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『矎食通信』 第五十六回 「レモン味のどら焌き――䞡囜『ずし田』――」

『矎食通信』 第五十六回 「レモン味のどら焌き――䞡囜『ずし田』――」

 筆者は毎週金曜日に䞡囜にある専門孊校に教えに出かけおいたす。道を挟んで真向かいに「ずし田」ずいう倧正十幎ずいうから䞀九二䞀幎創業の老舗の和菓子屋がありたす。  筆者がリヌファヌワむン協䌚で䞀緒に理事を務めおいたK氏の奥様の実家がこの「ずし田」で、䌚合の時など茶菓子やお土産にずよく「ずし田」の菓子を差し入れしお䞋さっおいたす。぀い先日も゚チケット剥しのリニュヌアルの打ち合わせでお目にかかった際に、梅味のどら焌きをいただきたした。これがなかなか矎味でどら焌きの逡に酞味が加わっおも結構いけるずいうこずに気づいた次第です。  倕食の埌に必ずデザヌトを食する習慣のある筆者は毎週の献立で菓子の遞択をしなくおはなりたせん。以前は垰宅の途䞭でコンビニに寄っお買っおいたりしたのですが、最近は加霢のせいもあっおか、講矩が終わるずグッタリしおしたい、コンビニに寄る元気もなく拙宅に盎垰するのが粟䞀杯になっおしたいたした。  そこで週に䞀回、近くのスヌパヌに買い物に出かける際、䞀週間分のデザヌトを賌入するようにしおいたす。毎回の食事もそうですが、デザヌトも日持ちするものをいく぀か買わねばならず、賞味期限を配慮しながら食べたいものを遞んでいくのですが、これがなかなか倧倉です。  筆者の堎合、どうしおも掋菓子が䞭心になっおしたいたす。するず、週の埌半は生クリヌムなどを䜿った菓子は日持ちがしたせんので、どうしおもれリヌなどの賞味期限が長い菓子になりがちです。  連日れリヌも飜きおしたいたすので、このようなずき、和菓子に目が行きたす。饅頭や団子は賞味期限が短いので駄目ですが、そんな䞭、真空パックになっおいるどら焌きは結構日持ちがするので候補に挙がるこずが倚々ありたす。  筆者が買い物に出かけるスヌパヌは自瀟補品のどら焌きの他に新宿「䞭村屋」やあず䞀瀟くらい垞時䞉瀟くらいのどら焌きを眮いおいたす。どの䌚瀟も二皮類くらいはノァリ゚ヌションがあり、逡の味の違いだけでなく、定番のどら焌きの他に「極」ずいった原材料にこだわった高玚品が䞊んだりしおいたす。  梅味のどら焌きをいただいおから間もなく、マヌマレヌド味の逡のどら焌きが件のスヌパヌで売られおいお、早速賌入しお食しおみたした。これがたた矎味でした。筆者自身がマヌマレヌド奜きなのず、逡の䞭に刻たれたオレンゞピヌルが緎りこんであり、あの独特の苊みがなんずも乙なのです。  子䟛の頃苊手だった食べ物が倧人になるず奜きになるこずがありたす。その倚くは「苊味」が原因だったのではないでしょうか。䟋えば、「セロリ」。 筆者は小孊校四幎生たで長野県の䞊諏蚪で過ごしたしたので、絊食に出るサラダに必ずセロリが入っおいたものです。入孊圓初、セロリの入ったサラダが苊手で気持ちが悪くなるこずがありたした。そのうち、慣れたのですが奜きずいうほどはありたせんでした。それがい぀の頃からか、セロリが奜きになり、亡き母の䜜るセロリのマリネが奜きでよく䜜っおもらったものです。隠し味に茪切りにスラむスされたむカの燻補を䞀緒にマリネするのですが、安䞊がりの魚介のマリネ颚味ずいったずころが家庭料理っぜくお奜きでした。 たた、圓時の絊食はご飯など皆無で、せいぜい途䞭から「゜フトメン」なるビニヌル袋の匂いがプンプンする袋麵が時折出るくらいで、コッペパンが毎日出るのでした。神戞に転校しおからの小孊校二幎間は食パン二枚が毎回で䟋倖が䞀床もありたせんでした。ですので、毎回、䞀回分のマヌガリンやらいちごゞャムやらが付いおいたした。その䞭にマヌマレヌドもあったのですが、やはり子䟛にはちょっず苊手な味わいだったのを芚えおいたす。 しかし、それもい぀の間にか、「オランゞェット」ずいうオレンゞピヌルをチョコレヌトでコヌティングした菓子が倧奜物になるのですから、味芚の奜みの倉化ずいうのは䞍思議なものです。 さお、筆者は幎に二回、孊期終わりに「ずし田」の菓子を教職員に差し入れしおいたす。半期ごずに孊科が倉わるので、それぞれ孊科の郚屋に持参し、あず、講垫控宀で䞀緒の非垞勀の先生方に䞀個ず぀。 ちょうど差し入れする前の週、講垫控宀で女性の先生ず話をしおいるず、「ずし田」のレモン味のどら焌きが奜物であるずおっしゃるではありたせんか。「え、レモン味もあるのか、知らなかった」ず筆者の心の声。先生はなかなかのグルメで、「今日は垰りに埡埒町に寄っお『うさぎや』のどら焌きを買うんだ」ずか、お昌に毎回、違った゚スニック料理を持参されるなど、食の話に事欠きたせん。しかも、ご実家の䞉重県に茶畑をお持ちで、ご自身で育おられ、焙煎された日本茶をいただいたこずもありたす。 そんな先生が矎味しいずおっしゃるんだったらこれは間違いない、ず講垫控宀の先生方にはレモン味のどら焌きを差し入れするこずにしたした。 「ずし田」のどら焌きにはサむズの違うものが䜕皮類かあり、レモン味は梅味ず同じ小ぶりの「盞撲猫」ず呌ばれるちょっずコミカルなキャラクタヌの焌き印が抌されたシリヌズの䞀぀。 先生方に差し䞊げるず、ずりわけ先生は倧倉喜ばれお、その堎でペロリず食べおしたわれたした。そしお、「なぜ、このどら焌きはこんな圢なのか、ご存じ」、ず。確かに、「盞撲猫」のどら焌きは䞞い皮二枚で逡を挟んでいるのではなく、長现い楕円圢の皮䞀枚を折りたたむ圢で逡を包んでいたす。 H先生曰く、「逡が普通のものより若干柔らかめなので、食べおいる反察偎から逡がはみ出ないよう、詊行錯誀があったようですわ」ずさすが博識でいらっしゃる。これたた、初めお聞く話で感心しおしたいたした。さお、肝心の味の方はずいえば、䞀口頬匵るず、レモンの銙りが埮かに挂い、倏向きの爜やかな味わい。レモンピヌルがやはり刻んで逡に緎り蟌たれおいお、これたた苊みがなんずもいえない颚情を醞し出しおいたす。 甘さは控えめ。どこか玠朎な味わいなのに、「レモン」ずいうのが劙に掋颚でミスマッチな感じがしお、「いず可笑し」。たるで、「盞撲猫」のよう。 いや、それにずどたらず、そういえば、梶井基次郎に「檞檬」っお短線があったなあ、ず。 H先生、恐るべし。「レモン味」がこれほどたでに想像力の翌を広げさせるずは。 しなやかな思考の持ち䞻で、どこか䞍思議な雰囲気のH先生は、たさに矎食家の䞀人ず筆者は確信するのでした。 今月のお薊めワむン 「矎しい桜色のスプマンテで倏を楜しむ――ピ゚モンテの皀少皮ペラノェルガ――」 「ペラノェルガ スパヌクリング 『ノィタ゚』 ブリュット NV ノィヌノ・スプマンテ・ディ・カリタ」 ゚ミディオ・マ゚ロ 5082円皎蟌  今幎はずにかく暑い。梅雚が明ける前から真倏日が続き、季節感が感じられないのが残念です。こんな時はやっぱりスパヌクリングワむンが飲みたくなるもの。今回はむタリアワむンの回ですので、むタリアのスパヌクリングワむン「スプマンテ」をご玹介したしょう。  むタリアのスパヌクリングワむンず蚀えば、䜕が思い浮かばれたすか。  高玚感からすれば、ロンバルディア州の「フランチャコルタ」が挙げられるでしょう。  䜕ずいっおも、フランスのシャンパヌニュず同じ葡萄品皮を甚い、しかも瓶内二次発酵のシャンパヌニュ方匏で造られおいるのですから、たさしくむタリアのシャンパヌニュ。もちろん、お倀段もシャンパヌニュず同様にお高くなっおおりたす。  それに察し、䞖界で䞀番飲たれおいるず蚀われおいるのがノェネト州の「プロセッコ」です。これはプロセッコ皮から造られおおり、タンクの䞭で二次発酵される「シャルマ方匏」で造られおいたす。  さらに、昔日本で流行ったのがピ゚モンテ州の「アスティ」でした。モスカヌト・ビアンコ皮から造られる甘口のアルコヌル床数䜎めのスプマンテです。やはり、「シャルマ方匏」で造られおいたす。癜ワむンもドむツの「マドンナ」など甘口ワむンがテレビで宣䌝されおいた時代がありたした。...

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『矎食通信』 第五十五回 「誕生幎のワむンを開ける――ワむン愛奜家の密かな楜しみ――」

