて生産しているとのこと。こうして、一週間ほど寝かせておくと泡がワインに溶け込み、シャンパーニュ方式のような綺麗できめ細かい泡になるそうです。シャンパーニュとは一味違った軽やかで爽やかなフレッシュな味わいを是非気軽にお楽しみください。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで 略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』開催のお知らせ

『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』開催のお知らせ

 さてみなさん、いよいよ銀座の仕立て屋落語会の第三回『わん丈クロークルーム』開催のお知らせです。  6月4日に日本橋三井ホールで開催された落語フェスとも言える伝説的な落語会となった「コレド落語会」でも前座を任され、真打への昇進も近いレギュラー3人目、「三遊亭わん丈」さんの登場です。  今回ももちろんプロデューサーの山本益博さんの楽しい解説で、落語が初めての方でも楽しみやすい落語会になっています。安心してお越しください。  元ミュージシャンという異色の経歴を持つわん丈さんは、二つ目昇進から7年目を迎えたレギュラーの中では間違いなく真打に最も近い若手のホープ、贔屓にするには正に今がちょうどいい塩梅。  どうです、ダンナ、ちょいと銀座で落語でも洒落てみませんかって、何でもかんでもネタにしてシャレを効かすのが大人のお洒落ってぇもんですぜ、銀座でひとネタ、いかがです。   第三回 『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』 日時:7月3日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:三遊亭わん丈 司会 プロデュース:山本益博 会費:3,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)

