by Osamu Seki
テレビ東京で『孤独のグルメSeason10』がスタートしました。松重豊氏扮する井之頭五郎が仕事先で決まって空腹になり、付近で店探しにいそしむというお決まりのパターン。筆者は元々外食が好きではなく、しかもとりわけ一人で外食するのが苦手で、食するならワインが飲め出来ればフレンチというのが常ですので、下戸で大食漢、まさに孤独にグルメを探求する井之頭五郎とは対極にある人間です。それでも必ず見てしまうのは筆者自身が決して食さない美食の数々への憧れからでありましょう。筆者が井之頭五郎を単なる「グルメ」ではなく「美食家」と考える理由は何が食べたいかを真剣に追及しているからです。店探しもそうですが、何といっても店を決めてからメニュから何を選ぶかで思案するところが筆者にはクライマックスに思われます。ほとんどが初めて訪れる店ですので常連と思われる客など周囲の客の注文を気にしつつも決して同調することなく、「つかの間、彼は自分勝手になり、自由になる」。そして、数あるメニュの中からこれという料理を選択するのです。
まさに一期一会の真剣勝負。
実は同じテレビ東京ではこの料理を選択することに特化したグルメ番組が今年放映されたのです。それは一月から四月まで毎週十二回限定で放送された『黄金の定食』です。お笑い芸人「シソンヌ」の長谷川忍氏とジャニーズの人気アイドルグループ「なにわ男子」のリーダー大橋和也君が定食屋に赴き、プロデューサーによる事前リサーチや常連さんの押しのメニュなど情報をもとにファーストインプレッションから最終決定までの変遷を追うという内容の番組でこれぞ筆者の見たかったことで、大いに悩みつつ究極の選択を行なう。たかが定食されど定食。まさに「選ぶことの喜怒哀楽」が画面一杯に映し出されるのは筆者の考える「美食」の原点ともいえる光景です。
筆者の敬愛する哲学者カント(1724~1804)はその批判哲学で「美」に関する人間の能力を「判断力」とし、『判断力批判』を著しています。「美」の認識は数学の真理のように演繹的に理性から導出されるものではなく、経験を重ね洗練された審美眼で主観的に「判断」されるものであり、その際重要なのは「構想力=想像力」である、と。
筆者が昨今のフレンチに大いに不満を覚えるのは、高級店に限って「お任せコース」などという筆者からすれば「押し売り」にしか思われない客に選択の余地を与えない料理を提供することが当たり前のようになっていることです。しかも、ワインまでペアリングと来た日には客には何の選択の「自由」もない。これでは「グルメ」どころではないのではないでしょうか。高い金を払って、すべての客が同じ料理とワインを飲んでいる。給食じゃああるまいし、披露宴か何かの宴席でもあるまいし。その光景を俯瞰したらさぞかしおぞましいと思えないのはまさに想像力の欠如より他の何ものでもありません。
実際、筆者がパリに出かけていた四半世紀前はもとより、比較的最近までミシュランの星を取るようなグランメゾンではアラカルトが当たり前でした。十何皿も料理がだらだら出されるお任せコースが登場するのは「エル・ブジ」あたりから、パリでは「アストランス」からではないかと思われます。それまではメニュのオードブル、メイン、デセールの項から各自「アン・ドゥ・トロワ」の三皿構成で料理を選ぶのが王道だったのです。
これは『黄金の定食』でどの定食にするか(メイン)、サイドメニュは何にするか(オードブル)。そして、食後に近くの喫茶店で甘味を食しながら(デセール)その日のチョイスの反省をするというプロセスも実はまた同じ構造を有しているのです。店を決めた限り、消費者に残された「自由」は料理の選択の「自由」に他ならない。まさに「アラカルト」の世界は選択の「自由」を謳歌するためのものなのです。
アラカルトの場合、料理人は「アン・ドゥ・トロワ」それぞれ何種類かずつの料理を作らねばなりません。同じメインでも料理に出来不出来の差が出るのは当たり前。その差を埋める努力を怠る訳にはいきません。それに対し、「お任せコース」では自分の得意な料理だけ作っていれば良い。これは客が何を食べたいかを無視した料理人のエゴでしかない。しかも、苦手なものを作りませんから技術的にも本当に一流なのか怪しい。
ゴー=ミヨの創設者の一人、アンリ・ゴーが1986年に公刊し、1988年に邦訳が出された『フランスのレストラン ベスト50』(柴田書店)という本があります。アラカルト時代のレストラン評価の方法論として現在もその最高峰の一つと言えましょう。100点満点で採点するのですが、綿密な尺度が決められ、ランキングされています。第一位がロビュション、第二位がボキューズとヌーヴェル・キュイジーヌからの世代交代の時期に当たっていたことが窺われます。その他に「各店のベスト料理」。これはボキューズの「舌平目のフィレ、フェルナン・ポワン風」が第一位。「デザートのランキング」はロビュションが第一位。さらに「質のバラツキ」として各店の最高点料理と最低点料理との開きの少なさでは、ボワイエの「レ・クレイエール」が第一位。さらにお得感のある店のランキングもあります。これも結構複雑な計算式があり、ブラの「ルー・マズュク」が第一位を獲得しています。
このようにアラカルト時代のグランメゾンでは限られたメニュとはいえ、客たちは何を食べようかとアペリティフなど飲みながらメニュとにらめっこしつつ、同席者と喧々諤々議論したものです。お行儀が悪いとは知りつつも、同席者の料理を一口食べさせてもらって、そちらにすればよかったと後悔したり、自分の方が美味しいぞと優越感を抱いたりとこれもまた一興でした。それに比べ、お任せコースではアレルギーや苦手な食材でも事前に申告していない限り、別の料理が出てくることは皆無です。しかも、正直に申告すると別料理が出てくるのですが、何せ他は同じ皿なのに一つだけ作るので明らかに手抜きやいい加減なさして美味しくもないものを平気で出してくる店が少なくないことが分かり、筆者は申告するのをやめました。上記の苦手なものを作らない弊害だと確信した次第です。食べられないものは同席者に食べてもらうか残すことにしています。
まあ、昔と違ってグランメゾンとは縁のない生活をしている貧乏大学講師ですので、最近はもっぱら黒板に料理の書いてあるビストロで慎ましやかな「美食」を楽しんでおります。『孤独のグルメ』や『黄金の定食』に共感するのもフランス料理版「定食屋」が「ビストロ」だからでしょうか。今や、ビストロの方がアラカルトで注文でき、ビストロノミー=ビストロ・ガストロと呼ばれるグランメゾンの流儀をビストロ感覚で楽しめる店が増えていますので筆者の求める「美食」に相応しいのかもしれません。メニュに並んだ料理の中から、何食べようかなあと悩みつつ、これとこれ、と料理を選び一連の流れを構成する「喜び」。そしてそれはワインに関してもまったく同様なのです。
The Cloakroomを訪れ、エレベーターの扉が開いた際、目の前に広がる素敵なスーツたちから目移りしながらも、どれが一番似合うだろう、どれが自分の好みかなと品定めしていくように、どうして自分の食べたい、飲みたいものくらい自分で選べないのか。「つかの間の自由」を取り戻すべきなのです。
今月のお薦めワイン 「フランスの島のワイン コルス」
「アペラチア キュヴェ・トラディション・ルージュ 2019年 AOP アジャクシオドメーヌ・ア・ペラチア」 3500円(税別)
今年のクール最後はフランスとイタリアの島のワインを紹介させていただきます。まず、フランスは地中海に浮かぶコルシカ島のワインを。フランス語ではコルスと言い、ナポレオンの生地として知られています。
地中海にある島ですので赤ワインが中心になります。グルナッシュ、サンソー、カリニャンといった南仏の葡萄品種が持ち込まれ多く栽培されていますが、コルシカ島ならではの葡萄品種としてまず挙げられるのは、パトリモニオで造られているニエルッキオ種でしょう。しかし、この葡萄はイタリアワインのキャンティを造るサンジョヴェーゼ種と同種と判明しています。おそらくは十八世紀後半までこの島を支配していたジェノヴァ人によってイタリア本土から持ち込まれたものと推定されています。
そして、もう一種類シャカレッロ種が挙げられます。こちらはナポレオンの生地アジャクシオを名乗るアペラシオンで造られています。ジャンシス・ロビンソンによれば、ローマ人によって移植されたに違いないが未だに品種が特定されていないとのこと。「必ずしも色調は濃くないが深い味わいの赤ワイン」を産すると書かれています。
今回ご紹介するのはシャカレッロ種100%で造られたワインで造り手はアジャクシオから車で十分ほどのペリ村にあるドメーヌ・ア・ペラチアのもの。現当主、ローラン・コスタ氏がドメーヌを継いだのは2008年。元々、栽培に農薬を用いていなかったそうでエコセール認証を取得しています。基本は地元消費でシャカレッロ種主体のフルーティで飲みやすいキュヴェを販売しているそうです。しかし、これは輸出に適さないということで、アルコール度数を髙めに仕上げることで輸送に耐えられるキュヴェも少量造っているとのこと。現在、日本にのみ輸出しており、フランス本土でも扱われていないそうです。