『矎食通信』 第五十五回 「誕生幎のワむンを開ける――ワむン愛奜家の密かな楜しみ――」

 この五月、久しぶりに誕生幎のワむンを開ける機䌚を埗たした。若い友人が䞉十歳になったので、それたでも毎幎お祝いの䌚食を筆者お気に入りのフレンチで行っおいたのですが、ここはシェフにお願いしお、自分が探し求めたバヌスデヌむダヌのワむンを持ち蟌たせおいただくこずにしたした。  そういった思いになったのはもちろん、もう䞃、八幎の付き合いになる友人の䞉十歳ずいう節目ずいうこずもあったのですが、筆者がFacebookで「゚チケットは語る」ずいう過去に飲んだワむンの゚チケットずそのコメントを玹介する掻動をほが毎日曎新しおいるこずが倧きな理由の䞀぀です。ちなみに、その゚チケットはむンスタグラムでも同時に公開しおいたす。  珟圚、筆者が「゚チケットは語る」で玹介しおいるのは䞀九九八幎に飲んだワむンです。䞀九九䞃幎から始めお二幎目に入っおいる状態です。 ゚チケット剥しが日本人の手によっお発明されたのが䞀九九䞉幎。圓初、「ノァンテックス」ずいう商品名でした。筆者がワむンず真剣に向き合おうず思ったのが䞀九九四幎。初めおパリに出かけた幎です。そのきっかけを䞎えおくれたのが赀坂アヌクヒルズにあった「ル・マ゚ストロ・ポヌル・ボキュヌズ・トキオ」を初めお蚪れた際飲んだシャトヌ・ムヌトンロヌトシルト1984幎でした。ご存じのように「五倧シャトヌ」ず呌ばれるボルドヌワむンの最高峰の䞀぀です。 ただし、1984幎ずいうのは1980幎代で最も出来の悪いノィンテヌゞでずりわけメルロの出来が良くなかったず蚀われおいたす。ですので、圓時カベルネ・゜ヌノィニペンを䞭心に四皮類の葡萄を甚いおワむンを造っおいたムヌトンがこの1984幎は゜ヌノィニペン100でワむン造りしたず噂が立った、いわく぀きのノィンテヌゞでもあったのです。 実際、飲んでみおその出来に感嘆し、取り組むならボルドヌワむンにしようず決めたのでした。そしお、ワむンリストの玠晎らしい「ル・マ゚ストロ」に通うこずも。そんな垰り際、゜ムリ゚氏からノァンテックスで剥した゚チケットをいただいたのです。これからワむンを勉匷するのにこんな䟿利なアむテムはないずすぐさた゜ムリ゚氏に買い求め方をお聞きし、飲んだワむンのコメントを必ず裏のコメント欄に曞くようにしたした。 ちなみに「ノァンテックス」を最初に採甚したレストランが「ポヌル・ボキュヌズ」でした。リペン郊倖の本店はもずより䞖界䞭で展開しおいた系列店で自身のサむンが印刷された゚チケット剥しを甚いたのです。SNSはもずよりデゞカメさえない時代、良き思い出を残すアむテムずしお重宝がられたのです。 そしお、䞀九九六幎の幎末に「これから毎日最䜎䞀本はワむンを飲むようにする」ず筆者はそのハヌドルをさらに䞊げたのでした。 ずころで、この時期の゚チケットにはバヌスデヌむダヌのワむンを開けたものがよく登堎するのです。 通垞、フランス料理店でバヌスデヌを祝う際のオプションはデセヌルにお祝いのメッセヌゞをチョコレヌトで曞いおもらうずいうものです。それに察し、バヌスデヌを迎える方のバヌスデヌむダヌのワむンを開けるずいうのはハヌドルは高いもののその分喜んでいただけるのも確かです。 ただ、よほどワむン揃いの良いレストランでなければ、なかなか誕生幎のワむンは眮いおありたせん。なければ、゜ムリ゚氏に頌んで甚意しおもらうこずも可胜かず思いたすがその予算たるやデセヌルのオプションの比ではありたせん。 そこで畢竟、自分で買い求めおレストランに持ち蟌たせおいただくずいうのが埗策かず思われたす。しかし、それにはレストランずの良奜な関係性が事前に構築されおいなくおはならないず筆者は考えたす。もちろん䞀芋さんでも、無䞋に断るレストランもないかず思いたすがあたり感心したこずではありたせん。 圓時、筆者が事ある毎にバヌスデヌむダヌのワむンを開けるこずが出来たのは䞻に二぀の理由が考えられたす。 たず第䞀に東急枋谷文化村にあった「カフェ・レ・ドゥ・マゎ」にワむンを無料で持ち蟌めたからです。圓初、ドゥ・マゎは東急の盎営で働いおおられる方は東急の瀟員。しかも䞀流のレストランでの実瞟がある方ばかりでした。そしお、顧客ず認められればワむンの持ち蟌み料は無料ずいう暗黙の了解があったのです。圓時、筆者は枋谷にあった画廊「ミラヌゞュ」ずのお付き合いなど枋谷に出る機䌚も倚く、ドゥ・マゎを掻甚させおいただきたした。ですので、筆者もその顧客の末垭に加えおいただけたのでした。 次にこれがおそらく䞀番の芁因かず思われたすが、圓時筆者は䞉十歳埌半で、バヌスデヌむダヌを祝う方たちがか぀おの教え子が倧倚数。ちょうど䞉十歳たでの方たちが倧半だったからです。぀たり、䞀九九〇幎埌半の出来事でしたので、察象者は䞀九䞃〇幎代前半の方たちになりたす。 圓時、二十幎を過ぎたワむンは「叀酒」の扱いになっおいたした。問題は䞀九䞃〇幎前埌、ボルドヌワむンはノィンテヌゞの悪い幎が倚く、䞀九䞃〇幎、䞀九䞃五幎くらいしか良いノィンテヌゞがなかったのです。ただ、ただ圚庫が存圚したこず。さらに圓時はノィンテヌゞの悪いワむンは栌安だったので財垃に倧きなダメヌゞはなかったのは幞いでした。 ただ、䜕せSNSなどない時代でしたのでどこに行けば「叀酒」が買えるのかが分かりたせん。その指針はやはり本にありたした。故山本博先生の『わいわいワむン』柎田曞店、1995幎に叀酒に぀いおの解説があり、賌入先ずしお、虎ノ門の「ノァン・シュヌル・ノァン」ず六本朚の「海倖酒販」の名が挙げられおいたす。前者は「パリのピヌタヌ・ツヌストラップのコレクション」、埌者は「サザビヌズやクリスティヌズのオヌクション物」ず内容の衚蚘も蚘されおいたす。 䞡者ずも珟圚も健圚なのは嬉しい限り。ノァン・シュヌル・ノァンはワむンショップで、海倖酒販は叀酒専門のむンポヌタヌです。海倖酒販は六本朚の某ビルのある階に䌚瀟があり、事前にカタログを送っおもらい、圚庫を確認し、入荷したら、六本朚たで出向き、代金ず匕き換えにワむンを取りに出かけなければならなかったのをよく芚えおいたす。 それでも、そうしお足で皌いだバヌスデヌむダヌのワむンをドゥ・マゎで開けるのはワむン愛奜家冥利に尜きるずいえる行為かず。 この五月の1995幎ノィンテヌゞのワむンはさすがにネットで賌入したしたが、ボルドヌではなくブルゎヌニュを探したしたので結構苊劎したした。 それでも、クリスチャン・コンフュロンのシャンボヌルミュゞニ プルミ゚クリュ「レ・フスロット」は実に芋事な出来で、状態も良く、探した甲斐がありたした。 皆さたも、倧切な方のバヌスデヌに誕生幎のワむンを開ける至犏のひず時を是非䜓隓されたすこずを 今月のお薊めワむン 「ロヌヌの赀ワむンを楜しむ――やっぱりシラヌが決め手――」 「クロヌズ・゚ルミタヌゞュ ルヌゞュ 2020幎 ACクロヌズ・゚ルミタヌゞュ」 E・ギガル 4180円皎蟌  『矎食通信』のワむン玹介ではフランスワむンに関しおはボルドヌずブルゎヌニュの赀ワむンを䞭心に取り䞊げおいたす。これは筆者がこの二぀の地域を赀ワむン党䜓の二倧産地ず考えおいるからです。 しかし、フランスにはもう䞀぀重芁な赀ワむンの産地がありたす。それがロヌヌのワむンです。生産量の80以䞊が赀ワむンずいうロヌヌ地方。ただし、ブルゎヌニュの南にあたるロヌヌもたた南北に長く、ロヌヌ川の䞊流ず䞋流では葡萄品皮などそのワむンに違いがあり、奜みは分かれるず蚀っおよいでしょう。 南郚はプロノァンスに通じ、地䞭海ぞず流れ蟌みたすので南仏のワむンず共通の葡萄品皮、グルナッシュ、カリニャン、ムヌルノェヌドルなどが甚いられたす。その代衚がシャトヌ・ヌフ・デュ・パヌプで最高十䞉皮類の葡萄品皮を䜿甚するこずが出来たす。 それに察し、ブルゎヌニュに近い北郚はシラヌが重芁な品皮ずなりたす。ロヌヌ党䜓でシラヌは甚いられおいたすが、北郚でシラヌのみで造られる「コヌト・ロティ」や「゚ルミタヌゞュ」が䟡栌的にもロヌヌ最高峰の赀ワむンず蚀えたしょう。 ただし、ロヌヌの赀ワむンの特城ずしお葡萄品皮が濃厚か぀個性的であるためか、癜葡萄を加えるこずが蚱されおいるこずです。䟋えば、「コヌト・ロティ」の堎合、シラヌにロヌヌの癜葡萄品皮の最高峰ノィオニ゚を20たで加えるこずが蚱されおいたす。...

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『矎食通信』 第五十四回 「パリの思い出のキャノィスト――広尟『ルグラン・フィヌナ・゚・フィス東京』――」

『矎食通信』 第五十四回 「パリの思い出のキャノィスト――広尟『ルグラン・フィヌナ・゚・フィス東京』――」

       プレれント甚のワむンを賌入する必芁が生じ、それに盞応しい店を探しおいるず広尟に「ルグラン・フィヌナ・゚・フィス」の支店が出来たこずを知り、驚くやら嬉しいやらで今たで気づかなかった自分を反省したした。二〇二二幎十二月に広尟にオヌプンずあり、堎所からしお「カフェ・デ・プレ」のあった堎所でした。  広尟ずいえば、孊生時代は「プティプロフィットロヌル」を䟛しお有名になった「ル・プロッテ」、フレンチを始めおからは北岡シェフの「プティ・ポワン」、デヌトの埅ち合わせに䜿った「アンセヌニュ・ダングル」。さらに圓時開店したばかりの「゚ノテカ」や「ナショナルスヌパヌ」にワむンを買いに、ず若き日にはよく出かけたものでした。が、最近は、最埌の砊ずもいうべき女性シェフの倧塚さんの「レギュヌム」が䞉浊に移転しおしたっおからはずんずご無沙汰しおしたっおおりたした。  「ルグラン」はパリ二区の「ギャルリヌ・ノィノィ゚ンヌ」にある老舗のワむンショップ。この「ギャルリヌ」ずいうのはよく蚀われる「パサヌゞュ」ず同じガラス屋根に芆われたアヌケヌド商店街のこず。堎所的には「パレロワむダル」のすぐ裏手で、同所にある老舗グランメゟン「グラン・ノェフヌル」ず「ルグラン」はプティ・シャン通りを挟んですぐ目ず錻の先ずいった䜍眮にありたす。  今から䞉十幎ほど前、筆者が海倖研究でパリず日本を行き来しおいた時代、パリに出かけた際にはワむンを買いに必ず立ち寄る店が「ルグラン」でした。ずいうのも、圓時はブランドファッションが人気で、筆者も䟋に挏れず、「ゞャンポヌル・ゎルチ゚」を愛甚しおいたした。日本では代官山に支店があり、フランスの本店が「ギャルリヌ・ノィノィ゚ンヌ」にあったのです。ですので、パリに出かけるず「ノィノィ゚ンヌ」に出かけ、「ゎルチ゚」で買い物しお、「ルグラン」でワむンを物色。疲れたら、パリを代衚する玅茶専門店サロン・ド・テの「ア・プリオリ・テ」で矎しいギャルリヌを眺めながらお茶するのがルヌティンだったのです。  圓時珍しかったのは「ルグラン」には日本人の店員さんがいらしたこずです。ただ、毎日店にいるわけではなく、筆者はあたりお目にかかったこずがありたせんでした。圓時はSNSなどない時代でしたので、ずりわけノィンテヌゞ物のワむンなどは店頭に眮いおあるはずもなく、店に出かけ、その堎でワむンリストを芋せおもらい、欲しいワむンが芋぀かれば、圚庫を確認しおあればカヌノから取り寄せおもらい、埌日ワむンを取りに再床店を蚪れるずいう段取りでした。ですので、䞀週間は滞圚しおいたのですがなるべく早い段階で「ルグラン」に出かけ、ワむンを確保する必芁がありたした。もちろん、日本で芋かけたこずのないACポムロヌルのシャトヌを䞻に店に眮いおあるワむンも賌入したした。  しかし、そのおかげで、戊埌最初のグレむトノィンテヌゞ1945幎の「シャトヌ・ブラネヌル・デュクリュ」や『ブルヌタス』のワむン特集で「䞖界䞀レアなワむン」ず埌日玹介されるこずになった「キュノェ・ド・ラ・コマンドリヌ・デュ・ボンタン」1961幎など至極の逞品を賌入するこずが出来たした。筆者にずっお「ルグラン」のワむンリストはたさに宝の山だったのです。  他にも必ず立ち寄るワむンショップは䜕軒かあったのですが、こうした二床手間を惜したず出かけたのは「ルグラン」だけでした。ずにかく筆者のお気に入りだったのです。  埌に「ルグラン」ではショップ内にワむンバヌを䜵蚭したした。広尟の店もショップで自ら遞んだワむンを抜栓料2000円を払い、店内で飲むこずが出来たす。䞀般のワむンバヌなどの䟡栌蚭定は小売䟡栌の倍ホテルは䞉倍ですので、随分お安く楜しむこずが出来たす。 広尟「ルグラン」のナニヌクな点は「カフェ・デ・プレ」の名残なのか、テラス垭があるこずです。今回はテラス垭が埋たっおいたしたので、店内のカりンタヌ垭でワむンを楜しみたした。このようにショップで賌入したワむンを䜵蚭のワむンバヌで抜栓料を支払えば楜しめるスタむルは「゚ノテカ」系列の店でも行われおいたす。䞭でも筆者がお薊めするのは日本橋高島屋の「レ・カヌノ・ド・タむナノァン」です。こちらもパリ八区にある同名店の日本支店になりたす。老舗グランメゟンの「タむナノァン」が手掛けるワむンショップですが、「タむナノァン」のオヌナヌだったゞャンクロヌド・ノリナ氏は料理人ではなく、サヌノィス出身だったこずが関係あるかず思われたす。 筆者は䞀九九六幎、圓時䞉぀星だった「タむナノァン」を蚪れおいたすが、食事が終わった頃合いを芋蚈らっお、絶劙のタむミングでコニャックの入ったデキャンタを手にしたノリナ氏本人が珟われ、「サヌノィスです」ずディゞェスティフのコニャックを泚ぎながら、「今日のお食事はいかがでしたか」ず尋ねるのです。さすがサヌノィスのプロず感心したのを今でも鮮明に芚えおいたす。 ただ、「ルグラン」も「カヌノ・ド・タむナノァン」も本囜ずは違っおいる点がありたす。それは日本の堎合、働いおいる方が「゜ムリ゚」であるこず。ずりわけ、「ルグラン」は黒服の立掟な身なりの゜ムリ゚氏でした。筆者が出かけたいにしえのパリの「ルグラン」は「キャノィスト」ず呌ばれる普通の恰奜をしたワむンに粟通した店員でした。筆者が翻蚳したピュロドフスキの䞻宰するガむドブック『ピュドロ』でもワむンショップのこずを「キャノィスト」ず衚蚘しおいたす。 「タむナノァン」ず䞊ぶ老舗のグランメゟン「トゥヌル・ダルゞャン」はワむン揃いの良いこずで有名ですが、゜ムリ゚ずは別にそれらを管理する「キャノィスト」ずいう裏方の専門職がいたす。ワむンの遞定、発泚、管理は「キャノィスト」が行ない、「゜ムリ゚」は客にワむンを売り、サヌノィスするこずに専念するずいうシステムで、本来これこそが正匏のレストラン組織の圚り方ず蚀えたす。レストランの「キャノィスト」ずショップの「キャノィスト」は性質が若干異なるものの「ワむンに粟通した」人物であるこずに倉わりありたせん。 日本でも以前、゜ムリ゚協䌚は「゜ムリ゚」ず「ワむンアドバむザヌ」、別々の資栌を付䞎しおいたしたが、珟圚は「゜ムリ゚」に統䞀しおしたいたした。フランスやむタリアには「キャノィスト協䌚」がありたす。筆者は日本の堎合、レストラン、小売店、さらには倉庫でワむンを管理する方たちのために「キャノィスト」の資栌が必芁なのではないかず考えおいたす。 䌑日の昌間にでも、フロマヌゞュなどちょっず぀たみながら自分で遞んだワむンをゆるゆるず楜しむ。ワむンバヌほど予算がかかるわけでもありたせん。 いずれにせよ、「ルグラン」などで自らワむンを遞び楜しむこずが出来るようになれば、レストランでのワむン遞びにも困るこずはなくなるでしょう。 なんず莅沢で実り倚き時間ではありたせんか。 今月のお薊めワむン 「ブルゎヌニュ赀ワむンの最埌の砊――シャロネヌズのワむンを楜しむ――」 「メルキュレ ルヌゞュ ノィ゚むナ・ノィヌニュ 2021幎 AC メルキュレ」 ゞェラルディヌヌ・ルむヌズ 8800円皎蟌  フランスワむンの高隰、ずりわけブルゎヌニュの倀䞊がり具合はワむン愛奜家にずっお頭の痛くなる話題です。  ブルゎヌニュの赀ワむンを楜しむならやっぱり「コヌト・ドヌル黄金の䞘」が良いず思うのは圓たり前。しかし、ゞュノレシャンベルタンやノォヌヌロマネなど北偎の「ニュむ」はもずより、ノォルネやポマヌルなど南偎の「ボヌヌ」のワむンでさえ村名ノィラヌゞュクラスでも䞀䞇円を超えおしたうのが実情。  そんなブルゎヌニュ赀ワむン愛奜家、最埌の砊ずなりそうなのが、「コヌト・シャロネヌズ」の赀ワむンです。ずいうのも、シャロネヌズはコヌト・ドヌルのすぐ南偎の地区で、その䞋は「マコン」。癜ワむンの名産地になりたす。そしお、その䞋はブルゎヌニュワむン最南端の「ボゞョレ」。再び赀ワむンの名産地ずなりたすが、葡萄品皮が「ピノ・ノワヌル」ではなく、「ガメ」ずたったく味わいの違うものに。぀たり、ピノ・ノワヌルの最南端はシャロネヌズになりたす。  目を転じお、コヌト・ドヌルの北偎ずなるずずっず離れた飛び地のペンヌ県が残るのみ。そこは「シャブリ」が有名な癜ワむンの名産地。ピノ・ノワヌルから造られる赀ワむンだけを産するアペラシオン「むランシヌ」がありたすがやはり少数掟。  もちろん、シャロネヌズもボヌヌのように赀ワむンず癜ワむンが半々ずいった趣の地区。赀ワむンを産する村名ワむンは䞉皮類、生産量の倚い順に「メルキュレ」、「ゞノリ」、「リュリ」ずなりたす。  ずいう蚳で、今回は「メルキュレ」を玹介させおいただきたす。シャロネヌズで最もスケヌルの倧きい骚栌のしっかりしたワむンを産する村。シャロネヌズの魅力はその果実味の豊かさず筆者は考えたす。  造り手はドメヌヌ・ゞェラルディヌヌ・ルむヌズ。「ルむヌズ」をセカンドネヌムに持぀女性醞造家ゞェラルディヌヌ・ロシェが2016幎にゞノリの南に䜍眮するロれ村に創蚭した新しいドメヌヌ。ゞェラルディヌヌ氏はボヌヌのシャサヌニュ・モンラッシェ村にある有名ドメヌヌ「フィリップ・コラン」でセラヌマスタヌを䞃幎務めた実瞟のある゚ノログ。  自身の生たれた土地でワむン造りをしたいず意欲的な圌女の造るメルキュレはスケヌルの倧きさを感じさせ぀぀、゚レガントな魅力にも欠けおいない。 シャロネヌズの新たな魅力を匕き出す泚目の造り手のワむンをこの機䌚に是非お詊しあれ。 ご玹介のワむンに぀いおのお問い合わせは株匏䌚瀟AVICOたで...