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『美食通信』第十八回「クロワッサン好き」

『美食通信』第十八回「クロワッサン好き」

 筆者はいわゆる「おかずっ食い」で食事の際、主食の穀類を基本食しません。少食なのと食後にデザートを必ず食べますので(それも結構しっかりと)、炭水化物はそれまで控えるようにしたいと思っているからです。お米は週に一回、昼に具がたっぷりの太巻を食べるくらいです。カレーはルウだけ食します。一番苦手なのが麺類。見ただけでお腹が一杯になってしまいますので、滅多に食しません。何人かでイタリアンに出かけた際、ちょっといただくくらいです。個人的にはカルボナーラとかパスタソースは好きですのでレトルトで買ってソースだけ食してみるのですが、さすがに濃過ぎて美味しくいただけません。そんな中、まだパンはましな方で、大学で昼食をとらなければならないとき、アンドーナツなどコンパクトでカロリーが摂れ、パサパサしていないパン類は救いの神です。パンでもパサパサしたものは苦手でアンパンは中のあんこだけにして欲しいと思うくらい。例外はバケットなどフランスパンで、フレンチに出かけて手を出すことは稀なのですが、時折、料理やワインが口の中に残り過ぎた時、水で洗い流すとお腹が膨れるのでバケットをちょっと齧りたくなります。そのままの時とバターをたっぷり付けたいときと、それは時に応じて異なるのですが。  そんな筆者ですが、時折どうしても食べたくなるパンがあります。それは「クロワッサン」。  ただ、クロワッサンであれば何でも良いという訳ではありません。バターをこれでもかとふんだんに使ったクロワッサンでないとダメ。外見は良く焼けていて、でも持つと手にバターが付いてしまう。さらに食すと、中は噛み切る際ねっとり感があり、バターが滲み出てきて、口の周りがテカテカに光ってしまうくらいでないと。ですので、ホテルの朝食バイキングのバターをケチったミニクロワッサンなるものを見るたび、おかずだけにしてパンはやめようと思うのですが、ついつい一つ取ってしまい、一口食べて後悔し、給食用のバターを持って来てべったりつけて食するのですがマーガリンもどきでは、これまたどんどんキワモノ化してしまうのがオチです。  筆者にとって、「『クロワッサン』はこうでないと」とのある種の基準化は一九九四年、パリに初めて一人で海外研究に出かけた際、食した「クロワッサン」にあるかと思われます。それはパリのデパート「ギャラリー・ラファイエット」の食料品専門フロア(日本でいう「デパ地下」)「ラファイエット・グルメ」にあった「ルノートル」の「クロワッサン」。「ルノートル」は当時、日本では西武百貨店が提携を結んでいて、西武デパートには何処にも「ルノートル」が付設されていました。「ルノートル」はパティシエのガストン・ルノートル(1920~2009)が始めたブランドで、ガストン氏はプロのための料理学校をフランスで初めて設立(1971年)するなどフランス料理界に絶大な影響力を持っていました。また、シャンゼリゼ大通りに、甥のパトリック氏がシェフを務める「ル・パヴィヨン・エリゼ」という星付きレストランを経営していた時代もありました。ですので、「ルノートル」はすでに知っていて、日本では主にケーキを食していたのですが、「ラファイエット・グルメ」の「ルノートル」のクロワッサンは壮観でした。焼き上がる時間が決まっていて、その時間になると台の上にこれでもかとクロワッサンがてんこ盛りに出されるのです。それを待ってましたとばかりに、客がワッと寄ってたかって大量に買って帰る。あっという間に無くなってしまうので、筆者も一つか二つですが焼き上がる時間に出かけて、おこぼれを頂戴するかのようにクロワッサンを買いに出かけたものです。その時はシャンゼリゼ大通りを一本奥に入ったポンチュー通りのレジダンスを借りていましたので、散歩がてら歩いて通いました。確かにそれなりに高級なのですが気取ったものではなく、日常のちょっとした贅沢くらいのパンだと思うのです。  その後、二十一世紀になってほどなく、『どっちの料理ショー』で「日本一美味しいクロワッサン」というふれ込みで名古屋の「ブランパン」のクロワッサンが紹介されたことがありました。もう、どうしても食べたくなって、当時、三菱重工に勤める昔の教え子が名古屋にいましたので、友人たちと名古屋詣でし、繁華街から離れた名古屋大学の近くにある「ブランパン」まで教え子の運転するランボルギーニでクロワッサンを食べに出かけました。フランス人の店主が作るクロワッサンは不味くはないものの「日本一」というほど美味しくもなくガッカリしたものです。持って帰るのを待ちきれず、近くの公園で皆で食べたのをよく覚えています。夜、ホテルでワインを飲むとき用といって買った総菜や総菜パンの方がおフランスしていて美味しかった。  人生において、一番クロワッサンを食べたのは二〇〇五年、呼吸器疾患で生死の淵を彷徨い、二ヶ月間入院した時でした。人生初めての入院が面会謝絶になるほどの重篤なもので、精神的にもパニックになってしまい、体重は三十キロ台まで落ちていました。そんなこんなで個室にずっと入院していたのですが、それが功を奏したというか、病院食に融通をきかせてもらうことが出来ました。相当の偏食家だと思われるようですが、何せおかずは文句を言わずに食べるので、ご飯はイヤと言ったら、じゃあ何でもよいので炭水化物を取って下さいということに。