赤は二種類あるのですが、樽がけせず、コンクリートタンクで熟成させたトラディションの方を紹介させていただきます。明るいワインを造るよう努力しているというコスタ氏。シャカレッロ種の特性を生かしたワイン造りだけによりこの葡萄品種の魅力がストレートに伝わってくるかと思います。稀少なワインでもありますのでこの機会に是非、お試しあれ。
ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで
略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Masashi Shimada
早くも第七回を迎える『銀座の仕立て屋落語会』、3度目の出番となる春風亭与いちさんの登場です。
9月の会でご披露いただいたのは「つる」「舟徳」の二席。今回はどんなお噺をご披露されるのか、楽しみにお待ちください。
そして落語好きにはたまらない山本益博さんの前座噺。50年もの間に数えきれないほどの名人芸を目撃してきた益博さんにしかできないとっておき、正真正銘の「秘話」を聞かせて頂きます。
「志ん朝」「談志」ときて次回も「談志」とのこと、これは聞き逃せません。
さてさて、最近もやっぱり色々ありますが、大人はやっぱりお洒落して、シャレの一つも効かせてくってことで銀座で落語でもご一緒にどうです。
第七回 『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』
日時:11月6日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演14時30分ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:春風亭与いち https://yoichi-shumputei.com/
司会 プロデュース:山本益博
会費:3,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Osamu Seki
ここ数年、毎年一度は亡き両親の実家のある静岡市を訪れています。筆者は父の仕事の関係で静岡に住んだことがなく、それだけに静岡にある種の憧れがあるのだと思います。実家に祖父母たちのお線香をあげに行った後、短い時間ですが今まで知らなかった静岡の街を散策するのはこの上ない喜びでもあります。ただ、いつも悩むのが何処に泊まるかです。駅前の有名ホテルチェーンの大型ホテル以外にはビジネスホテルのようなものしかなく、筆者の好みのデザイナーズホテルは皆無に近い。昨年は商店街のビルの空いた部屋を宿泊施設に改装した「ビル泊」に泊まりました。これはこれで面白く、窓から商店街を歩く人々を眺めたり、テラスに出ると周り一面ビルに囲まれていたりと普通のホテルライフにはない興味深い体験でした。今年は少し静かな場所に泊まりたく、駿府城公園近くの鷹匠町にあるレジデンスタイプのホテルに泊まりました。基本住宅地で学校などが多くある町です。ただ、近年隠れ家的レストランなど飲食店が増え、筆者の泊まったレジデンスと同じ通りにも蔦の絡まった趣ある建物のピザハウスがありました。
この手の建物に泊まる際の問題は朝食で、レストランが併設されていないからです。「ビル泊」の時は近くに朝早くから開いているコーヒーショップがあり、サンドイッチをテイクアウトして部屋のテラスで食しました。今回のレジデンスは近くにモーニングを出す喫茶店はなく、仕方ないのでパン屋を探すことにしました。パリでは出来立てのバケットで朝食を取るべく、パン屋は朝早くから店を開けています。検索してみると確かに二、三軒あるのですがたいがい九時開店で、その日鰻を食べようと十二時に清水の「芳川」に予約を入れてありましたのでもう少し早くから開いている店はないかなあ、と。すると「モンテローザ」という店が八時半開店と出てきました。ただ、画像を見ると動物の形をしたクッキーやお誕生日ケーキのものばかり。店の外観は完全な昭和レトロで赤いビニールのひさしには消えかけた「パン、洋菓子」の文字が。パン専門店ではなく、昔よくあった「ベーカリー」と言われたお店のようです。何だか大丈夫なのか不安になったのですが、同行者が「おばあさんの作るパン」という口コミを見つけて報告してくれたので、俄然食べてみたくなりました。
調べるとレジデンスのすぐ目と鼻の先で、ともかくも「モンテローザ」に行ってみようということに。翌朝二人とも早起きしてしまい、開店まで近くを散策することに。一時間くらいあったので、駿府城公園にも行ってみました。開店時間を見計らって「モンテローザ」に出向くとそこは筆者の母が通っていた女学校のすぐ脇でした。現在は共学になり、学校名も変ってしまっています。ただ、「モンテローザ」の向かいにある付属幼稚園は昔の「精華幼稚園」のままで、店の前でおばあさんがバスで到着したばかりの子供たちに「おはよう」と声をかけていました。あ、確かにおばあさんがいた。
「おはようございます」と狭い店内に入れてもらうと、「まだパンしかないけど」とおばあさん。お菓子はお父さんが作っているらしく、お菓子のショーケースは確かに空っぽ。肝心のパンはと言えば、十種類以上あったのですがどういう訳かどれも一、二個ずつしかないのです。開店したばかりだというのに。何処かに卸しているのか?訝しく思いながらも目の前にあるパンは小振りながらどれもとても美味しそう。同行者も若者ながら喫茶店を愛する風情の持ち主でこのパンに魅かれたよう。朝食は「モンテローザ」のパンに決定。
さて、どれにしようか。筆者の眼はソーセージドーナツに。長めのソーセージにくるくるとドーナツ生地を巻き付け揚げたもの。何とノスタルジック。しかも、一個しかないではありませんか。同行者にどれにすると尋ねると即座にソーセージドーナツを指さすではありませんか。何たることか。しかし、ここは年長者として大人げない行動はとれませんので、じゃあ、自分はカレーパンにしようと。定番ながらこれも二つしかない始末。もう一つか二つくらいはと思い、「何にする」と同行者に聞くとピザ風のパンに興味を示す。これも一点もの。おばあさんが「それはキノコのピザ、美味しいよ」と絶妙な合いの手を。同行者は「じゃあ、これにします」と一点ものが二種類即完売に。筆者は朝は甘いものを食べるのが日課なので甘いパンを。リンゴのコンポートとカスタードクリームののったパンがあったのでそれに決定。筆者はこれで充分ですが、若者はどうするのか。昼の鰻を考慮して、二個で充分とおっしゃるので「セ・フィニ(これでおしまい)」(パリでは食料品を買う時、これこれ頂戴というと、店員はそれらを用意して「セ・フィニ?」と確認するのでした)。会計してもらうと四個で600円ちょっと。ここは静岡とはいえ、価格にも昭和の名残が。おばあさんの「ありがとうね」という暖かい言葉に見送られて、朝のおつかいは終了。
部屋に戻り、リビングにて早速食する。何せ散歩で二人ともお腹がペコペコでしたので。同行者が美味しそうにソーセージドーナツを食べているのを横目にカレーパンに取りかかりました。凄い。小振りなのでカレーが少なかったらどうしようと思っていたら、ドーナツ生地が薄皮のようでカレーがたっぷり。しかも、作り立てなので揚げた香りが食欲をそそり、まだ暖かい。甘めのカレーがまた美味しい。いつの間にかスーパーやコンビニのパンに慣れてしまった自分を猛省しました。パリの朝のバケットではありませんが、小学校高学年、神戸の東灘に住んでいた頃、近所の神戸屋にパンの焼き上がる時間を見計らって、母と買物に出かけていたのを思い出しました。出来立ての太めのフランスパンにバターかマーガリンを塗って食べる。普通だけれど、何だか美味しい。リンゴとカスタードのパンはそう言った意味で普通に美味しい。でも、そんな普通の美味しいも今の自分の生活ではなかなか味わえないと思うと何だか寂しい気持ちになりました。
どんなに高価で美味なフランス料理を食そうとも、筆者がもう一度どうしても食べたいと思うのは母の作った料理のいくつかです。母が亡き今、それらはもう二度と食べられない。「おばあさんのカレーパン」もいつまで食べられるのだろう。来年も必ず静岡に出かけ、朝一番に「モンテローザ」に出かけようと誓う筆者でした。
今月のお薦めワイン 「フランスの白ワイン第三の産地 ロワール」
「バスタンガージュ・ブラン 2018年 AOP アンジュー ドメーヌ・デュ・クロ・ド・レリュ」 4600円(税別)
フランスの白ワインについてはすでにブルゴーニュとアルザスを紹介させていただきました。ブルゴーニュはシャルドネ、アルザスはリースリングなど複数の葡萄からワインを造っています。そして、フランスにはもう一つ代表的な白ワインの産地があります。そして、まずはこの三つだけ押さえれば大丈夫です。それは北西部大西洋に流れ出るロワール川の流域です。この地方の白ワインの特徴は河口から地域によって白ワインを造る葡萄が変化していくこと。一番河口近いナント付近ではミュスカデ種のワインが造られています。ミュスカデは地名で実はムロン・ド・ブルゴーニュというのが元々の葡萄の名前。ブルゴーニュに由来するこの葡萄はミュスカデでその本領を発揮し、その特産となったのです。