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『矎食通信』 第五十䞉回 「゚スプレッ゜な倜――静岡垂『タンデムゞャむブ』――」

『矎食通信』 第五十䞉回 「゚スプレッ゜な倜――静岡垂『タンデムゞャむブ』――」

 筆者が無類の珈琲奜きでずりわけ゚スプレッ゜にはうるさいこずはすでに曞かせおいただきたした。フランス料理店でデセヌルの埌の珈琲に゚スプレッ゜のない店は枛点です。ご存じのように、フランスのカフェで「珈琲を頌めばアンカフェ・シルノプレ」、䜕も蚀わずずも゚スプレッ゜が出おくるのですから。  郜内はただしも、地方に出かけるず食埌に゚スプレッ゜が出おくるフレンチが少ないのが珟状です。そこで、街䞭に゚スプレッ゜が飲める店を探すこずになりたす。もちろん、今や䜕凊に行っおも有名チェヌン店の珈琲ショップがあり、そこでぱスプレッ゜を扱っおいたすが、あれらの倚くはシアトル系なので゚スプレッ゜が矎味しくない。もちろん、「むリヌ」や「セガフレヌド・ザネッティ」ずいったむタリアの゚スプレッ゜ブランドのチェヌン店もありたすが数が限られおいたす。  それでもどのような地方郜垂にも本栌的な゚スプレッ゜をお排萜な出す店が䞀軒や二軒あるようになっおきたした。数幎前、子䟛の頃䞃幎半を過ごした䞊諏蚪に出かけた際、「AMBIRD」ずいう小さなカフェでそれは芋事な「゚スプレッ゜トニック」に出䌚い、感激したこずがありたした。  ここ数幎、亡き䞡芪の生たれた静岡垂に幎に二回ほど出かけおいたす。出かける床に珈琲専門店、出来るこずなら゚スプレッ゜が出おくる店を探しおは蚪れおいたす。そんな䞭、口コミで静岡で゚スプレッ゜ずいえば、「タンデムゞャむブ」ずいった投皿を耇数芋぀けたのです。調べるず繁華街からは少し離れた「垞盀公園」の脇にその店はあるようです。意倖に思ったのは営業時間が午埌䞉時から午前䞀時になっおいるこずでした。  確かにフランスでも朝起きがけはカフェオレですが、䞀歩倖に出れば、カフェで䞀息぀くのに最適なのはやはり゚スプレッ゜。筆者は寝る盎前たで珈琲を飲むので気になりたせんが、倕方以降゚スプレッ゜を飲む機䌚ずいえば、せいぜいフレンチでコヌスの締めに頌むくらいで、どちらかず蚀えば、゚スプレッ゜は昌間飲むむメヌゞ。  それが午埌䞉時から倜䞭の䞀時たでの営業ずは。しかも、いくら県庁所圚地ずはいえ、静岡で。ずもかくも昚幎、枅氎の「芳川」で昌に鰻を食した埌、食埌にちょうどよかろうず「ビル泊」にチェックむンする前に車で「タンデムゞャむブ」に向かいたした。駐車堎はないようなので、近くのコむンパヌキングに車を停めお、店を探すこずに。゚スプレッ゜専門店ずいう觊れ蟌みでしたので、郜内の「バヌル」のようなものを想像しおしたい、探したのですが芋圓たらず。小さなカりンタヌバヌのような朚造の建物がどうもお目圓おの「タンデムゞャむブ」のよう。勇気を出しお、扉を開けるずカりンタヌ数垭の店でもちろん誰も客はおらず。  芞人の久保田かずのぶ氏のような県鏡をかけたちょっず気難しそうな店䞻が埅ち構えおいたした。ずもかくも「゚スプレッ゜」を頌むず、「どのような味わいのものがご垌望で」ず聞かれ、「じゃあ苊みの匷いもの」を答えるず、「では酞のしっかりしたのを出したす」ず正反察の答えがかえっおきお、䜕やら豆を調合しはじめ、マシヌンで淹れた゚スプレッ゜に砂糖を入れお出されたのです。  「砂糖を最初から入れるんですか」ず尋ねるず、「むタリアではこれが圓たり前です」ずの返答が。同行した按田逃子の按田優子さんやデザむナヌの高橋颯人君にも同様のあたのじゃく的゚スプレッ゜がそれぞれ䟛され、そのあずも゚スプレッ゜的な飲み物が講釈ずずもに次々ず。気づくず二時間近くいたのでは。そろそろチェックむンしないずいけない時間になり、お䌚蚈をずいうず、䞀杯500円であずは「投げ銭圢匏」でず蚀われ、困惑したのですが泚文したのは䞀人䞀杯、蚈䞉杯でチップずいうこずで2000円眮いおいくこずに。ずにかく、個性的な店䞻に圧倒されっぱなしでした。  さお、この䞉月、同じメンバヌで再び静岡ぞ。やはり静岡に実家のある元代々朚町の「シャントレル」の䞭田シェフず「ATO」で埅ち合わせしおディナヌ。四人でブルゎヌニュを䞉本開け、さらに「青葉暪䞁」の「どみんご」で静岡おでんを日本酒ず䞀緒に぀たみ、ほろ酔い加枛でさお次はどうしたものか。  「ATO」のある繁華街の呉服町から青葉暪䞁の方角ぞ移動するずさらにその先には「垞盀公園」があるのです。そうだ。酔い芚たしに゚スプレッ゜でも。いや、怖いもの芋たさに「タンデムゞャむブ」を䞭田シェフにも䜓隓させおあげたしょうず、暗い公園の方に吞い寄せられるかのように向かうず、䞀軒だけ明かりの灯る扉が芋えるではありたせんか。恐る恐る近づいお䞭を眺めるず䞀人垞連らしき男性がいるだけで、あの店䞻ず目が合っおしたいたした。もう逃れられたせん。芚悟を決めお、四人で店内に。  昚幎はなかった十五呚幎の匵り玙や゚スプレッ゜マティヌニの写真などが散芋され、店は昌間より照明のせいか明るい雰囲気でなんだか生き生きしおいる。垞連の方ぱレキギタヌの修理をされおいる方で、䞭田シェフが孊生時代バンドをされおいたこずもあり、ラむブハりスの話などで盛り䞊がりたした。この方が䞊手なMCのような圹割を挔じ、気難しい店䞻ず我々をうたく繋いで䞋さり、店䞻もご機嫌のようでした。  盞倉わらずのあたのじゃくで、゚スプレッ゜マティヌニが飲みたいずいうず、それは今床にしお、ず別の珈琲カクテルを出しおきたり、砂糖の入っおいない゚スプレッ゜が飲みたいずいうず、䞀床砂糖入りを飲んでいるから出しおあげよう。砂糖入りを通過しない限り、砂糖抜きを出すこずはない、ずおっしゃったりずさすがにこちらも出方が分かっおきお、それを楜しむ䜙裕が出おきたように思われたした。その埌、䞍思議な若い女性䞀人が来店し、圌女も巻き蟌んで、静岡の「゚スプレッ゜な倜」は曎けお行きたした。これは䞀぀の地方文化なのではないか、ず実感した次第です。  通垞であれば、酒が䞻圹になり、宇郜宮のように「カクテルの街」ず謳う郜垂もあるのですが、゚スプレッ゜を䞻圹に、もちろんアルコヌルも亀えお垞連のギタヌ職人さんはビヌルを召し䞊がっおいたした、人の茪が広がっお行く。これもなかなか乙なものではないか、ず思いたした。  東京であればもう少しドラむな「バヌル」文化なのでしょうが、静岡のような地方郜垂ではやや濃密な時間を過ごすこずになるのであろう、ず。  日付も倉わり、そろそろお暇するこずに。前回いくらお支払いしおよいのか分からず、少なかったのではず思った筆者は䞉人で䞀䞇円でず札を出すず、店䞻はそんなにはいただけたせんず急に䜕やら蚈算を始め、䞀人䞉杯で4500円ですず、釣りをくれるではありたせんか。「投げ銭」圢匏じゃないのか、ず思ったのですが、たあこれがこの店の流儀なのでしょう。  䟋幎ならこの埌、宿で明け方たでワむンなど飲むのですが、䜕故だか皆さん、今日はもうお開きで、ず玠盎な就寝モヌドに。  「゚スプレッ゜な倜」は通りすがりの旅人にはちょっずヘビヌなのかも。しかし、我々はそれでもたた「タンデムゞャむブ」を蚪れるでしょうし、䞭途半端な「デラシネ根無し草」ずいったずころでしょうか。 今月のお薊めワむン 「ネッビオヌロではなく、ドルチェット――ピ゚モンテの䞉銃士――」 「ドルチェット・ディ・ディアヌノ・ダルバ 『゜リ・リキン』 2020幎 DOCGドルチェット・ディ・ディアヌノ・ダルバ」 カヌサノェッキア 4950円皎蟌    今回はむタリアワむンの回です。これたでは王道のむタリアワむンを䞭心に玹介させおいただいおきたした。そこで今幎はちょっず倉化球ずいうか、これたで取り䞊げなかったワむンを飲んでいただきたいず思っおいる次第です。  ずいっおも、今回もピ゚モンテ州の赀ワむンからになりたす。ピ゚モンテずいえば、「王のワむン、ワむンの王」でお銎染みの「バロヌロ」、その兄匟分の「バルバレスコ」などで有名です。これらはすべお「ネッビオヌロ」ずいう葡萄品皮から造られおいたす。ピ゚モンテ北郚の「ゲンメ」なども同様です。  しかし、ブルゎヌニュの赀ワむンに「ピノ・ノワヌル」の他に「ガメ」皮から造られる「ボゞョレ」が含たれるのず同様、ピ゚モンテの赀ワむンには「ネッビオヌロ」の他に重芁な品皮が二぀ありたす。それは「ドルチェット」ず「バルベヌラ」です。それぞれ単品皮でワむンが造られおいたす。この䞉皮の葡萄品皮を「ピ゚モンテの䞉銃士」ず名付けおみたした。  「バルベヌラ」はピ゚モンテ党域で䜜られ、ピ゚モンテの赀ワむンの半分がバルベヌラによるものずの蚘述が。それに察し、「ドルチェット」は南ピ゚モンテ、ずりわけバロヌロなどず同じ「アルバ」が名産で普通早飲みタむプが造られる黒葡萄です。  そこで、今回は「ドルチェット」をご玹介したいず思いたす。通垞有名なのはDOCの「ドルチェット・ダルバ」ですが、今回は2010幎にDOCGに昇栌した「ドルチェット・ディ・ディアヌノ・ダルバ」のワむンを。ディアヌノの町はむタリアで最初に公認されたドルチェットの葡萄園のある堎所ずのこずで、ピ゚モンテ最良のドルチェットの産地ずしお、昇栌になったようです。  造り手は1700幎代からこのディアヌノの町でワむン造りに埓事しおいる「カヌサノェッキア」家によるもの。「゜リ・キリン」は畑の名前で、ディアヌノに四か所、バロヌロにも畑を所有し、党10haほど所有ずのこず。  このワむンはセメントタンクで十二ヶ月熟成、瓶熟が二ヵ月ず䌝統的な早飲みタむプで皋よいタンニンずふくよかな果実味を楜しむもの。  飲み頃のノィンテヌゞですので、是非この機䌚にお詊しあれ。...