呼吸器の病気なので食事に制限がなく、治療者側もともかく栄養を摂って体重を増やして欲しいわけです。またその病院、昼は麺類だというのでそれもイヤだと言ったら、おかずだけ作って出してくれるというではありませんか。そこで筆者は家人にクロワッサンを買ってきて欲しいとお願いしたのです。もちろん、一日三食クロワッサンですので、スーパーに売っている一袋に数個入った大量生産のものを食べていました。チューブ状のバターやチョコレートクリームをたっぷり付けて。おかげさまで何とか生還することが出来ました。まさに「クロワッサンさまさま」です。  それから時折、有名店のクロワッサンなど食してみるのですが大体ダメです。余分な味がする。砂糖が入っているのか甘さを感じる場合が多い。菓子パンのイメージなのでしょうか。先日も南青山にフランスでも有名なクロワッサンの店が再オープンしたというので食べてみたのですがやはり菓子パンに近く、香りは良いのですがオイリーなバター感がなく、澄ました上から目線の味わいでガッカリしました。そんな中、最近食したクロワッサンで最高だったのは昨年九月、浅間温泉に出かけた際泊まった「松本十帖」の朝食で出された「アルプスベーカリー」の「クロワッサン」です。隣の「小柳」の二階に店を構えるベーカリーで焼き立てだったようですが、ともかく持つ手がベトベト、滲み出す大量のバター、お口の周りはテッカテカと食べるのにお行儀よく出来ず一苦労するのですが、これこそ「クロワッサン」を食する醍醐味。久しぶりに美味しいクロワッサンに出会えました。ただ、「信州ガストロノミー」の朝食はメニュがテーブルに置かれてある立派なコース仕立て。クロワッサンにたどり着く頃には少食の筆者はもうギブアップ寸前で。この時ほど、パリの朝食が「コンチネンタル」(生ジュース、パンの盛り合わせ、飲み物のみ)だったことの正しさを痛感したことはありませんでした。   今月のお薦めワイン  「イタリア赤ワインの手頃な定番 モンテプルチアーノ」 「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ レ・モルジェ 2020年 DOCモンテプルチアーノ・ダブルッツォ テッレ・ダブルッツォ」 1900円(税別)   私たちにとって、イタリア料理はフランス料理に比べ、身近で日常使いにも適した得難い西洋料理です。もちろん、高級リストランテでの食事も素敵ですが、ピッツェリアでちょっと小腹を満たしたり、トラットリアで親しい方たちと賑やかな食卓を囲むのも食の幸せな時間に他なりません。そんな気軽な食事の際、欠かせない手頃に楽しめて美味しいイタリアの赤ワインと言えば、「キャンティ」と「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」が双璧ではないでしょうか。切れのいい酸とタンニンのタイトな味わいを楽しみたければ「キャンティ」、ストレートな充実した果実味を楽しみたければ「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」とお考え下さい。「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」はイタリア半島の長靴のちょうど真ん中辺りに位置するアブルッツォ州でモンテプルチアーノ種という葡萄から造られるワインです。このアブルッツォ州、他の州と異なり、この赤のモンテプルチアーノ・ダブルッツォと白のトレッビアーノ・ダブルッツォという二種類のワインが大半を占め、他のワインが殆どありません。しかし、「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」はイタリアワインを代表する赤ワインの一つというユニークな州です。  そして、「キャンティ」が千円を切るコンビニワインから、ヴィンテージ物の高級なものまでグレイドが多岐にわたるように、「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」もエミディオ・ペペのように少数ながら、長熟用に造られ数万円するような銘酒も存在するのです。しかし、ほとんどは手頃な価格の早飲みタイプ。濃いルビー色、ベリー系の香り、果実味豊かですがクセがなく、後に引かない飲みやすさがあり、アフターにちょっとリコリスのようなハーブ系の余韻があります。やや温度を低めにすると料理とも合いやすく、ついつい飲み過ぎてしまうくらい。  今回ご紹介する「テッレ・ダブルッツォ」は1999年設立の新しいカンティーナ(ワイナリー)。クオリティは高く、しかし、手頃に楽しめるワインを提供することをポリシーとする品質管理を徹底したモダンな造り手と言えるでしょう。ちょっとイタリアンな時にどのようなシチュエイションにもピッタリの一本です。どうぞ、お試しあれ。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで  略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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『美食通信』第十七回「嗜みとしてのゴルフ――マスターズを終えて――」