そこからもう少し上流に上ると今度はシュナン・ブラン種で造られる白ワインにお目にかかることになります。この地域はグロロ種で造られるアンジューのロゼやカベルネ・フランで造られる赤ワイン「シノン」など白ワイン以外にもロワールを代表するワインを産する地域です。そして、さらに上流へと向かうと「中央フランス(サントル)」と呼ばれる地域に至り、ここがロワールワインの東端となります。この地方ではソーヴィニヨン・ブランから白ワインを造っています。「プイィ・フュメ」、「サンセール」といった銘柄が有名で、故ディディエ・ダグノーの造ったプイィ・フュメ「シレックス」は「火打石」の名のごとく、その強烈なミネラル分で有名になりました。
ソーヴィニヨン・ブランはボルドーでもセミヨン種とブレンドして白ワインが造られています。そこで今回はロワールを代表する葡萄品種シュナン・ブランで造られたワインをご紹介したいと思います。シュナン・ブランからは甘口から辛口まで多彩なワインが造られています。その最高峰はニコラ・ジョリーの「サヴニエール」でしょう。今回ご紹介するワインはロゼで有名なアペラシオン「アンジュー」で造られている辛口の白ワインです。造り手はシュナン・ブランに惚れ込んで2008年にドメーヌを開設したトマとシャルロットのカルサン夫妻。現在20haを所有し、ビオディナミでワイン造りを行なっています。シトラス系の香りの他にバターなどのオイリーなフレーバーを感じるシュナン・ブランの特徴が良く出ているかと思います。また、ミネラルにも富みコクのある飲みごたえ充分な白ワインに仕上がっています。是非、お試し下さい。
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by Masashi Shimada
早くも2度目の登場、前回もウケにウケ、大きな笑いを巻き起こした三遊亭わん丈さんの登場です。
さてわん丈さん、男前で芸も達者、物販も好調と言うことなし。「落語家の着物たたみ方講座」も大好評だった前回、披露いただいたお噺は「ガマの油」「さじ加減」の二席。今回はどんなお噺をご披露いただけるのでしょうか。
進化を続ける『銀座の仕立屋落語会』、当会のプロデューサー山本益博さんの前座噺もパワーアップ。名人芸を長年目撃し続けてきた益博さんにしかできないとっておきのエピソードを聞かせてくれます。前回は「志ん朝の宿屋の富」という秘密のお噺。落語好きには堪りません。
さて、最近もやっぱり色々ありますが、大人はやっぱりお洒落して、シャレの一つも効かせてくってことで。
第六回 『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』
日時:10月2日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:三遊亭わん丈
司会 プロデュース:山本益博
会費:3,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Osamu Seki
筆者の珈琲好きにつきましてはすでに「フレンチスタイルの珈琲店」のお話で披露させていただきました。しかし、筆者には他にも好きな珈琲があります。それは「エスプレッソ」です。大学に入学してフランス料理を食べ歩き始めた際、食後に出されるエスプレッソに一口で魅了されました。
その語源は外に(ex)押し出す(press)こと。蒸気の力で一気にその成分を凝縮して抽出した濃厚なる液体。自らの心の内なるものを外に押し出すエクスプレッションは「表現」となり、その抽出の素早さはエクスプレス、列車の「特急」の意となる、想像力に富む名前の珈琲。
フランスやイタリアで「カフェ」と言えば、「エスプレッソ」のことを指します。私たちが日常飲んでいるような珈琲は「アメリカーノ」となります。そう、エスプレッソより薄い珈琲はすべてアメリカーノ。
パリを歩いていると喉が渇く。日本のように湿度が高くないからです。フランスで飲んだ同じワインを日本で飲んでもあまりおいしく感じないと多くの方がおっしゃります。リーファーで輸送されてきてもです。それはおそらく湿度の関係だと筆者は考えます。ヴァン・ド・ソワフ、渇きを癒すワインという言葉があるくらい。湿度の低い環境で飲むワインは喉をスムースに通っていくのではないでしょうか。
自動販売機のないパリで喉が渇いたら、街のあちこちにあるカフェに入ります。時間がなければカウンターでエスプレッソをクイッとひっかけ、時間に余裕があればテーブル席に座ってのんびり通りを行く人々を眺めるもよし。「ドゥミ」と呼ばれるグラスのビールを飲んでいる人も結構います。「オランジーナ」や「ジョケル」といったジュースの類はやはり子供っぽいので頼むのを躊躇います。やはり、エスプレッソを頼んでチビチビやるもよし、一気に飲み干し、あとはのんびりするもよし。この際、カウンターとテーブルでは同じ一杯のエスプレッソの料金は相当異なります。テーブルで過ごす時間の代金がかかるからです。スーパーで冷えたミネラルウォーターと常温のミネラルウォーターの価格が違うように。
日本にそんな店は滅多にありません。いや、ありました。とても素敵な店が。表参道、青山通り沿いの紀伊國屋スーパーの裏に「ソル・レヴァンテ」という本格派のイタリアンカフェがあったのです。滋賀の老舗和菓子店「たねや」がオーナーでメインはイタリア菓子の店でした。入り口を入って左側にカウンター、右側がお菓子のショーケース。その奥にカフェスペースがありました。料理も出していて、アンティパストにパスタ、ドルチェが複数出てメインとさえ言えるランチは予約できないのでいつも女性たちの行列が出来る人気店でした。ワインも揃えていたのにディナーはなし。さすが「たねや」の殿様商売と感心しきり。
特に見事だったのはカウンターでした。特大のエスプレッソマシーン。優秀なバリスタ。
近くのイタリアンで働く方々の憩いの場でした。筆者はそのエスプレッソの美味しさはもとより、バリスタとの会話、さらに彼らがイタリアから買ってくるグラッパがとにかく美味しくて、食事の前にグラッパをひっかけ、エスプレッソで〆てレストランに向かうようにしていました。何せ早く店じまいしてしまいますので。そして、エスプレッソの値段はカウンターで飲むと160円。奥のカフェで飲むと480円。三倍だったと記憶しています。これぞ、ヨーロッパ!ところがある日、あっさり閉店してしまいました。
閉店と聞き及び、バリスタ氏に何処に行けばこれからも美味しいエスプレッソが飲めるの、と尋ねると広尾の「イル・バール・ピエトレ・プレツィオーゼ」を薦められました。残念ながら広尾に行く機会があまりなく、女性シェフの大塚さんの「レギューム」に伺う時くらいなのですがある夏、その「レギューム」に出かける前、プレツィオーゼに寄ったのです。
すると入り口の看板に「エスプレッソ・トニック」がお薦めと。エスプレッソ歴四十年になろうという筆者、初めて聞く名前で早速頼んでみることに。その名の通り、エスプレッソをトニックウォーターで割ったもので、これが飲んでみると美味。エスプレッソの苦みにトニックウォーターの酸味と甘みが相まって複雑な味わいに。炭酸なので爽快感もあり、夏にはピッタリ。バリスタ氏に聞くと、自分は生のライムを絞って加えて出しているとのこと。だからかフレッシュな爽やさが心地よく、夏はエスプレッソ・トニックにしようと思った次第。
市販はされていないか調べたところ、二〇一〇年頃北欧のカフェに登場した新しい飲み物のようで、アサヒ飲料の「ワンダ」から「コニック」という商品名で売られていましたので早速購入してみました。市販品にしてはまずまずの出来でしたがやはり甘過ぎる。しかし、翌年にはもうなくなっていました。スタバでも限定で出したが人気がなかったようでリピートされなかったようです。それ以降、専門店でもなかなか見かけることがありませんでした。
ところが、旅先でエスプレッソ・トニックに遭遇することに。珈琲中毒の筆者は旅先でもまず珈琲専門店を探します。このご時世、何処でも美味しい珈琲店の一軒や二軒は必ず存在する。昨年九月、小学校四年生までの七年間を過ごした長野県上諏訪市に出かけた時のこと。「アンバード」というお洒落なコーヒーショップに立ち寄りました。小さな店ですが自家焙煎で若いご夫妻?が切り盛りされていました。メニュを見てビックリ。エスプレッソ・トニックがあるではありませんか。カウンターに様々な豆が並んでいるので失礼とは思いながら、エスプレッソ・トニックを注文。またこれが本格的でエスプレッソとトニックウォーターが別々に出てきて、自分で混ぜるというシステム。泡が結構出ますのでお気をつけてと言われたのにもかかわらず、大丈夫だろうと一気に注いだら案の定、昔懐かしい「もこもこアイス」のように急に泡が立ってグラスから溢れてしまいました。大失態。しかし、実に美味しいエスプレッソ・トニックでした。また、諏訪に行く機会があれば子供の頃のご馳走だった「うなぎの寝床 おび川」と「アンバード」だけはリピートして出かけたいと思っています。
そして、今年の五月、群馬県前橋市の「白井屋ホテル」に出かけた際にもエスプレッソ・トニックに出会ったのです。ホテルの敷地内にブルーボトルコーヒーがあったのですが別に前橋に来てまで飲むこともないと思い、近くを探すと「アーツ前橋」という美術館に併設された「ロブソンコーヒー」なる店を発見。美術館の一角ですのでこれまたなかなかお洒落なお店でした。調べると地元前橋の珈琲専門店で二〇一〇年創業とのこと。現在、前橋市内に三店舗を展開し、その中の一店でした。エスプレッソのヴァリエーションが充実していて、その中にエスプレッソ・トニックも。前橋でもお目にかかれるとは。ここはやはり、エスプレッソ・トニックを注文させていただきました。