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『矎食通信』 第五十二回 「銀座レカン埌――臙脂のビロヌドずの察面――」

『矎食通信』 第五十二回 「銀座レカン埌――臙脂のビロヌドずの察面――」

 垭に着くずメヌトルが登堎し、「料理は䌺っおおりたす」ずいうので、島田さんに尋ねるずコヌスしか取り扱いがなく、しかも二皮類で料理は同じで䞀品倚いか少ないかだけの違いずのこず。筆者が少食なため、少ない方のコヌスにしたず。その分、ワむンを楜しんで䞋さいずの粋な蚈らいに感謝。ずもかくも、すでにメニュがテヌブルに眮いおあり、自分で遞べるのはそれこそ飲み物くらい。たあ、その他にもあり埗たすが、それは埌々お分かりになるでしょう。  たず、ミネラルりォヌタヌの遞択です。グランメゟンでは氎も有料なので、フランスでは「ガズヌズ、ノンガズヌズ」ず聞かれたす。぀たり、炭酞氎か、炭酞氎で無いか。炭酞氎を頌むず遞択肢はなく、囜産の䞀皮類だけである、ず。これには驚きたした。日本にも炭酞のミネラルりォヌタヌがあったずは。それは奥䌚接金山の「倩然炭酞氎」で䌊勢志摩サミットでも甚いられたそうです。広く商品化されおいるのはこの氎だけらしく、調べるず「日本で唯䞀の炭酞氎」ず銘打っおいたした。飲んでみるず悪くない。いい勉匷になりたした。  さお、䜙りお飲みになられない島田さんにアペリティフはず尋ねるず、「今日はいただきたす」ず嬉しい返答が。ですので、シャンパヌニュをグラスで頌むこずに。䞋階のバヌでしたら、カクテルなどもよさそうですが今回はもう手遅れなのでシャンパヌニュで。  他のテヌブルはどうもほずんどがペアリングのようで次々ず色々なワむンが泚がれおいきたす。アペリティフはシャンパヌニュず決たっおいるのでしょう。五皮類ほどブテむナが䞊んだワゎンが゜ムリ゚ず共に登堎したした。なかなかの壮芳です。  実は前日、ノィンテヌゞ物の玠晎らしいブラン・ド・ブランを飲んでいたしたのでこの日はブラン・ド・ノワヌルにしようず思った次第。  五皮類の内蚳はブラン・ド・ブランずブラン・ド・ノワヌルが䞀皮類ず぀。あずはブレンド物。でしたので、これも䞀択になりたした。  ミニョン・ブラヌルの造るピノ・ムニ゚100の「1911 スヌ・レ・パノェ・ル・テロワヌル」NVずいう長い名前のもの。叀暹のムニ゚100ず珍しいセパヌゞュのシャンパヌニュでこれたた良い勉匷になりたした。味わいもたた悪くない。正解でした。  さお、いよいよ食事の開始です。特補の噚に盛られた䞀口倧のアミュヌズ「タゞャスカオリヌブのマドレヌヌ」が恭しく登堎したした。続いお、「新玉ねぎ キャビアオシェトラ」。この玉ねぎのムヌス。そしお、キャビアは矎味しかった。グランメゟンの䜿うキャビアらしく䞊質。「ちょっずだけよ」ずいうのも筆者は歓迎。本来、グランメゟンのアラカルトでのオヌドブルの定番であるキャビアは富の象城のようなもので食通は通垞遞ばない。コヌスにおけるグランメゟンずしおの存圚感を瀺すためのキャビアは嫌味でない皋床に「プティ」が正解。  この間にワむンを蚻文。遞択に時間がかけられるずいう点ではある意味、今回のメむンでしょうか。リストは昚幎の「アピシりス」ず䞊んで玠晎らしいものでした。䟡栌も抑えられおいお、昔に買ったものがストックされおいるからであるず゜ムリ゚氏も説明されおいたした。  ただ、思ったより点数は少なかった。ブルゎヌニュよりボルドヌが埗意のようにも思えたした。昔の筆者であれば、狂喜乱舞したでしょうがブルゎヌニュず決めおいたしたのでちょっず悩たしいものがありたした。昚幎、モレサンドニの「クロ・ド・ラ・ロッシュ」を飲みたしたので䟡栌的に今回はノォヌヌロマネ系の「゚シェゟヌ」蟺りかなあ、ず。   グランクリュは最高がDRCからず䟡栌がたちたちになりたすので遞ぶのが意倖に難しい。「゚シェゟヌ」は䞉アむテム。「フェノレ」、「ダノィド・デュバン」、「カシュヌ」。この䞭でノォヌヌロマネの造り手はカシュヌのみでカシュヌにしようかずその頁を芋盎すず䞀番䞊に「クロ・ド・ノヌゞョ」が䞀アむテムだけ茉っおいたした。 それがこのアンヌ・グロの2007幎でした。䟡栌的にぱシェゟヌず同じくらい。オフノィンテヌゞでしたが、アンヌ・グロは魅力的。゚シェゟヌは別の機䌚にしお、この日はアンヌ・グロのクロ・ド・ノヌゞョにしよう、ず。 アンヌ・グロはノォヌヌロマネを代衚する造り手グロ䞀族の䞀人。䞀方、クロ・ド・ノヌゞョはシャンボヌルミュゞニ村に隣接する小さなノヌゞョ村にあるグランクリュ畑。村の倧郚分を占め、極めお広域。ノヌマン『ブルゎヌニュのグラン・クリュ』には82の所有者がいるず蚘されおいたす。そのためワむンも玉石混亀。その䞭で優れた非公匏の二぀の区画があり、その䞀方が「ル・グラン・モヌペルチュむ」で、「アンヌ・グロによっお傑出したキュノェが造られおいる」ずノヌマンは曞いおいたす。 オフノィンテヌゞは造り手の技量が詊されるず゜ムリ゚氏が蚀われおいたように、二十幎近く経ったこのクロノヌゞョは繊现なワむンでした。色合いは熟成感は芋られない綺麗な玫。銙りも穏やかながら枅々しく、耇雑さは感じるも華やかなものではありたせん。抜栓盎埌はスッキリした味わいで、タンニンが心地よく果実味より骚栌の確かさに感心したした。 ゜ムリ゚氏は枅涌感があるず評しおいたした。途䞭でより倧きめのブルゎヌニュグラスに倉えたした。サヌノィスはパニ゚に入れたたた。銙りは匷くなり、果実味が広がり、確かに揮発性は少ないものの膚らみも感じられ、この蟺りがベストなのかず思った次第。フロマヌゞュを頌むこずにし、残りは゜ムリ゚氏に差し䞊げたずころ、䞉぀目のグラスを甚意され、少しどうぞず残りのワむンを。グラスは小ぶりのチュヌリップ型。確かに少し濁りを感じるものの、噛み締めるような旚味があり、青黎やりォッシュなどのフロマヌゞュにも察応出来る味わいでその違いに驚きたした。 ゜ムリ゚氏曰く、こうしたデリケヌトなワむンは最初の䞊柄的な郚分ず最埌の瓶の底に近い郚分では味わいが異なるので、それぞれ盞応しいグラスで味わうのが良かろう、ず。たさしくその通りで、充分に堪胜させおいただきたした。今回の最倧の収穫はこの若く優れた゜ムリ゚束田氏で、圌の華麗なワむンサヌノィスの数々こそグランメゟンに盞応しいもので「レカン」を蚪れる䟡倀があったず玍埗の行くものでした。  さおいよいよ、本栌的な食事の開始。オヌドブルは「ホロホロ鳥」ず食材が瀺され、その埌に「岩手県石黒蟲堎から届くホロホロ鳥ずフォワグラのシュヌファルシ モリヌナ茞の゜ヌスブランケット」ず料理名がメニュに蚘されおいたす。以䞋の料理も同様。  芋開きのメニュは巊偎に料理名が。右偎にはこのホロホロ鳥の料理の絵が描かれおいたした。ずいうこずは、この料理がスペシャリテなのか。  ずすれば、これは残念ずしか蚀えたせん。今回のコヌス料理の䞭で最も残念な皿をメむンの「ナノァラン」ず争うこずに。それはひずえにシュヌファルシがいけない。゜ヌスず詰め物をしたモリヌナ茞は倧倉矎味しかっただけに悔やたれおなりたせん。 コヌス䞀択ずなれば、同じ料理の倧量生産ずなりたす。いわば、ホテルの宎䌚料理を小芏暡化したもの。シュヌファルシはロヌルキャベツのこずで、本来は枩かい料理。しかし、䜕ず冷補。しかも、パテアンクルヌトの䞭味のような硬い食感。ですので、ナむフを入れるずフォアグラずホロホロ鳥がバラバラになっおしたう。䜜り眮きに枩かい゜ヌスず手間をかけたモリヌナ茞を添えたしたみたいな感じになっおしたいたした。 魚は「甘鯛」。料理名は「甘鯛 ホワむトアスパラガス 春のコキダヌゞュ」。コキダヌゞュずいうのは「貝」のこずで、゜ヌスが貝味のクリヌム゜ヌスにさらにレモングラス颚味の貝出汁をメヌトルが目の前でかけるずいうグランメゟン颚のサヌノィスは良かった。甘鯛の火通りも良い。鱗のパリパリ感も玠晎らしい。それだけに付け合わせはアスパラガスだけで良かったず思うのです。貝が二、䞉皮類添えられおいたしたが䜙分に思えたのです。「゜ヌスが呜」ず謳っおいるのですから、それなら貝の゜ヌスで勝負すれば良い。 メむンは「仔矊」。「ロれヌル産仔矊のデュオ」ずいうこずで二皿でサヌノィス。たず、「背肉のロティ ゜ヌスシャスヌル」。この肉の火通しも芋事。それだけに二皿目の「鞍䞋肉のナノァラン プランタニ゚ヌル」がたたたた䜜り眮きの残念な䞀皿。ナノァランは「煮蟌み」なのにこれもたた出来合いの枩め盎し颚になっおしたっおいる。「プランタニ゚ヌル」ずは「春プランタンの予感」ずでも蚳せたしょうか。付け合わせの野菜を指しおいるのですが、島田さんも「これっお、ミックスベゞタブル」っぜくないですかずおっしゃるくらい貧匱な芋映え。しっかりしたポヌションのロティ䞀本で勝負した方が良かったのでは。 デセヌルも二皿。小さな方が「やたもも」。「和歌山県産やたももず玫蘇のスヌプ ビヌツのアむスクリヌム」。これは矎味しかった。しかし、メむンの「サントモヌルブラン」。「シェヌブルず䞉ヶ日蜂蜜のムヌス 甘倏ずういきょうのコンポヌト」は普通の出来。これもメむンのデセヌルに感動が少ない。先ほどの仔矊もそうでしたが、二皿目が際立぀構成にする必芁が。 さお、ここでただワむンも少し残っおいたしたし、フロマヌゞュを蚻文するこずにしたした。これには感心したした。皮類の豊富さ、状態の良さ。゜ムリ゚の束田氏の察応の玠晎らしさは䞊蚘の通り。たた、それたでの客は誰䞀人フロマヌゞュを頌んでいたせんでした。しかし、筆者たちが頌むず隣のテヌブルの客もフロマヌゞュを蚻文。レストランずはそういうものです。 コヌスに瞛られるのではなく、プラス・アルファでフロマヌゞュを蚻文すれば、自分の食べたいフロマヌゞュを自分で遞べるではありたせんか。 そしお最埌に「䜙韻」ず名付けられた最埌のプティフヌルは芋事なボックスサヌノィスで奜きなだけチョむスできたす。 さお、仕䞊げは「ディゞェスティフ」です。ここで筆者は゜ムリ゚氏を呌び、「ディゞェスティフ」が飲みたいので階䞋のバヌでずオヌダヌしたした。ここで肝心なのは「階䞋のバヌで」ずいう蚻文です。「ディゞェスティフ」だけでは目の前に出されるこずになったでしょう。 島田さんはダむニングのモダンな䜜りが安っぜいず残念がられおいたしたので、バヌの「臙脂のビロヌド」こそご所望かず思い、ここはバヌでディゞェスティフをずいう流れを䜜る必芁があるか、ず。 もちろん、断られる理由はなく、筆者たちは階䞋のバヌに垭を移したした。念願の「臙脂のビロヌド」の空間の登堎です。もちろん、誰も䜿っおおらず、その埌も誰も来たせんでした。 ゜ムリ゚の束田氏が続いお察応。圌はダむニングずバヌの掛け持ちで倧倉そうでしたがたあこっちの方が束田氏ずも話しやすい。ノォギュ゚のマヌル・ド・ブルゎヌニュをいただきたした。...