『美食通信』第十七回「嗜みとしてのゴルフ――マスターズを終えて――」

 今年もマスターズの季節となりました。昨年は松山英樹プロが日本人初さらにアジア人初の優勝という快挙を成し遂げました。まさか自分が生きている間に日本人が優勝するとは思っていませんでしたので、筆者もまた大変感激しました。大学がちょうどコロナ禍でリモートになっていましたので、ついついテレビに釘付けになり、気づくと朝になっている数日でした。最終日、松山選手は最終組でしたので一番ホールから最終十八番ホール、最後のパットを入れて優勝するまでずっとテレビ観戦していました。今年はちょっと残念な結果になりましたがそれでもついつい朝方までテレビに見入ってしまう日々でした。  実は筆者、スポーツが苦手というかあまり好きではありません。団体で行なう競技がとりわけ好きになれず、学校体育は苦痛の日々でした。そんな中、唯一自ら熱中したスポーツがゴルフだったのです。ゴルフを始めたのは小学校五年生の時。ちょうど父の転勤で長野県の諏訪から神戸に引っ越してからということになります。思えば、半世紀も前のことになってしまいました。神戸に引っ越して、父が毎週末、ゴルフの練習場に行くようになったのです。 最初は興味本位でついて行ったのですが、自分も打たしてもらうとがぜんやってみたくなり、毎週父と練習するようになりました。社宅から歩いていける距離に二軒練習場があり、新しくできた方は結構な距離でしたがまだ国道に阪神電鉄の路面電車が走っていて、それに乗るとすぐでした。社宅は一軒家でしたので、小さな庭で父からもらったお古のクラブで毎日素振りをしたり、空き缶を地面に埋めてカップに見立て、パターやアプローチの練習をするようになったのです。基本的なマナーや技術などは父がくれた中村寅吉プロの書かれた初心者用の本を頼りに学んでいきました。  子供ならではの好奇心で我流とはいえ、みるみる上達し、すぐにショートコースに出られるようになり、六年生になる頃には父に連れられ、コースを回るようになりました。父は銀行員でしたので銀行が持っている会員券があり、それをお借りして、名門の芦屋カントリークラブでもプレーさせていただきました。すでに書かせていただきましたが、関西は付け届けが盛んで、お歳暮お中元だけでなく、バレンタインなどことある毎に何か家に届くのですが、その他に休みに家族連れで旅行にご招待下さるなどということもありました。 東条湖という遊園地やゴルフ場といったリゾートを湖畔にしつらえた人口湖があり、そのほとりにある某企業の保養所に数回出かけました。社宅の隣の方とご一緒し、家人は遊園地、自分は父とお隣のご主人と三人でゴルフという訳です。自分はその東条湖カントリーが一番好きでした。関西のゴルフ場は関東の林間コースとは異なり、丘陵コースと言い、アップダウンが激しく、ホールの周囲を木が囲むこともありません。海辺にあるイギリスのゴルフコースをそのまま内陸に移した感じです。ところが東条湖は人口湖ですので、その周囲はフラットでまさに関西では珍しい林間コースだったのです。真夏でも木がありますのでどこか涼やかで実に気分良くプレー出来たのです。 今から五十年も前に小学生がゴルフなどというとよほど特別なことのように思われましょうがそれ程でもありませんでした。当時の会社員は誰もが接待ゴルフ、麻雀等々が仕事のようなものでしたので、自分と同じような境遇のゴルフ少年が同じクラスにいたのです。内田君といってお父様は鐘紡に勤められていました。まさに転勤族の子息です。夏休みが終わって学校が再開すると、お互い、休み中にどこのコースを回ったかなど語り合ったものです。 そのように子供の頃からゴルフをしていたならプロになることを考えたりしなかったのなどと若い友人たちからよく尋ねられるのですが、微塵もそのようなことを考えたことはありません。ゴルフはあくまで趣味、嗜みでしかないというのが常識だったからです。自分が子供の頃、ゴルフを生業にするというのは中卒でゴルフ場に勤め、キャディーから叩き上げるまさに職人の修行でしかなかったからです。 もともと、ゴルフはプロスポーツではなく、「紳士の嗜み」として人気を博してきたのではないでしょうか。実際、筆者の子供の頃、アマチュアゴルフ界には中部銀次郎(1942~2001)という「プロより強いアマチュア」といわれた名プレーヤーがいました。今でこそ、アマチュアゴルフ界はプロになる前の大学生のためにあるかの如くの様相を呈していますが、当時プロゴルフとアマチュアゴルフは別の世界と子供ながらに筆者は捉えていました。中部氏は大洋漁業の社長のご子息。小学校からゴルフを始められ、甲南大学卒業後は大洋漁業の関係会社に就職。サラリーマンをしながら、生涯アマチュアとして活躍されました。ですので、筆者は一度もプロゴルファーになろうなどとは露ほども思ったことはありません。また、父も自分をプロゴルファーにしようなどと考えたことはなかったでしょう。実際、中学二年生の夏に東京支店に転勤になり、船橋の社宅に住むようになってからもゴルフコースには連れて行ってもらいましたが、筆者は以前のような熱心さをなくしていました。