なんだか旅先でしかお目にかかれない飲み物になってしまっていますが筆者はエスプレッソ・トニックのファンです。今年の九月は亡き両親の実家のある静岡市に出かけますのでまた何処かでエスプレッソ・トニックにお目にかかれることを願っております。
今月のお薦めワイン 「南イタリアを代表する葡萄品種 アリアニコ」
「アリアニコ・ムニフィコ 2018年 DOC サンニオ・アリアニコ ヴィニコラ・デル・サンニオ」 2800円(税別)
前回、南フランスの赤ワインをご紹介させていただきました。ですので、今回はそのイタリア版、南イタリアの赤ワインを紹介させていただきます。すでに、ピッツェリアやトラットリアなどでよく見かける気軽でポピュラーなモンテプルチアーノ・ダブルッツォが登場していますがアブルッツォ州はイタリア半島の長靴の真ん中辺りにあります。ですので、モンテプルチアーノ種の葡萄以外でさらに南、長靴の底の方で造られている赤ワインの中から代表的なものを選ぶことになります。
この際、イタリアワインは州ごとにワインを分類し、しかも複数の州で同じ葡萄品種のワインを造っていますのでどうしても葡萄品種で選ぶことになります。念頭に浮かぶのは、プーリア州のプリミティーヴォ、ネグロアマーロ、そして今回紹介させていただくカンパーニャ州、バジリカータ州で造られているアリアニコです。プリミティーヴォはアメリカを代表するジンファンデルの祖先でその起源はクロアチアと言われています。さらにネグロアマーロはモンテプルチアーノにどちらかというと近いので、ここではギリシアに起源を有し、ジャンシス・ロビンソンが「イタリアで最も優れたワインの一つになる可能性を秘めている」と評するアリアニコ種から造られるワインを紹介させていただこうと思います。
その特徴をバートン・アンダースンは「ネッビオーロと同様に力と洗練さをあわせ持つ堅固でタンニンに富む長命のワインを造る」と端的に解説しています。いわゆるフルボディで深みがあり、はっきりした酸と渋み、寝かせて飲むタイプのワインが出来ます。中でもナポリを州都とするカンパーニャ州の「タウラージ」はこのアリアニコの赤に特化し、DOCGを獲得するに至っています。
タウラージは5000円前後のものが主流ですので、今回は同じカンパーニャ州で比較的最近DOCを獲得した「サンニオ」で造られているアリアニコを紹介させていただきます。サンニオはタウラージよりは内陸に位置し、その地で五十年以上にわたりワイン造りを続けるヴィニコラ・デル・サンニオ社の製品です。「ムニフィコ」とは「豊かな、フルボディ」を意味するとのこと。その名の通り、タウラージほどの濃密さはないものの、深い赤、品格のある香り、しっかりしたタンニンと酸のバランスの良い味わいとアリアニコ種の魅力を楽しめること間違いなし。是非、一度お試しあれ。
ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで
略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Masashi Shimada
さぁお待ちかね、2回目の出番、春風亭与いちさんによる「銀座の仕立屋落語会」五回目の開催です。
前回披露いただいたのは「片棒」と「佐々木政談」。今回はどんなお噺をしていただけるのか楽しみなところです。
そして三遊亭わん丈さんから始まった「落語家によるお着物たたみ方講座」、今回の与いちさんではどんな展開になるのでしょうかこれもまた腕の見せ所。
今回ももちろんプロデューサーの山本益博さんが司会進行、趣向を凝らしてお届けします。
なんだか色々ありますが、シャレの一つも言えなくなったらお仕舞いよと、お洒落していきましょうってぇ話でございます。
皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
第五回 『銀座の仕立屋落語会・与いちクロークルーム』
日時:9月11日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:春風亭与いち
司会 プロデュース:山本益博
会費:3,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Osamu Seki
繁華街が苦手。銀座、六本木、とりわけ歌舞伎町などと言ったら、何か闇の世界に引き込まれてしまいそうでまず一人では立ち入りません。筆者の贔屓にしているレストランをお考え下さい。いにしえの代官山のはずれの「ヴィスコンティ」に始まり、元代々木町の「シャントレル」、神泉の「ビストロ・パルタジェ」、大阪は谷町四丁目の「コション・ローズ」に北浜の「マキュア(旧ユニック)」と皆、喧騒から離れた隠れ家的な立地にあります。
思えば、初めてパリに出かけた際、何の土地勘もなく便利だろうと思って借りたレジデンスがシャンゼリゼ通りを北に一本入ったポンチュー通りだったのです。そこはリドなどのある歓楽街で古い建物をリノベした部屋は夜中もその賑わいの音が聞こえ続け、カーテンの隙間からはネオンの色とりどりの光が差し込むというそれは苦痛の日々でした。夜中、頻繁に鳴り響く救急車の音。当時、パリは銃はないと言われていましたが不安でまともに眠れなかったのをよく覚えています。これに懲りて、翌年からは左岸のサン=ジェルマン=デ=プレ裏、ジャコブ通りの「ラ・ヴィラ」に泊まることにしたくらいです。
しかも、今回歌舞伎町に出かけたのはホストクラブに伺うというなかなかヘビーなミッション。本『美食通信』主宰の島田さんが是非ホストクラブのスーツ事情をリサーチされたいとのことで同行させていただいた次第です。筆者、2018年に編著『イケメンホストを読み解く6つのキーワード』(鹿砦社新書)を出版したのが縁で、歌舞伎町を中心にホストクラブをはじめ多くの事業を展開しておられるスマッパグループ会長の手塚マキ氏と懇意にさせていただいております。また、毎年六月恒例の伊香保のワイン会に昨年から手塚さん、島田さんにも参加していただいています。で、先日の伊香保で最後まで起きていたのが筆者も含む三名でホストにおけるスーツの話になった訳です。
今年九周年を迎えた現在唯一のホスト月刊誌『ワイプラス』は当初、私服のホストを「ネオホス」、スーツのホストを「バトラー」と命名して対照的なスタイルを軸に展開していました。それがいつしか、スーツ系は消え、私服のスタイルがBTS系の「新宿男子」と黒系でちょっとダークな雰囲気の「裏宿」スタイルの二極に至っています。それでもスーツ着用のホストクラブは少数派とはいえ健在で、スマッパグループ七店舗のホストクラブのうち、全員がスーツを着用しているのは一店舗。その「スマッパ!ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン」に伺うことになったのです。
スマッパグループではホスト文化に気軽に触れていただけるよういくつかの「ツアー」が用意されています。その一つに「ワインツアー」があり、それを利用させていただきました。定額で所要時間は二時間ほど。都合がつけば、二店舗回ることもできるようです。初めて出かけられた島田さん、伊香保のメンバーでフードコーディネーターのタカハシユキさん、東京ウォーカー編集長を務められた加藤玲奈さんは楽しんでおられたようですが、以前按田餃子の按田優子さんたちと同じツアーを利用したことのある筆者は何回出かけてもどうも馴染めません。手塚会長が島田さんのところで作られたスーツを着てわざわざ挨拶に来て下さったので、筆者は手塚さんと話してばかりでした。
というのも、男性が客としてホストクラブに出かけるのに筆者はためらいがあるのです。やはり、女性客のための社交の場ですのでホストも男性客は扱いづらいと思うからです。では、筆者はホストの何に魅かれるのか。それはまず、個人的にはそのイケメンぶりとファッションです。しかし、セクシュアリティ研究者として興味があるのはその「ホモソーシャル的集団」に他なりません。例えば、キャバクラや銀座の高級クラブでもいい、ホステスさんのいるお店。従業員全員が女性だけの店ってありますでしょうか。支配人、ボーイ、いわゆる「内勤」に男性が必ずいるはずです。華やかなホステスさんを支える寡黙で頼りになる男性陣の存在は必須です。ところがホストクラブの従業員は裏方も含め全員男性。こうした男性だけの集団を「ホモソーシャル」と申します。「ホモソーシャル」と「ホモセクシュアル」との微妙な関係性はジェンダー研究の重要なテーマの一つ。若くして亡くなった女性研究者セジウィックの『男同士の絆』はその代表的著作です。
女性相手の接客業ながら、男だらけの日常。駆け出しのホストはマンションの一室で集団生活をしているわけで、ジャニーズ事務所の「合宿所」のようなものです。もうこれはボーイズラブ的な雰囲気にあふれているわけで、このよく言えば捻りのある複雑な、悪く言えばある種歪んだ関係性こそ筆者がホストに魅かれる理由です。ですので、女性に接客しているホストさんたちを眺めていても心ここに在らずという訳で。