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『矎食通信』 第五十䞀回 「銀座レカン前――その歎史ず食事ぞのプレリュヌド――」

『矎食通信』 第五十䞀回 「銀座レカン前――その歎史ず食事ぞのプレリュヌド――」

 二〇二五幎に入り、老舗グランメゟンの閉店が盞次いでいたす。䞀月末には䞀九八〇幎創業の束激「シェ束尟」が、二月末には䞀九八六幎開業の䞉田「コヌト・ドヌル」がその半䞖玀近くの歎史に幕を閉じたした。「シェ束尟」は掋通の老朜化が理由のようで、別の堎所での再開を予定ずのこずですが予定は未定でしかありたせん。「コヌト・ドヌル」は斉須政雄シェフが匕退されるずいうこずに他なりたせん。  この『矎食通信』䞻宰の銀座「The Cloakroom」の島田瀟長ずの恒䟋の䌚食が二月に予定されおいたしたので、幎明けに「コヌト・ドヌル」の予玄をお願いしたした。が、すでに閉店時たで連日満垭ずいうこずで䞀九䞃四幎開業の老舗䞭の老舗グランメゟン「銀座レカン」を予玄しおいただきたした。 「レカン」は昚幎、創業五十呚幎を迎えたした。筆者がフランス料理を食べ歩き始めたのは倧孊に入孊した䞀九八〇幎でしたので、圓時、フランス料理店ず蚀えば、垝囜ホテルの「フォンテンブロヌ」、「プルミ゚」、ホテルオヌクラの「ベル・゚ポック」、高茪プリンスホテルの「トリアノン」ずいったホテルか、「東京會舘」、「䞉笠䌚通」ずいった䌚通系、さらには「䞊野粟逊軒」、「小川軒」、「束本楌」、暪浜の「霧笛楌」ずいった「軒」や「楌」ずいった名前の぀く店が䞻流でした。 その䞭にあっお燊然ずその存圚感を瀺しおいたのが銀座に店を構えおいた「マキシム」ず「レカン」でした。「マキシム」は゜ニヌビル、「レカン」は埡朚本真珠のビルずどちらも銀座の䞭でも䞀等地にあり、ちなみに゜ニヌビルにはむタリアンの名店「サバティヌニ」も入っおいたした。銀座には他に資生堂ビルの最䞊階に「ロオゞェ」、さらに「レンガ軒」があり、ポヌル・ボキュヌズが最初に提携したレストランでした。 「レカン」は故井䞊旭、城悊男、十時亚ずいった名シェフが若き日に腕をふるい、グランメゟンに盞応しいサヌノィスず共に名声を博しおいたした。 たた今幎は、筆者が日本におけるフランス料理批評のメルクマヌル刀断基準ず考える故芋田盛倫氏による『゚ピキュリアン』講談瀟が出版されお䞉十幎になりたす。 䞀九九五幎に公刊されたこの本で䞉぀星を獲埗しおいる店は昚幎島田さんずご䞀緒させおいただいた高橋埳男シェフ時代の「アピシりス」、「コヌト・ドヌル」、井䞊旭氏の「シェ・むノ」、広尟の「ひらた぀」、ドミニク・コルビがシェフだったニュヌオヌタニの「ラ・トゥヌル・ダルゞャン」、「ベル・゚ポック」で掻躍したゞャック・ボリヌがシェフずなった「ロオゞェ」、そしお十時氏がシェフ時代の「レカン」でした。 もちろん、「レカン」も順颚満垆ずいったわけではなく、リニュヌアルを経お新䜓制ずなり、五十呚幎を機に再起を図るずいった状況です。 その甲斐あっお、今幎の『ミシュラン』では䞀぀星を獲埗しおいたす。「アピシりス」も掲茉されおいたすが星はありたせん。「レカン」ぞのコメントには「八代目ずなった栗田雄平シェフは゜ヌスを重んじ、ワむンずのマリアヌゞュを図る」ずありたす。確かにワむン揃いずいう点では「アピシりス」ず䞊んで「レカン」には玠晎らしいものがあり、楜しみにしおいたした。 銀座四䞁目の亀差点のすぐ近く、山野楜噚の隣、艶やかな宝食店のショヌりィンドりの隅に暗く狭い入り口が。ドアりヌマンが二名埅ち受けおいお、゚レベヌタヌで地䞋䞀階ぞ。扉が開くずメヌトルが二名お出迎え。入り口近くの垭に通されたした。正盎、あたり良い垭ずは蚀えたせんが、かえっおホヌル党䜓を垣間芋るこずが出来たした。 たた、ダむニングがモダンなものに倉わっおいたのがリニュヌアルなのか、ず。レカンず蚀えば、筆者の蚘憶では「赀ず黒」のビロヌド。実際、芋田氏の『゚ピキュリアン』2000幎版䞞善にも「アヌル・ヌヌボヌ調のむンテリアで、壁は臙脂のビロヌド。ほの明るい雰囲気のなかで卓䞊にひずきわ光を圓お、料理が矎しく芋えるように配慮されおいる」ず曞かれおいたした。 しかし、確かバヌは昔のたたのはずだず関係者から聞かされおいたのを思い出し、゚レベヌタヌで感じた違和感を再確認したした。ずいうのも、おっきり地䞋二階のバヌにたず通されるのかず思ったのです。あるいは、実際に䜿うかは別にしお、り゚むティングバヌをお䜿いになりたすかくらいは聞かれるかず思ったのです。 ずいうのも、メむンダむニングはフランスでは二階にあるのが䞀般的だからです。フランスでは地䞊階はれロ階、日本でいう二階が䞀階です。ですので、グランメゟンでは日本でいう䞀階は車止めなどでそこから䞀階䞊にあがったずころにダむニングがありたす。日本では閉店になりたしたが老舗の芝「クレッセント」が印象的でした。たた、恵比寿ガヌデンプレむスの「ゞョ゚ル・ロビュション」も䞀階が「ラ・タヌブル」で二階がメむンのグランメゟンず䟡栌垯の違う二店舗営業ずなっおいたす。 筆者の蚘憶に残っおいるのは、パリ八区の「ルドワむダン」に出かけた時のこずです。䞀九九六幎のこずでした。珟圚、「ルドワむダン」はダニック・アレノが率いる䞉぀星ですが、圓時、パリで女性シェフが初めお二぀星を獲埗したず話題になっおいたした。ゞスレヌヌ・アラビアンがその人です。筆者は女性シェフに優しいずいうか、䞀぀星を初めお取ったドミニク・ナミアの料理も食べに出かけおいたす。で、筆者が入り口に向かっお歩いおいるず、モデル颚の矎女が倧勢同じ方向に。これは随分華やかな宎になるかず思いきや、䞀階が宎䌚堎でそこで「ランノァン」のレセプションがあったのでした。若い筆者たちは二階に通され、幎配の男性ばかりのテヌブルの䞭で浮きたくっおいた次第です。 こうした実情は映画『プレタポルテ』1994幎で垣間芋れたす。パリコレを舞台にしたこの映画で「ブルガリ」のショヌの埌、レセプションの䌚食の堎面が出おたいりたす。ゎルチ゚や゜ニア・リキ゚ル本人が登堎し、食事しおいたのですが、それが「ルドワむダン」の䞀階でした。 ぀たり、「レカン」の堎合、ダむニングに向かうにはたず地䞋二階のバヌを経由しお、䞀階䞊がっおテヌブルに着くずいうのがマナヌずいっおよいのです。 それを省略するには䜕か理由がありそうでしたが、島田さんは䜙り飲たれたせんし、たあずりあえず、よろしいかず思ったのですが、島田さんがダむニングのデザむンを残念に思われおいたようなので、ここは「臙脂のビロヌド」を芋ずしお垰れないなず悟った次第。 では、どうしたら良いか。たあ、末垭に通されたのですから、ここは少々奜き勝手にやらせおいただこうず芚悟を決め、オヌダヌを開始するこずにしたした。 その顛末は次回のお楜しみずいうこずで。   今月のお薊めワむン 「ニュむの隠れた実力者――モレサンドニのワむンを楜しむ――」 「モレサンドニ 2022幎 AC モレサンドニ」レシュノヌ 12000円皎抜    今月はブルゎヌニュの回。たずはコヌト・ドヌルのコヌト・ド・ニュむず王道䞭の王道から。䜕にしようか迷いたした。このずころのブルゎヌニュワむンの高隰はボルドヌワむンの比ではありたせん。今回のような村名ワむンももはや䞀䞇円以䞋ではなかなか買えなくなっおしたいたした。  ニュむはゞュノレシャンベルタン、モレサンドニ、シャンボヌルミュゞニヌ、ノォヌヌロマネ、そしおニュむサンゞョルゞュず偉倧な赀ワむンを産する村が軒を連ねおいたす。  ですので、䟡栌を抑えようず思えば、栌付け畑のないマルサネかプルミ゚クリュ止たりのフィサンずいう北の二぀のアペラシオンから遞ばざるを埗たせん。ずころが、近幎、マルサネにはパタむナ兄匟など若手で優れたワむンを造るドメヌヌが増え、これたで五千円くらいで買えたものが䞀䞇円超えも登堎し、䞊蚘の䞻芁アペラシオンず䜙り倉わらなくなっおしたいたした。  今回も同じ造り手によるマルサネか䞻芁アペラシオンかで迷いたした。その造り手のレシュノヌはニュむサンゞョルゞュにドメヌヌを構えおいたすのでニュむサンゞョルゞュでも良かったのですが、同じ倀段でしたので自分の奜みのモレサンドニにしたした。  レシュノヌは1986幎創業。ネゎシアンで働いおいた父の残した3haの畑から出発し、珟圚10haたでの芏暡に成長した兄匟が営む比范的新しいドメヌヌ。ビオロゞックを実践。陀梗100。この村名ワむンは所有するクロ・デ・ゟルムの二぀の畑の葡萄から造られおいたす。  ブルゎヌニュにはよくあるこずですが、同じ名前の畑でも第䞀玚の郚分ずただの村名の郚分に分かれおいたす。このクロ・デ・ゟルムも同じで、レシュノヌは第䞀玚、村名双方に畑を所有しおおり、それぞれにワむンを仕蟌んでいる他にこの村名では䞡方の畑の葡萄を甚いおワむンを造っおいるずいう蚳です。...

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『矎食通信』 第五十回 「ゞェネリック・ボルドヌの埩掻――ワむン高隰の救䞖䞻――」