それでも、父は別にあれこれ言うことはありませんでした。銀行の同僚が会員権を買うというので、お付き合いで買っていましたが筆者はそれを使わせてもらうこともあまりなく、時々父と一緒に回ったりするくらいでした。 父は筆者が大学に入ってフランス料理に熱中し始めると、銀行の部下の女性行員を二名招いて筆者と四名で毎月フランス料理の食べ歩きをさせてくれました。訪れる店は筆者に任せて、金は出すが口は出さない。ゴルフの時と一緒でした。今は亡き父に心から感謝している次第です。 筆者の母方の祖父はアマチュア野球の審判として、高校野球の甲子園への静岡県大会決勝の主審を務めるなど社会人野球に尽力していました。その縁もあり、母の妹は父の母校ででもある県立静岡商業が甲子園で準優勝した際の監督と結婚し、その叔父はアマチュアゴルファーとして静岡県でもトップクラスの成績を収め、ゴルフショップを経営しています。しかし、筆者は叔父とは一緒に回ったことはありません。ゴルフの話はもちろんしますが。 つまり、ゴルフはあくまで「社交」の一つなのであり、それぞれのテリトリーの中で一緒にプレーすることで人間関係も潤滑になり、生活に潤いが出るのではないでしょうか。筆者は子供の頃、内田君と学校でゴルフの話で盛り上がりましたが、彼と一緒にプレーしようと思ったことはありませんでした。それは内田君には彼の家庭のテリトリーがあり、転校生というその境遇は同じであっても自分の家庭とは異なっていると子供ながらに理解していたからと思います。 一家総出で子供をゴルファーにしようという家庭を見るにつけ、父が平凡なサラリーマンであって本当に良かったと心底思う今日この頃です。     今月のお薦めワイン 「フランスワイン第三の産地 ヴァレ・デュ・ローヌ」 「コート・デュ・ローヌ ルージュ プティ・ロワ 2018年 AC コート・デュ・ローヌドメーヌ・ヴァル・デ・ロワ」 2200円(税別)  今回はフランスの赤ワインでブルゴーニュ、ボルドー以外の代表的ワインを紹介させていただきます。すでに繰り返し申し上げてきましたように、ブルゴーニュは緯度的に赤・白双方の銘酒を産することの出来る実に恵まれた地勢を有しています。ですので、赤ワインはより南が適していることが分かります。そして、ブルゴーニュをそのまま南下した場所に位置するのが「ローヌ」のワインということになります。  ローヌの赤ワインを代表する葡萄品種は何といっても「シラー」でしょう。ボルドーの「カベルネ・ソーヴィニヨン」「メルロ」、ブルゴーニュの「ピノ・ノワール」と並んで世界中でヴァラエタルワインとして造られている品種の一つです。南の葡萄だけにスパイシーで野性味にあふれ、アルコール度数も高い。北ローヌではシラー単品種で造るワインが多く見られ、最北の「コート・ロティ」はその中でも高価な銘酒を生み出しています。また、そのすぐ南に位置する「コンドリュー」は早飲みの高級白ワインの産地でヴィオニエ種という珍しい葡萄品種から造られています。  しかし、多くのローヌのワインはシラーとグルナッシュなどの混醸でスタイルとしてはボルドーに近いと言えましょう。その中でも珍しいのは南ローヌを代表する赤ワイン「シャトーヌフ=デュ=パープ」で13種類の葡萄品種を用いることが出来ます。造り手によっては単品種で造る者もいて、多彩な味わいを楽しむことが出来ます。  今回ご紹介するのはもっともポピュラーな「コート・デュ・ローヌ」の赤です。ブルゴーニュで言えば、ACブルゴーニュに相当するワインです。上記の通り、シラー、グルナッシュ等の混醸で、グルナッシュは南仏のワインでもよく用いられますので、シラーの割合の多いワインを選んでみました。この「プティ・ロワ」はシラー60%、グルナッシュ40%となっています。  造り手はエマニュエル・ブシャール。ブルゴーニュワインを代表するドメーヌ、ブシャール家の一族で父のロマン氏が1965年に南ローヌのヴァルレアに畑を持ったのがこの「ドメーヌ・ヴァル・デ・ロワ」の始まり。エマニュエル氏は97年にドメーヌを継承。2013年にエコセール認証を得るなど自然派ワインを造っています。自然酵母での発酵、樽を用いず、葡萄の味わいそのものを感じられるワイン造りがモットーとのこと。  若くても楽しめる果実味たっぷりのローヌのワイン。ブルゴーニュの洗練さと対照的な野趣味にあふれたパワフルな味わいはこれからの季節、野外でのバーベキューなどにもピッタリかと思われます。是非お試しあれ。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで  略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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第二回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』