まあそれはさておき、全員がスーツを着用されたお店はやはりきちんとされている。手塚さんがおっしゃっていましたが、テーブルにお酒や水などを運んで置くとき、跪いて目線を座っているお客様と同じにしてから置くといった所作を守っているのはこの店くらいだろう、と。ただし、スーツの着方には色々問題があるようで手塚さんはもとより島田さんのファッションチェックも女性陣は楽しんでおられたようでした。
あっという間の二時間は過ぎ、再び歌舞伎町の雑踏の中に連れ戻された四人。食事がまだでしたので軽く何処かでしようということに。手塚さんからは美味しいピザ屋があると教えていただいていたのですが、「千円でベロベロ=千ベロ」の本も作られた加藤さんから四川料理か韓国料理はどうとの提案が。店にあてがあるようです。筆者はすかさず韓国料理が良いと。すぐ裏手が新大久保なのでそちらへ移動するかと思いきやホストクラブからすぐのちょっと路地を入ったところにビニールテント張りのどう見ても韓国料理店があるではありませんか。歌舞伎町の闇に映える明るい店構え。ここは鍾路(チョンノ)かと錯覚したくらい。これだこれ、ホストクラブの後は韓国料理に限ると妙に納得した筆者。
「テンチョ」というその店は気のいい店長さんがこの日は一人で切り盛りされていて、客も韓国人ばかりで料理も本格的。セリのチヂミに感嘆し、「チュムルロク」という豚肉の甘辛ダレの鍋が最高。昔給食で脱脂粉乳を飲まされたアルマイトの器でマッコリを飲むのも何とも乙ではありませんか。
こちらもあっという間に帰る時間となり、筆者一人だけ別の駅に向かうので急に不安に。島田さんに道を調べてもらい、一刻も早くこの街を抜け出さないと、と一目散に歩く歩く。目印の公園が見えてきたときはちょっとホッとしましたがまだここは歌舞伎町。もう一息と歩みを早め、西武線の駅入り口が見えた時、ようやく安堵の気持ちが。
毎日が「祭」の歌舞伎町で働く人々のパワーに圧倒された夜でした。島田さん、ご招待いただきありがとうございました。
今月のお薦めワイン 「フランス最大のワイン産地 ラングドック=ルーション」
「フォジェール 2016年 AOP フォジェール カルメル・エ・ジョセフ」 2500円(税別)
ブルゴーニュ、ローヌとローヌ河を下って行くと地中海に出ます。南仏のワイン、とりわけローヌ河の西側に広がるラングドック地方は「オック語」という意味で隣接するルーション地方と共にラングドック・ルーションのワインとして知られています。
さて、「オック」という言葉に聞き覚えるのある方も多いかと思います。ラングドック・ルーションはフランスワイン全体の40%近くを生産するも、アペラシオンを名乗るワインは少なく、一ランク下の以前ヴァン・ド・ペイ(地酒)と呼ばれていたワインの生産量がフランス全体の80%を占めるという一大デイリーワインの産地なのです。そして、その代表格が「ヴァン・ド・ペイ・オック」でした。
オレンジ色のエチケットにフクロウのマークが印象的な「ミティーク」、ボルドーに匹敵する高品質のワインを生産するドマ・ガサックの造るデイリーワイン「テラス・ド・ギレム(現、ムーラン・ド・ガサック)」は日本でもお馴染みのカリテプリな日常使いのワインですが皆、ラングドック・ルーションのものです。
そのようなラングドック・ルーションはまた、フランスにおける葡萄品種別のワイン=ヴァラエタルワインの一大産地でもあり、あらゆる葡萄品種が栽培されています。しかし、本来はグルナッシュ、カリニャンと言った葡萄の産地であり、アペラシオンを名乗るワインはこれらの地品種を用いて造られています。
今回紹介させていただくフォジェールはラングドックを代表するアペラシオンの一つです。上記の地品種を50%以上使用すること。とりわけ、カリニャンの10~40%の使用が義務付けられています。造り手のカルメル・エ・ジョセフは1995年設立のメゾン。カルカッソンヌ近くのモンティユ村にあるラングドック・ルーションに特化したネゴシアンです。
このフォジェールのセパージュはシラー50%、グルナッシュ30%、カリニャン20%。以前紹介させていただいたコート・デュ・ローヌとはカリニャンの有無に違いがあります。両者を比較することで、果実味をより生かしつつ独特のスパイシーさが魅力で、ローヌとは異なった凝集性よりは広がりを持った南仏のワインのある種のおおらかさを堪能することが出来るかと思われます。これを機に地酒クラスばかりではなく、ラングドック・ルーションの様々なアペラシオンワインも是非お楽しみいただければ幸いです。
ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで
略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Masashi Shimada
さあみなさん、銀座の仕立て屋落語会も二周目に突入です。今回で2回目の登場、林家たま平さんによる、第四回『たま平クロークルーム』開催をお知らせします。
銀座の仕立屋落語会、林家たま平さん、春風亭与いちさん、三遊亭わん丈さんと襷を繋ぎ、早くも一周回ってまいりました。
2周目となる今回はどんなお噺が聞けるのでしょうか。前回以上の盛り上がりを期待しましょう。
今回ももちろんプロデューサーの山本益博さんの楽しい解説で、落語が初めての方でも楽しみやすい落語会になっています。安心してお越しください。
どうです、ダンナ、ちょいと銀座で落語でも洒落てみませんかって、何でもかんでもネタにしてシャレを効かすのが大人のお洒落ってぇもんですぜ、銀座でひとネタ、いかがです。
第四回 『銀座の仕立屋落語会・たま平クロークルーム』
日時:8月7日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:林家たま平
司会 プロデュース:山本益博
会費:3,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Osamu Seki
先日、人気お笑いコンビがMCのバラエティー番組で、2000年生まれの女性アイドルに送る誕生日プレゼントを出演者が競い合うという企画を放映していました。最下位の方が他の方全員の分も支払うという「ゴチになります」方式。Diorのコスメ、高級ハンドクリーム、マスクメロンと二万円から三万円のなかなか高額なプレゼントが並ぶ中、MCコンビのツッコミの方が誕生年のワインを購入されていました。ボルドーの第五級、ポイヤックのシャトー・クレール=ミロンの2000年を購入されていました。25000円。クレール=ミロンはボルドー五大シャトーの一角、シャトー・ムートン=ロートシルトのロートシルト(ロスチャイルド)家が同じポイヤックに所有するシャトーで、さらにもう一つ第五級のシャトー・ダルマヤックもポイヤックに所有しています。クレール=ミロンの方がダルマヤックより高く評価されていてお値段もお高い。2000年はミレニアムの上、良いヴィンテージでしたのでムートンは50万円ほどしてしまっています。そう思うと、同じ造り手で25000円はまずまずとも言えます。
実は昨年、毎年恒例の伊香保での泊りがけのワイン会で2000年のムートンを飲む機会を得ました。この通信を主宰下さっている島田さんも同席されていました。まだ早いくらいで見事な出来でしたがさすがに高価過ぎる。五大シャトーは尋常ではありませんが2000年はどのワインも高い値がついているのも事実です。
そして、かく言う筆者も先日、若い友人のバースデーを祝うのに誕生年の1995年のワインを開けました。ブルゴーニュのセラファン・ペール・エ・フィスのジュヴレ=シャンベルタン・ヴィエイユ・ヴィーニュにしました。というか、それが精一杯でした。レストランでの会食の折でしたので小売価格の二倍を覚悟しておく必要があります。ですので、レストランでバースデーワインを開けたいと思われたら、持ち込みが可能な店でご自身で準備したものにされることをお勧めします。
誕生年のワインは三十歳くらいまでなら比較的すぐ見つけられると思います。しかし、それ以上になると良いヴィンテージは見つかりますが高価であり、ヴィンテージが悪いと早飲みになってしまいますのでなかなか見つからず、どちらにせよそれぞれヘヴィーな状況に。
随分昔のことになりますが、1996年のこと。ちょうどパリに出かけることになりましたので知人の誕生日にと1965年のワインを探すことにしました。当時はまだインターネットが普及していませんでしたので、ワインはとにかく足で探す時代でした。現在は醸造技術が進歩して、以前ほどワインの出来不出来の差がなくなっています。ところが60年代になりますと不出来な年は散々で生産量は少なく長持ちしませんのでどこを探しても見つからないことに。1965年は60年代最悪の年と言われており、パリなら大丈夫だろうとたかをくくったのが裏目に。いつもヴィンテージワインを購入していたギャラリー・ヴィヴィエンヌのルグランならあるだろうと思ったのですが1965年はないとのこと。チェーン展開していたニコラの総本山、マドレーヌ広場の本店に出かけてみたのですが、ヴィンテージポルトならあるがボルドーはないと。他にいくつか店を回ったのですがどこにもありません。途方に暮れ、何とかワインショップの情報をとゴー=ミヨのワイン雑誌を購入しました。当時唯一の情報媒体でしたので雑誌にはワインショップの広告が載っていたのです。それらを探していると15区のあるワインショップがヴィンテージ物の立派なリストを載せていたのです。