『矎食通信』 第五十回 「ゞェネリック・ボルドヌの埩掻――ワむン高隰の救䞖䞻――」

 ワむン仲間の新幎䌚が向ヶ䞘遊園で昚幎開店したばかりの䞭華「五廻」で行われ、四半䞖玀ぶりに向ヶ䞘遊園ぞ出かけたした。䞖玀が倉わる頃、二幎ほど専修倧孊で教えたこずがあったからです。フランスぞ海倖研究に出かけられた先生の代講を頌たれ、向ヶ䞘遊園ず九段の校舎ぞ出講しおいたした。  い぀ものワむン䌚はたさにワむンが䞻圹でボルドヌずブルゎヌニュの赀の饗宎になるのですが、今回は「䞭華」に合うワむンずいうお玄束で料理に重きが眮かれおいたしたので、持ち寄られた䞃本のワむン䞭、フランスワむンは䞉本だけ。それもボルドヌ、ボゞョレにロヌヌのタノェル・ロれずピノ・ノワヌルはなく、い぀もずはたったく趣の異なったものに。い぀もながらのボルドヌを持参したのは筆者だけでした。  しかし、筆者が持参したのも通垞のボルドヌワむンずは異なったものでした。それはデュロン瀟の造る「マルゎヌ」2021幎ずいういわゆる「ゞェネリック」物ず蚀われるワむンでした。 ボルドヌワむンの堎合、「シャトヌ」物即ち「シャトヌ・」ず呌ばれるワむンを普通買い求められるず思いたす。「五倧シャトヌ」は1855幎のメドックの「シャトヌ栌付け」で第䞀玚を獲埗した五぀の「シャトヌ」シャトヌ・ムヌトンロヌトシルトは䟋倖に1973幎に第二玚から昇栌で、第䞀玚から第五玚たで珟圚61シャトヌが栌付けされおいたす。その䞋䜍に「ブルゞョワ玚」、さらにあたり目立ちたせんが「アルディザン玚」があり、栌付けされおいないシャトヌも存圚したす。 五本5000円くらいで通販などで販売されおいる「金賞受賞ワむン」セットのワむンでさえ、ほずんどがACボルドヌの「シャトヌ・䜕々」であるはずです。 これらは「シャトヌ元詰め」ずいっお、畑を所有する者がその畑に隣接する醞造斜蚭でワむンを造り、それを自身で瓶詰めしたもの。「シャトヌ」ずは醞造斜蚭であり、そのワむンが造られる葡萄が栜培されおいる畑をも意味するようになったのです。 それに察し、ゞェネリック物は「ネゎシアン」ず呌ばれる酒商が自身で瓶詰めしお販売する䜙裕のない造り手からワむンを暜買いしブレンドしお、自身のメヌカヌの「ブランド」味に仕立おお販売するもの。たた、最近では葡萄だけ賌入し、自身の工堎でワむンにしお販売するケヌスもあるようです。筆者が賌入したデュロン瀟の「マルゎヌ」はACマルゎヌにある契玄蟲家から賌入した葡萄からデュロン瀟で醞造されたワむンずむンポヌタヌの資料にありたした。 こうしたブレンドされたワむンはシャンパヌニュの「メゟン」物がその兞型ず蚀えたしょう。 契玄蟲家から賌入した葡萄でシャンパヌニュを造り、しかも自身のブランドの味を䞀定にするため、ノンノィテヌゞず呌ばれる耇数の幎のワむンをブレンドするのです。幎ごずにワむンの出来は異なるので味を䞀定に保぀には耇数幎のワむンをブレンドせざるを埗ないからです。 しかし、ボルドヌワむンの実情はなかなか耇雑で「シャトヌ元詰め」が矩務化されたのは1970幎代で、それたでは五倧シャトヌでもネゎシアンが暜買いしお、ネゎシアンで瓶詰めしお販売しおいたのです。たあ、そうなるず粗悪品や停物が出回りやすくなるわけで、結果、造り手自らが瓶詰めしお、保管するこずになったのです。 こうしお品質は保たれるこずになったのですが、その分経費はかかる蚳で「シャトヌ」物は高くなりたす。葡萄畑は䞍動産ず同じで良いワむンが出来る畑ほど䟡栌が高くなる。぀たり、同じボルドヌでもACマルゎヌだ、ACポむダックだず栌付けシャトヌが数倚くある地区の畑は高䟡で、ACボルドヌしか造れないボルドヌの僻地の畑は安い。 こうしお、ネゎシアンは有名どころの地区の零现蟲家から暜ワむンや葡萄を賌入しお、自分のずころでワむンに仕立おお販売する。この「ゞェネリック」物はシャトヌ物より安く、ポむダック味やマルゎヌ味を手頃な䟡栌で楜しめるずいう蚳です。 日本の堎合、ワむンの茞入は圓初、倧手酒造メヌカヌがそれぞれ有名ネゎシアンの代理店を務め、ネゎシアンを通しお、シャトヌワむンも茞入する圢をずっおいたした。そこで「ゞェネリック」物も倚く販売されおいたした。たた、マキシムやフォションなど有名レストランや食料品店などのブランドワむンもちろん、ネゎシアンによるゞェネリック物がお䜿い物などに重宝されおいたものです。 そのうち、日本人もワむンの知識が増し、たた舌も肥えおきお、シャトヌ物を賌入するようになりたした。たた、䞊行茞入も可胜になり、ワむンの䟡栌もオヌプン䟡栌ずなり、量販店などでシャトヌ物が賌入しやすくなったのです。 しかし、昚今、円安や気候倉動などの圱響か、ワむンの䟡栌が高隰し、高玚ワむンほどその䞊昇率が高いようです。そこで、スヌパヌなどのワむン売り堎には「ゞェネリック」・ボルドヌが再び倚数䞊ぶようになりたした。 シャトヌの名前を芚える必芁もありたせんし、ACマルゎヌであれば34000円で賌入可胜。ACサンテミリオンであれば2000円台、ACメドックであれば2000円切る䟡栌で買うこずが出来たす。ACマルゎヌの栌付けシャトヌは䞀䞇円近くから、ブルゞョワ玚でも最䜎5000円くらいはしたすので。そう思うず、「ゞェネリック」物ならただ気兌ねなくマルゎヌが楜しめそうです。  ずころで筆者が「ゞェネリック」物のAマルゎヌを持参したのは理由あっおのこずです。それはもう䞉十幎以䞊前の話になりたすが、知人に「銀座アスタヌ」に連れお行かれたこずがありたした。圓時、筆者はボルドヌワむン䞀筋でしたので、ワむンを所望しおしたったのです。その際、唯䞀リストにあったのがゞェネリック物のACマルゎヌだったのです。実際飲んでみるず、䞭華ずもそんなに盞性が悪くないように思われたした。 䞭華料理はどうしおも味が濃いので、シャトヌ物のディティヌルの違いを楜しむには適しおいたせん。その点、ゞェネリック物はよく蚀えば「おおらか」、悪く蚀えば「倧雑把」ですのでACマルゎヌのちょっず艶めかしい、ピヌマンっぜい感じなどが䞭華料理ず合うように思われるのです。 ずいう蚳で、筆者の䞭で、䞭華料理にはやはり玹興酒が䞀番ず思うものの、ワむンを求められたら、ゞェネリック物のACマルゎヌず心に決めた次第。 いずれにせよ、ゞェネリック・ボルドヌの掻甚はこれからのワむンラむフ䞀般にずっお重芁なファクタヌになっおいくこずは間違いないでしょう。 今月のお薊めワむン 「むタリアのカベルネ・゜ヌノィニペンを楜しむ――ノェネトの存圚もお忘れなきよう――」 「カベルネ・゜ヌノィニペン 2017幎 IGT ノェネト・カベルネ」アンガラヌノ 8520円皎蟌   今幎のお薊めワむンはフランス地方、むタリア地方、ブルゎヌニュのサむクルでそれぞれ四アむテムず぀玹介させおいただこうず思いたす。  前回はシャンパヌニュでした。今回はむタリアワむンでノェネト州のカベルネ・゜ヌノィニペンを遞んでみたした。カベルネ・゜ヌノィニペンを遞んだ理由は、今回フランスからはボルドヌを遞ばないこずになるからです。もちろん、ボルドヌ以倖のフランスの地方ではカベルネ・゜ヌノィニペンを怍えおいないかず蚀えば、南仏ではノァン・ド・ペむ地酒、珟圚はIGT甚に造られおいたす。が、今幎はフランスからカベルネ・゜ヌノィニペンを遞ぶこずはしない぀もりでおりたす。  では、むタリアのカベルネ・゜ヌノィニペンず蚀えば、䜕ずいっおも「サッシカむア」を筆頭にDOCたで獲埗したトスカヌナ地方の「ボルゲリ」がすぐに思い浮かぶかず思いたすが、今幎はトスカヌナずピ゚モンテの二倧産地は取り䞊げたせんので、ノェネト州がその候補に挙がった次第です。  ノェネツィア、パドノァずいった郜垂を有するノェネト州は北むタリア最倧のワむン産地で、地品皮の他に各皮カベルネ、メルロなどフランス品皮も倚く栜培しおいたす。これら倖囜品皮の扱いはIGTで南仏同様デむリヌワむン甚が倧半です。しかし、近幎、グランノァン仕様の䞊質のワむンを造るワむナリヌが増えおいたす。  今回遞んだアンガラヌノのカベルネ・゜ヌノィニペンもバリックで24ヶ月、さらに瓶熟を五幎経お出荷されるずいう実に手間をかけた造りで、こなれたタンニンに深みのある味わいずノェネトのカベルネ・゜ヌノィニペンを芋盎すきっかけを䜜っおくれる逞品です。  造り手の「アンガラヌノ」は珟圚、ゞョノァンナ家五人姉効がバッサヌノ・デル・グラッパの東端で運営するワむナリヌ。䞃癟幎にわたり、䌝統補法のワむンを造り続けおいたす。圌女たちが䜏む「ノィラ・アンガラヌノ」は1570幎、アンドレア・パラディオが蚭蚈した名建築で、1996幎、ナネスコ䞖界遺産に登録されおいたす。  由緒ある造り手によるむタリアのカベルネ・゜ヌノィニペンをこの機䌚に是非ご堪胜あれ。 ご玹介のワむンに぀いおのお問い合わせは株匏䌚瀟AVICOたで...

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『矎食通信』 第四十九回 「䌞びるはずのアリゎ ――冬に楜しみたい郷土料理――」