第二回『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』

好評のうちに開催された『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』に続き、第二回は春風亭与いちさんによる『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』が5月15日に開催されます。   与いちさんは、いま一番人気の噺家といって差し支えない春風亭一之輔さんのお弟子さん。24歳と若いながらもメキメキと頭角を表す注目株。どうです旦那、今のうちに唾つけときましょう。 何でもかんでもネタにしてシャレを効かすのが大人のお洒落ってぇもんですぜ、銀座でひとネタ、いかがです。   第二回 『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』 日時:5月15日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ 場所:ザ・クロークルーム 出演:春風亭与いち 司会 プロデュース:山本益博 会費:3,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで 

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『美食通信』第十六回「菅田将暉現象―『ミステリと言う勿れ』をめぐって―」

『美食通信』第十六回「菅田将暉現象―『ミステリと言う勿れ』をめぐって―」

 「月九」と言えば、一九九〇年代のテレビドラマ全盛期、『東京ラブストーリー』、『ロングバケーション』、『ビーチボーイズ』といったトレンディなラブロマンス路線で一世を風靡したものでした。しかし、SNSが発達し、テレビ離れが進む中、テレビドラマ全体がエンタメにその座を奪われ、低迷状態が続いています。そんな中、「月九」も路線変更を図り、『コンフェデンスマンJP』や『監察医朝顔』といったそれぞれがコンセプトを持った個性的な作品で視聴者を取り戻しつつあります。そして、この二〇二二年最初のクール、話題を呼んでいるのが菅田将暉主演の『ミステリと言う勿れ』です。原作は『月刊フラワーズ』に二〇一七年一月初掲載の田村由美によるミステリー漫画。「普通の大学生」を名乗る天然パーマが印象的な主人公、久能整(くのう・ととのう)が次々と不可解な事件を解決していくというもの。  特徴的なのは主人公が極めて無感情な面持ちで、長口舌を繰り広げ、事件の真相を明らかにすることでしょう。若者ですから豊富な経験からではなく、抜群の記憶力と観察力からの推理。実際、人生初の焼肉屋で、「メニュが多すぎて、注文のシステムがわからないから選べない」とお手上げ状態に。ちなみにカレーが好物でジャワカレーとバーモントカレーのルーを半々で作るのがルーティーンとか、サッポロ一番は味噌ではなく塩に限る。しかも、何も具を入れず、封入されている「すりごま」の風味で食するのが最高と食にもこだわりを見せています。筆者が思い出したのは、大学院生時代、博士課程から入ってきた後輩に(といっても年は自分の方が若かったのですが)大変な偏食家がいて、「どうして食べられないの」と尋ねたら「経験がないから」との答えが。「じゃあ、食べてみなければ食べられないかわからないじゃん」と筆者。  このドラマで主人公が解決する事件は家族というテーマが重要な意味を担っていると考えられます。整の初恋?の相手「ライカ」は父親に性的虐待を受け、重い解離性同一性障害(多重人格症)に罹患し、長期入院している女性の最後に残った別人格という設定。かく言う、整も胸に火傷の跡があり、親から虐待を受けていたことを示唆しています。これは犯罪心理学的に言えば、ラカンの言う「家族複合(コンプレックス)」に原因のある犯罪。このような複雑なキャラクターを演じることの出来る若手俳優は菅田将暉をおいて他にいるでしょうか。彼は横浜流星や神尾楓珠のようなイケメンではありませんが、菅田将暉という独自の存在感を放っています。  それは例えば、「スダラー」と呼ばれる「菅田将暉の名言通りに生き、服も食事も思考もすべて菅田を完コピする信者」を生み出すことに。その代表の「将暉」さんは歌舞伎町のホストクラブでナンバーワンになり、テレビにも登場。「これぞ、今どき男子的生き方術」と帯に記された『影ニャでニートでアイドルオタクだった僕が歌舞伎町で指名ナンバーワンホストになって水を売る理由』という本まで出されています。  では、その菅田将暉的生き方でポイントとなるのは何かと言えば、音楽活動とファッションと言えましょう。こうしたライフスタイルの確立は2016年3月20日に放映された『情熱大陸』をご覧になるとその起源を知ることが出来るでしょう。筆者も『美男論』の講義で取り上げたことがあります。この回は通常の製作スタッフが撮影したのではなく、菅田の希望で彼を知る映画監督がフィルムを回したのでした。ある意図を持ったドキュメントというより菅田の日常をありのままに記録に残す形になっています。その中で菅田は部屋を借り、友人たちと服作りに励んでいます。また、GReeeeNの楽曲「キセキ」の誕生実話をもとにした映画『キセキ―あの日のソビト―』(2017年1月28日公開)の主役として、バンドのヴォーカリストを演じ、同じバンド仲間を演じた横浜流星、成田凌、杉野遥亮とスタジオで練習する光景も撮影されていました。このユニットは「グリーンボーイズ」としてCDも発売しています。そして、この辺りから菅田はミュージシャンとしての活動も本格化していきました。 