ここならあるのではないか。早速翌日、その店を訪れました。すると五大シャトーの一つ、オー=ブリオンの1965年があるとのこと。蔵出しで1990年にリコルクされたもので、カーヴに寝かせていた際、エチケットがボロボロになってしまったらしく張り替えてあったのですが、元のエチケットを残したまま反対側に新しいエチケットを貼っていたので極めて珍しいブテイユ(ボトル)だったのです。もちろん、即刻購入しました。古いオー=ブリオンをたくさん所持していたようで他のオフヴィンテージもどうかと言われましたがそんな余裕はなく、ともかく入手することが出来ました。その知人とワインを一緒に開ける機会は逸してしまいましたが、後年某ワイン会で開けてみることにしました。リコルクした際、ワインを補填したのか予想以上に飲めたのです。その珍しいブテイユはそのまま保存することにしました。
古酒は通常飲むワインとは別の次元ですので枯れた感じを楽しむことが大事。もちろん傷んでしまっていてはいけませんが、果実の香り(アロマ)ではなく熟成香(ブケ)を嗅ぎ分け、ミネラルなど複雑な味わいを堪能することが肝要です。偉大なヴィンテージは抜栓後徐々にその眠りから覚め深い年輪を感じさせ、静かな感動を覚えることでしょう。残念な年のワインは開けたらすぐにピークが来ますのでそれを楽しみ、酸化を覚悟して後半に臨みましょう。
その点、三十年くらいまではどのワインもそれなりに楽しめます。2000年であれば、先述のようにムートン級のグランヴァンならまだ寝かせた方が良いくらいです。ですので、クレール=ミロンでしたら充分美味しくいただけると思われます。「新樽の魔術師」と言われたクリスチャン・セラファンが新樽率100%で造ったヴィエイユ・ヴィーニュも1995年が良作年だったこともあり、後半の方が美味しさが増してきて驚きました。
ただし、オールドヴィンテージはその状態が開けてみないとわからないというリスクが付きものであることをお忘れなく。高価な買い物になりますので、そのためにも信頼できるショップで買うこと。とりわけインポーターには配慮すべきでしょう。また、オフヴィンテージの場合はワインそのものを楽しむより一緒にお祝いすることが第一であることに意識的でありますように。
現在、筆者はFacebookに「エチケットは語る」というシリーズで過去に飲んだワインの記事を書いています。1997年篇を今執筆中ですが、当時筆者も若く、一緒にワインを囲む方々はさらに若い方ばかりでしたので、しょっちゅう誕生年のワインを開けていました。そのほとんどが1970年代で、おかげさまで1970年代のボルドーを良い年も残念な年もほとんど網羅的にテイスティングすることが出来ました。当時悪いヴィンテージは値段が安く、五大シャトーでも1984年、1987年といった80年代の残念な年はデパートで7000円くらいで売っていました。70年代のワインも同様で、一万円も出せばたいていのワインは充分購入することが出来たのです。
それを知っていましたので、25000円のクレール=ミロンを見たとき、「高い」と思わず呟いてしまいました。だって、これにディナーを加えたらレストランでいくら払うことになるのだろう。愛はお金に代えがたい。確かに。しかし、背に腹は代えられぬ。ワインとはかくも罪なものよ。そういつも思う筆者なのです。
今月のお薦めワイン 「イタリアスプマンテの期待のホープ プロセッコ」
「プロセッコ エクストラ・ドライ NV DOCプロセッコ・トレヴィーゾ レ・コンテッセ」 2160円(税別)
この回はイタリアのスプマンテ(スパークリングワイン)を紹介させていただくことになります。昨年は名実ともにシャンパーニュと肩を並べるロンバルディア州の「フランチャ・コルタ」でした。「フランチャ・コルタ」は地名で、使われる葡萄品種にもシャンパーニュと同じシャルドネ、ピノ・ネッロ(ノワール)が含まれ、製法も瓶内二次発酵を用いています。では、それに対し、イタリア独自のスプマンテは何かと問われれば、その筆頭に挙がるのがヴェネト州の「プロセッコ」ではないでしょうか。
プロセッコは葡萄品種の名前でしたが、ワイン固有の名前として採用しようと品種名を2010年から「グレラ」種に変更しました。最低でもグレラ種を85%使うことが義務付けられています。ちなみに今回ご紹介する「レ・コンテッセ」のプロセッコはグレラ100%で造られています。また、DOCから出発した格付けはDOCGを名乗れるものも出来、さらにスペリオーレの中の43村だけが名乗れる「リヴェ」、さらには最高の畑と言われる「カルティッツェ」に至っては単一畑名の表記が許されるなど階層化が進んでいます。
そして、2013年にはシャンパーニュを抜き、世界で一番売れているスパークリングワインとなり、スペインのカヴァを加えて、世界の三大スパークリングワインの一角をなすまでに至っています。
製法は他の二つとは異なり密閉タンク方式を用いています。そのため、シャンパーニュに感じられる酵母のトースト感(パンのような香り)はなく、葡萄本来の香りとフレッシュでフルーティーな味わいが特徴となります。葡萄の特性からやや甘みを感じるかと思いますが傾向としてはやはりシャンパーニュに合わせるべく辛口に仕上げるのが主流で、今回ご紹介するプロセッコも「エクストラ・ドライ」、爽快感のある辛口仕様となっています。アルコール度数はシャンパーニュよりやや低く10~11%。このプロセッコも10%です。そして、何より大量生産が可能ですので価格的にリーズナブルなことが多くの方に選ばれる理由の一つと言えましょう。
造り手の「レ・コンテッセ」はコネリアーノ地区にあるスプマンテを得意とするカンティーナ。最新の技術を用いて、プロセッコに関しては通常のガス圧より高い5.3気圧に上げて生産しているとのこと。こうして、一週間ほど寝かせておくと泡がワインに溶け込み、シャンパーニュ方式のような綺麗できめ細かい泡になるそうです。シャンパーニュとは一味違った軽やかで爽やかなフレッシュな味わいを是非気軽にお楽しみください。
ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで
略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Masashi Shimada
さてみなさん、いよいよ銀座の仕立て屋落語会の第三回『わん丈クロークルーム』開催のお知らせです。
6月4日に日本橋三井ホールで開催された落語フェスとも言える伝説的な落語会となった「コレド落語会」でも前座を任され、真打への昇進も近いレギュラー3人目、「三遊亭わん丈」さんの登場です。
今回ももちろんプロデューサーの山本益博さんの楽しい解説で、落語が初めての方でも楽しみやすい落語会になっています。安心してお越しください。
元ミュージシャンという異色の経歴を持つわん丈さんは、二つ目昇進から7年目を迎えたレギュラーの中では間違いなく真打に最も近い若手のホープ、贔屓にするには正に今がちょうどいい塩梅。
どうです、ダンナ、ちょいと銀座で落語でも洒落てみませんかって、何でもかんでもネタにしてシャレを効かすのが大人のお洒落ってぇもんですぜ、銀座でひとネタ、いかがです。
第三回 『銀座の仕立屋落語会・わん丈クロークルーム』
日時:7月3日(日曜日)12時45分開場13時開演、終演15時ごろ
場所:ザ・クロークルーム
出演:三遊亭わん丈
司会 プロデュース:山本益博
会費:3,500円(税込)現金のみ
申し込み、お問い合わせは info@thecloakroom.jp まで (落語会の受付はメールのみ)
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by Osamu Seki
筆者はいわゆる「おかずっ食い」で食事の際、主食の穀類を基本食しません。少食なのと食後にデザートを必ず食べますので(それも結構しっかりと)、炭水化物はそれまで控えるようにしたいと思っているからです。お米は週に一回、昼に具がたっぷりの太巻を食べるくらいです。カレーはルウだけ食します。一番苦手なのが麺類。見ただけでお腹が一杯になってしまいますので、滅多に食しません。何人かでイタリアンに出かけた際、ちょっといただくくらいです。個人的にはカルボナーラとかパスタソースは好きですのでレトルトで買ってソースだけ食してみるのですが、さすがに濃過ぎて美味しくいただけません。そんな中、まだパンはましな方で、大学で昼食をとらなければならないとき、アンドーナツなどコンパクトでカロリーが摂れ、パサパサしていないパン類は救いの神です。パンでもパサパサしたものは苦手でアンパンは中のあんこだけにして欲しいと思うくらい。例外はバケットなどフランスパンで、フレンチに出かけて手を出すことは稀なのですが、時折、料理やワインが口の中に残り過ぎた時、水で洗い流すとお腹が膨れるのでバケットをちょっと齧りたくなります。そのままの時とバターをたっぷり付けたいときと、それは時に応じて異なるのですが。
そんな筆者ですが、時折どうしても食べたくなるパンがあります。それは「クロワッサン」。