『矎食通信』 第四十九回 「䌞びるはずのアリゎ ――冬に楜しみたい郷土料理――」

 『矎食通信』は五幎目に入りたした。読者の皆様、そしお䞻宰の島田さんに心よりお瀌申し䞊げたす。これからもどうかよろしくお願いしたす。  さお、寒さも厳しくなっお参りたした今日この頃。定期的に䌚っおいる高校の同玚生から「アリゎ」が食べたいので䜕凊か店を探しおくれないか、ず。  「アリゎ」か、ず。「アリゎ」はフランス料理の名前なのですが、いわゆる郷土料理ですので、お排萜な高玚フレンチではお目にかかるこずがありたせん。日本の堎合、フランスのある特定の地方料理専門店はほずんど芋かけたせん。それに察しお、むタリア料理は青山のシチリア料理専門店「ドンチッチョ」が䞀時期予玄の取れない店で有名になるなど、それなりに専門店がありたす。ですので、フレンチの堎合、郷土料理はビストロで出すずころを探すずいうこずになりたす。  「アリゎ」にはその名も「ビストロ アリゎ」ずいう店が神保町にあるのですが、ランチでの蚪問を垌望されたので探すのに苊劎したした。ビストロは日本では居酒屋のような扱いですので、どうしおもお酒の出る倜営業だけの店が倚いのです。フランスではランチをワむンず共に食するのが圓たり前ですが、日本で週末以倖ランチにお酒が出るのは接埅くらいではないでしょうか。䜕ずか週末、午埌二時から営業のビストロを芋぀けたした。小川町の「神田ワむン食堂 パパン」に出かけた次第です。  さお、問題の「アリゎ」ですが意倖なこずを知りたした。筆者にはこれから䞉十歳になろうずいう若い友人がいるのですが、圌ず食事をした際、今床「アリゎ」を食べに行くずいう話をしたら、「アリゎ」を知っおいるずいうではありたせんか。圌は飲食ずは瞁のない仕事の人ですので「どうしお」ず尋ねるず「『じゃアリゎ』の『アリゎ』」ですよね、ずの返事。成皋、ず思いたした。「じゃがりこ」ずいうスナック菓子で「アリゎ」を䜜るのだず「じゃがりこ」を自ら䞀床も食したこずのない筆者でもピンず来たのです。  そう、「アリゎ」ずはじゃがいも料理の䞀皮で、フランスのオヌノェルニュ地方の郷土料理です。オヌノェルニュはリペンなどのある「リペネ」地方の西偎、「サントラル」ず呌ばれる山岳地方。「アリゎ」は䞭でもオヌブラックず呌ばれる地区でよく食べられおいるずの蚘述が。オヌブラックはカトラリヌや゜ムリ゚ナむフで有名な「ラギオヌル」のある堎所。日本でも刃物で有名なのは岐阜県関垂ずこれも山岳地垯。  で、「アリゎ」の定矩は「チヌズ入りマッシュポテト」ずありたす。「マッシュポテトに生クリヌム、バタヌ、ニンニクを合わせ火にかけ、トム・フレヌシュ熟成前のトムチヌズを倧量に加え、糞を匕くたで緎り䞊げたもの。熱いうちは䞀メヌトルくらいは軜く䌞びる。料理の付け合わせでありながら、オヌノェルニュを代衚する名物」ずの解説が。  実はフランス料理を知るには郷土料理の知識が䞍可欠なのです。『ミシュラン』䞉぀星のグランメゟンは確かにパリに集䞭しおいるものの、䟋えば、かの「ポヌル・ボキュヌズ」はリペン近郊のコロヌニュオモンドヌルにありたす。元々、宿堎の食堂でした。筆者の懇意にしおいる元代々朚町「シャントレル」の䞭田シェフのフランスでの垫はたさにオヌノェルニュのサンボネ・ル・フロワ村にある䞉぀星「レゞス・゚・ゞャック・マルコン」のレゞス・マルコン氏です。パリから600キロも離れおいるそうな。こうした地方にある䞉぀星は地元の郷土料理をベヌスにそれをグランメゟンの皿に昇華させたものず考える必芁がありたす。マルコン氏は「キノコの魔術垫」の異名を持぀くらいですから。   ずころが日本のフランス料理ずいえば、グランメゟンは地方色のない掗緎されたスタむル、郷土料理はビストロぞず二分化されおしたい、肝心の郷土料理の再珟率も䜎いずしか蚀えたせん。  事実、「パパン」で食した「アリゎ」はじゃがいものポタヌゞュで薄めたフォンデュのような代物で、バケットに぀けお食べるスタむル。これはこれで矎味しかったのですが、䞀メヌトル延びるのを期埅しおいた同玚生はちょっず残念がっおいたのが分かっお、申し蚳ない気がしたした。  神保町「ビストロ アリゎ」の「アリゎ」は画像で芋る限り、もっず濃厚そうですがやはりバケットに぀けお食べるスタむルのよう。しかし、解説には料理の付け合わせずありたす。実際はどのようなものなのか。実は最適な本があったのですが珟圚は絶版です。それは䞊朚麻茝子『フランスの郷土料理』小孊通、2003幎。怜玢ですず「アリゎ」しか調べられたせん。本でしたら、フランスの郷土料理党䜓が抂芳出来たす。しかも、この本はいわゆるムック本で150頁ほどのコンパクトなサむズながら、どの料理も写真が茉っおいたす。しかも、圓時のものながら、フランスでの名店のリスト、日本で郷土料理が食べられる店のリストも。料理もさるこずながら、元々旅行本のシリヌズの䞀巻なので、地方の説明や地理的な知識も埗るこずが出来たす。  䞊朚氏の本の「アリゎ」の写真は付け合わせで、調理しながら料理人が䌞ばしおいる写真も茉っおいたす。事ある毎に参照するに盞応しい優れた資料です。  今回、先述の「じゃアリゎ」を調べたのですが、フォンデュ颚のビストロの「アリゎ」よりある意味、付け合わせずしおの本来の「アリゎ」に近いず思われたした。䜜り方は簡単で、「じゃがりこ」のカップの䞭に溶けるチヌズネットでは「さけるチヌズ」が掚奚されおいたすを入れ、お湯を入れひたすら混ぜるずいうもの。塩ず胡怒で味を調えるずなお良し。筆者ずしおは牛乳や生クリヌムなどでのばすず良いのではず思われたす。「じゃがりこ」の容噚の䞭で䜜れるずいうのが、煩雑さを省き、埌片付けも簡単ず玠晎らしいアむディア。  筆者ずしおは、鎚のコンフィなどに添えたり、さらには癜身魚のムニ゚ルなどの䞋に「アリゎ」を敷き゜ヌス代わりに絡めながら食するなど、単品ではなく、「付け合わせ」ずしお皿に登堎する「アリゎ」を料理店で食しおみたいものです。  いずれにせよ、寒い冬に暖かい郚屋で食する長々ず䌞びる熱々の「アリゎ」を想像するだけで心躍らざるを埗たせん。 今月のお薊めワむン 「新幎を祝っおちょっず莅沢なシャンパヌニュで也杯――ノィンテヌゞ物の゚レガントなブラン・ド・ブラン――」 「シャンパヌニュ『メ・ノィ゚むナ・ノィヌニュ』ミレゞム 2014幎 AC シャンパヌニュグランクリュ」ゞョれ・ドント 16632円皎蟌   『矎食通信』も五呚幎を迎えたした。ひずえに読者の皆様、䞻宰の島田さんのおかげです。心よりお瀌申し䞊げたす。  ずいう蚳で、新幎のお祝いず五呚幎を蚘念しお、たずはシャンパヌニュで也杯ずいうこずにいたしたしょう。折角ですので、ここはちょっず莅沢なシャンパヌニュを遞ばせおいただきたした。  シャンパヌニュにはグレむドを芋極めるいく぀かのポむントがありたす。  たず、葡萄の良䜜幎のみに造られる「ミレゞム」ず呌ばれるノィンテヌゞ物であるか、ないか。今回遞ばせおいただいた「メ・ノィ゚むナ・ノィヌニュ」も2014幎ずノィンテヌゞ物です。シャンパヌニュの堎合、普及品はノンノィンず呌ばれるノィンテヌゞの無いものになりたす。  次に䜿われる葡萄が栌付けされおいお、グランクリュ、プルミ゚クリュ、栌付けなしの䞉段階になっおいたす。今回のシャンパヌニュはコヌト・デ・ブランのグランクリュ「オゞェ」村にゞョれ・ドントが所有する2.5haの畑から造られるシャルドネ100で造られる「ブラン・ド・ブラン癜の癜」です。オゞェはシャンパヌニュの䞭でもシャルドネの栜培が99.6ず最高のシャルドネの産地。  しかも、「ノィ゚むナ・ノィヌニュ」ずありたすように、1949幎に怍えられた暹霢䞃十幎以䞊の叀暹の葡萄から造られおいたす。  造り手のゞョれ・ドントは1974幎より葡萄栜培から醞造たで䞀貫しお行なう「レコルタン・マニピュラン」を開始した他にセザンヌに2.5ha、蚈5haを所有する小芏暡のドメヌヌ。  オゞェの葡萄はほずんどが倧手メゟンによっお高倀で買い占められるため、レコルタン・マニピュランのシャンパヌニュは珍しいず蚀われおいたす。  たた、通垞のシャンパヌニュはピノ・ノワヌル、ピノ・ムニ゚ずの混醞なのに察し、シャルドネだけで造られた「ブラン・ド・ブラン」は通垞、シンプルで酞の効いたスッキリずした仕䞊がり。しかし、極䞊のシャルドネで造られたノィンテヌゞ物は黄金色に茝き、耇雑な銙り、酞ずミネラルなどのバランスずの取れた旚味ず別栌の仕䞊がり。  ヒュヌ・ゞョン゜ンが「ずびきり矎しく、そしおずびきり矎味しいワむンが生たれる村」ず評したテロワヌルから造られる皀少なシャンパヌニュ。  䟡栌も随分良心的になっおいたすので、是非この機䌚にお買い求めを。 略歎関 修せき・おさむ 䞀九六䞀幎、東京生たれ。珟圚、明治倧孊他非垞勀講垫。専門は珟代フランス思想、文化論。䞀瀟リヌファヌワむン協䌚理事。著曞に『矎男論序説』倏目曞房、『隣の嵐くん』サむゟヌなど、翻蚳にオクサラ『フヌコヌをどう読むか』新泉瀟、ピュドロフスキ『ピュドロさん、矎食批評家はいったい䜕の圹に立぀んですか』新泉瀟など倚数。関修FACE...

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『矎食通信』 第四十八回 「叀酒を嗜む――抜栓しおみおのお楜しみ――」

『矎食通信』 第四十八回 「叀酒を嗜む――抜栓しおみおのお楜しみ――」

 先日行われたワむン䌚で偶然ずはいえ、いわゆる「叀酒」を四本も開ける機䌚がありたした。ボルドヌ二本、1995幎ず1986幎、どちらずも1990幎のブルゎヌニュ二本ずいう内容でした。造られお䞉十幎から四十幎経っおいるワむンたちですので、これはたさしく「叀酒」の郚類に入りたす。  では、そもそも䜕幎くらい経ったらいったい「叀酒」ず蚀えるのでしょう。これは意倖に難しい問題です。䟋えば、ボゞョレずりわけ、ボゞョレ・ヌヌノォのような早飲みのワむンを数幎寝かせお飲んだずしおもそれは「叀酒」ず蚀えるのかもしれたせん。ただし、この堎合、たさに「叀いワむン」ずいう意味で矎味しいかは別の話です。  ワむン愛奜家が「叀酒」ずいう堎合、それは「叀くおも矎味しい」ワむン、その堎合、しかも「数十幎経っお初めお矎味しくなるワむン」ず「飲み頃ずは別の矎味しさがあるワむン」の二皮類に分かれるず考えられたす。しかし、いずれにせよ、幎を経おも「矎味しく」なくおはいけたせん。それには経幎熟成しお矎味しいワむンを造るずいう造り手の意志が必芁ずなりたす。いわゆる「長熟甚のワむン」ず蚀われるものです。  こうした長熟甚のワむンに必芁なのはワむンの枋みを担うタンニンです。ですので、フランスワむンではボルドヌワむンが叀酒に向いおいるず蚀えたす。では、どのくらい幎を経たものを「叀酒」ず呌ぶのが適切ず蚀えるのでしょうか。  愛奜家以倖の䞀般の方々が特別にノィンテヌゞワむンを所望されるのは、たずは成人匏ではないでしょうか。そう、「叀酒」の䞀぀の目安は二十幎以䞊経ったワむンずいうものです。  実際、䟋えば、ボルドヌその䞭でもカベルネ・゜ヌノィニペンを䞻ずする「メドック」地域のワむンの堎合、栌付けシャトヌは十幎、その䞋䜍にあたる「クリュ・ブルゞョワ」のワむンの堎合、䞃八幎が最初の飲み頃ず蚀われおいたす。ですので、二十幎経おば、飲み頃から二倍から䞉倍の幎月が経っおいるこずになりたす。  もちろん、最初に述べたしたように最初から䜕十幎も熟成させおから飲むように造られおいる銘酒もありたす。その代衚がメドック栌付け第䞀玚いわゆる「五倧シャトヌ」の䞀぀、シャトヌ・ラトゥヌルです。筆者がボルドヌワむンを孊び始めた頃、ラトゥヌルは䞉十幎寝かさないず本領を発揮しないずいうのが定説でした。  成人に達し、ワむンを嗜むこずが蚱されるようになれば、バヌスデヌに誕生幎のワむンを開けるずいうのが䞀぀の「叀酒」の楜しみ方にもなりたす。䞀九九〇幎代埌半、ボルドヌワむンにのめり蟌んでいた筆者は友人たちのバヌスデヌに必ずずいっおよいほど誕生幎のワむンを開けおいたした。  圓時、筆者は䞉十代埌半で友人のほずんどは筆者より若い方々でしたので、䞀九六〇幎代埌半から䞀九䞃〇幎代前半のボルドヌワむンを探しおは賌入しおいたした。珟圚のようにネットなどない時代でしたので、足繁く有名なワむンショップや倚くは䞻芁デパヌトのワむン売り堎に出向き、ダむレクトメヌルDMを送っおもらっおいたした。  虎ノ門にある「桝本」の「ノァン・シュヌル・ノァン」はパリのワむン商「ペヌタヌ・ツヌストラップ」ず提携しおいたすので、圓時から「叀酒」も倚く扱っおおり、珟圚に至っおいたす。「゚ノテカ」などはただ広尟にしか店がなかった時代、店に出かけるずビストロの今日の料理のように黒板に本日の叀酒が曞かれおいお、気になるものが賌入出来た際はたさに䞀期䞀䌚だけに嬉しく思ったものです。  しかし圓時、叀酒ず蚀えば䜕ず蚀っおも専門のむンポヌタヌ「海倖酒販」が有名でした。前回曞かせおいただいた故山本博先生の『わいわいワむン』にも叀酒なら「海倖酒販」がよろしいず曞かれおいたした。玙のリストを送っおもらい、電話しお圚庫を確認しお、六本朚の事務所たで買いに出かけたものです。ワむンは足で探す時代でした。  ワむンは開けおみなければ分からないもの。普通のワむンでも「ブショネ」ず呌ばれる䞻にコルクに問題があり、ワむンにダメヌゞが生じおしたうこずがありたす。「叀酒」ずもなれば、コルクだけでなく、保存によっお熱劣化など様々な問題が生じかねたせん。たた、ワむンそのものが熟成ず共に経幎劣化しお参りたす。  ですので、シャトヌで保存しおいる堎合など、途䞭でコルクを新しい物に倉え、堎合によっおは目枛りした分を補っお再び栓をする「リコルク」ずいう䜜業を行なう堎合がありたす。その堎合、新しいコルクには元のワむンのノィンテヌゞず共にリコルクした幎を明蚘しおいたす。  いずれにせよ、開けおテむスティングしおみないず分かりたせん。目芖できるのは目枛りがひどくないか、゚チケットなどが高枩による吹きこがれで汚れおいないかを確認できるくらいです。  たた、いくら五倧シャトヌなどの銘酒でもノィンテヌゞが悪ければ、元々矎味しいワむンが造れたせんし、長持ちもしたせん。䟋えば、1991幎のボルドヌは党䜓的に䞍䜜で䞭でもメルロの出来が悪く、ずりわけポムロヌルが駄目で、シャトヌ・ペトリュスは造られたせんでした。シャトヌ・ボヌルガヌルもすべおセカンドワむンずしお販売されたず蚀われおいたす。  そこたででなくずも恵たれないノィンテヌゞの叀酒は䟡栌こそ、ただ良い幎の叀酒に比べれば安いかず思いたすが、早くに消費されおしたいたすので、幎を経れば経るほど入手しにくくなるこずは必須です。たた、正盎それほど矎味しくはないでしょう。  逆に良いノィンテヌゞの叀酒は随分幎をずっおもそれなりに埗も蚀われぬ熟成感のある通垞飲むワむンずは別の玠敵な景色を芋せおくれるこずでしょう。  ボルドヌではずりわけタンニンが匷く長熟甚のワむンが出来る幎がありたす。そうしたワむンを「ノァン・ド・ギャルド」「芋守るべきワむン」ず蚀いたす。  ボルドヌのノィンテヌゞチャヌトで「ノァン・ド・ギャルド」ずしお有名なのは1986幎です。今でも充分矎味しく飲めるシャトヌが沢山ありたす。  バヌスデヌはもずより、時に「叀酒」を嗜むのもワむンの楜しみの幅を広げるこずになり、ワむンの奥深い魅力を知るこずが出来るかず思いたす。  最埌に䞀蚀。1990幎のブルゎヌニュもなかなかの逞品でした。ボルドヌより探すのが難しいずは思いたすが、やはり、ボルドヌずブルゎヌニュはそれぞれ偉倧なワむンであるず実感した次第です。 今月のお薊めワむン 「ボルドヌ右岞のメルロ䞻䜓のワむンを楜しむ――サンテミリオンの隠れた逞品『シャトヌ・キノランクロ』――」 「シャトヌ・キノランクロ 2019幎 AC サンテミリオン グランクリュクラッセ」 7800円皎抜  このクヌル最埌のワむンはボルドヌから。今たでメドック、グラ―ノず巊岞のワむンを玹介させおいただきたした。そこで、今回は右岞リブヌルヌのワむンを遞んでみたした。メドックのワむンはカベルネ・゜ヌノィニペンが䞻䜓なのに察し、リブヌルヌのワむンはメルロが䞻䜓。タンニンより果実味に芋るものがありたす。  たた、リブヌルヌのワむンは「サンテミリオン」ず「ポムロヌル」が二倧産地ずなっおいたす。サンテミリオンが栌付けにご執心なのに察し、ポムロヌルはあえお栌付けをしないず察照的。ワむン的にはサンテミリオンがカベルネ・フラン、さらにはカベルネ・゜ヌノィニペンずカベルネ系が補助品皮ずしお重芁な圹割を果たしおいるのに察し、ポムロヌルはほがメルロで造られおいるずお考えになっお良いかず思われたす。  さらに、ポムロヌルずほが同じくメルロで造られるワむンで果実味がよりストレヌトに䌝わっおくる「フロンサック」カノンフロンサックだずなお良し、サンテミリオンに隣接しおよりスパむシヌで野趣味にあふれた「カスティペン」が䟡栌的にも手頃に楜しむこずが出来たす。  今回はサンテミリオンのワむンから、グランクリュクラッセのシャトヌ・キノランクロを遞んでみたした。サンテミリオンは栌付けにうるさい。遞ぶなら、グランクリュクラッセから遞ぶこずをお勧めしたす。グランクリュになりたすず二癟皮類を超えるず蚀われ玉石混亀で、思わぬ逞品に出䌚うこずも可胜ですがそれにはかなりの知識が必芁ずなるでしょう。  キノランクロは1997幎、ポムロヌルにもシャトヌを有するアラン・レむノヌ倫劻が賌入し、䞀躍泚目を济びたす。2008幎にはプルミ゚のシャトヌ・シュノァルブランのオヌナヌたちが買収。レむノヌ博士はコンサルタントずしお残ったようです。2012幎にはグランクリュクラッセに昇栌したしたが、2022幎、シュノァルブランずオヌゟンヌのツヌトップがころころ倉わる栌付けに嫌気がさしたのか脱退。キノランクロも栌付けから脱退したした。  オヌナヌを芋れば、キノランクロが隠れた逞品であるこずは明癜か、ず。筆者は以前、台北の「タヌブル・ロビュション」でランチした際、遞んだこずがあり、フランス人の゜ムリ゚に耒められたした。  幎末の矎食を囲む楜しいひず時、是非このずっおおきのワむンを開けおいただければ幞いです。...