実際にまた、ドラマが終わるこの三月、アルバム『COLLAGE』が九日に、これまで五年間のスタッフによるスナップと私服のコーディネイトを撮り下ろした本『着服史』が二十五日に発売されます。しかも、『着服史』の帯や表紙に使われた写真は俳優の永山瑛太が撮影したもの。以前は「瑛太」と名乗っていた永山も『ミステリと言う勿れ』に犬童我路役で登場。しかも、そのストレートの金髪姿が初見で「これ誰?」と思う意外性に富んでおり、しかも極めて美しい。実は筆者、瑛太時代、やはり金髪で演じた『のだめカンタービレ』(2009~10年)での峰龍太郎が大好きで、瑛太の金髪は大好物なのです。  また、永山だけに限らず、『ミステリと言う勿れ』に登場する事件関係者は皆個性的で魅力的。「ライカ」を演じた門脇麦を筆頭に、虐待された子供を救うため家に放火して両親を焼死させる白装束の「炎の天使」、早乙女太一の美しさにも感嘆。また、『三好達治詩集』の詩を用いて爆破予告をする記憶喪失の爆弾男を演じた柄本佑も実に素晴らしい。菅田将暉の個性的演技は独壇場になるのではなく、他のキャラクターをも生かし、いや引きたてさえもしています。菅田の主役としての存在感は揺らぐことなく、ゲストの俳優の魅力も最大限に引き出させる。こうして、『ミステリと言う勿れ』は実に充実した作品に仕上がっていると言えましょう。  最後に筆者が嬉しく思ったのは、文学作品が重要な役割を担っていることです。爆弾男は『三好達治詩集』を肌身離さず持っていました。そして、何といっても「ライカ」と整の会話がマルクス・アウレリウスの『自省録』を用いた暗号で行なわれるのに整が岩波文庫版の『自省録』を携帯したことで、文庫が増刷されたのでした。いにしえの文人ローマ皇帝(121~180)の人生訓。哲学史的には「ストア派」に属する作品です。美智子上皇后さまの相談役としても知られる精神科医の神谷美恵子氏(1914~79)が昭和二十三年に公刊し、三十一年に文庫になった四半世紀も前の訳が現代に蘇る。さすがに本屋で平積みされていた文庫の帯に整の菅田の写真が使われていたのにはちょっと違和感を覚えました。天下の岩波書店でも背に腹は代えられないか、と。筆者にとって、岩波文庫と言えば、半透明のパラフィン紙をカバーにしていた質素なスタイルこそ本領発揮と思うのですが。  いずれにせよ、菅田将暉現象が「今の」日本文化の様々な領域でその一翼を担っているのは明白。ますます菅田から目が離せません。   今月のお薦めワイン 「フランスのドイツ 多彩なる白ワインの宝庫アルザス」 「レ・プランス・アベ・ゲヴュルツトラミネール 2018年 AC アルザス  ドメーヌ・シュルンバジェ」 3800円(税別)   昨年のクールの第四回目はフランスの白ワインを紹介させていただきました。今年はそのヴァリエーションです。「ワインの王様」、ブルゴーニュワインはその地勢が赤白共に優れたワインを産する場所に位置し、赤はピノ・ノワール、白はシャルドネという最適な葡萄品種を得て、それぞれ単品種のみで多様なワインの世界を構築することになりました。緯度的にブルゴーニュより北は白、南は赤が優勢ということになります。従って、ブルゴーニュ以外のフランスの白ワインの名産地の第一はドイツとの国境にある「アルザス地方」のワインがすぐに思い浮かぶことでしょう。実際、アルザス地方はドイツとの国境をめぐる戦争が起こるたびに所属が変わる歴史を持っています。現在はフランスですが、今回の造り手シュルンバジェはドイツ語読みでシュルンベルガー、パリっ子ならシュランベルジェと発音することからも分かりますように明らかにドイツ系の血を引く人々の住む土地なのです。  従って、アルザスワインの最有力品種はドイツワインと同様、リースリングとなります。しかし、アルザスではその他にグランクリュを名乗れる品種として、リースリングと共に今回ご紹介するゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカの四種があり、他にもピノ・ブラン、シルヴァネールといった品種が単品種で造られています。もちろん、「ヴァン・ダルザス」と名乗る混醸のワインも造られていますが、やはり単品種で造られたワインの方が高級です。  今回、その中から「ゲヴュルツトラミネール」を選ばせていただいたのは、極めて個性的かつアルザスが主たる産地であるからです。その個性は「香り」にあります。おそらく、世界中の白ワインの中で一番香りが強いのではないでしょうか。それも香水のようなフルーツ系をベースにスパイスが効いたフローラルな実に印象深い香りで一度体験すれば、次回から香りを嗅ぐだけで言い当てることが出来るでしょう。味わいは辛口が主ですが、アルザスには稀少な甘口もあります。辛口は香りに見合うコクがあり、口当たりは滑らか、微かな塩味も感じられます。  今回ご紹介させていただくシュルンバジェは1810年創業の歴史あるアルザスを代表するドメーヌの一つ。現当主、アラン=ペイドン氏は七代目とのこと。栽培はビオロジック。所有する畑の半分がグランクリュ畑。今回はグランクリュでなく、リーズナブルなスタンダードのキュヴェの方を紹介させていただきますがそちらも15年未満のグランクリュの若木の葡萄が使用されているそうです。ボルドーで言えば、セカンドワインに相当します。「重たさのないリッチさ」がモットーのワイン造りとのこと。他の品種、グランクリュとラインナップも多彩なので、興味を持たれたら、他のワインもぜひお試しあれ。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで  略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP  