ただ、クロワッサンであれば何でも良いという訳ではありません。バターをこれでもかとふんだんに使ったクロワッサンでないとダメ。外見は良く焼けていて、でも持つと手にバターが付いてしまう。さらに食すと、中は噛み切る際ねっとり感があり、バターが滲み出てきて、口の周りがテカテカに光ってしまうくらいでないと。ですので、ホテルの朝食バイキングのバターをケチったミニクロワッサンなるものを見るたび、おかずだけにしてパンはやめようと思うのですが、ついつい一つ取ってしまい、一口食べて後悔し、給食用のバターを持って来てべったりつけて食するのですがマーガリンもどきでは、これまたどんどんキワモノ化してしまうのがオチです。
筆者にとって、「『クロワッサン』はこうでないと」とのある種の基準化は一九九四年、パリに初めて一人で海外研究に出かけた際、食した「クロワッサン」にあるかと思われます。それはパリのデパート「ギャラリー・ラファイエット」の食料品専門フロア(日本でいう「デパ地下」)「ラファイエット・グルメ」にあった「ルノートル」の「クロワッサン」。「ルノートル」は当時、日本では西武百貨店が提携を結んでいて、西武デパートには何処にも「ルノートル」が付設されていました。「ルノートル」はパティシエのガストン・ルノートル(1920~2009)が始めたブランドで、ガストン氏はプロのための料理学校をフランスで初めて設立(1971年)するなどフランス料理界に絶大な影響力を持っていました。また、シャンゼリゼ大通りに、甥のパトリック氏がシェフを務める「ル・パヴィヨン・エリゼ」という星付きレストランを経営していた時代もありました。ですので、「ルノートル」はすでに知っていて、日本では主にケーキを食していたのですが、「ラファイエット・グルメ」の「ルノートル」のクロワッサンは壮観でした。焼き上がる時間が決まっていて、その時間になると台の上にこれでもかとクロワッサンがてんこ盛りに出されるのです。それを待ってましたとばかりに、客がワッと寄ってたかって大量に買って帰る。あっという間に無くなってしまうので、筆者も一つか二つですが焼き上がる時間に出かけて、おこぼれを頂戴するかのようにクロワッサンを買いに出かけたものです。その時はシャンゼリゼ大通りを一本奥に入ったポンチュー通りのレジダンスを借りていましたので、散歩がてら歩いて通いました。確かにそれなりに高級なのですが気取ったものではなく、日常のちょっとした贅沢くらいのパンだと思うのです。
その後、二十一世紀になってほどなく、『どっちの料理ショー』で「日本一美味しいクロワッサン」というふれ込みで名古屋の「ブランパン」のクロワッサンが紹介されたことがありました。もう、どうしても食べたくなって、当時、三菱重工に勤める昔の教え子が名古屋にいましたので、友人たちと名古屋詣でし、繁華街から離れた名古屋大学の近くにある「ブランパン」まで教え子の運転するランボルギーニでクロワッサンを食べに出かけました。フランス人の店主が作るクロワッサンは不味くはないものの「日本一」というほど美味しくもなくガッカリしたものです。持って帰るのを待ちきれず、近くの公園で皆で食べたのをよく覚えています。夜、ホテルでワインを飲むとき用といって買った総菜や総菜パンの方がおフランスしていて美味しかった。
人生において、一番クロワッサンを食べたのは二〇〇五年、呼吸器疾患で生死の淵を彷徨い、二ヶ月間入院した時でした。人生初めての入院が面会謝絶になるほどの重篤なもので、精神的にもパニックになってしまい、体重は三十キロ台まで落ちていました。そんなこんなで個室にずっと入院していたのですが、それが功を奏したというか、病院食に融通をきかせてもらうことが出来ました。相当の偏食家だと思われるようですが、何せおかずは文句を言わずに食べるので、ご飯はイヤと言ったら、じゃあ何でもよいので炭水化物を取って下さいということに。呼吸器の病気なので食事に制限がなく、治療者側もともかく栄養を摂って体重を増やして欲しいわけです。またその病院、昼は麺類だというのでそれもイヤだと言ったら、おかずだけ作って出してくれるというではありませんか。そこで筆者は家人にクロワッサンを買ってきて欲しいとお願いしたのです。もちろん、一日三食クロワッサンですので、スーパーに売っている一袋に数個入った大量生産のものを食べていました。チューブ状のバターやチョコレートクリームをたっぷり付けて。おかげさまで何とか生還することが出来ました。まさに「クロワッサンさまさま」です。
それから時折、有名店のクロワッサンなど食してみるのですが大体ダメです。余分な味がする。砂糖が入っているのか甘さを感じる場合が多い。菓子パンのイメージなのでしょうか。先日も南青山にフランスでも有名なクロワッサンの店が再オープンしたというので食べてみたのですがやはり菓子パンに近く、香りは良いのですがオイリーなバター感がなく、澄ました上から目線の味わいでガッカリしました。そんな中、最近食したクロワッサンで最高だったのは昨年九月、浅間温泉に出かけた際泊まった「松本十帖」の朝食で出された「アルプスベーカリー」の「クロワッサン」です。隣の「小柳」の二階に店を構えるベーカリーで焼き立てだったようですが、ともかく持つ手がベトベト、滲み出す大量のバター、お口の周りはテッカテカと食べるのにお行儀よく出来ず一苦労するのですが、これこそ「クロワッサン」を食する醍醐味。久しぶりに美味しいクロワッサンに出会えました。ただ、「信州ガストロノミー」の朝食はメニュがテーブルに置かれてある立派なコース仕立て。クロワッサンにたどり着く頃には少食の筆者はもうギブアップ寸前で。この時ほど、パリの朝食が「コンチネンタル」(生ジュース、パンの盛り合わせ、飲み物のみ)だったことの正しさを痛感したことはありませんでした。
今月のお薦めワイン 「イタリア赤ワインの手頃な定番 モンテプルチアーノ」
「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ レ・モルジェ 2020年 DOCモンテプルチアーノ・ダブルッツォ テッレ・ダブルッツォ」 1900円(税別)
私たちにとって、イタリア料理はフランス料理に比べ、身近で日常使いにも適した得難い西洋料理です。もちろん、高級リストランテでの食事も素敵ですが、ピッツェリアでちょっと小腹を満たしたり、トラットリアで親しい方たちと賑やかな食卓を囲むのも食の幸せな時間に他なりません。そんな気軽な食事の際、欠かせない手頃に楽しめて美味しいイタリアの赤ワインと言えば、「キャンティ」と「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」が双璧ではないでしょうか。切れのいい酸とタンニンのタイトな味わいを楽しみたければ「キャンティ」、ストレートな充実した果実味を楽しみたければ「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」とお考え下さい。「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」はイタリア半島の長靴のちょうど真ん中辺りに位置するアブルッツォ州でモンテプルチアーノ種という葡萄から造られるワインです。このアブルッツォ州、他の州と異なり、この赤のモンテプルチアーノ・ダブルッツォと白のトレッビアーノ・ダブルッツォという二種類のワインが大半を占め、他のワインが殆どありません。しかし、「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」はイタリアワインを代表する赤ワインの一つというユニークな州です。
そして、「キャンティ」が千円を切るコンビニワインから、ヴィンテージ物の高級なものまでグレイドが多岐にわたるように、「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」もエミディオ・ペペのように少数ながら、長熟用に造られ数万円するような銘酒も存在するのです。しかし、ほとんどは手頃な価格の早飲みタイプ。濃いルビー色、ベリー系の香り、果実味豊かですがクセがなく、後に引かない飲みやすさがあり、アフターにちょっとリコリスのようなハーブ系の余韻があります。やや温度を低めにすると料理とも合いやすく、ついつい飲み過ぎてしまうくらい。
今回ご紹介する「テッレ・ダブルッツォ」は1999年設立の新しいカンティーナ(ワイナリー)。クオリティは高く、しかし、手頃に楽しめるワインを提供することをポリシーとする品質管理を徹底したモダンな造り手と言えるでしょう。ちょっとイタリアンな時にどのようなシチュエイションにもピッタリの一本です。どうぞ、お試しあれ。
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略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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by Osamu Seki
今年もマスターズの季節となりました。昨年は松山英樹プロが日本人初さらにアジア人初の優勝という快挙を成し遂げました。まさか自分が生きている間に日本人が優勝するとは思っていませんでしたので、筆者もまた大変感激しました。大学がちょうどコロナ禍でリモートになっていましたので、ついついテレビに釘付けになり、気づくと朝になっている数日でした。最終日、松山選手は最終組でしたので一番ホールから最終十八番ホール、最後のパットを入れて優勝するまでずっとテレビ観戦していました。今年はちょっと残念な結果になりましたがそれでもついつい朝方までテレビに見入ってしまう日々でした。