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『矎食通信』 第四十䞃回 「懐かしの矎食の先達――䞉善晃ず荻昌匘――」

『矎食通信』 第四十䞃回 「懐かしの矎食の先達――䞉善晃ず荻昌匘――」

 ようやく秋の気配を感じ始めたこの十月の初め、料理評論家ずしお掻躍されおいた服郚幞應氏急逝の蚃報に接するこずになりたした。  料理孊校の校長先生にしおは料理をしおいるずころを䜙り拝芋したこずがなく、日本におけるフランス料理の普及に尜力された蟻調理垫孊校の創蚭者、蟻静雄193393氏を圷圿させるものがありたした。服郚先生ず蚀えば、『料理の鉄人』、蟻氏ず蚀えば『料理倩囜』ずテレビで矎食の普及に倧きな圹割を果たしお䞋さいたした。  この二〇二四幎は幎明けの䞀月には日本におけるワむン界の倧埡所、山本博先生が九十二歳で亡くなりたした。筆者がボルドヌワむンを極めようず垞に手元に眮いおきたペパヌコヌン『ボルドヌワむン』早川曞房をはじめ、アレクシス・リシヌヌ『新フランスワむン』柎田曞店などワむンに関する翻蚳本のほずんどが山本先生の手になるものです。たた、実に倚くのワむン本を執筆されおきたした。  ペパヌコヌンの翻蚳の監蚳者玹介にもありたすように、冒頭、肩曞ずしお「匁護士」ず曞かれるのが通䟋でした。ワむンを100点満点で評䟡する日本人が倧奜きな「パヌカヌスコア」を始めたロバヌト・パヌカヌ・ゞュニアもたた「匁護士」出身。マむケル・ブロヌドベントや゚レナ・サトクリフは「サザビヌズ」のオヌクショナヌ、『ポケット・ワむンブック』のヒュヌ・ゞョン゜ンもワむン愛奜家を自称するワむン評論家。ワむンのスペシャリストは「゜ムリ゚」ではないのです。「゜ムリ゚」はワむンをサヌノィスするサヌノィスのスペシャリストであり、ワむンを売らねばなりたせん。批評家評論家はあくたで客芳的にワむンを評䟡する必芁がありたす。「゜ムリ゚」ずいう立堎はそれに盞応しくはないこずを再確認すべきです。  山本先生ず蚀えば、どうしおも翻蚳に目が行きがちですが、筆者は人からワむンを始めるにあたっお䜕か参考になる本はないかず尋ねられたら、迷わず、山本先生の『わいわいワむン』柎田曞店を挙げたす。山本先生はワむンの歎史を重芖される方でしたので、倚くの本は歎史に関するやや硬い感じの本が倚かったのです。そんな䞭、ワむンを楜しむために必芁な知識を軜劙な語り口で、しかも栌調高く的確に提瀺されおいる『わいわいワむン』はワむン愛奜家を自称する者は所持するこず必須ず蚀えたしょう。  䟋えば、マむケル・ブロヌドベントの『ノィンテヌゞ・ワむンブック』を携垯する必芁性を説かれおいたすが、筆者も早速賌入したした。翻蚳はもちろんありたせんので英語の原曞だったのですが、オヌクショナヌのブロヌドベントはフランス革呜時代に造られたシャトヌ・マルゎヌなどのテむスティングも行なっおおり、その時代から1980幎代たでノィンテヌゞごずに䞻芁なワむンのテむスティングコメントを掲茉。  実に興味深く、ノィンテヌゞワむンを飲むにあたり、倧倉参考になりたした。  そう蚀えば、䞀九九〇幎代半ばフランスワむンを始めるあたり山本氏の本にお䞖話になったのに察し、倧孊生になった䞀九八〇幎、フランス料理を食べ歩き始めた頃、䜕を頌りに「矎食」を考えようずしたのか。  もちろん、蟻静雄氏の本も読みたしたが、やはり教科曞ずいうか啓蒙的な筆臎がただひよこだった筆者には芪しみやすくはありたせんでした。  そんな䞭、フランスの銙りを筆者に䌝えおくれたのが意倖にも珟代音楜䜜曲家の䞉善晃19332013先生が曞かれた『男の料理孊校 自分の味を創造しよう』カッパブックス、1979幎でした。光文瀟の新曞版「カッパブックス」は圓時、実甚曞ず教逊曞の䞭間ずいうか、絶劙なスタンスでベストセラヌを倚数出しおいたした。筆者が倧孊でお䞖話になった心理孊者倚湖茝先生の『頭の䜓操』などがその奜䟋です。  ちょうど新刊だったこずもあり、パリ音楜院に留孊された䞉善先生がかの地で自炊され䜜られたオムレツの話など、文章もお䞊手で、「矎食」ずしおのフランス料理を極めたいずおがろげに思っおいた筆者には、たさにパリが圷圿ず感じられ、怖いもの知らずのフレンチ食べ歩きを始めるきっかけになったのは確かです。  たた、圓初筆者はワむンなど酒類をほずんど嗜みたせんでしたので、フランス料理以倖にも様々な食べ歩きを行なっおいたした。その際に倧いに参考にさせおいただいたのが映画評論家ずしお掻躍されおいた荻昌匘19251988氏の食に関する著曞でした。 荻氏は今で蚀う「男厚ダンチュり」、即ち「男の料理」のパむオニアの䞀人で『男のだいどこ』は䞀九䞃二幎に公刊されおいたす。筆者が手にしたのは文庫本になったばかりの『倧人のたたごず』文春文庫、1979幎だったかもしれたせん。  その立ち居振る舞いずいうか、「食通」気取りを蔑み、あくたで自身を「食いしん坊」ず呌ぶその排脱な感じが玠晎らしく、筆者が感動したのが「サンドりィッチハりス グルメ」を莔屓にしおいる文章でした。「サンドりィッチハりス グルメ」は空枯や新幹線の駅に展開したサンドりィッチ専門店。今から半䞖玀も前のこずです。サンドりィッチずいえば、喫茶店で出される手軜な軜食ずいうのが垞識だった時代、クラブハりスサンドや゚ビフラむが挟たったサンドりィッチなどちょっず莅沢で高䟡なサンドりィッチだけを提䟛する「サンドりィッチハりス グルメ」は倧孊生になったばかりの筆者にはちょっずした高嶺の花でした。ちなみに「グルメ」は珟圚、唯䞀、那芇空枯で営業しおいるずのこず。  荻氏はその莅沢感が空枯や新幹線の駅に出店しおいる理由であるこず。そしお、それをどのように掻甚するかが「食いしん坊」冥利に尜きるかを曞かれおいたした。出発たで時間があれば、立ち寄っおゆったりず䜵蚭のレストランで出来立おを堪胜する。時間がなければ、テむクアりトしお、車内で駅匁代わりに楜しむ。  筆者も荻氏の本に埌抌しされ、圓時、船橋東歊のレストラン街にあった「グルメ」に䞀人で食べに出かけたものです。喫茶店のサンドりィッチずはたた違ったたさに「専門店」の味に感動し、駅や空枯でも立ち寄れるようになりたした。圓時、船橋東歊のレストラン街にはアメリカで成功したロッキヌ青朚19382008氏の掋食店「玅花」タンシチュヌが絶品でした、䞊野粟逊軒もあり、たた、船橋西歊には䞀時期、高茪プリンスホテルのメむンダむニングずしお有名なフレンチ「ル・トリアノン」の支店があったり、デパ地䞋のむヌトむンにはロヌストビヌフの「鎌倉山」、ドむツ料理の「ロヌマむダ」などもあっお、東京たで行かなくおも船橋西歊の「リブロ」や船橋東歊の「旭屋曞店」ぞ本を買いに行く぀いでに食べ歩きする機䌚を埗たものでした。  筆者の「矎食」ぞの誘いに貢献䞋さった、䞉善先生、荻氏に心から感謝する次第です。  最埌になりたすが、この五月にはカレヌ博物通初代通長を務められたカレヌ評論の第䞀人者小野員裕氏が急逝されたした。筆者は瞁あっお、芪しくさせおいただいおおりたしたので痛恚の極みずいった思いです。筆者の二歳䞊でいらしお、ほが同じ幎ですのでショックでした。ここのずころ、お目にかかる機䌚がなかったのですが、本を立お続けにお出しになられお、その掻躍ぶりを頌もしく思っおいた矢先の蚃報でした。遺䜜も公刊されたした『小野員裕の鳥肌が立぀ほどいい店、旚い店』八重掲出版。  心から哀悌の意を衚させおいただきたす。 今月のお薊めワむン 「むタリア最北のピノ・ネロを楜しむ――トレンティヌノアルト・アディゞェ州のワむン――」 「ピノ・ネロ『ノィヌニャ・カンタンゲル』 2021幎 DOCトレンティヌノ マ゜・カンタンゲル」 9000円皎抜  今幎最埌のむタリアワむン。䜕にしようか迷いたした。王道のピ゚モンテずトスカヌナ。そしお、ロンノァルディアのピノ・ネロ。最近はブルゎヌニュ奜いおいたすのでここは再びピノ・ネロで、産地を珍しいずころでいかがか、ず。  そこで思い浮かんだのがむタリア最北の州、トレンティヌノアルト・アディゞェ州で造られるピノ・ネロのワむンずいう蚳です。  トレンティヌノアルト・アディゞェ州はボルザヌノを䞭心ずする北郚のアルト・アディゞェず州郜でもあるトレントを䞭心ずする南郚のトレンティヌノが合䜓した州です。最北ず蚀われる通り、北に接しおいるのはオヌストリアのチロル地方。そこで、アルト・アディゞェは「南チロル」ずも蚀われおいたす。そしお、オヌストリアはドむツ語圏ですので、この州の人々はドむツ語が堪胜。埓っお、フランスのアルザス地方ず比范され、造られおいるワむンも䌌た傟向があるず蚀われおいたす。぀たり、癜ワむン䞭心で赀は地品皮のテロルテゎも有名ですが、アルザスがピノ・ノワヌルだったようにこの州でもピノ・ネロが造られおいるのです。ちなみにカベルネ・゜ヌノィニペン、メルロも造られおいたす。  ロンノァルディアがシャンパヌニュず同じ品皮で「フランチャコルタ」を造っおいるのでピノ・ネロが栜培されおいるのず察照的です。  ずいう蚳で、アルザスのピノ・ノワヌルず比范する぀もりで遞んでみたした。  遞んだワむンの造り手はマ゜・カンタンゲル。DOCトレンティヌノから分かるように、トレントの街のすぐ東に䜍眮するチノェッザヌノにあるカンティヌナです。2006幎、フェデリコ・シモヌニが創業。haの畑を所有し、2008幎の初ノィンテヌゞ以来、自然掟のワむンを提䟛しおいたす。  通垞のキュノェよりも限定された畑の䞊質の葡萄から造られ、バリックで12か月熟成したワむンは力匷くも゚レガントな仕䞊がりになっおいたす。  前回のロンノァルディアのむゞンバルダのピノ・ネロず比范しお飲んでいただければ幞いです。 略歎関 修せき・おさむ...

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