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【お知らせ】『銀座のテーラー落語会』がスタートします。

【お知らせ】『銀座のテーラー落語会』がスタートします。

 近ごろなんだか酷いニュースや大変なことが多くないですか?、暗い話が多くってほんと嫌になっちゃいますよね。こちとら面白おかしくお洒落して、お気楽に暮らしたいっていうのになんだかそれも憚られるような…。 そんなときはあれですよ、そう、ちょっと笑いが欲しいなって気分でしょ。 流行りの病も威張りたいヤツも他所様から何か盗ろうってのも弱い人の苦労に何にも感じない酷いヤツもまとめてネタにして笑ってやろうってのが良い大人なんじゃないかって、そうお思いになりはしませんか? そうですよ、なんでもシャレに、洒落ていこうって、それが大人のお洒落だろっていうことじゃありませんかねぇ。そんなこんなでこの度、『銀座のテーラー落語会』始めようってえことにあいなりました。   ザ・クロークルームがお届けする『銀座のテーラー落語会』。プロデュースはなんと落語界でも重鎮である料理評論家の山本益博さん。司会もご担当いただけます。ご出演いただく噺家さんは山本益博さんお墨付き、出世間違いなしで大注目の二つ目さんに月替わりで登場いただいて、ほぼ毎月のレギュラー開催の予定です。 注目の第一回に登場いただくのはドラマ「ノーサイドゲーム」でのご活躍も記憶に新しい林家たま平さん。曽祖父は七代目林家正蔵、祖父は初代林家三平、父は九代目林家正蔵と落語会のサラブレッドは今まさに伸び盛り、落語好きのみならず大注目のたま平さんのお噺を間近で堪能できるとても貴重な機会です。席数は20席とプラチナチケット化は必須、お見逃しなく。   第一回 『銀座のテーラー落語会・たま平クロークルーム』 日時:4月17日(日曜日)13時開演 場所:ザ・クロークルーム 出演:林家たま平 司会 プロデュース:山本益博 会費:3,500円(税込)現金のみ 申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで 

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