実は筆者、スポーツが苦手というかあまり好きではありません。団体で行なう競技がとりわけ好きになれず、学校体育は苦痛の日々でした。そんな中、唯一自ら熱中したスポーツがゴルフだったのです。ゴルフを始めたのは小学校五年生の時。ちょうど父の転勤で長野県の諏訪から神戸に引っ越してからということになります。思えば、半世紀も前のことになってしまいました。神戸に引っ越して、父が毎週末、ゴルフの練習場に行くようになったのです。
最初は興味本位でついて行ったのですが、自分も打たしてもらうとがぜんやってみたくなり、毎週父と練習するようになりました。社宅から歩いていける距離に二軒練習場があり、新しくできた方は結構な距離でしたがまだ国道に阪神電鉄の路面電車が走っていて、それに乗るとすぐでした。社宅は一軒家でしたので、小さな庭で父からもらったお古のクラブで毎日素振りをしたり、空き缶を地面に埋めてカップに見立て、パターやアプローチの練習をするようになったのです。基本的なマナーや技術などは父がくれた中村寅吉プロの書かれた初心者用の本を頼りに学んでいきました。
子供ならではの好奇心で我流とはいえ、みるみる上達し、すぐにショートコースに出られるようになり、六年生になる頃には父に連れられ、コースを回るようになりました。父は銀行員でしたので銀行が持っている会員券があり、それをお借りして、名門の芦屋カントリークラブでもプレーさせていただきました。すでに書かせていただきましたが、関西は付け届けが盛んで、お歳暮お中元だけでなく、バレンタインなどことある毎に何か家に届くのですが、その他に休みに家族連れで旅行にご招待下さるなどということもありました。
東条湖という遊園地やゴルフ場といったリゾートを湖畔にしつらえた人口湖があり、そのほとりにある某企業の保養所に数回出かけました。社宅の隣の方とご一緒し、家人は遊園地、自分は父とお隣のご主人と三人でゴルフという訳です。自分はその東条湖カントリーが一番好きでした。関西のゴルフ場は関東の林間コースとは異なり、丘陵コースと言い、アップダウンが激しく、ホールの周囲を木が囲むこともありません。海辺にあるイギリスのゴルフコースをそのまま内陸に移した感じです。ところが東条湖は人口湖ですので、その周囲はフラットでまさに関西では珍しい林間コースだったのです。真夏でも木がありますのでどこか涼やかで実に気分良くプレー出来たのです。
今から五十年も前に小学生がゴルフなどというとよほど特別なことのように思われましょうがそれ程でもありませんでした。当時の会社員は誰もが接待ゴルフ、麻雀等々が仕事のようなものでしたので、自分と同じような境遇のゴルフ少年が同じクラスにいたのです。内田君といってお父様は鐘紡に勤められていました。まさに転勤族の子息です。夏休みが終わって学校が再開すると、お互い、休み中にどこのコースを回ったかなど語り合ったものです。
そのように子供の頃からゴルフをしていたならプロになることを考えたりしなかったのなどと若い友人たちからよく尋ねられるのですが、微塵もそのようなことを考えたことはありません。ゴルフはあくまで趣味、嗜みでしかないというのが常識だったからです。自分が子供の頃、ゴルフを生業にするというのは中卒でゴルフ場に勤め、キャディーから叩き上げるまさに職人の修行でしかなかったからです。
もともと、ゴルフはプロスポーツではなく、「紳士の嗜み」として人気を博してきたのではないでしょうか。実際、筆者の子供の頃、アマチュアゴルフ界には中部銀次郎(1942~2001)という「プロより強いアマチュア」といわれた名プレーヤーがいました。今でこそ、アマチュアゴルフ界はプロになる前の大学生のためにあるかの如くの様相を呈していますが、当時プロゴルフとアマチュアゴルフは別の世界と子供ながらに筆者は捉えていました。中部氏は大洋漁業の社長のご子息。小学校からゴルフを始められ、甲南大学卒業後は大洋漁業の関係会社に就職。サラリーマンをしながら、生涯アマチュアとして活躍されました。ですので、筆者は一度もプロゴルファーになろうなどとは露ほども思ったことはありません。また、父も自分をプロゴルファーにしようなどと考えたことはなかったでしょう。実際、中学二年生の夏に東京支店に転勤になり、船橋の社宅に住むようになってからもゴルフコースには連れて行ってもらいましたが、筆者は以前のような熱心さをなくしていました。それでも、父は別にあれこれ言うことはありませんでした。銀行の同僚が会員権を買うというので、お付き合いで買っていましたが筆者はそれを使わせてもらうこともあまりなく、時々父と一緒に回ったりするくらいでした。
父は筆者が大学に入ってフランス料理に熱中し始めると、銀行の部下の女性行員を二名招いて筆者と四名で毎月フランス料理の食べ歩きをさせてくれました。訪れる店は筆者に任せて、金は出すが口は出さない。ゴルフの時と一緒でした。今は亡き父に心から感謝している次第です。
筆者の母方の祖父はアマチュア野球の審判として、高校野球の甲子園への静岡県大会決勝の主審を務めるなど社会人野球に尽力していました。その縁もあり、母の妹は父の母校ででもある県立静岡商業が甲子園で準優勝した際の監督と結婚し、その叔父はアマチュアゴルファーとして静岡県でもトップクラスの成績を収め、ゴルフショップを経営しています。しかし、筆者は叔父とは一緒に回ったことはありません。ゴルフの話はもちろんしますが。
つまり、ゴルフはあくまで「社交」の一つなのであり、それぞれのテリトリーの中で一緒にプレーすることで人間関係も潤滑になり、生活に潤いが出るのではないでしょうか。筆者は子供の頃、内田君と学校でゴルフの話で盛り上がりましたが、彼と一緒にプレーしようと思ったことはありませんでした。それは内田君には彼の家庭のテリトリーがあり、転校生というその境遇は同じであっても自分の家庭とは異なっていると子供ながらに理解していたからと思います。
一家総出で子供をゴルファーにしようという家庭を見るにつけ、父が平凡なサラリーマンであって本当に良かったと心底思う今日この頃です。
今月のお薦めワイン
「フランスワイン第三の産地 ヴァレ・デュ・ローヌ」
「コート・デュ・ローヌ ルージュ プティ・ロワ 2018年 AC コート・デュ・ローヌドメーヌ・ヴァル・デ・ロワ」 2200円(税別)
今回はフランスの赤ワインでブルゴーニュ、ボルドー以外の代表的ワインを紹介させていただきます。すでに繰り返し申し上げてきましたように、ブルゴーニュは緯度的に赤・白双方の銘酒を産することの出来る実に恵まれた地勢を有しています。ですので、赤ワインはより南が適していることが分かります。そして、ブルゴーニュをそのまま南下した場所に位置するのが「ローヌ」のワインということになります。
ローヌの赤ワインを代表する葡萄品種は何といっても「シラー」でしょう。ボルドーの「カベルネ・ソーヴィニヨン」「メルロ」、ブルゴーニュの「ピノ・ノワール」と並んで世界中でヴァラエタルワインとして造られている品種の一つです。南の葡萄だけにスパイシーで野性味にあふれ、アルコール度数も高い。北ローヌではシラー単品種で造るワインが多く見られ、最北の「コート・ロティ」はその中でも高価な銘酒を生み出しています。また、そのすぐ南に位置する「コンドリュー」は早飲みの高級白ワインの産地でヴィオニエ種という珍しい葡萄品種から造られています。
しかし、多くのローヌのワインはシラーとグルナッシュなどの混醸でスタイルとしてはボルドーに近いと言えましょう。その中でも珍しいのは南ローヌを代表する赤ワイン「シャトーヌフ=デュ=パープ」で13種類の葡萄品種を用いることが出来ます。造り手によっては単品種で造る者もいて、多彩な味わいを楽しむことが出来ます。
今回ご紹介するのはもっともポピュラーな「コート・デュ・ローヌ」の赤です。ブルゴーニュで言えば、ACブルゴーニュに相当するワインです。上記の通り、シラー、グルナッシュ等の混醸で、グルナッシュは南仏のワインでもよく用いられますので、シラーの割合の多いワインを選んでみました。この「プティ・ロワ」はシラー60%、グルナッシュ40%となっています。
造り手はエマニュエル・ブシャール。ブルゴーニュワインを代表するドメーヌ、ブシャール家の一族で父のロマン氏が1965年に南ローヌのヴァルレアに畑を持ったのがこの「ドメーヌ・ヴァル・デ・ロワ」の始まり。エマニュエル氏は97年にドメーヌを継承。2013年にエコセール認証を得るなど自然派ワインを造っています。自然酵母での発酵、樽を用いず、葡萄の味わいそのものを感じられるワイン造りがモットーとのこと。
若くても楽しめる果実味たっぷりのローヌのワイン。ブルゴーニュの洗練さと対照的な野趣味にあふれたパワフルな味わいはこれからの季節、野外でのバーベキューなどにもピッタリかと思われます。是非お試しあれ。
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略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP
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